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船が転覆してしまったかのような…(美和子)
しおりを挟む気付いたら私は職場の医務室で横になっていた。
心配して声を掛けてくれた同僚が、机に突っ伏して動けないでいる私の身体を介抱しようとしてくれたところまでは覚えているけど、その後の記憶が無い…
どうやら暫く気を失ってしまっていたみたい…
一体何だったのかしら…オフィスで仕事中に絶頂してしまうなんて……
それに、なぜか『ジェットコースター』に乗せられているような感覚だった………
急ぎの資料があるから早く戻らなきゃ…
幸い、今はもう、全く身体に異常は感じられない。
時間的に昼休憩後には戻ることができそう。
ーーーーーーー
「もう大丈夫なの?」
医務室まで連れて行ってくれた同僚のその言葉に対して、私はお礼を言いながら笑顔のガッツポーズで応えた。
「もう大丈夫なんですか?」
女同士の明るい雰囲気の中に割り込んできたのは、暗い印象の男の声だった。その声の特徴から、それが誰なのかはすぐに分かった。昨日、私を食事に誘ってきた『永田』に違いなかった。
勿論、食事の誘いは断った。こんな、仕事もできない嫌われ者と食事に行っても楽しくなさそうだし、ずんぐりとした体形の、チビで不細工な永田と一緒に居るところを誰か知り合いにでも見られたりなんかしたら、と、想像しただけで恥ずかしくて顔が赤くなってくる。
まさか、この期に及んで向こうから話し掛けてくるなんて思ってもいなかった。
私は戸惑い気味に
「…え?……あ……まぁ…はぁ……」
と返事をすると、永田はいつになく自信ありげに言葉を発した。
「美和子さん、急に脂汗かきだしたりして、まるで『ジェットコースター』にでも乗せられているみたいでしたよ」
私はギョッとした。
(どうして永田がジェットコースターのことを!?。まさかさっきのは永田が!?いや、そんなハズはない。第一どうやってそんなことができると言うの?。きっと偶然よ……)
突然浮上してきた動揺に対する心の折り合いをつけるべく、思考を巡らせている間に永田は目の前から姿を消していた。
結局、その動揺を抱え込んだままの状態で仕事が始まってしまい、それ以降、漠然とした不安の影が私の背後にまとわりつくこととなった。
仕事が開始して間もなく、またあの感覚が迫ってきた…
まずは膣口付近から震えだし、やはり次はクリトリス付近へと刺激が移動してくる。強烈な小刻みな震えはさっきと全く同じだった。しかし、膣口からクリトリスへと行き来するイメージが、さっきとはまるで違う。さっきはジェットコースターだったけど、今回は『船』のイメージだった。
まるで船に乗せられているかのような感覚…
私は人生で一度も船に乗ったことがなかった。でも、この感じが船のそれであるということを、なぜか不思議と理解できた。
近くの同僚がまた心配して声を掛けてくれたけど、先ほど同様、やはりそれには何も応えることができない…
とどめの振動がクリトリスだけではなく、今度はGスポットにも張り付いた。身体がひとりでに激しく波打つ。
まるで船が『転覆』してしまったかのような衝撃的なオルガズムの波の中で、私の意識は遠退いて行った………
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