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第三章 巡り会い
130.靄の奥
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ぼんやりとしながらミゼアスが目を覚ますと、部屋は真っ暗だった。
窓掛けを開けてみると、空に月が輝いている。月の位置からするとすでに真夜中で、夜明けが近いくらいだった。
予想よりも長く寝てしまったと、ミゼアスは愕然とする。
今すぐヴァレンを探しに行こうと寝台から抜け出したが、もうヴァレンも寝ているのではないだろうかと、扉の前で思いとどまる。せっかくミゼアスのために来てくれたのに、ろくに話もできないのは残念だが、叩き起こすのも迷惑だろう。
それならば、とミゼアスは手紙をしたためることにする。
幸い、アデルジェスが持ってきたミゼアスの荷物袋が寝台の近くに置いてあった。中から便箋や筆記具を取り出して、ミゼアスはヴァレンへの言葉を綴っていく。
率直に、礼の言葉とヴァレンに会えて嬉しかったということを、飾らない言葉で書いた。白花時代、客相手に出していたような美辞麗句をちりばめた綺麗な文章ではなく、ミゼアスの気持ちをそのまま表現しただけの簡素な手紙だ。
ヴァレンへの手紙を書き終えると、今度はミゼアス付きの見習いだったアルン、ブラム、コリンへの手紙も書いた。
急に島を出ることになってしまったが、泣きながらも快くミゼアスを送り出してくれた、優しくて素直な良い子たちだ。彼らにも感謝の言葉と、激励を綴る。
書き終える頃には、もう空が白くなり始めていた。
早起きのヴァレンならそろそろ起きてくるだろうかと、ミゼアスは寝台の上にアデルジェスを残して、起こさないようにそっと部屋を出て行く。
まずは広間に向かってみるが、人の気配はない。まだ起きてきていないのだろうかと思ったが、次の瞬間、ミゼアスははっとする。
もしかすると、もう島に帰ってしまったのではないだろうか。
朝に帰るとは言っていたが、それが早朝なのか昼に近い朝なのかは聞いていないのだ。
もし早朝だとすれば、すでにここを出た後なのかもしれない。そう思い至ると、ミゼアスは玄関から飛び出した。
まだ間に合うかもしれない。ミゼアスはヴァレンを追いかけようとするが、どういった手段でここまで来たのかも知らないことに気づき、目の前が暗くなる。
どこに行けばよいのかもわからない。
だが、ミゼアスの脳裏にぱっと浮かんだ場所がある。
ヴァレンは昔から海岸が好きだった。だからといってそこから来たという根拠にはならないのだが、ミゼアスは海岸に向かって走り出す。
もしヴァレンがいるとすれば、そこだという奇妙な確信があった。昔は姿が見当たらないヴァレンを探しに海岸まで行ったら、岩場で寝ていたこともあったのだ。
やがて海岸にたどりつくと、靄がかかっていた。暑い季節のはずなのだが、肌寒さにミゼアスは軽く身を震わせる。
海には霧にまぎれて獲物を絡め取る魔物もいるというが、まさに魔物の領土に踏み込んでいくかのような気分になり、ミゼアスは気温のためだけではない寒気を覚える。
それでもこの靄はミゼアスを拒絶していないように思え、ミゼアスは己を奮い立たせて進んでいく。
すると、靄の奥から人の話し声のようなものが聞こえてきた。聞き覚えのある、馴染み深い声だ。これまで張り詰めていたミゼアスの心が、ほっとほぐれる。
「ミゼアス兄さん……!」
靄の奥から、求めていた相手が駆け出してきた。
窓掛けを開けてみると、空に月が輝いている。月の位置からするとすでに真夜中で、夜明けが近いくらいだった。
予想よりも長く寝てしまったと、ミゼアスは愕然とする。
今すぐヴァレンを探しに行こうと寝台から抜け出したが、もうヴァレンも寝ているのではないだろうかと、扉の前で思いとどまる。せっかくミゼアスのために来てくれたのに、ろくに話もできないのは残念だが、叩き起こすのも迷惑だろう。
それならば、とミゼアスは手紙をしたためることにする。
幸い、アデルジェスが持ってきたミゼアスの荷物袋が寝台の近くに置いてあった。中から便箋や筆記具を取り出して、ミゼアスはヴァレンへの言葉を綴っていく。
率直に、礼の言葉とヴァレンに会えて嬉しかったということを、飾らない言葉で書いた。白花時代、客相手に出していたような美辞麗句をちりばめた綺麗な文章ではなく、ミゼアスの気持ちをそのまま表現しただけの簡素な手紙だ。
ヴァレンへの手紙を書き終えると、今度はミゼアス付きの見習いだったアルン、ブラム、コリンへの手紙も書いた。
急に島を出ることになってしまったが、泣きながらも快くミゼアスを送り出してくれた、優しくて素直な良い子たちだ。彼らにも感謝の言葉と、激励を綴る。
書き終える頃には、もう空が白くなり始めていた。
早起きのヴァレンならそろそろ起きてくるだろうかと、ミゼアスは寝台の上にアデルジェスを残して、起こさないようにそっと部屋を出て行く。
まずは広間に向かってみるが、人の気配はない。まだ起きてきていないのだろうかと思ったが、次の瞬間、ミゼアスははっとする。
もしかすると、もう島に帰ってしまったのではないだろうか。
朝に帰るとは言っていたが、それが早朝なのか昼に近い朝なのかは聞いていないのだ。
もし早朝だとすれば、すでにここを出た後なのかもしれない。そう思い至ると、ミゼアスは玄関から飛び出した。
まだ間に合うかもしれない。ミゼアスはヴァレンを追いかけようとするが、どういった手段でここまで来たのかも知らないことに気づき、目の前が暗くなる。
どこに行けばよいのかもわからない。
だが、ミゼアスの脳裏にぱっと浮かんだ場所がある。
ヴァレンは昔から海岸が好きだった。だからといってそこから来たという根拠にはならないのだが、ミゼアスは海岸に向かって走り出す。
もしヴァレンがいるとすれば、そこだという奇妙な確信があった。昔は姿が見当たらないヴァレンを探しに海岸まで行ったら、岩場で寝ていたこともあったのだ。
やがて海岸にたどりつくと、靄がかかっていた。暑い季節のはずなのだが、肌寒さにミゼアスは軽く身を震わせる。
海には霧にまぎれて獲物を絡め取る魔物もいるというが、まさに魔物の領土に踏み込んでいくかのような気分になり、ミゼアスは気温のためだけではない寒気を覚える。
それでもこの靄はミゼアスを拒絶していないように思え、ミゼアスは己を奮い立たせて進んでいく。
すると、靄の奥から人の話し声のようなものが聞こえてきた。聞き覚えのある、馴染み深い声だ。これまで張り詰めていたミゼアスの心が、ほっとほぐれる。
「ミゼアス兄さん……!」
靄の奥から、求めていた相手が駆け出してきた。
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