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200話、パリパリシャクシャク三件目
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「一応、小さい方を選んでみたけど……。これ、本当にリンゴよね? 私の手の平より小さいわ」
三件目に選んだ食べ物は、祭りの定番と謳われたりんご飴。通常サイズの大きい物と、直径約3cm前後と一回り小さく、可愛らしい見た目をした物があり。
お腹をなるべく満たさない立ち回りをしたいので、小さなりんご飴を買ってみたものの。あまりの小ささに、頭がこのリンゴをリンゴだと認識してくれていない。
「私も気になったから、スマホで調べてみたんだけどさ。どうやら、姫りんごっていう品種らしいよ」
「へぇ~、姫りんご。名前も可愛らしいわね」
「だね。でも、普通のリンゴに比べると、皮が渋くて酸味が強いらしいよ」
「なら、甘い飴との相性は良さそうね」
更に、食べやすそうなサイズ感よ。一個三百円だったから、食べ終わって物足りないと感じ、なおかつお腹に余裕があったら、もう一個買ってしまおう。
「あと、ハル? これも、焼きとうもろこしみたいにかぶりつけばいいのかしら?」
「……かなぁ? 実は、私も初めて食べるから、いまいち分かってないんだよね」
「あら、そうなのね」
どうやらハルも、りんご飴の食べ方を模索しているらしく。悩ましそうなジト目で、りんご飴を様々な角度から眺めている。
「とりあえず、食べてみよっか」
「そうね。じゃあ、いただきます」
「いっただっきまーす」
控えめな食事の挨拶を交わし、りんご飴を改めて見てみた。元々は茎があったであろうへこんだ部分に、串が深々と刺さっている。
その反対側は、きっと飴をコーディングする時、置いていたんでしょうね。透明感のある濃い琥珀色をした飴が、平べったい円形状になって固まっているわ。
だからこそ、置いたら安定感が抜群に高そうなのよ。今は屋外に居るから試せないけど、お皿とか持っていたら、間違いなく置いていたでしょうね。さてと。ハルも初めて食べるりんご飴、私も食べてみよっと。
「うん。ちょっと固いけど、色んな食感があって面白いわね」
思い切って真正面から挑んだ、一口目。飴の層を『パリッ』と軽快な音を立てながら破り、更に固いみずみずしいリンゴを齧ってみれば。
まず先行したのは、中に閉じ込められていた爽やかに華やぐ芳香。馴染みある匂いだから、ここでようやく、姫りんごをりんごだと頭が理解してくれた。
味の方は、普通のリンゴに比べると、全部一段階ずつ上がっている感じかしら? 透明感のある濃い甘さは、より凝縮されており。
甘さを引き立てる酸味は、そこまで尖っていないので、主張はあまり前に出てこない。あくまでほどよく、過剰な甘さ和らげる程度に落ち着いている。
渋みだって、そう。定まってきた風味に、新たな刺激をプラスするダークホースって所ね。絶妙なタイミングで現れる僅かな刺激が、りんご飴に対して面白さを生んでいるわ。
そして何よりも、噛む度に変わる食感が楽しい。薄くも固い、飴のカリカリ感。より固く感じるも、シャリシャリとした食感がクセになるリンゴ。
一定じゃなく、ランダムで食感が様変わりしていくから、りんご飴自体は小さいのに、一口を長時間ゆっくり楽しめるわ。
「いいわね、りんご飴。おいしいし食感が楽しいから、なんだか得した気分になるわ」
「ふふっ」
「ん?」
心躍る喧騒に紛れ、どこか弾んだハルの笑い声が聞こえたので、三日月状まで減ったりんご飴を見ていた視界を、ハルの方へ移す。
不思議に思った視線の先。りんご飴ではなく、私に顔を合わせていて、嬉しそうに微笑んでいるハルが映った。
「なに? 私の顔に、なんか付いてる?」
「ああ、ごめん。いやさ? メリーさんって、普段は帽子をかぶってるじゃん? でも今日は、その帽子をかぶってないから、楽しそうにしてる君の顔が、よーく見えるなーって思ってさ」
私の顔を見て微笑んでいた理由を明かしたハルが、ワンパク気味にはにかんだ。そう言われると、そうかもしれないわね。
帽子をかぶっていると、私が少しでも顔を地面に向けてしまうと、広いつばが邪魔をして、私の顔を遮ってしまう。
けど今日は、髪型をポニーテールにしてもらっているし、帽子をかぶっていないから、視界は良好。ハルの顔だって、すごく見やすい。
しかし、いきなり小恥ずかしいことを言ってきたわね。お陰で、りんご飴の味が少し甘酸っぱくなっちゃったじゃない。同じ味を共有したいから、軽く仕返ししてやろっと。
「私、楽しそうな顔をしてるように見えるの?」
「うん、そうだね。りんご飴を食べてる時のメリーさん、ずっとニコニコしてたよ」
「そう。なら、ちょっと間違ってるわ」
「え? マジで?」
「ええ。楽しんでるようじゃなくて、ものすごく楽しんでるのよ」
ひねくれた回答を返すと、ハルの目が大きく見開き。そのまま数秒硬直した後、参ったと言わんばかりの苦笑いに変わった。
「なるほどね。よかった、メリーさんが楽しんでくれて」
追い討ちをかけるように、『あんたが傍に居るからこそ、すごく楽しめてるのよ』とか言ってあげたかったけれども。りんご飴の酸味が余計に強くなりそうだから、後でに取っておこう。
今は、この甘酸っぱさがちょうどいい。私とハルの思い出が増えていくような、夢心地気分になれる甘酸っぱさがね。
三件目に選んだ食べ物は、祭りの定番と謳われたりんご飴。通常サイズの大きい物と、直径約3cm前後と一回り小さく、可愛らしい見た目をした物があり。
お腹をなるべく満たさない立ち回りをしたいので、小さなりんご飴を買ってみたものの。あまりの小ささに、頭がこのリンゴをリンゴだと認識してくれていない。
「私も気になったから、スマホで調べてみたんだけどさ。どうやら、姫りんごっていう品種らしいよ」
「へぇ~、姫りんご。名前も可愛らしいわね」
「だね。でも、普通のリンゴに比べると、皮が渋くて酸味が強いらしいよ」
「なら、甘い飴との相性は良さそうね」
更に、食べやすそうなサイズ感よ。一個三百円だったから、食べ終わって物足りないと感じ、なおかつお腹に余裕があったら、もう一個買ってしまおう。
「あと、ハル? これも、焼きとうもろこしみたいにかぶりつけばいいのかしら?」
「……かなぁ? 実は、私も初めて食べるから、いまいち分かってないんだよね」
「あら、そうなのね」
どうやらハルも、りんご飴の食べ方を模索しているらしく。悩ましそうなジト目で、りんご飴を様々な角度から眺めている。
「とりあえず、食べてみよっか」
「そうね。じゃあ、いただきます」
「いっただっきまーす」
控えめな食事の挨拶を交わし、りんご飴を改めて見てみた。元々は茎があったであろうへこんだ部分に、串が深々と刺さっている。
その反対側は、きっと飴をコーディングする時、置いていたんでしょうね。透明感のある濃い琥珀色をした飴が、平べったい円形状になって固まっているわ。
だからこそ、置いたら安定感が抜群に高そうなのよ。今は屋外に居るから試せないけど、お皿とか持っていたら、間違いなく置いていたでしょうね。さてと。ハルも初めて食べるりんご飴、私も食べてみよっと。
「うん。ちょっと固いけど、色んな食感があって面白いわね」
思い切って真正面から挑んだ、一口目。飴の層を『パリッ』と軽快な音を立てながら破り、更に固いみずみずしいリンゴを齧ってみれば。
まず先行したのは、中に閉じ込められていた爽やかに華やぐ芳香。馴染みある匂いだから、ここでようやく、姫りんごをりんごだと頭が理解してくれた。
味の方は、普通のリンゴに比べると、全部一段階ずつ上がっている感じかしら? 透明感のある濃い甘さは、より凝縮されており。
甘さを引き立てる酸味は、そこまで尖っていないので、主張はあまり前に出てこない。あくまでほどよく、過剰な甘さ和らげる程度に落ち着いている。
渋みだって、そう。定まってきた風味に、新たな刺激をプラスするダークホースって所ね。絶妙なタイミングで現れる僅かな刺激が、りんご飴に対して面白さを生んでいるわ。
そして何よりも、噛む度に変わる食感が楽しい。薄くも固い、飴のカリカリ感。より固く感じるも、シャリシャリとした食感がクセになるリンゴ。
一定じゃなく、ランダムで食感が様変わりしていくから、りんご飴自体は小さいのに、一口を長時間ゆっくり楽しめるわ。
「いいわね、りんご飴。おいしいし食感が楽しいから、なんだか得した気分になるわ」
「ふふっ」
「ん?」
心躍る喧騒に紛れ、どこか弾んだハルの笑い声が聞こえたので、三日月状まで減ったりんご飴を見ていた視界を、ハルの方へ移す。
不思議に思った視線の先。りんご飴ではなく、私に顔を合わせていて、嬉しそうに微笑んでいるハルが映った。
「なに? 私の顔に、なんか付いてる?」
「ああ、ごめん。いやさ? メリーさんって、普段は帽子をかぶってるじゃん? でも今日は、その帽子をかぶってないから、楽しそうにしてる君の顔が、よーく見えるなーって思ってさ」
私の顔を見て微笑んでいた理由を明かしたハルが、ワンパク気味にはにかんだ。そう言われると、そうかもしれないわね。
帽子をかぶっていると、私が少しでも顔を地面に向けてしまうと、広いつばが邪魔をして、私の顔を遮ってしまう。
けど今日は、髪型をポニーテールにしてもらっているし、帽子をかぶっていないから、視界は良好。ハルの顔だって、すごく見やすい。
しかし、いきなり小恥ずかしいことを言ってきたわね。お陰で、りんご飴の味が少し甘酸っぱくなっちゃったじゃない。同じ味を共有したいから、軽く仕返ししてやろっと。
「私、楽しそうな顔をしてるように見えるの?」
「うん、そうだね。りんご飴を食べてる時のメリーさん、ずっとニコニコしてたよ」
「そう。なら、ちょっと間違ってるわ」
「え? マジで?」
「ええ。楽しんでるようじゃなくて、ものすごく楽しんでるのよ」
ひねくれた回答を返すと、ハルの目が大きく見開き。そのまま数秒硬直した後、参ったと言わんばかりの苦笑いに変わった。
「なるほどね。よかった、メリーさんが楽しんでくれて」
追い討ちをかけるように、『あんたが傍に居るからこそ、すごく楽しめてるのよ』とか言ってあげたかったけれども。りんご飴の酸味が余計に強くなりそうだから、後でに取っておこう。
今は、この甘酸っぱさがちょうどいい。私とハルの思い出が増えていくような、夢心地気分になれる甘酸っぱさがね。
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