ぶっきらぼう魔女は育てたい

桜乱捕り

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208話、打ち解けていく関係

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 全ての経緯を明かして下さったシルフ様に、余が一方的に話を切った後。
 とりあえず、気が気でないサニーを落ち着かせる為に、アカシック・ファーストレディを攫った人物は、実はあいつの仲間の一人で、あいつを適した場所で治療を行うべく、突発的に連れて行ったと説明した。
 一応、それで納得自体はしてくれたものの。治療期間を教え、余が迎えに行くと話した途端、『じゃあ、私も連れてって!』と始まり、余に詰め寄ってきた。
 これについては、余も仕方がないと思っている。なんせ、アカシック・ファーストレディの治療期間は、おおよそ十日以上も掛かるからな。しかも、一回目の治療だけでだ。

 一回目の治療は、主にアカシック・ファーストレディの体内を巡る、『不死鳥のくちばし』の除去。
 どうやら、アカシック・ファーストレディが子供の姿になってしまった原因は、調合薬の効果が過剰に働いたせいらしい。
 なので、調合薬に使用された『不死鳥のくちばし』を体内から全て取り除けば、アカシック・ファーストレディは元の姿に戻るとの事。

 それだけだったら、余も話を穏便に済ませられていただろう。が、二回目の治療内容を聞いた時は、流石の余も、ノームに明確な殺意が芽生えた。叶うならば、今すぐにでも滅してやりたい。
 しかし、シルフ様いわく、アカシック・ファーストレディは過去、『女王の包帯』を使用した効果の薄い調合薬を飲んでいるので、真っ当な体を取り戻す為には、どちらにせよ、最低でも二回目の治療の片方を行わなければなかったと言われた。

 そして、ノームがアカシック・ファーストレディに例の調合薬を飲ませた事により、両方行わなければならない事態へと発展した訳である。余は、それが許せないんだ。
 もし、片方だけで済ませられていたのであれば、それは過去のアカシック・ファーストレディが招いた結果になるので、ならば仕方ないと片を付けられていた。
 が、両方やらなければならないとなると、話はまったくの別。今回の騒動により、二回目の治療は両方共行わなければ、アカシック・ファーストレディに掛かった呪いを解呪出来なくなってしまった。
 だからこそ、余はノームに殺意が芽生えたんだ。仮に、二回目の治療が全て無事に成功したとしよう。問題なのは、治療を終えたその後だ。
 下手すれば、元の生活なぞ、二度と出来なくなってしまう。そんな状態に陥り続けていたら、生きていても死んでいても変わりはない。いっそ、楽にしてやった方が、あいつの為になるだろう。

 ……さて。半泣きで余に訴えてきているサニーの説得は、最早不可能だとして。
 ウィザレナ、レナ、ヴェルイン、カッシェ、ファート。後から来たウンディーネ様とシルフ様は、余とアカシック・ファーストレディがここへ帰って来るまでの間、サニーの護衛を約束してくれて。
 更に、サニーの予定がいつ空いているのか、確認しに来たゴブリンにも事情を説明した所。二十四時間態勢でサニーの護衛及び、朝昼晩の料理を振る舞ってくれる事になった。
 なので日中、陸はゴブリン隊を筆頭に、後から加わったゴーレム群とヴェルイン一味が。空はウィザレナ、レナが護衛に付き。夜間は、陸は同じくゴブリン隊、ゴーレム群。空はファートが護衛を担当という流れに収り。
 話が纏まったその日に、余とプネラは、泣きじゃくるサニーを狭まった視界で見送りつつ、『闇産ぶ谷』を目指して出発した。













「海上は、このまま直進すればいいんだな?」

『うん、このままでいいよ。進行方向がズレたら、私が教えてあげるね』

「分かった」

 沼地帯を出発して、早三、四時間。既に夜は更けていて、上は月光が眩しい満点の星空。下は、波が穏やかな事もあり、夜空を満遍なく映している大海原。
 簡単に言ってしまえば、上も下も景色は一緒。ここから約十日間、代わり映えを許さぬ景観の中。一度も休む事無く、まずは雪原地帯を目指して飛んで行く。
 しかし、雪原地帯も中継地点に過ぎない。着いたら二時間前後休憩を挟み、雪山地帯を抜け、何もかもが未知数な『常闇地帯』を突っ切り、最終目標地の『闇産ぶ谷』へ到着する。
 少なく見積もっても、片道約十二日間の長旅になるだろう。往復をすれば、約二十四日間。もし、長旅の経験が無いサニーを連れて来ていたら、耐えがたい酷な旅になっていただろうな。

『……あの、アルビスお兄ちゃん』

「なんだ?」

『えと、その……。ご、ごめんなさい!』

 鋭い風切り音の合間に割って入った、プネラの申し訳なさそうな謝罪に、余の視界がプネラ入りの瓶へと向く。

「謝らなくていい。事の経緯は、全てシルフ様から聞いた。貴様はただ、アカシック・ファーストレディを本気で治してあげたくて、好意で動いてくれただけなんだろう?」

『うん、そうだけど……』

 この、何かを言いたそうな歯切れの悪い溜めよ。悪い癖も、アカシック・ファーストレディそっくりだ。
 シルフ様の説明通り、幼少期のアカシック・ファーストレディの姿を借り続けていたせいで、精神面まで完全にあいつと化している。
 つまり今、五歳児のアカシック・ファーストレディと会話をしている事になる訳だ。互いに何も知らされていない状態でいたが故に、一度は怒りでねじ伏せようとしてしまったが……。
 振り返ってみると、なんとも大人げない行為だった。アカシック・ファーストレディの姿を借りている闇の精霊とはいえ、精神面は幼い子供だ。恐怖を覚えて泣いてしまうのも、無理はない。

「あの状況では、何が起こっても後の祭りだ。瞬時に理解しろという方が難しい」

『で、でもぉ……』

「ふふっ。あいつは子供の時から、何も変わってない様だな」

『え? なんで?』

「あいつには悪い癖があるんだ。自分が納得してないと、『でも』とか『しかし』と言い、抵抗を試みようとする節がある。それを貴様もやってるから、つい思わず笑ってしまった」

『あっ……』

 あいつめ、子供の頃からそうだったのか。『ピース』殿や『レム』殿も、相当手を焼いていただろう。

『ううっ……。アカシックお姉ちゃんに悪い事をしちゃった……』

「いや、別に悪い事じゃない。昔のあいつはこうだったのかと、思いを馳せる事が出来るし。今みたいに笑う事が出来る」

『そう、なの?』

「ああ。冷静に思うと、この時間はかなり貴重だ。昔のあいつと会話が出来るなんて、本来なら不可能。なので、ちょうど暇を持て余しているから、楽しく語り合おうじゃないか」

 アカシック・ファーストレディとプネラは、既に顔見知りの関係らしいが。余とプネラは、互いに何も知らない。
 そして、時間は十分ある。雪原地帯に着くまでの間、大いに語り明かし、プネラとの関係を築いていかなければな。

『語り合うって、何を話せばいいかな?』

「とにかく何でもいい。貴様とアカシック・ファーストレディが出会った切っ掛けや、あいつをどう思ってるだとかな」

『あっ、それだったらいっぱい言えるよ! えっと、えっと~、どこから話そうかな~』

「焦らなくていい。ゆっくり語ってくれ」

『うんっ、分かった!』

 プネラの嬉々と弾み出した声よ。これで少しは、余に心を開いてくれただろうか? 魔物の気配、敵影は一切に無し。夜の海上は平和そのものだ。
 さざ波の音か、余の翼のはためき音、潮風を切る音しか聞こえてこない。警戒は怠らずやっていくが、少しぐらいはプネラの話に集中してしまってもいいか。
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