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最終決戦編
第43話『帰郷、約束の森へ』
しおりを挟む三月の終わりの空気を乗せたオンボロのバンは、どこまでも律儀に北を目指していた。東京の、あらゆる光と音を煮詰めてぶちまけたような喧騒を後にしてから、一体どれだけの時間が過ぎただろう。車窓を流れる景色は、日に日にその彩度を落とし、代わりに空気の透明度が増していく。コンクリートの四角い箱がひしめく風景は、いつしかだだっ広い田園と、その向こうに連なる、まだ眠りから覚めきらない山々の稜線へと変わっていた。
「うっひょー!見てみろ悠人!雪だ雪!まだ雪が残ってやがるぜ!」
助手席で、田中猛が巨大な子供のように窓に張り付いて叫んだ。その指差す先、北向きの山の斜面や、陽の当たらない杉林の根元に、まるで世界が脱ぎ捨てていくのを忘れたかのように、汚れた残雪が膏薬のように張り付いている。三月の光は、春と呼ぶにはまだあまりに白く、そして頼りない。
「そうか。よかったな、猛。脳みそまで筋肉でできているお前には、雪も飯の種に見えるらしい」
「あんだとコラ!そりゃ褒め言葉か!?」
「褒め言葉に決まってるだろ。思考という最も燃費の悪い活動を省略できるお前の脳は、ある意味、究極の省エネ設計だ。ノーベル賞もんだ」
「おお、そうか!ノーベル賞か!だよな!」
後部座席から、莉奈の呆れ返った声が飛んでくる。
「猛、あんたそれ本気で信じてんの?悠人に褒められたと思って喜んでるの、あんたぐらいだよ。そのノーベル賞は、きっと『おめでたいで賞』の略だから」
「なんだと莉奈!俺は今、悠人に認められたんだぞ!」
莉奈の隣では、分厚い医学書を読んでいた麗子が、小さくため息をつきながらメガネのブリッジを押し上げた。
「田中さん、彼の言葉を額面通りに受け取るのは、医学的見地から見ても推奨できません。彼の皮肉は、もはや生理現象の一種です。血圧が上がると血管が収縮するのと同じレベルで、彼の口からは自然に嫌味が出るようにできています」
いつもの光景。いつものやり取り。このオンボロのバンという、鉄の箱の中にだけ存在する、奇妙に居心地の良い日常。
藤原悠人は、運転席でハンドルを握りながら、その馬鹿げた会話に耳を澄ませていた。口元には、いつものような皮肉な笑みが浮かんでいる。しかし、その瞳だけは、目の前に広がる、見慣れてしまったはずの故郷の風景を、どこか遠い場所から眺めているかのように、静かに、そして冷たく映していた。
青森。
その二文字が、道路標識に現れた時から、悠人の体内の時間は、ほんのわずかに、しかし確実に軋みを上げていた。何百年という、あまりに長すぎた旅路の果て。始まりの場所。そして、終わらせるべき場所。彼は、この土地に対して、もう何の感情も残っていないと思っていた。喜びも、悲しみも、憎しみさえも、悠久とも思える時間の中で、風化し、摩耗し、ただの事実として心に堆積しているだけだと。
(感傷に浸るな。俺は、俺の呪いを解きに来ただけだ)
自分にそう言い聞かせる。しかし、カーブを曲がるたびに現れる、記憶の断片と寸分違わぬ山の形や、川の流れが、彼の心の奥底に沈殿した澱を、否応なく掻き混ぜる。
あの頃は、もっと緑が濃かった。夏だったからか。道端には、背の高いアザミが、意地っ張りのように紫色の花をつけていた。川の水は、今よりもっとやかましく、そして生命の匂いに満ちていた。今はただ、雪解け水を気怠そうに流すだけで、まるで年老いた生き物のように静かだ。
「悠人さん」
隣から、静かな声がかかった。栞だ。彼女は、猛や莉奈のように騒ぐでもなく、ただじっと窓の外を眺めていたが、悠人の内の微かな変化を感じ取っていた。
「少し、お疲れですか?運転、代わりましょうか」
「いや、いい」
悠人は、短く答える。
「ここの道は、目を瞑っていても走れる。染み付いてるんだよ、嫌になるくらいにな」
その言葉に、後部座席の喧騒が一瞬だけ止まった。誰もが、この旅が、これまでの妖怪退治や人助けとは、全く違う意味を持つことを理解していた。これは、藤原悠人という男の、あまりに長すぎた個人的な物語の、最終章の始まりなのだ。
目的地は、彼の生家のあった場所からほど近い、一本の県道が途切れた先にある森。かつて、彼が幼い頃に「神」と出会い、そして「永遠」という呪いをかけられた場所。「約束の森」と、彼は心の中でそう呼んでいた。
しかし、瑠璃の財力と莉奈の情報網を駆使して事前に調べ上げた情報によれば、その森は、今では全く別の名前で呼ばれているらしかった。
「時迷いの森(ときまよいのもり)」
入った者は、二度と出てこられない。方位磁石も、最新のGPSも、その森の中では意味をなさない。吸い込まれるように人が消え、何年か経って、森の入り口に、記憶を失った老人の姿で発見されたという、気味の悪い噂がいくつも出てきた。地元では、誰も近づかない禁足地。世界の理から見放された、特異点。
「見えてきたぜ」
猛が、声を潜めて呟いた。
カーナビの画面が、赤い警告メッセージと共に点滅を始める。「この先、ルート案内を終了します」。まるで、文明の力が、ここから先への介入を放棄したかのような表示だった。
道の突き当たりに、それはあった。
苔むした鳥居が、半分崩れかけたまま、森への入り口であることをかろうじて示している。その横には、風雨に晒され、文字も掠れた古い木の看板が立っていた。
『警告。この先、入るべからず』
看板の文字よりも雄弁に、森そのものが、来る者を拒絶しているかのようだった。
三月の終わりだというのに、森の周辺だけ、時間が歪んでいるかのように、真冬の空気が澱んでいる。他の場所ではとうに消えたはずの雪が、深く、そして不自然な白さで地面を覆っている。雪解け水が流れ込むはずの小川は、薄氷に閉ざされ、せせらぎの音一つ聞こえない。鳥の声も、虫の音も、そして、木々が風に揺れる音さえも、ここには存在しなかった。まるで、世界から音というパラメータだけが、綺麗に抜き去られてしまったかのようだ。
一行は、言葉を失ってバンを降りた。
「……おいおい、マジかよ」
アキラが、大阪仕込みの威勢の良さも忘れて、呆然と呟く。
「なんやの、この空気。寒さの種類がちゃう。肌を刺すとかやのうて、魂に直接染み込んでくるみたいな……」
「莉奈、頼む」
悠人の短い指示に、莉奈はこくりと頷き、背負っていたバックパックから、蜘蛛のような形をした最新鋭のドローンを取り出した。
「任せて。まずは上空から、このクソみたいな空間の全体像をマッピングしてやる。赤外線、電磁波、重力異常、全部のセンサーを起動。行け、マイ・リトル・スパイダー!」
莉ناがタブレットを操作すると、ドローンは静かなモーター音を響かせ、ふわりと宙に浮いた。しかし、異変はすぐに起きた。
高度10メートルに達した瞬間、ドローンの動きが、明らかに不規則になった。まるで、目に見えない巨大な粘液の中を、必死でもがいているかのようだ。
「なっ……制御不能!?嘘でしょ!?」
莉奈の顔から血の気が引く。タブレットの画面には、意味不明のエラーコードが滝のように流れ落ちていた。そして次の瞬間、ドローンは、まるで空から巨大な蠅叩きで叩き落とされたかのように、甲高い悲鳴を上げて、森の奥へと墜落していった。
「あ……あたしの、ボーナス全部つぎ込んだ特注品が……」
地面に膝から崩れ落ちる莉奈。だが、それ以上の異常が、彼らを襲う。
「おい、これを見ろ!」
健吾が、ポケットから取り出した年代物のコンパスを、震える手で皆に見せた。健吾が何よりも信頼する、アナログの塊。その針は、北を指すのをやめ、カタカタカタカタと、まるで発作を起こしたかのように、猛烈な速さで回転していた。そして、パチッ、という小さな火花と共に、針はあらぬ方向を向いたまま、完全に動きを止めた。
「……死んだ」
健吾は、長年連れ添った相棒の死を看取るように、力なく呟いた。
「面白い。実に面白いな」
皆が混乱する中、弁護士の慧だけが、不気味なほど冷静に、しかしその目には爛々とした光を宿して呟いていた。
「物理法則という、この世界における根本的な法秩序が、この土地では完全に無視されている。これは、憲法九条よりも遥かに重大な、法の支配への挑戦だ。この森の不法行為を、断じて許すわけにはいかない」
そう言って、なぜかいつも持ち歩いている六法全書を片手に、森に向かって一歩踏み出そうとする慧の首根っこを、猛が慌てて掴んだ。
「待て待て慧!お前のその本で、この森をぶん殴るつもりか!?」
「これは、法の鉄槌だ!」
「鉄じゃなくて紙だろうが!」
カオスと化した仲間たちの前で、栞は静かに目を閉じ、森から発せられる「気」に集中していた。やがて、ゆっくりと目を開けると、彼女は静かに、しかしはっきりと言った。
「これは、ただの結界ではありません」
皆の視線が、栞に集まる。
「誰かを拒絶するためのものではない……。むしろ逆です。何かを、あるいは誰かを、この森から一歩も出さないように、『閉じ込める』ためのものです。この森自体が、一つの巨大な牢獄……あるいは、棺桶のようです」
その言葉に、皆が息をのんだ。
牢獄。閉じ込める。その言葉が、悠人の胸に重く突き刺さる。彼は、とうの昔に気づいていた。この、空間がねじ曲がり、時間が澱み、物理法則が意味をなさない異常な空間。その感覚は、彼が何百年もの間、自分自身の体の中で感じ続けてきた、あの忌まわしい「呪い」の感触と、あまりに似すぎていたからだ。
孤独。停滞。世界の理からの断絶。
彼の内面的な苦しみが、そのまま物理的な世界に投影されたかのような、歪んだ鏡。
「……はは」
乾いた笑いが、悠人の口から漏れた。
「そうかよ。とんだお出迎えじゃねえか」
初めて、仲間たちの前で、彼は隠すこともなく、苦しげに顔を歪めた。その瞳に浮かんでいたのは、絶望とも、怒りとも、そしてほんのわずかな諦めともつかない、複雑な色だった。この森は、俺自身だ。悠人は、そう直感していた。
瑠璃が札束の力で抑えた、青森市内の最高級ホテルのスイートルームは、さながら決戦前の作戦司令室と化していた。窓の外には、穏やかな港町の夜景が広がっているが、部屋の中は、それぞれの専門分野のプロフェッショナルたちが放つ、異様な熱気に満ちている。
「はい、情報班からの報告!面白おかしく、かつ的確に報告するわよ!」
大型モニターの前に立ったアキラが、芝居がかった口調で手を挙げた。その隣で、瑠璃が優雅に紅茶を飲みながら「わたくしの資金力と、アキラの厚かましさの合わせ技ですわ」と涼しい顔で付け加える。
「まず、例の『時迷いの森』の周辺の村で聞き込みしてきたんやけどな、まぁ面白い話がザクザクよ。特に、一番の古株の、もう腰が直角に曲がっとるタキさんって婆っちゃの話がヤバかったわ」
アキラは、すぅっと息を吸うと、突然、しわがれた声色でタキ婆さんのモノマネを始めた。
「『あんだだぢ、あの森さだけは、行ぐんでねぇぞ。あそこはな、神様がヘソ曲げて、時間をぐっちゃぐちゃに掻き回してまった場所だで。わらすの頃にはな、森から変な音が聞こえだもんだ。キィィィ、て、古ぼげだゼンマイを無理やり逆さに巻ぐような、嫌な音だ。そんでな、その音が聞こえだ次の日には、決まって村の誰かが、ふらっと森さ吸い込まれで、消えでまったもんだ……』」
アキラの迫真の演技に、猛と健吾が「ひぃっ」と小さな悲鳴を上げる。
「婆さんの話じゃ、その異変が始まったんは、ちょうど『遠い昔に、都で大きな戦があった頃』からだって話や。時代を照合すると、どうも関ヶ原の戦いくらいの時期と一致するんよ。悠人、あんたが呪われた時期と、何か関係あるんちゃうか?」
アキラの鋭い指摘に、悠人は何も答えず、ただ腕を組んで目を閉じていた。
続いて、麗子と慧の文献班が報告を始める。テーブルの上には、古文書のコピーや、分厚い郷土史の資料が山と積まれていた。
「法的な観点から報告します」
慧が、レーザーポインターで壁に投影された古い地図を指し示した。
「極めて不可解なのは、この森を含む一帯が、少なくとも登記制度が確立された明治時代以降、一度も誰かの所有物になった記録がないことです。国有地でも、私有地でもない。完全に法的な空白地帯として、意図的に『放置』されてきたとしか考えられません。さらに遡って、江戸時代の検地帳を調べても、この土地は『不入(いらず)の地』として、石高の計算からも除外されている。まるで、時の権力者たちが、代々『ここには触れるな』と申し送りをしてきたかのようです」
「医学的な見地からも、興味深い相関が見られます」
麗子が、慧の報告を引き継ぐ。
「この地域の、過去数百年にわたる疫病や飢饉の記録を洗い出してみました。すると、大規模な飢饉が起こり、多くの死者が出た時期と、先ほどアキラさんが報告した『神隠し』の記録が多発した時期が、奇妙に、しかし統計的に有意なレベルで一致するのです。まるで、土地に蓄積された『死の記憶』の総量がある閾値を超えると、森の異常性が活性化するかのように……。これは、土地そのものが、一種の慢性的なトラウマを抱えている状態と見ることもできます」
法と医学。全く異なるアプローチから、森の異常性の輪郭が、徐々に浮かび上がってくる。
そして最後に、莉奈が、ボロボロになったドローンの残骸と、健吾が持ち込んだありったけの計測機器から得たデータを統合した、三次元マップをモニターに映し出した。
「みんなの報告を、私のデータと統合して、最終的な結論が出た。この空間の歪みは、均一じゃない。同心円状に、ある一点に向かって、指数関数的に歪みが強くなっている。そして、その中心にあるのが……ここ」
莉奈が指し示した場所には、ノイズの海の中から、ぼんやりと一つの小さな建物のような影が浮かび上がっていた。
「古い、祠だ……」
栞が、その映像を見て、息をのむ。
「特異点(シンギュラリティ)……。時間と空間の法則が崩壊し、全ての物理量が無限大に発散する、世界のバグの中心。私たちの神様は、どうやらここにいらっしゃるみたいだね」
莉奈の言葉に、部屋は完全な沈黙に包まれた。その沈黙を破ったのは、ずっと黙っていた悠人の、静かな声だった。
「……ああ。そこだ」
悠人は、ゆっくりと目を開けた。その瞳は、モニターに映る祠を、まるで何百年も前の光景を思い出すかのように、真っ直ぐに見つめていた。
「俺が、あのガキ……いや、神と出会ったのは、あの祠の前だ」
全ての調査結果が、一つの点へと収束した。全ての因果の始まり。悠人の呪いの原点。そして、世界の歪みの震源地。
悠人は、ゆっくりと立ち上がると、仲間たち一人一人の顔を見渡した。その表情は、不思議なほど穏やかだった。
「……ここまで付き合ってくれて、感謝してる。お前たちがいなければ、俺は、この場所まで辿り着くことさえできなかっただろう」
彼は、ふっと息を吐くと、まるで長年の重荷を下ろすかのように、続けた。
「だから、もういい。ここから先は、俺一人の問題だ。俺が始めた物語なんだ。終わりをつけるのは、俺一人で十分だ」
それは、悠人なりの、最大限の感謝と、仲間たちへの気遣いを込めた、決別の言葉だった。これ以上、彼らをこの狂った因果に巻き込むわけにはいかない。
しかし、その言葉が終わるか終わらないかのうちに、猛の岩のような手が、悠人の肩を鷲掴みにした。
「――ふざけんなよ」
絞り出すような、低い声。
「俺たちが、お前をここまで連れてきたんだ。今更、一人で行かせられるかよ。お前が一人で死に場所を探してた、あの頃のお前に、逆戻りさせられるか!」
「そうだぜ、悠人」
健吾が、猛の隣で力強く頷く。
「お前のそのオンボロの体は、俺が整備してここまで運んできたんだ。最後の最後まで、責任持って面倒見させろ」
「そうやで、アホ!」
アキラが、腰に手を当てて、悠人を睨みつける。
「あんた一人の物語みたいに、カッコつけとんちゃうぞ!あたしらの、この最高に退屈せんかった旅の結末を、あんた一人に決めさせるわけないやろ!」
「法的に言っても、あなたを単独で危険な場所に赴かせることは、我々の保護監督義務違反にあたります」
慧が、理屈っぽく、しかし真剣な目で言う。
「それに、神を裁くという、前代未聞の法廷に、弁護団が同席しないなどあり得ない」
「私の、最高の研究対象(サンプル)が、最後の最後にどんなデータを示すか、この目で見届けないなんて、科学者失格でしょ!」
「わたくしの、人生で最もエキサイティングなこの『遊び』のエンディングを、みすみす見逃すなど、三条院家の名折れですわ!」
莉奈と瑠璃が、同時に叫ぶ。
麗子と美咲も、静かに、しかし強い意志を込めて、悠人を見つめている。
そして最後に、栞が、そっと悠人の手に自分の手を重ねた。温かい、小さな手だった。
「私たちは、もう、悠人さんのいる場所が、私たちの『帰る場所』なんです。だから、一人で行かないでください」
仲間たちの、一人一人の言葉。その視線。
それは、同情でも、憐れみでもない。ただ、共に在りたいという、あまりに真っ直ぐで、力強い想いの奔流だった。
悠人は、何も言えなくなった。何百年という孤独な時間の中で、完全に乾ききっていると思っていた涙腺が、不意に熱くなるのを感じて、慌てて空を仰ぐ。
(……ああ、そうかよ)
心の中で、誰に言うでもなく呟く。
(俺の旅は、とっくの昔に、俺一人のものじゃなくなってたってわけか)
彼は、ゆっくりと空を仰ぎ、そして、何百年という時間の中で、初めて、心の底からの、嬉しさと照れくささが混じった、最高の笑顔を見せた。
「……分かったよ。降参だ」
一行は、覚悟を決めた。それぞれの得物を手に、それぞれの想いを胸に。
世界のバグの中心へ。
全ての因果が収束し、そして、全ての物語が始まる場所へ。
夜が明け、白々とした光が差し込む頃、彼らは再び、あの歪んだ森の入り口に立っていた。
悠久の旅の、最後の歩みを、始めるために。
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