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198話、ズッシリホクホク二件目
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「買ってみたはいいけど、結構ズッシリしてるわね」
「んっはぁ~っ。醤油の焦げた香ばしい匂いが、たまらんっスねぇ~」
とりあえず、まずは軽い物から食べようと決めて、辺りを散策した結果。目に付けたのは、一本丸々使用した焼きとうもろこし。
色鮮やかな粒々とした黄色に、点々と付いたおいしそうな焦げ目。全体に醤油を塗っているので、食欲を刺激する香ばしい匂いが、ゆらりと昇る湯気に含まれている。
それに、あえて切り落とさず残した茎の部分よ。たぶん、ここを掴んで食べろってことよね。うん。丈夫で握りやすく、それでいて持ちやすいわ。
「見た目のボリュームがすごいけど、これで四百円なのね」
「ねー。なんだか、めっちゃ安く感じるや」
「ちなみに……。これ、どこから食べればいいのかしら?」
右手に持った焼きとうもろこしを、裏表に返してみるも。丸みを帯びたとうもろこしが、隙間無くビッチリ埋まっている。食べやすそうな棒状をしているのに、答えが見つからないわ。
「こういうのは、どこでもいいから豪快にかぶりついちゃえばいいのさ」
「そういう、もんなの?」
「一応、綺麗に食べる方法はいくつか知ってるけどね。けど、何も気にしないでかぶりつくのが、たぶん一番美味しく食べられると思うよ」
「ふーん、なるほど」
綺麗に食べる方法は、いくつかあれど。一番おいしく食べたいなら、真正面からかぶりつけと。ハルが言っているなら、きっとそれが今の最適解なんでしょうね。
「分かったわ。とにかく、かぶりつけばいいのね」
「そうそう! 気持ちよく、ガブッといっちゃってくだせえ。んじゃ、いただきまーす」
「いただきます」
ハルに釣られて食事の挨拶を交わし、改めて焼きとうもろこしに注目する。一口目は、焦げ目が付いていない箇所からにしようかしらね。さあ、食べてみるわよ!
「んんっ! あっまぁ~い」
粒々としたとうもろこしが、弾けていく様を感じつつ、ガブリと齧りついてみれば。まず口の中に広がったのは、果実を彷彿とさせるフルーティーな甘味。
弾けていないとうもろこしを噛むと、プチッとみずみずしく破裂し、その濃厚な甘味の連鎖を爆発させていく。
しかし、それだけでは終わらない。爆発の連鎖を縫い、軽く焦げて甘じょっぱく感じる醤油の香ばしさが、ふわりと湧いてきた。
この甘じょっぱさが、とうもろこしのフルーティーな甘さに深いコクを与え、食欲をグンッと加速させていく。
更に、焦げ目が付いた部分よ。とうもろこしの甘さよりも、醤油の尖った濃さが強く出ているから、一本で二度も三度も違う味が楽しめる。
いいわね、焼きとうもろこし。毎回微妙に違った味を覗かせてくるから、二口、三口とどんどん食べたくなっちゃうわ。
「う~ん、おいしいっ。醤油が濃い部分に当たると、ちょっと嬉しくなるわね」
「この、祭りでしか味わえない味よ! やっぱ四百円は、かなりリーズナブルだなぁ。美味いっ!」
清々しい唸り声が上げたハルが、ニコニコ顔で焼きとうもろこしにかぶりついていく。祭りでしか味わえない味、ねぇ。
確かに、今食べている場所は屋外。周りは、軽快な太鼓や笛の音、胸躍る賑やかな喧騒が混ざり合っている。
その条件下で食べているからこそ、この味に辿り着くのかしら? 味の再現自体は、家のコンロで出来そうだけれども。
「ねえ、ハル。この焼きとうもろこしって、家で作れないかしら?」
「んっ、作れるっちゃ作れるけど。フライパンに収まり切らないから、半分に切らないといけなくなっちゃうね」
「あ、確かに」
そうだ。完全に見落としていた。焼きとうもろこしの直径は、茎の部分を合わせると、おおよそ四十cm以上になる。
もうその時点で、一本丸ごと使った焼きとうもろこしを作るのは、不可能になってしまう。それだと、少し味気無く感じちゃうわね。
「しかもさ、出店は網を使った炭火焼きだったじゃん? あの炭火焼きだからこそ、出せる香ばしさと味があるんだよね」
「ああ~、なるほどねぇ……」
そこも盲点だった。調理法や焼き方が変わると、風味にも差が出てくる。炭火焼きで作るなら、七輪かバーベキューセットを用意しないといけないかも。
つまり、手軽に食べているこの味や値段は、こういった特別な場所だからこそ味わえるのね。ならば───。
「つまりよ? ハル。お祭りでしか食べられない物が、ここでは売ってるのよね?」
「うん、そうなるかな」
「だったら初日は、ここでしか食べられない物を集中して狙っていかない?」
そう。この夏祭り会場では、自分で作って食べられる物や、スーパーとか商店街でも見掛けない食べ物が、沢山ある。
そして、夏祭りは三日間限定で行われる。その中で、ここでしか食べられない物を食べ損ねたら、次に食べられる機会は、来年になってしまう。
それは、あまりにも勿体ない。ここでしか買えない物があるのであれば、まずはそれを優先して食べるべきよ!
「ああ~、いいね。じゃあ次は、そういう物を選んで食べよっか」
「ええ、そうしましょ」
よし、ハルも私の提案に乗ってくれた。となると、粉物系は後回しにして。優先して食べるなら、わたあめ、りんご飴、チョコバナナ辺りになるかしらね。
どの出店も、さっきの散策で場所を大体把握している。そうとなれば、善は急げよ。花火大会が始まる前に、いっぱい食べてやるんだから!
「んっはぁ~っ。醤油の焦げた香ばしい匂いが、たまらんっスねぇ~」
とりあえず、まずは軽い物から食べようと決めて、辺りを散策した結果。目に付けたのは、一本丸々使用した焼きとうもろこし。
色鮮やかな粒々とした黄色に、点々と付いたおいしそうな焦げ目。全体に醤油を塗っているので、食欲を刺激する香ばしい匂いが、ゆらりと昇る湯気に含まれている。
それに、あえて切り落とさず残した茎の部分よ。たぶん、ここを掴んで食べろってことよね。うん。丈夫で握りやすく、それでいて持ちやすいわ。
「見た目のボリュームがすごいけど、これで四百円なのね」
「ねー。なんだか、めっちゃ安く感じるや」
「ちなみに……。これ、どこから食べればいいのかしら?」
右手に持った焼きとうもろこしを、裏表に返してみるも。丸みを帯びたとうもろこしが、隙間無くビッチリ埋まっている。食べやすそうな棒状をしているのに、答えが見つからないわ。
「こういうのは、どこでもいいから豪快にかぶりついちゃえばいいのさ」
「そういう、もんなの?」
「一応、綺麗に食べる方法はいくつか知ってるけどね。けど、何も気にしないでかぶりつくのが、たぶん一番美味しく食べられると思うよ」
「ふーん、なるほど」
綺麗に食べる方法は、いくつかあれど。一番おいしく食べたいなら、真正面からかぶりつけと。ハルが言っているなら、きっとそれが今の最適解なんでしょうね。
「分かったわ。とにかく、かぶりつけばいいのね」
「そうそう! 気持ちよく、ガブッといっちゃってくだせえ。んじゃ、いただきまーす」
「いただきます」
ハルに釣られて食事の挨拶を交わし、改めて焼きとうもろこしに注目する。一口目は、焦げ目が付いていない箇所からにしようかしらね。さあ、食べてみるわよ!
「んんっ! あっまぁ~い」
粒々としたとうもろこしが、弾けていく様を感じつつ、ガブリと齧りついてみれば。まず口の中に広がったのは、果実を彷彿とさせるフルーティーな甘味。
弾けていないとうもろこしを噛むと、プチッとみずみずしく破裂し、その濃厚な甘味の連鎖を爆発させていく。
しかし、それだけでは終わらない。爆発の連鎖を縫い、軽く焦げて甘じょっぱく感じる醤油の香ばしさが、ふわりと湧いてきた。
この甘じょっぱさが、とうもろこしのフルーティーな甘さに深いコクを与え、食欲をグンッと加速させていく。
更に、焦げ目が付いた部分よ。とうもろこしの甘さよりも、醤油の尖った濃さが強く出ているから、一本で二度も三度も違う味が楽しめる。
いいわね、焼きとうもろこし。毎回微妙に違った味を覗かせてくるから、二口、三口とどんどん食べたくなっちゃうわ。
「う~ん、おいしいっ。醤油が濃い部分に当たると、ちょっと嬉しくなるわね」
「この、祭りでしか味わえない味よ! やっぱ四百円は、かなりリーズナブルだなぁ。美味いっ!」
清々しい唸り声が上げたハルが、ニコニコ顔で焼きとうもろこしにかぶりついていく。祭りでしか味わえない味、ねぇ。
確かに、今食べている場所は屋外。周りは、軽快な太鼓や笛の音、胸躍る賑やかな喧騒が混ざり合っている。
その条件下で食べているからこそ、この味に辿り着くのかしら? 味の再現自体は、家のコンロで出来そうだけれども。
「ねえ、ハル。この焼きとうもろこしって、家で作れないかしら?」
「んっ、作れるっちゃ作れるけど。フライパンに収まり切らないから、半分に切らないといけなくなっちゃうね」
「あ、確かに」
そうだ。完全に見落としていた。焼きとうもろこしの直径は、茎の部分を合わせると、おおよそ四十cm以上になる。
もうその時点で、一本丸ごと使った焼きとうもろこしを作るのは、不可能になってしまう。それだと、少し味気無く感じちゃうわね。
「しかもさ、出店は網を使った炭火焼きだったじゃん? あの炭火焼きだからこそ、出せる香ばしさと味があるんだよね」
「ああ~、なるほどねぇ……」
そこも盲点だった。調理法や焼き方が変わると、風味にも差が出てくる。炭火焼きで作るなら、七輪かバーベキューセットを用意しないといけないかも。
つまり、手軽に食べているこの味や値段は、こういった特別な場所だからこそ味わえるのね。ならば───。
「つまりよ? ハル。お祭りでしか食べられない物が、ここでは売ってるのよね?」
「うん、そうなるかな」
「だったら初日は、ここでしか食べられない物を集中して狙っていかない?」
そう。この夏祭り会場では、自分で作って食べられる物や、スーパーとか商店街でも見掛けない食べ物が、沢山ある。
そして、夏祭りは三日間限定で行われる。その中で、ここでしか食べられない物を食べ損ねたら、次に食べられる機会は、来年になってしまう。
それは、あまりにも勿体ない。ここでしか買えない物があるのであれば、まずはそれを優先して食べるべきよ!
「ああ~、いいね。じゃあ次は、そういう物を選んで食べよっか」
「ええ、そうしましょ」
よし、ハルも私の提案に乗ってくれた。となると、粉物系は後回しにして。優先して食べるなら、わたあめ、りんご飴、チョコバナナ辺りになるかしらね。
どの出店も、さっきの散策で場所を大体把握している。そうとなれば、善は急げよ。花火大会が始まる前に、いっぱい食べてやるんだから!
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