僕はおよめさん!

四葉 翠花

文字の大きさ
122 / 133
第三章 巡り会い

122.支えられている

しおりを挟む
 ミゼアスがぼんやりとした意識を覚醒させると、呆然と目を見開くアデルジェスの顔が目に映った。

「ジェス……? あれ……僕……どうしたの……?」

 何が起こっているのかよくわからないまま、ミゼアスは呟く。
 長い夢を見ていたような気もするが、内容はわからない。ただ、時間はかなり経過しているようで、長い間寝ていたせいか腰の辺りが少々痛かった。

「ミゼアス……ミゼアス……よかった……」

 涙を流しながら、アデルジェスはミゼアスを抱きしめる。かすれた声で何度もミゼアスの名を呼ぶが、状況が理解できないミゼアスは何もできずに、されるがままだ。
 互いに裸であることに気づき、ミゼアスはもしかして性交の最中に意識を失ったのだろうかとも考える。しかし、それにしてはアデルジェスの態度が大げさだ。
 何があったのだろうかと記憶をたどったところで、ようやくミゼアスははっと気づく。
 領主主催の宴で、『風月花』の演奏を終えた後、意識が途切れてしまったのだ。

「僕……『風月花』を演奏して、それから……」

 ぼそりと呟くと、ようやくアデルジェスが腕の力を緩めた。腕の中から離そうとはしないが、互いの顔が見える程度の距離になる。

「そう、ミゼアスは倒れちゃったんだよ。その後、昏睡状態になって……マリオンさんとイーノスさんの家に運んだんだ」

「そっか……どうしちゃったんだろう……」

 ミゼアスはわずかに眉根を寄せながら、考え込む。
 まさか『風月花』を弾いたことが原因だろうか。いや、それよりもまずは迷惑をかけたことを謝るべきだ、などといったことがミゼアスの頭にぐるぐると浮かぶ。

「それで、ミゼアスを目覚めさせる方法を知らないかってヴァレンに手紙を出したら、本人がやってきたんだよ」

「……え? ヴァレンが?」

 驚きのあまり、ミゼアスの頭からは全ての考えが吹き飛んでしまった。
 ヴァレンは未だに不夜島の白花のはずだ。島を出ることなど許されないだろう。何かの勘違いだろうかと、ミゼアスは首を傾げる。

「ヴァレンがここに来ているの? 本当に?」

「うん、来ている。さっき、マリオンさんと一緒に広間のほうに戻っていった」

 しかし、確認してみれば、アデルジェスははっきりと答えた。

「俺もまさかヴァレンが来るなんて思わなかったから、びっくりしたよ。どうかしたのか聞こうとしたけど、それよりもまずはミゼアスだから、後回しにした。ミゼアスの目が覚めたら詳しいことを話すって言っていたよ」

 アデルジェスの言葉を聞き、ミゼアスは唖然としてしまう。
 本当に、ヴァレンがやって来ているのだ。どういう状態で島を出たのかはわからないが、おそらくは何らかの代償を払っているだろう。ミゼアスのためにヴァレンがそうまでしてくれたのだと思うと、ミゼアスは言葉が出なくなる。
 すまなかったと謝りたい衝動がわき起こるが、おそらくヴァレンは謝罪など望まないだろう。ヴァレンの決意を尊重するためにも、まずは礼を言うべきだ。

「うん……ジェスにも心配をかけて、ごめんね。ありがとう。マリオン兄さんとイーノスさんにもご挨拶して……ヴァレンに会わないと」

 いろいろな人に支えられていることを噛み締めながら、ミゼアスはアデルジェスの頬に口づけをひとつ送ると、温かい腕の中からすり抜ける。
 少し腰は痛いものの、ここしばらく身体にのしかかっていただるさが消えていることにふと気づき、訝しく思いながらもミゼアスは服を着て準備を整えていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【完結】トラウマ眼鏡系男子は幼馴染み王子に恋をする

獏乃みゆ
BL
黒髪メガネの地味な男子高校生・青山優李(あおやま ゆうり)。 小学生の頃、外見を理由にいじめられた彼は、顔を隠すように黒縁メガネをかけるようになった。 そんな優李を救ってくれたのは、幼馴染の遠野悠斗(とおの はると)。 優李は彼に恋をした。けれど、悠斗は同性で、その上誰もが振り返るほどの美貌の持ち主――手の届かない存在だった。 それでも傍にいたいと願う優李は自分の想いを絶対に隠し通そうと心に誓う。 一方、悠斗も密やかな想いをを秘めたまま優李を見つめ続ける。 一見穏やかな日常の裏で、二人の想いは静かにすれ違い始める。 やがて優李の前に、過去の“痛み”が再び姿を現す。 友情と恋の境界で揺れる二人が、すれ違いの果てに見つける答えとは。 ――トラウマを抱えた少年と、彼を救った“王子”の救済と成長の物語。 ───────── 両片想い幼馴染男子高校生の物語です。 個人的に、癖のあるキャラクターが好きなので、二人とも読み始めと印象が変化します。ご注意ください。 ※主人公はメガネキャラですが、純粋に視力が悪くてメガネ着用というわけではないので、メガネ属性好きで読み始められる方はご注意ください。 ※悠斗くん、穏やかで優しげな王子様キャラですが、途中で印象が変わる場合がありますので、キラキラ王子様がお好きな方はご注意ください。 ───── ※ムーンライトノベルズにて連載していたものを加筆修正したものになります。 部分的に表現などが異なりますが、大筋のストーリーに変更はありません。 おそらく、より読みやすくなっているかと思います。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

竜人息子の溺愛!

神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。 勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。 だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。 そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。 超美形竜人息子×自称おじさん

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...