霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ

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野花怪異談集全100話

43話「は?」

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「1」

     ーー「八木家14時25分」ーー

 秋暮れの季節。
 木の枯葉が舞い落ちる時期。
 白粉肌おさげ少女八木楓は竹箒で庭の枯葉を掃き掃除をしていた。楓は珍しく名前と同じ絵のカエデ柄の和服を着ている。
「楓、持ってきたぞ!」
 八木家の居候同居人梅田虫男の両手の籠には大量のさつまいもを運んできた。
「おねーちゃん。持ってきたわよ」
 八木家の次女ツンデレ芋……妹および八木瑠奈の両手の籠には大量のじゃがいもも運んできた。
「楓ー!!来たわよ」
 永木桜、永木翼、榊原羅奈、夢見亜華葉、鳥河大軌、黒木あかね、星田星夏、穴本八枝、賢木理奈、神木命、野花手鞠、そして合唱部3人組と鳴沢姉妹もやってきた。手にはそれぞれ大量の枯葉が入ったゴミ袋を抱えている。
 と、いつのまにか桜は楓と下のネームと呼び合う仲になったがまだ桜は照れ臭いのか、頬を紅く染めている。
「楓さん。来たわよ」
「ふー」
 それ以外も大量にチーズマニアであるじゃがいもにチーズフォンデュを食べる意気込みを隠せない準備をしてきた紙野だいごとそれを付き添う理奈の実の姉である賢木咲夜もやって来た。
 咲夜を見て虫男はびびって、だいごに耳打ちする。
「なあ?大丈夫だろうな?あいつもしかしてさつまいもとかじゃがいもまで口出しはしないだろうな?」
「そこんとこは大丈夫です。あらかじめ彼女の執事とミーティングを重ねておきました。なので持ってきた物は全てクリアしてます」
「……そうか、くれぐれも彼女を常にマークするように」
 虫男とだいごはひそひそと作戦会話する。
 だいごは虫男が住むアパートの住宅地にあの出来事あってか、虫男から指令で咲夜をマークするようになった。しかし彼は知らない。彼女の情報を集めるうちに彼女の家を出入りするうちになり、だいごの両親と賢木の両親は彼らの身を固めている準備に気がついていない。咲夜本人も満更ではなかったことに後の祭りである。
「じゃあ、みなさんそこに枯葉を集めて芋パーティをしましょう♪」
 早速みんなは焼き芋の準備を始めた。

「2」

「~♪。うめーな、おい」
 虫男はじゃがいものチーズフォンデュを頬張る。
「あー!?先生!俺の分も残してくださいよ!」
 だいごは芋の焼き具合を見ている。
「楓。そこの焼き芋取ってくれるかしら」
「わかったわ八枝」
 楓は八枝に手頃の焼き芋を渡す。
「ありがと」
「あ、私も」
「はいはい」と楓は、あかねに小さな焼き芋を渡すのは嫌がらせである。
 楓も焼き芋食べるの再開する。
 みんなも無我夢中に食べてる。
 八木瑠奈はネコ舌なので冷まして食べようとするが理奈に横取りされて芋芋と妹同士の掛け合いに憧れてる栞。
 栞の姉朱音の食べ残した後を食べる翼を見て大軌も食べさせてくださいと土下座して亜華葉に叱られて焼き芋の皮を食べさせるドレイ達。
 合唱部3人組は同じ動作で息を吹きかけて食べてるなどなど。
 楓はそんな人達を見て笑みを浮かべていた。
「アガッ!?」
 と、虫男が口元を押さえていた。
「どうしました?先生」
 心配をかける楓。
「いやぁ。どうも生焼けだったみたいだったから、歯がかけちゃったよ。ははは」
 虫男は拾った歯を見せびらかす。
「は?」
 心配した損になった気分の楓は、思わず『は?』が出てしまったがふと思い出してあの怪異談を披露することを決めた。
「そうそう。先生にも丁度いい怪異談ありますよ」
「ねー♪ねー♪なになに?」
 桜も気になって身を乗りだした
「それはね……は?」
「は?」
「そうよ、は?」
 その場にいた桜達は思わず首を傾げた。
「なんだよ?ははは。勿体ならずちゃんと怪異談のタイトルを言っておくれよ?まさかはははのは?ではないだろうな?まさか、はひふへほのは?ではないだろうな」
 虫男は真剣な目つきなった。
「そのまさかですよ。はの字のひらがなの『は?』ですよ」
 どこかで気が抜けたカラスの鳴く声がした。
 みんなは白けた目で楓の語る怪異談を耳を傾けた。

 「3」

 夕方遅くの交番勤務の見廻りである新人巡査。
 彼は自転車を漕ぎながらこのあたりを警戒している。
 なぜなら、この付近に無差別的に襲われるという犯人がいるのと目撃情報のタレ込みがあった。
 犯人は姿や性別、年齢などは一切不明であり。襲われた被害者はある物が奪われるという。
「はぁ。あんなもん奪ってどうするんだろ?」
 新人巡査は嘆いていた。
 それは襲われた被害者全て歯が一本奪われるというらしい。
 ただ奪われた被害者も大した軽症すらなかったが被害届けは多数あった。あちこちで荒らしまくっては困る警察は重く見て、何としてでも犯人逮捕に躍起になっていた。
 と、あまり乗り気ではない新人巡査が目撃現場につくと、自転車を止めてあたりを探索した。


 新人巡査は何もない住宅地の道路をくまなく探索した。あるのは明かりを照らす電柱一本とゴミ捨て置き場だった。
「なにもないな。ガセかイタズラかな?」
 もうすでに交代勤務時間が近くなった新人巡査は適当に切り上げようとしたその時、新人巡査の頭に何かコツンと落ちてきた。
「ん?なんだこれ?は?」
 思わずそれを拾って見ると何かの人間の歯であった。
 また、新人巡査からいた場所に歯の欠片が落ちてくる。そしてふいに上空を照らし出すと何やら上空から雨雲みたいな物体があった。
「なんだあれ?」
 新人巡査の言葉のよそにその雨雲はぽつぽつと歯が降り出してやがて土砂降りなって思わず新人巡査は腰を抜けて避けてしまうほどである。
「な、なんだあれ!?は?」
 その大量が降り出した歯は何やら集まり出してヒト型を形成する。そしてゆっくりと新人巡査に向かって歩み寄る。
「うわぁ!?うわああああああー」
 全長の3メートルのその巨人は彼に襲って新人巡査は意識を失った。

 「4」

「大丈夫ですか……?」
 若い女性に呼びかけに新人巡査は目を覚ますと道路の地面に寝ていた身体ごとを起き上がる。
「……あれ?あの歯は?」
 新人巡査は辺りを見渡す。
 すでに夜は更けて周りは彼女以外誰もいなくあのヒト型の歯のらしい物を見かけなかった。
「あの大丈夫ですか?……」
 思わず心配かける若い女性に新人巡査は「なんでもありません!」と姿勢をただす。
「そう。それはよかったです」
 彼女は笑った。が、
「……」
 彼は純粋に笑えなかった。彼女も歯が欠けていたからだ。
「あら?どうしたんですか?そのは?」
「は?あれ?」
 新人巡査も歯が欠けていた。
 そして彼の手元に歯が落ちる。
「あ?それ!私の歯です。よかった」
「は?」
 彼女はその歯をはめる。
 新人巡査は『は?』『は?』『は?』と何度も確認しておもわずしかめた。

 「5」

「おしまい」
「そうか。じゃあ食べるの再開しようか……?て、なるかよ!?オチは?この後の展開でオチあるんだよな?」
「は?」
 楓は首を傾げる。
「ええ!?お、おいお前らも気になるよな?」
「は?」
 桜達は思わず顰めて芋を食べるの再開した。
「おまえらー!?なんだよ!ここはものすごい気になる所だぞー!!おーい!」
「は?」
 咲夜があまりにも虫男が喚き立てるのでイラついた。
「……なんでもありません。ははは。はぁー」
 虫男は諦めて芋を食べるの再開する。
「先生もオチ着いて歯痒くなりましたか?」
 と、楓はクスクスと笑った。

 は?   完



 虫男「は?もう終わっちゃうの?」
 楓「はい。先生」
 虫男「はぁーーー!?」
 あかね「おいしい~」
    羅奈「久しぶりの出番これだけか」
 星夏「私一言も言ってないですわ」
 楓「ちょっと収拾がつかないわ」
 END
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