ぶっきらぼう魔女は育てたい

桜乱捕り

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325話、誠意を持った小手調べ

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「まずは小手調べだ。正面切って語り合おうぜ!」

 開戦と同時、死角から私に攻撃を仕掛けてくるかと思いきや。仁王立ちのままでいたフラウ様が、真正面からの殴り合いを所望してきた。
 普通の戦闘なら、乗らずに無視をする。さっさと高高度まで飛び立ち、私の掌握領域を広げていきたいからな。しかし、未知なる相手の力量を、測ってみたいという気持ちも少々ある。
 そして既に、私の周りの空間は掌握済みだ。たとえ、あの所望が罠だとして、私の死角に回ってきたとしても、対処は可能。土、火、風魔法を織り交ぜれば、私との距離をなんとか離せるだろう。

「では、お言葉に甘えまして」

 フラウ様の所望に乗った私は、右手に火の杖を掴み、杖先をフラウ様へかざした。

「そうそう、そうこなくっちゃな! 小手調べが終わったら、好きに動いていいぞ。じゃあ行くぜ」

 小手調べが開戦の合図だと教えてくれたフラウ様も、私に開いた右手を見せてきた。後先の流れについても、ちゃんと言ってくれるとは。
 しっかり伝えてくれるのは、正直ありがたい。気が引き締まる安心感を持てるし、相手を思いやる配慮や気持ちも見て取れる。フラウ様、根は絶対に優しいな。

『吹雪く夜空を凍結させるは、怪狼のたけり! 儚き熱を携え抗う者を、銷魂しょうこんの極点に誘いたまえェッ! 『古怪狼の凍咆!』』

『魂をも焼き尽くすは、不老不死の爆ぜる颶風ぐふう! 生死の概念から解き放たれし者に、思考をも許されない永遠の眠りを! 『不死鳥の息吹』!』

 昂り始めた戦闘意欲を詠唱に乗せ、視界全てを覆い尽くす灼熱の大熱線が、仄暗い純白を鮮烈な緋色に塗り潰した瞬間。
 私が放った『不死鳥の息吹』と、フラウ様が放った『古怪狼の凍咆』が衝突したようで。『不死鳥の息吹』を貫通してきた厚い衝撃と風圧が、私の体を半歩ほど後ろへ引きずらせた。
 感覚的に、力はほぼ互角。フラウ様が全力を出しているかは分からないけど、魔法の威力は拮抗している。

 小手調べということなので、私は全力を出していない。せいぜい五、六割前後。約半分の力で『不死鳥の息吹』を使用した。
 かつ私は、イフリート様やベルラザさんと契約を交わし、火属性魔法の効果上昇及び、威力が増加している。これは、まあまあ有益で最悪な情報を得られた。
 事前に、イフリート様達と契約を交わしていなければ、この小手調べで私は力負けしていただろう。それも、かなりの差で。

 大精霊と単独で勝負を挑んだのは、ウンディーネ以来。だが、ウンディーネは全力をまったく出しておらず、私を捕らえることに専念していた。
 けど、今回は違う。全身全霊で戦いに挑んできて、私を倒すどころか、息の根を止めることも辞さない相手だ。自身の力量のみでフラウ様に挑んでいたら、私は話にならなかったかもしれない。

「……さて、弱気になるのは終わりだ」

 だからこそ、イフリート様達から授かったこの力、余すことなく使わせてもらう。豪雪小暗地帯である『氷の瞑想場』に、灼熱の太陽を贈ってやろうじゃないか。

『良い熱さの狼煙だ、アカシック! んじゃま、小手調べは終わりにしよう。五秒後、始めようぜ』

 力加減の起点を、約五割に定め。初めて訪れた『氷の瞑想場』へ、贈り物を渡そうと決めた矢先、頭の中からフラウ様の『伝心』が響いてきた。
 奇襲を仕掛けて来ず、五秒の猶予を設けてくれる辺り、指導者としての立派な気配りがうかがえる。ならば、その誠意だけには、私も応えてやらないとな。

「五、四、三、二……」

 『不死鳥の息吹』から感じる手応えは、依然として衰えていない。一秒後、相手は私の命を奪う敵になる。……さあ、フラウ。始めよう。

「一、ゼロ!」
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