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攻略編 2-3

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ある日のこと、私が庭を歩いていると庭師のおじさんが声をかけてきた。
「お嬢ちゃん、今日もレオン王子と一緒かい?」
そう言われるとなんだか恥ずかしくなってきたが素直に答えることにした。「はい……」と答えるとおじさんは嬉しそうに笑って言った。
「そうかい、それなら安心だ。」
「安心? どうしてですか?」
私が聞き返すとおじさんは少し寂しそうに答えた。
「いやね……王子がお嬢ちゃんを城に連れて行く時に一瞬見せた辛そうな表情が忘れられなくてな……」
(え……?)
私はハッとした。確かにあの時のレオン様はどこか悲しげな雰囲気を纏っていたからだ。そしておじさんは続けて言った。
「でも、今は幸せそうで安心したよ」
その言葉を聞いた瞬間、私は胸が熱くなるのを感じた。
(私ったらレオン様の優しさに甘えてばかりで何もしてあげていなかったわ……)
そう思うと居ても立っても居られなくなった。
「おじさん! ありがとう!!」そう言って私は走り出した。
*****
(待っててね、レオン様)
心の中で呟きながら私は彼の部屋まで急いだのだった。
部屋に入るとレオンは真剣な表情で私に尋ねてきた。「どうした?急に……」
(ああ、カッコイイ……)
そんなことを考えている場合ではないと思い直し、私は言った。
「レオン様、いつもありがとうございます」
すると彼は不思議そうな表情を浮かべた後で言った。
「急に改まってどうしたんだ?」
(そうよね……今までレオン様に何かをしてもらったことしかなかったものね……)
そう考えると申し訳なく感じてしまった。そして私は意を決して口を開いた。
「これからは私もあなたを支えたいので、私にできることがあればお力になりたいです。」そう言ってから私は彼の手を握った。すると彼は少し戸惑った様子を見せたがすぐに優しい笑みを浮かべてくれた。
彼は少し照れた様子を見せてから言った。「ありがとう……」
(ああ、本当に可愛らしい……)
その笑顔を見ると胸がキュンとなった。そして同時に愛しさがこみ上げてくるのであった。
なんとか、この幸せを維持したいとエンディングに近づくタイミングを伸ばそうとしたけれど確定ルートには逆らえなかった。
*****
(私、レオン様に出会ってから本当に幸せだわ……)そう思いながら私は今日もレオン様と一緒に過ごしたのであった。
ハルト編クリア ハッピーエンドルート攻略後 次回 レオン編最終話「永遠に結ばれる愛」
(ついにこの日が来たわ……)
今日は待ちに待ったレオン様との結婚式当日である。私はドキドキしながら鏡の前で自分の姿を確認していた。真っ白なウエディングドレスに身を包み、お化粧もバッチリ決まっている。
(うん!完璧ね!!)
そう自分に言い聞かせると私は部屋を出て廊下を歩くことにした。すると目の前に大きな扉が見えてきた。この先にレオン様が待っていると思うと緊張してきてしまう。
(でも頑張らなきゃ!!)
そう自分に言い聞かせると私は扉を開けた。するとそこには純白のタキシードを着たレオン様の姿があった。その姿を見た瞬間、私の心臓は大きく跳ね上がった。そして彼の顔を見ると自然と涙が溢れてきた。「レオン様……」
「レティ……綺麗だよ」
レオン様はそう言って微笑んでくれた。その笑顔を見るだけで胸がキュンとなった。しばらく見つめ合っていると彼は口を開いた。
「レティ……君を愛してる……」
(レオン様……私もあなたを愛しています)
心の中でそう答えると私はそっと目を閉じた。そして、唇に柔らかいものが触れるのを感じた。それはとても甘くて幸せな瞬間だった。唇が離れると私たちは見つめ合い微笑んだ後で、もう一度キスをした。
それから私たちは誓いの言葉を交わした後、神父様の前で永遠の愛を誓った。そして誓いのキスを交わすと会場からは大きな拍手が巻き起こった。私は嬉しくて涙が出そうになったがグッと堪えた。
*****
あぁ、これでレオン様の攻略が終わってしまう―――。
ハルト編クリア後、ハルトとは会うことも少なく、苦しむことは少なかった。しかし、次はどうだろうか。
他の攻略ルートへ移行しても、レオン様とはお会いする確率が非常に高い。
そう思いながらも胸が苦しくなる。本当はもっと一緒にいたかった。でも……私は自分に言い聞かせてレオン様ルートのクリアを待った。
*****
城の外では大勢の民衆が私を待ってくれていた。恐らく聖女としての私がいなくなるのを悲しんでいる人たちだろう。そう思うと申し訳ない気持ちになったが、もう決めたことだと心を鬼にすることに決めた。
(私はもう聖女じゃないわ……ただのレティよ)
そう自分に言い聞かせて私は一歩ずつ前に進み始めた。
式場に到着すると国王様が出迎えてくれた。そしてレオン様も一緒に来てくださった。「レティ、おめでとう」
「ありがとうございます」
私は笑顔で答えた。しかしレオン様の方を見ることはできなかった。すると彼は私の手を取ると言った。
「聖女レティ・アメジストよ、今までよく我が国を救ってくれたな……感謝するぞ……」
(あぁ、これでレオン様ルートのクリアだわ……)
そう思うと涙が溢れそうになるがグッと堪えた。そして国王様が私の手の甲に口づけをするのを見てから私もレオン様の手の甲に口づけをした。
「レティ・アメジストよ、これからはレオンの妻としてレオンを支えてやってくれ」
(あぁ、これでレオン様ルートのクリアね……)
そう思った直後、目の前が真っ暗になった。
*****
レオン編クリア トゥルーエンドルート攻略

次回、アベル編
*****
今回はトゥルーエンドか。
このことから、ハッピーエンドやバッドエンドの他にもいくつかルートがあると考えられる。
一体、何人を攻略してはリセットされてしまうという状況を続けなくてはいけないのかしら。
本当のエンドはどこなのかしら。
全キャラ攻略を目指すべきなのかしら。
手がかりもなく、途方に暮れるしかない。
次はアベル様か...。ゲームキャラで考えるなら一筋縄ではいかなそうだわ。
それに、何がこわいかって、次はどこのシーンでどんなことがあったか直前のシーンを一気に頭に入ってくる瞬間が体への負担になってることなのよね。
それに、前のエンドを引きずってしまっていることだわ。
早くクリアして、先に進んでしあわせになれる日はくるのかしら...。
それに、私は聖女様ではないのよ。
悪役令嬢としての振る舞いができていないからクリアされてもリセットされてしまうのかしら。それが、ゲームでいうところのバグといったところなのかしら?
でも、次回アベル様ルートだから、悪役令嬢をやるには相性が悪すぎますわ。
バッドエンドになってしまったら、その一回で人生が終わってしまうなんてこともありえそうだし...。
何にしても、ヒントがなさすぎますわ。
次回で何か掴めると良いのですが。
*****
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