呪われた王女は黒狼王の牙に甘く貫かれる

四葉 翠花

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11.痛ましい希望

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「……それができたら、とても幸せなことでしょうね。でも、無理よ。私はここを出て生きていく方法を知らないわ。明日のパンを得ることだって、できないでしょうね」

「俺が何とかするよ。力仕事でも何でも」

「どこから来たかもわからないような子供二人を受け入れてくれるかしら。すぐに追っ手がかかって終わりよ」

「どこか遠く……そうだ、船に乗って違う場所に……」

 尚もデイネストは希望をつなげようとする。その様子が痛ましくも、嬉しい。セレディローサはそっとデイネストの手に手を重ねた。

「……あなたの気持ちは嬉しいわ、ありがとう。でも、私はこの国の王女なの。役立たずの王女とはいっても……いえ、だからこそ、王女の務めは放棄できないのよ。私が明日のパンの心配をしなくてよいのも、清潔な服をまとうことができるのも、すべて国のおかげなのよ。国に生かされている私が、国を捨てることなどできないわ」

「でも……十八までしか生きられないのに、その短い間すら縛られて……」

 デイネストの震える声が、セレディローサの心を苦しさと幸福で縛っていく。

「短いからこそ、規範からはずれてはならないのよ。私にできることは『気高い王女』として死ぬことだけなの。王女としての価値がない私には、品位を保ったまま呪いの成就を待ち、見苦しい様を見せずに王家の娘らしく死ぬことしかできないのよ」

「そんな……」

 泣きそうな顔でセレディローサを見つめてくるデイネストが、愛おしい。期待に応えられないことが苦しいが、これほど心配してくれることに心が喜びの声をあげる。

「……わかった、もう無茶なことは言わない」

 唇を引き結び、デイネストがぼそりと呟く。
 わかってくれたかとセレディローサが口を開こうとすると、強い意志を持った黒い瞳に射抜かれ、思わず口をつぐんでびくりと身体を震わせる。

「呪いを解く方法を見つけて、迎えに来る。それだったらいいだろ?」
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