僕はおよめさん!

四葉 翠花

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第二章 南へ

74.領主

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「……っ!」

 三人の間に緊張が走る。やはり、ローダンデリアにやってくるのは早計だったのか。何らかの罠だったのか。後悔の念がミゼアスを襲う。
 ところが、領主の側にいた大男までがおろおろと落ち着きを無くしていた。もしかしたら、三人よりも驚いているかもしれない。
 思わず、ミゼアスはそちらに気を取られてしまった。この大男は、ローダンデリア側の人間だったのではないだろうか。

「そ、それはいったい、どういうことでしょうか……?」

 大男がたまらずといった様子で口を開く。

「……あなたが取り乱したら、だめでしょう」

 がっくりと領主はため息を吐き出す。それから気を取り直したように明るい笑みを浮かべて三人を見回した。

「あっはっは、冗談ですよ。驚かせてみたかっただけです。遠路はるばる来てくださったのですから、おもてなししなければと思いまして。あなた方に危害を加える気はありませんので、安心してください」

 あっけらかんと笑う領主。
 最初はヴァレンと似ていないと思ったが、間違いだったとミゼアスは額を押さえる。
 外見は似ていないが、中身は似たようなものを感じる。間違いなく、同じ血が流れているはずだ。妙な確信が浮かび上がってきた。
 見れば、アデルジェスとロシュも妙な顔をしている。あっけに取られているのだろう。

「ええと……それで、どうして僕たちを招いたのでしょうか?」

 頭痛を覚えながらも、どうにかミゼアスは口を開く。
 さすがにヴァレン相手に鍛えられただけはあって、アデルジェスやロシュよりも回復は早いようだと、さらに頭を抱えたくなる。

「ああ、それはあなた方も今回の事件に関わったようなので、結末が気になるかと。もう九割方終わっていて、最後の仕上げ待ちの段階です」

 領主はにこやかに口を開き、語り始める。

「赤味がかった金髪の子たちをさらっていたのは、ローダンデリアです。正確に言えばうちの商人で、私は知らなかったのですが……知らなかったこと自体が問題ですしね」

 苦笑する領主。

「理由は、夕月花のため。このローダンデリアは夕月花のおかげで栄えています。ところが父が事故で亡くなり、育ちが悪くなってしまいました。そこで生贄を捧げようとしたのでしょう。でも、もう私以外にローダンデリア家の者はいない。そこでせめて父と同じ、赤味がかった金髪を持つ子を探し始めたようです」

 代替品として子供たちをさらっていたということか。ユアンに目をつけたのも、そのためだろう。

「しかしその途中で、本当にローダンデリア家の血を引く者が見つかりました」
「それが、ヴァレン……?」

 眉根を寄せてミゼアスが問うと、領主は頷いた。

「そうです。亡くなったとされていた彼は、不夜島に売られていました。そこでうちの商人は迎えに行ったようです。……ところが」

 領主はこらえきれないといったように笑い出す。
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