ぶっきらぼう魔女は育てたい

桜乱捕り

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207話、アルビスの逆鱗

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「でよ、アルビス。俺が『闇産やみうぶ谷』まで続く道を作ってやろうか?」

『いえ。プネラいわく、アカシック・ファーストレディの治療に十日間以上掛かるらしいので、現地まで直接飛んで行きます。お取り計らいに応えられず、誠に申し訳ございません』

「いや、それならいいんだ。サニーの世話は、ヴェルイン達や俺達に任せておけ。もう少ししたら、俺とウンディ姉もアカシックの家に行くからよ」

『承知致しました。ノームだけは、我々の家に近づけぬようお願い致します』

 アルビスの奴。やっぱりノーム爺さんを、相当警戒していやがる。まあ、無理もねえか。今回の騒動を招いたのは、他でもねえノーム爺さんなんだからな。

「それについては安心してくれ。ノーム爺さんは、当分の間出禁にしといた。反省の色が無かったら、アカシックの家には二度と近づけさせねえ」

『反省の色がありましても、後者の方向でお願いしたく存じます』

 いや、警戒どころの騒ぎじゃねえ。声量や表情だけだと、アルビスの感情がいまいち読み取れねえが。たぶん、めちゃくちゃ怒ってやがる。

「アカシックの意見を聞いてから、判断してもいいか?」

『それでは、サニーの意見も尊重してあげて下さい。アカシック・ファーストレディ、サニーのどちらかが嫌だと申しましたら、後者の方向でお願い致します。ちなみに余は、今すぐにでもノームを滅したいと思っております』

「わ、分かった。後でサニーにも聞いとくから、とりあえず一旦落ち着いてくれ」

 駄目だ、今回ばかりは収拾がつかねえ。アカシックとウンディ姉の騒動に片が付いたっていうのに、今度はアルビスとノーム爺さんかよ。しかも、決して埋まらねえ溝まで出来ちまってる。
 事の次第によっちゃ、俺とウンディ姉にもとばっちりが来るだろう。二回目の治療内容を明かしたってのに、俺との契約を解除されなかっただけでも、奇跡に近いぜ。

『それと最後に。余は決して、二回目の治療には手を貸しませんので、そのおつもりで。闇産ぶ谷へ行き、アカシック・ファーストレディの一回目の治療が完了次第、あいつと共に帰宅致します』

「それでいい。シャドウにぃには、俺からそう伝えておく」

『宜しくお願い致します。では、失礼致します』

 高純度な殺意が乗ったアルビスの言葉を認めてから、長椅子の背もたれに体を預け、ため息を吐きながら天井を仰いだ。アルビスの逆鱗に触れてみたけど、気圧される物があったな。

「ああ、最悪な気分だ。今回ばかりは、流石に軌道修正出来ねえぞ」

「アルビスさん。とても怒っていましたね……」

 俺の隣に座っていたウンディ姉が、しおらしいか細い声で言う。
 怒り出したアルビスが、プネラを正論で叩き潰そうとした時。ウンディ姉が慌てて仲介に入ろうとしたから、俺が先に割って入ったんだよな。

「当たり前だろ。あんなもん聞かされて、怒らねえ方がおかしいぜ。なあ、『シャドウ兄』。アカシックが掛かった呪いの解呪方法は、本当にその二つだけしか無えのか?」

『君は、何度も問い質せば解呪方法が増えると思っているのかい?』

「それで増えるんだったら、何千何万回でも問い質してやるぜ」

『ならば僕にではなく、壁や木に向かって問い質し続けていておくれ。僕はね、こう見えても忙しいんだ』

 悔しいけど、率先してアカシックとプネラの護衛に付いてくれてるから、これ以上強い文句が言えねえ。アカシックとの契約は、約束通りしてくれたみたいだな。

『それに結局、アルビス君にまで断られてしまったじゃないか。だから僕は言ったんだ。アカシック君の治療が完了したら、アルビス君、サニー君、クロフライム君、ヴェルイン君、カッシェ君、ファート君をここへ強制転移してしまえばいいとね。これでは、二回目の治療がままならないじゃないか。どうしてくれるんだい?』

「どうもこうもねえよ。あんな地獄を煮詰めた様な解呪方法を聞いて、『はい分かりました』って快諾する奴なんざ居る訳ねえだろ。なんで解呪条件が二つもあんだよ、チクショウ」

『『女王の包帯』を安易に使用した、アカシック君に文句を言うんだね。しかし、君達の話を聞く限り、ノーム君に言うべきかな?』

「しかねえだろ。しかしまあ、あの包帯がそんなやべえ代物だったとはなぁ」

 通称『女王の包帯』、別名『永呪の女王帯』。効果自体は、アカシックが言った通りで間違いない。複合させた効果の束縛、またはその効果を永続化。
 が、問題は別にある。シャドウ兄の説明によると、『永呪の女王帯』は呪術師が喉から手が出るほど欲しがってる特級呪物らしい。
 なんでも魅力的なのが、効果の永続化。ただの毒に付与すれば、解毒不可能の劇毒になり。眠りの効果がある煙とかに付与すれば、相手は生きたまま永眠するとの事。
 それで過去、アカシックは微量の『不死鳥のくちばし』と『永呪の女王帯』を掛け合わせて、完全な不老化を手に入れたんだが……。

『そんな一言で片付けられる代物ではないよ。もし僕とプネラが動かなかったら、アカシック君は魔法が使えない子供の姿のまま、未来永劫生きていく事になっていたのだからね』

「そうなんだよなぁ……」

 今回は、思う存分『不死鳥のくちばし』を使っちまったせいで、効果が過剰に働き、アカシックの肉体が五歳児まで若返っちまった。
 そして、精神面は肉体に引っ張られちまう。その姿で三十日間も過ごしてたら、アカシックは精神面まで立派な五歳児になってただろうな。
 まあ、そっちは今、プネラが一回目の治療をアカシックに施してる。体内を循環してる『不死鳥のくちばし』を全部取り除けば、大人の姿に戻れるはず。
 一番の難題は『永呪の女王帯』により、呪われた効果の解呪方法。つまり、二回目の治療の方だ。

『さてと。芽吹いたばかりの同胞が、アカシック君の肉体を求めてざわめき出してきたから、僕はそちらの処理に戻るよ。二回目の治療を、楽しみにしていながらね』

「あ? なんか当てがあるのか?」

『ああ、あるよぉ。成功確率は、かなり低くなってしまったけれどもねぇ。クフフフフ……』

「おい、シャドウ兄? 一体、何を考えてんだ?」

 嫌な予感が頭に過って、すぐに返答したものの。いくら待てども、シャドウ兄からの『伝心《でんしん》』は無し。
 当本人の姿を覗いてみると、生まれたばかりの幼い闇の精霊群を、真の闇に葬り去ってる最中だった。……頼むぜ? シャドウ兄。変な気だけは、起こさないでくれよ?
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