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32.和解
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純潔を失った日から、夜になると、ゴドフレードがアドリアンを伴ってステファニアの部屋に渡ってくるようになった。
虚ろな目をしたアドリアンがステファニアの中に精を放つと、ゴドフレードはアドリアンを連れて去っていく。ゴドフレードはいくら自らの代理とはいっても、他の男に抱かれた直後のステファニアと共に夜を過ごす気は起きないらしい。
孤独感に苛まれ、ステファニアは一人、枕を濡らす。
このような日が続き、ステファニアはだんだんとやつれていった。食欲も失せ、リナの心配そうな視線をよそに、ほんの数口しか食べずに食事を終えてしまうのだ。
最低限の会話しか交わさなくなっていたリナが、とうとうたまりかねたようにステファニアに話を切り出した。
「……最近のステファニア様は、おかしゅうございます。何か、悩みでもございますか?」
気遣うようにステファニアを伺うリナだったが、ステファニアはそっと俯くだけだった。
ステファニアの身の回りの世話をしているリナは、ステファニアに起こったことをある程度は予想できているのだろう。だが、ステファニアは詳しい事情を語る気にはなれず、黙り込む。
「……ステファニア様が私に不信感を持つのも当然でございますね……私は、ある方の命を受けてステファニア様の侍女になりました。ステファニア様もご存知の方でございます。私の実家を助けることと引き換えでございました」
沈黙するステファニアをしばし眺めると、何かを決意したようにリナは口を開く。
すべての物事への関心が薄れていたステファニアだったが、リナの語る内容にはっとして顔を上げる。
「ですが、私はステファニア様の不利益になることはいたしたくございません。ステファニア様にお仕えして、もったいなくも友人のように扱ってくださり、優しいお心に触れるにつれて、私は喜びと共に心苦しさを覚えておりました。私はこの優しい方を裏切っているのか、と……」
リナは苦渋をにじませながら、言葉を続けた。ステファニアは先ほどまでの諦めからの沈黙ではなく、リナの言葉を遮らないようにじっと黙ってリナを見つめる。
「たとえ命に背くことになったとしても、私はステファニア様の身を第一にしとうございます。どうか……どうか、信じてくださいませ」
「リナ……」
涙を流すリナの手を取り、ステファニアもまた、頬を一滴の涙が伝っていく。
「……あなたは、里帰りした夜に私を助けてくれたわよね。きっと、あれも命に背くことだったのでしょう? 私はリナのことを信じるわ……」
「ステファニア様……ありがとうございます……」
手を取り合いながら、二人はしばし思いに浸る。先ほどまでの気まずい沈黙ではなく、これまで築き上げてきた信頼を思い起こす、穏やかな静寂だ。
もともとステファニアは、リナに救われたことは十分に承知していた。互いに意識してしまい、ぎくしゃくとしていたが、きっかけさえあれば、すぐに元どおりになれたのだ。
「あのね……実は……」
ステファニアは、ゆっくりとこれまでの出来事を語り始める。
誰にも吐き出せず、一人で耐えてきたことをようやく話せるのだ。ステファニアの中で鬱屈と凝り固まっていた感情も、ゆるやかにほどけていくようだった。
虚ろな目をしたアドリアンがステファニアの中に精を放つと、ゴドフレードはアドリアンを連れて去っていく。ゴドフレードはいくら自らの代理とはいっても、他の男に抱かれた直後のステファニアと共に夜を過ごす気は起きないらしい。
孤独感に苛まれ、ステファニアは一人、枕を濡らす。
このような日が続き、ステファニアはだんだんとやつれていった。食欲も失せ、リナの心配そうな視線をよそに、ほんの数口しか食べずに食事を終えてしまうのだ。
最低限の会話しか交わさなくなっていたリナが、とうとうたまりかねたようにステファニアに話を切り出した。
「……最近のステファニア様は、おかしゅうございます。何か、悩みでもございますか?」
気遣うようにステファニアを伺うリナだったが、ステファニアはそっと俯くだけだった。
ステファニアの身の回りの世話をしているリナは、ステファニアに起こったことをある程度は予想できているのだろう。だが、ステファニアは詳しい事情を語る気にはなれず、黙り込む。
「……ステファニア様が私に不信感を持つのも当然でございますね……私は、ある方の命を受けてステファニア様の侍女になりました。ステファニア様もご存知の方でございます。私の実家を助けることと引き換えでございました」
沈黙するステファニアをしばし眺めると、何かを決意したようにリナは口を開く。
すべての物事への関心が薄れていたステファニアだったが、リナの語る内容にはっとして顔を上げる。
「ですが、私はステファニア様の不利益になることはいたしたくございません。ステファニア様にお仕えして、もったいなくも友人のように扱ってくださり、優しいお心に触れるにつれて、私は喜びと共に心苦しさを覚えておりました。私はこの優しい方を裏切っているのか、と……」
リナは苦渋をにじませながら、言葉を続けた。ステファニアは先ほどまでの諦めからの沈黙ではなく、リナの言葉を遮らないようにじっと黙ってリナを見つめる。
「たとえ命に背くことになったとしても、私はステファニア様の身を第一にしとうございます。どうか……どうか、信じてくださいませ」
「リナ……」
涙を流すリナの手を取り、ステファニアもまた、頬を一滴の涙が伝っていく。
「……あなたは、里帰りした夜に私を助けてくれたわよね。きっと、あれも命に背くことだったのでしょう? 私はリナのことを信じるわ……」
「ステファニア様……ありがとうございます……」
手を取り合いながら、二人はしばし思いに浸る。先ほどまでの気まずい沈黙ではなく、これまで築き上げてきた信頼を思い起こす、穏やかな静寂だ。
もともとステファニアは、リナに救われたことは十分に承知していた。互いに意識してしまい、ぎくしゃくとしていたが、きっかけさえあれば、すぐに元どおりになれたのだ。
「あのね……実は……」
ステファニアは、ゆっくりとこれまでの出来事を語り始める。
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