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56.穏やかな午後

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 ミゼアスとアルンの楽器練習が終わると、お茶を淹れて昨日買ってきた菓子を食べた。休憩時間だ。
 ようやく昨日の楽しみを取り戻せたようだった。
 色とりどりのお菓子は美味しかった。見習いたちも嬉しそうに食べている。
 コリンは相変わらずもじもじしていたが、アルンとブラムは大分アデルジェスに慣れてくれたようだ。普通に話しかけてくる。
 こうしてわいわいとお茶の時間を過ごすのもよいものだな、とアデルジェスは微笑ましく思った。

「ああ、そうだった……」

 途中でミゼアスが今晩の仕事についての指示らしきものを出していたが、ほんの二言、三言だ。話の流れを妨げることもなく、まるで話の一部であるかのようだった。それでも見習いたちに慌てる様子はなかったので、慣れているのだろう。
 兵舎での怒鳴り散らしながら命令する上司や、何度も同じことを聞き返す同僚とはやはり違うものだと、アデルジェスは感じ入る。

 ミゼアスはアデルジェスにも見習いたちにも、疎外感を与えないような話題を穏やかに振ってくる。あまり会話上手とはいえないアデルジェスの言葉も、そこから巧みに膨らませていく。やはり場を取り仕切るのがうまい。
 人数が集まるとどうしても埋もれがちなアデルジェスでも、楽しんで会話に加わることができた。
 お茶もお菓子も美味しいし、素晴らしい午後のひとときだった。

 しばらくお茶の時間を過ごした後、見習い三人衆は長居することなく去っていった。気を利かせたらしい。
 それからアデルジェスはミゼアスとのんびり過ごしていた。
 外に出かけようかという話もあったのだが、小雨が降っているのでやめたのだ。

 ミゼアスはアデルジェスに背を向けて膝の上に座り、もたれかかっている。アデルジェスはそれを片方の手で抱いて支え、もう片方の手でミゼアスの髪を撫でていた。混じりけのない純金の髪はさらさらとしていて、手に心地よい。
 ここ数日で気づいたことがある。ミゼアスは撫でられるのが好きなようだ。髪でも身体でも、撫でてやるとうっとりと目を細めて気持ち良さそうにしている。
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