霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ

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野花怪異談集全100話

41話「イシヤマリサーチ株式会社[通院編]」

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 ーー「夢山大学病院」ーー

 病院内では混雑した人でたくさんいる。
 そこに通院日でやってきた八木楓は受付で済ますと、そこに顔見知りである誠と出会う。
「あら?誠さん。こんにちは」
「あー、楓さん。この間はどうもサボテンフルーツ美味しかったよ」
「ええ。こちらこそ、チーズケーキどうもありがとうございます。家族共々喜んでましたわ」
「いやいや。あ、そうそう先週あの会社で面接して見事受かったよ」
 誠は照れ臭そうに頭をかいた。
「おめでとうございます。いつから出勤ですか?」
「明日からなんだよ。今日は予約早めて通院日を調整してもらったんだよ。ところで楓さんも通院かい?」
「はい。そんなところです」
「そうかおつかれさま。僕は特に医者からは異常ないて言われたしね」
「こちらこそおつかれさまです」
「じゃあ、僕はこの辺で」
 誠は楓と別れて病院を出て去っていた。誠を去っていくの確認後、楓は待合室で番号を呼ばれるの待っていた。

 ーー「鐘技駅前10時35分」ーー


「安良田。もうすぐ駅に着くぞ」
「あ、はい……」
 僕は思わずうたた寝して、笠田さんの声で起きてしまう。
 車内の窓の景色を見ると鐘技駅の象徴である天獄門がそびえ立つ。
 車は見晴らしい駅前の道路に停車して僕と幽霊社員である早田さんも降りた。
 僕は夢山大学病院の通院日のために鐘技駅に、早田さんは知人のソフトウェア会社に立ち寄るためについてきた。
 笠田さんはそのために僕たちの送迎してもらった。
「じゃあ、帰り鐘技駅ついたら、俺のスマホに霊Rayに連絡しとくようにな」
「はい!終わったら、すぐ連絡します」
「じゃあ、また後でな」
 笠田さんは用を済ますと車は再び走り出してどこかへ行った。
 僕はふとズボンのポケットから、スマホを取り出した。この際だから溜まったメールの履歴チェックと霊Rayのチェックをしとこう。
 笠田さんが先程挙げた霊RayとはSNSのやり取りするグループチャットである。このアプリの特徴は不特定多数の交流はもちろんのこと國にいる人の通話、チャットは出来て幽霊社員である和田鍋さんや早田さん、真鍋さんの意思疎通ができるのが特徴かな。
「和田鍋さん、カップ麺こぼしたのかもったいない」
 イシヤマリサーチのグループ霊Rayチャットには"失敗した"と和田鍋さんのチャット履歴にカップ麺をこぼした画像と文面があった。みんなの反応はさまざまだけど笠田さんは責任持って片付けろよという冗談言ってた。
(あ!國に住んでるお母さんのチャット未読履歴がある)
 僕はスマホ画面をタップしてお母さんのチャットを開く。
『悠人、通院日のついでに受信の予約を取りなさい。あとたまに連絡よこしなさい』
 お母さんから以上のチャットが書かれていた。
 僕はわかったよと返信チャット載せる。
 ついでにメールの履歴を見る。ふむ、特に大した内容ではなかった。たいていはイタズラメールと広告メールに感染メールだ。感染メールはうっかり開いてしまうと体質の僕は取り憑かれて感染してしまうのでこれも開かずにまとめて消去する。消去すると女性の悲鳴が聞こえた。
 こんなもんかなと僕は一通りスマホを操作した後、電源を落としてポケットにしまうと鐘技駅に入った。

 僕は駅に入ると夢山駅行きの切符を買って駅構内に入って電車を待つ。
 すると青白い小鳥が線路内に現れる。
 どうやら電車が来たようだ。
 電車には一般車両と体質車両の2種類ある。
 当然体質の僕は後者を選ぶ。運行する車掌さんも体質か幽霊またはキ族である。
 電車が停止すると勝手に開く手動扉に乗り込む。
「と、空いてる席は……」
 僕は誰もいない優先座席に座ると電車は動き出す。
 優先座席に身体者、シルバー、妊婦、重病者、そして重体質者がある。
 重体質者とは重い感染や取り憑かれてる体質者のことをさしてる。
 早速、肩に落ち武者らしき生首に取り憑かれてる青年が来たので席を十分に空ける。ここでも感染しないようにソーシャルディスタンスも忘れてはいけない。
 ラップ口調になった車内アナウンスに『夢山駅』と案内されたので忘れずに降りる準備をした。

 ーー「夢山大学病院11時45分」ーー

 夢山駅に着くと僕はまっすぐ夢山大学病院に向かって歩いて着いた。
 夢山大学病院の距離は徒歩で10分着く距離である。
 石山県一、ニを争う大きい病院もあって中は広く設備も最先端であり、人もたくさんいる。もちろん様々な患者を対応するため、一般科、精神科、身体科、そして僕みたいな体質科や幽霊科、キ族科などもある。

(ワンワン)

 おや?どうやら、どこかで犬の鳴き声がすると思ったら、幽霊の盲導犬のようだった。中には2つ以上の科を往来するのも珍しくはない。
 僕は青白い女性の亡霊である体質科の受付で整理番号をもらう。
 お、ビンゴだ。
 3つとも666番だった。
 何かいいことありそう。
 僕は待合室に座っているとキ族の骸骨頭の女性看護師に声をかけた。
「もしかして黒田ジョージさんの家族の方ですか?」
「あら?お兄さんの事を知ってるの?」
 話するとどうやら黒田ジョージの妹さんだった。彼女の名前はメアリーさんという方で英国と國のキ族のハーフであるらしい。
 メアリーさんは日本に長い間過ごしたので英語はほとんど話さないらしい。そのかわりにキ族の言語である永語は話せるらしい。
 メアリーさんと話してるとバグにより乱れた電光案内掲示板が666番となったのでメアリーさんと別れて体質科の診察室に入った。

 診察室に入ると周囲にはつぶ像が取り囲んでいて、医者の手首には大きな数珠と頭に巻いたローソクを身につけていた。
「今日はどうかな?体調は」
 僕は正直に湿布の効力が弱く、すぐ剥がれ落ちる事を伝えた。そして服を捲り背中を見てみると細い女の人の手形がついていた。なので強い湿布を頼んでもらった。
 次に口内をチェックする。
 医者がペンライトでじっくり観察してピンセットで僕の口から取り出すと蟲がついていた。
「とってくらはい」
 もちろん気持ち悪いので全部取ってくれるようお願いした。
 後できちんとうがいするようにと念をおされた。
 診察が終わると僕は早速受信の受付する。どうやら待ち時間1時間ほどかかるようなので僕は食堂でお昼にする。
 食堂には病院関係者や一般の人も利用する。ここの食堂は夢山名物なすびを使った料理はもちろんのこと火賀野菜で有名な食材使った料理が豊富にある。僕は無性にカレーが食べたくなったのでなすびカレーを注文した。
「いただきます」
 ゴロっとした立派ななすびがあり、地元自慢の鐘技カレーのコラボが食欲をそそった。ひと口食べるとスプーンの先が止まらなかった。
「ごちそうさま」
 食事終えると、僕は受信の待合室に向かった。

 僕がゆっくり食事してる間はかなり待ち時間が減ったみたいだった。
「次の方どうぞ」
 アナウンスが呼ばれたので僕は入室する。
「よろしくね」
「よろしくお願いします」
 受信とは僕らが住む国とあちらの國との交信するためのいわゆるテレビ電話(?)みたいなものだ。受信するためには国家資格免許を持つプロの方があちらの國に住んでる人を呼び寄せる。
 受信を設置してる公共機関は少なく、少子高齢化により人手不足らしい。
 今回担当する人も専門の方でなく、この病院の看護師八木凪さんが担当することになった。僕の知り合いの楓さんの叔母にあたる人だから馴染みやすかった。
 凪さんは目を瞑り、深呼吸して目を開けると紅く染まった。どうやらお母さんが来たみたいだった。
「久しぶりね悠人」
 懐かしいお母さんの声だった。お母さんはあちらの國の仕事で魂の選択していたようだった。あといろいろ聞かれてご飯ちゃんと食べてるとか、お風呂浸かってるとか言われたのでご飯は毎日3食残さず食べてるし、毎日お風呂浸かって悪い菌や蟲を洗い流してるよと答えた。
「そろそろ時間だから、悠人またゆっくり連絡頂戴ね」
「わかったよ。お母さんまた」
 受信時間が来たので交信は終わった。受信時間はだいたい目安として10分程度である。受信を長時間やると体の負担は大きいので医者が言うには1人2時間までなら大丈夫らしい。凪さんも休む暇もなく次の方を担当するから、この仕事はハードである。
 僕は凪さんにお礼を言って診察室に出ると会計から精算して医者からの処方箋をもらって出ようとすると、病院の前に人だかりできていた。
 あっ!と僕は驚いた。よく地元のテレビに出ている元大物演歌歌手梅田花郎さんだった。
 僕はその輪に近づいて手の甲をお互い当てる。花郎さんも体質なので感染しないようにソーシャルディタンスは忘れない。サインも握手も下手すると感染するからね。
 花郎さんも通院日で体質ぶつ内科である。いつもつぶつぶとつぶやく所がたまにぶつぶつとつぶやいてぶつけてしまう。あと彼もたまに歌うとよんでしまうからかなり大変である。
 そのため一般のカウンセリングと体質のカウンセリングを2つ受けている。
 花郎さんと世間話した後別れて、僕は薬局へ向かった。
 薬局はこの病院から歩いて十字路の交差点の左側にある。
 薬局も一般と体質の2種類ある。
 僕は一般でよくたまに眠れないときあるので眠剤をもらい、体質でうがい薬と湿布をもらったら今回の用事は終わりだ。
 薬局に出ると顔見知りの楓さんと遭遇した。
「あ、こんにちは」
「安良田さん、こんにちは。今日は通院日ですか?」 
「そうだよ。楓さんも?」
「はい。今日は通院日でしたので今薬をもらって帰る所です」
「そうかお疲れ様」
「安良田さんもお憑かれ様」
 クスッと僕たちは笑った。

 ーー「鐘技駅前」ーー

「ふー。さて笠田さんに連絡しなきゃ」
 安良田がスマホで連絡するとき、遠く離れた背後から影からずっと見ている青白い女性。
 彼女はやつれていてどこか生気がない。
 そして彼女のつぶやきに安良田、安良田とつぶやいていた。


 イシヤマリサーチ株式会社[通院編]  完
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