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第1話:泡沫(うたかた)の夢か、瓦斯灯(がすとう)の現(うつつ)か
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プシューーーーーッ!!
鼓膜を内側から食い破るような鋭利な蒸気の噴出音が、世界を白く染め上げる。
それに遅れて、大地そのものが唸るような重低音が響いた。巨大な鉄の塊が、冷え切ったレールを噛み締め、軋みを上げながら停止しようとするたび、金属特有の金切り声が耳の奥底を刺激する。
鼻孔を強引にこじ開けて侵入してくるのは、喉が焼け付くような焦げた石炭の匂い。それに混じって、どこか郷愁を誘う古びた機械油の重たい香り。
視界を覆っていた白い蒸気が風に煽られて薄れると、頬を撫でる風の冷たさが鮮明になった。それは肌を刺すような冬の気配を含みながらも、肺いっぱいに吸い込みたくなるほど、不思議なほどに透明で澄んでいた。
「……ん」
りくは、背中に伝わるゴツゴツとした硬い感触に違和感を覚え、重いまぶたを押し上げた。
視界に飛び込んできたのは、見慣れた天井のシミではない。
そこには、今まさに燃え尽きようとする太陽が焼き付けた、鮮烈な茜色の空が広がっていた。鰯雲が、まるで巨人の筆でサッと掃いたかのような繊細な模様を描き、東の空へと流れていく。
ぼやけた視点が徐々に焦点を結ぶと、目の前を行き交う雑多な人々の姿が輪郭を帯びてくる。
カツ、カツ、カツ。カラ、コロン。
革靴の硬質な音と、木製の下駄が石畳を叩く乾いた音が、不協和音ながらも心地よいリズムを刻んでいる。
カンカン帽を目深に被り、ツイードのマントを翻して歩く紳士。
矢絣の着物に海老茶色の袴を合わせ、大きな革鞄を抱えた女学生たち。
背広姿で忙しなく腕時計を確認するサラリーマンに、「御用! 御用!」と声を張り上げ、法被の裾を翻して駆け抜ける飛脚のような男。
彼らの頭上には、歴史の重みを感じさせる赤煉瓦造りの駅舎が威容を誇っていた。
その軒先では、煤けたガラスの球体に閉じ込められた瓦斯灯が、迫り来る夕闇に怯えるように、青白い炎を揺らめかせ始めている。
「……え?」
りくは、自分がベンチに座っている事実にようやく気がついた。
それも、駅によくある無機質なプラスチック製ではない。長い年月を経て、無数の人々の背中を支えてきたであろう、飴色に艶めく木製のベンチだ。ささくれ立った木の感触が、服越しに背中へ伝わってくる。
ここはどこだ。
記憶の糸を手繰り寄せる。確か、自分は自室のベッドに寝転がり、読みかけの文庫本のページをめくっていたはずだ。活字を目で追ううちに意識が沈み、そのまま寝落ちして……。
夢、なのだろうか。
いや、夢にしては、五感に訴えかけてくる情報が過剰すぎる。
隣のベンチで老婆と孫が分け合っている焼き芋の、ねっとりとした甘く香ばしい匂い。蒸気機関車が吐き出す煤煙の、鼻の奥にこびりつくような粉っぽい刺激臭。
そして何より、風に乗って運ばれてくる、銀杏の葉独特の、少し苦み走った晩秋の香りが、あまりにもリアルだった。
りくは恐る恐る、自分の右頬に指を添えた。
皮膚の柔らかさと、その下にある肉の弾力を指先で確かめ、思い切り力を込める。
ぎゅう。
「いったぁ!」
脳天に突き抜けるような鋭い激痛。生理的な涙がじわりと滲む。
あまりの声の大きさに、通りがかりの上品な着物姿の婦人が、「あらまあ」と口元を藤色の袖で隠し、眉をひそめて通り過ぎていった。衣擦れの音がシュルシュルと耳に残る。
痛いということは、神経が正常に機能している証拠だ。つまり、これは夢ではない。
りくはベンチから弾かれたように立ち上がり、周囲をぐるりと見回した。
駅のホームに掲げられた木製の看板には、力強い筆致で書かれた漢字が並んでいる。見たこともない旧字体の羅列だが、なぜかその意味は脳内に直接流れ込んでくるように理解できた。
――帝都。
視線の先には、大正ロマンを地で行くような光景が広がっていた。
瓦屋根の日本家屋と、西洋風の煉瓦建築がパッチワークのように入り混じり、独特の調和を生み出しているハイカラな街並み。路面電車の鐘の音が、遠くからチンチンと聞こえてくる。
「……きた、これ」
りくの口から、空気の漏れるような震える声がこぼれ落ちた。
ドクン、と心臓が早鐘を打ち、全身の血液が一瞬で沸点に達するような強烈な高揚感が駆け巡る。指先が微かに痺れ、呼吸が浅くなる。
間違いない。これは、あれだ。
小説好きなら誰もが一度は妄想の海に溺れ、そして現実の壁の前に諦める、あの一世一代の大イベント。
異世界転生、あるいは転移。
「よっしゃあああああ!」
りくは拳を固く握りしめ、夕暮れの駅のホームで魂の叫びを轟かせた。
その声に驚き、屋根に止まっていた数羽の鳩が一斉に羽ばたき、バサバサという乾いた音と共に空へ舞い上がる。
周囲を行き交う人々が、「なんだなんだ」「活動写真の撮影か?」「気狂いじゃあるまいか」と、奇異なものを見る目を向けてくる。
だが、今のりくには、そんな冷ややかな視線など、肌を撫でるそよ風ほどにも感じられなかった。
彼は知っている。法則を。
こういう劇的な展開で招かれた主人公には、例外なく「世界を覆す特別な力」がギフトとして与えられていることを。
りくは人目を避けるように、駅舎の裏手へと足を向けた。
赤煉瓦の壁と、蔦の絡まる古びた倉庫に挟まれた、薄暗い路地。
ここなら誰もいない。
西の空に残るわずかな残照が、建物の影を長く引き伸ばし、足元には舞い散った枯れ葉が吹き溜まっている。風が吹くたび、カサカサと乾いた音を立てて葉が転がり、アスファルトではなく土の地面を撫でていく。
「さてと……」
りくは深く息を吸い込み、肺の中の空気をすべて入れ替えるように吐き出した。
自分の両手を目の高さに掲げ、まじまじと見つめる。
何か感じるはずだ。体の中を脈々と巡る熱い奔流のようなエネルギーとか、指先からパチパチとほとばしる光の粒子とか。
意識を集中する。へその下あたり、丹田と呼ばれる場所に、全神経を研ぎ澄ませて力を込める。
「出よ! 我が秘められし力!」
りくは、かつて鏡の前で密かに練習したことのある中二病全開のポーズをとり、目の前に落ちていた手頃な小石に向かって右手を突き出した。
脳裏に描くイメージは、全てを焼き尽くす紅蓮の爆炎、天を裂く紫電の雷撃、あるいは万物の時を凍結させる絶対的な権能。
……シーン。
小石は、ただの小石としてそこに鎮座していた。微動だにしない。
世界は何一つ変わらず、ただ一陣の夕風がヒュウと冷たく吹き抜け、近くの街路樹から枯れ葉が一枚、りくの肩にハラリと虚しく着地しただけだった。
「……あれ?」
おかしい。詠唱が必要なタイプか? それとも、出力のための気合いが足りない?
りくは羞恥心で顔を熟したトマトのように赤くしながら、記憶にある限りの様々なポーズと呪文を試みた。
「破!」「滅!」「ファイア!」「お願い、何か出て! お願いします!」
通りがかりの薄汚れた野良猫が、塀の上から「何をしているんだ、こいつは」と言わんばかりの冷めた瞳で見下ろし、大きなあくびをして去っていく。
三十分後。
りくは汗だくになり、膝に手をついて肩で息をしていた。
額から滴り落ちる汗が、地面の土に黒い染みを作る。
何も起きない。まさか、能力なしのハードモード転移なのか? この見知らぬ世界で、ただの一般人として生きろというのか?
鉛のような重い絶望感が頭をもたげかけた、その時だった。
りくは、自分の視界の端──右手の小指の先あたり──の空間が、真夏の道路に立ち上る陽炎のように、不自然に揺らいでいることに気づいた。
「……ん?」
恐る恐る、その「揺らぎ」に手をかざしてみる。
熱くはない。冷たくもない。ただ、そこにある風景が、厚みのある粗悪なガラス越しに見るように、グニャリと歪んで見えるだけだ。
りくは無意識に、その「空間の歪み」を指先でつまむように念じてみた。
すると。
ぷつん。
指先で小さな梱包材(プチプチ)を潰したような、空気が弾ける頼りない音がした。
同時に、目の前の小石が、まるで透明な糸で横から引かれたように、コロンと五センチほど転がった。
「……これ?」
りくは数回、パチパチと瞬きをした。
もう一度やってみる。眉間に皺を寄せて念じる。空間がわずかに、本当にわずかに歪む。小石がコロン。
念じる。歪む。近くにあった枯れ葉がフワリと二センチほど浮き上がり、すぐに落ちる。
念じる。歪む。……それだけ。
りくは力が抜け、その場に膝から崩れ落ちた。
膝についた砂利の尖った感触が、ズボンの生地を通して容赦なく皮膚に食い込む。その痛みがあまりにも現実的で、無慈悲だった。
「しょぼっ……! なにこれ、地味すぎるだろ!」
街を吹き飛ばす爆発も起きなければ、敵を貫く光線も出ない。
ただ、目の前の空間をほんの数センチ、蚊が止まる程度に歪ませて、極めて微細な物理的干渉を起こすだけ。
せいぜい、コップの水をこぼして嫌がらせをしたり、スカートの裾をめくったり(いや、そんな破廉恥なことはしないが)する程度の、大道芸以下の力。
りくは天を仰いだ。
いつの間にか茜色は消え失せ、空は深い群青色へと塗り替えられていた。一番星が、まるでりくの貧弱な能力を嘲笑うかのように、冷たく白く輝き始めている。
「……ああ、そうか」
冷え切った夜気と共に、りくの中に一つの冷徹な事実が染み渡っていく。
人生というのは、たとえ世界が変わろうとも、基本的に「思い通りにはいかない」ように設計されているのだ。
最高のシチュエーションで転生したからといって、都合よく最強の力が手に入るとは限らない。
期待すればするほど、現実はその期待を裏切り、少しだけ斜め下の回答を突きつけてくる。
それは元の世界でも、このレトロな異世界でも変わらない、宇宙共通の絶対的なルールのようだった。
「期待した俺が馬鹿だった……」
りくは深いため息をついた。その息は白く濁り、夜の冷気の中に溶けて儚く消えた。
これが現実だ。魔法のような奇跡を夢見ても、手元に残るのは、小石を転がす程度の手品のような力だけ。
ぐうぅぅぅぅ……キュルルル……。
静まり返った路地に、盛大な音が反響した。りくの腹の虫だ。
精神的なショックで打ちのめされた直後に、待ってましたとばかりに生理的な欲求が襲ってくる。これまた、人間の体というやつは、どこまでいっても融通が利かないポンコツだ。
「腹が……減った」
りくは、生まれたての子鹿のようにふらりと立ち上がった。
とにかく、何か胃袋に入れないと動けない。そして、今日、雨風をしのいで寝る場所を確保しなければならない。
彼は駅舎の裏手の暗がりから、光と音の溢れる賑やかな大通りへと、重い足取りで歩き出した。
表の大通りは、昼間とはまた違った熱気と活気に満ち溢れていた。
道の両脇には無数の露店が軒を連ね、食欲を暴力的なまでに刺激する匂いの洪水を巻き起こしている。
炭火で焼かれ、醤油が焦げる香ばしい焼き団子の匂い。
大きな四角い鍋の中で甘く煮込まれ、湯気を上げるおでんの出汁の香り。
屋台のラーメン(こちらの世界の看板には『南京そば』とある)から漂う、濃厚な鶏ガラとネギの香り。
等間隔に並んだ瓦斯灯が放つ柔らかなオレンジ色の光が、行き交う人々の笑顔を温かく照らし出している。
皆、幸せそうだ。
手を繋いで歩く家族連れ、仕事帰りに肩を組んで笑い合う男たち、袖を引いてはにかむ恋人たち。
その光景は、絵画のように美しく、そして残酷なほどに温かい。
今のりくにとって、その「温かさ」は、自分と彼らを隔てる壁の厚さを際立たせるものでしかなかった。
自分は異邦人だ。
この世界のどこにも、自分の居場所なんて用意されていない。
ズボンのポケットに手を突っ込んで探るが、指先に触れるのは元の世界の小銭入れと、圏外表示のまま沈黙を守るスマートフォンだけ。こちらの世界で通用する紙幣や硬貨なんて、一枚も持っているはずがない。
「……無一文」
その単語の重みが、鉛の塊のようにずしりと肩にのしかかる。
ついさっきまでは「選ばれし勇者」気分で空を見上げていたのに、今はただの「住所不定無職の腹ペコ不審者」だ。
状況は刻一刻と変化し、安定なんてどこにもない。
さっきまでの高揚感はどこへやら、今は底なしの惨めさと、先が見えない不安で胸が押しつぶされそうだ。
「これが……生きるってことかよ」
りくは力なく、自嘲気味に笑った。
永遠に続く幸せもなければ、永遠に続く不幸もない。ただ、状況が川の水のようにコロコロと変わり、流れていくだけ。
その濁流に翻弄されながら、それでも腹は減るし、足は勝手に前へ進もうとする。
「とにかく、仕事だ。金だ」
りくは頭を振り、思考を強制的に切り替えた。
嘆いていても腹は膨れない。この「思い通りにならない現実」を丸ごと受け入れて、その泥沼の中で自分にできることをやるしかない。
彼は意を決して、通りがかった一人の男に声をかけた。飛脚風の、いかにも荒事慣れしていそうな強面の男だ。
「あ、あの、すみません」
「あん? なんだい兄ちゃん、ひょろっとしてんなぁ」
男は怪訝そうに太い眉をひそめ、りくを頭のてっぺんからつま先までジロリと値踏みした。
だが、りくの目にある必死な光と、隠しきれない困窮の色を見て取ったのか、すぐにその表情を和らげた。
「仕事を探してるんですが……日払いで、住み込みで、誰でもできるような……」
「ははあ、なるほど。田舎から一旗揚げに出てきたが、スッカラカンになっちまったって口か? よくある話だ」
男は豪快に笑うと、煙管(キセル)をくわえたまま、親切に道を指差してくれた。
「この道をまっすぐ行って、二つ目の角を右だ。『えびす屋』って看板が出てる。そこに行きな。荒っぽい仕事も多いが、選り好みしなけりゃ食いっぱぐれることはねえはずだ」
「えびす屋……ありがとうございます!」
りくは深々と、九十度腰を折って頭を下げた。
人の情けが身に染みる。見知らぬ世界、見知らぬ他人だが、この世界も捨てたもんじゃないかもしれない。
教えられた道を歩く。
大通りの喧騒から離れるにつれ、日が完全に落ちた夜の帳(とばり)が濃くなっていく。
まばらになった瓦斯灯の光が、湿り気を帯びた石畳の道を、濡れた黒曜石のように鈍く輝かせている。
冷たい夜風が吹き抜け、街路樹の枝を激しく揺らす。ざわざわ、ざわざわと鳴る葉音は、りくの心にある不安を代弁しているようでもあり、同時に「行け、止まるな」と背中を乱暴に押しているようでもあった。
やがて、目的の建物が闇の中に浮かび上がってきた。
古びているが、太い梁(はり)を使用した、がっしりとした造りの木造二階建て。
入り口には『万事請負・口入れ処 えびす屋』と墨書された大きな木の看板が掲げられ、その下では古びた赤提灯が風に揺れている。
中からは、男たちの野太い怒号や下品な笑い声、そして何かの依頼について熱く議論する声が、獣の唸り声のように漏れ聞こえてくる。
りくは喉をごくりと鳴らし、乾いた唾を飲み込んだ。
ここが、この世界での第一歩。
この薄汚れた引き戸の向こうには、どんな厄介事が、どんな理不尽が待っているのか。
きっと、思い通りにいかないことばかりだろう。辛いこと、痛いことばかりかもしれない。
でも、ここで立ち止まっていては、何も始まらない。
りくは、なけなしの勇気を心臓の奥底から振り絞り、自分の心のどこかにまだ残っている「歪みを起こす力」──今はまだ頼りない、吹けば飛ぶような陽炎の力──を信じるように、右手をぎゅっと握りしめた。
「たのもう!」
りくは勢いよく、重たい引き戸を横に開け放った。
ガラガラッ!
その瞬間、店内の空気が凍りついたように静まり返り、一斉に鋭い視線がりくに突き刺さる。
鼻をつくのは、安酒と紫煙、そして男たちの汗が入り混じった強烈な熱気。
そこには、りくが淡く想像していた「優雅な冒険者ギルド」とは似ても似つかない、欲望と生活臭、そして生々しい活気に満ちた、あまりにも人間臭い世界が広がっていた。
「……うわぁ」
りくの口から、またしても本音が漏れた。
思ってたのと全然違う。綺麗でもなければ、カッコよくもない。
でも、まあいい。
これが、俺の新しい現実だ。
りくは腹の音を店内に盛大に響かせながら、その混沌とした喧騒の渦へと、泥だらけの靴で一歩、足を踏み入れた。
鼓膜を内側から食い破るような鋭利な蒸気の噴出音が、世界を白く染め上げる。
それに遅れて、大地そのものが唸るような重低音が響いた。巨大な鉄の塊が、冷え切ったレールを噛み締め、軋みを上げながら停止しようとするたび、金属特有の金切り声が耳の奥底を刺激する。
鼻孔を強引にこじ開けて侵入してくるのは、喉が焼け付くような焦げた石炭の匂い。それに混じって、どこか郷愁を誘う古びた機械油の重たい香り。
視界を覆っていた白い蒸気が風に煽られて薄れると、頬を撫でる風の冷たさが鮮明になった。それは肌を刺すような冬の気配を含みながらも、肺いっぱいに吸い込みたくなるほど、不思議なほどに透明で澄んでいた。
「……ん」
りくは、背中に伝わるゴツゴツとした硬い感触に違和感を覚え、重いまぶたを押し上げた。
視界に飛び込んできたのは、見慣れた天井のシミではない。
そこには、今まさに燃え尽きようとする太陽が焼き付けた、鮮烈な茜色の空が広がっていた。鰯雲が、まるで巨人の筆でサッと掃いたかのような繊細な模様を描き、東の空へと流れていく。
ぼやけた視点が徐々に焦点を結ぶと、目の前を行き交う雑多な人々の姿が輪郭を帯びてくる。
カツ、カツ、カツ。カラ、コロン。
革靴の硬質な音と、木製の下駄が石畳を叩く乾いた音が、不協和音ながらも心地よいリズムを刻んでいる。
カンカン帽を目深に被り、ツイードのマントを翻して歩く紳士。
矢絣の着物に海老茶色の袴を合わせ、大きな革鞄を抱えた女学生たち。
背広姿で忙しなく腕時計を確認するサラリーマンに、「御用! 御用!」と声を張り上げ、法被の裾を翻して駆け抜ける飛脚のような男。
彼らの頭上には、歴史の重みを感じさせる赤煉瓦造りの駅舎が威容を誇っていた。
その軒先では、煤けたガラスの球体に閉じ込められた瓦斯灯が、迫り来る夕闇に怯えるように、青白い炎を揺らめかせ始めている。
「……え?」
りくは、自分がベンチに座っている事実にようやく気がついた。
それも、駅によくある無機質なプラスチック製ではない。長い年月を経て、無数の人々の背中を支えてきたであろう、飴色に艶めく木製のベンチだ。ささくれ立った木の感触が、服越しに背中へ伝わってくる。
ここはどこだ。
記憶の糸を手繰り寄せる。確か、自分は自室のベッドに寝転がり、読みかけの文庫本のページをめくっていたはずだ。活字を目で追ううちに意識が沈み、そのまま寝落ちして……。
夢、なのだろうか。
いや、夢にしては、五感に訴えかけてくる情報が過剰すぎる。
隣のベンチで老婆と孫が分け合っている焼き芋の、ねっとりとした甘く香ばしい匂い。蒸気機関車が吐き出す煤煙の、鼻の奥にこびりつくような粉っぽい刺激臭。
そして何より、風に乗って運ばれてくる、銀杏の葉独特の、少し苦み走った晩秋の香りが、あまりにもリアルだった。
りくは恐る恐る、自分の右頬に指を添えた。
皮膚の柔らかさと、その下にある肉の弾力を指先で確かめ、思い切り力を込める。
ぎゅう。
「いったぁ!」
脳天に突き抜けるような鋭い激痛。生理的な涙がじわりと滲む。
あまりの声の大きさに、通りがかりの上品な着物姿の婦人が、「あらまあ」と口元を藤色の袖で隠し、眉をひそめて通り過ぎていった。衣擦れの音がシュルシュルと耳に残る。
痛いということは、神経が正常に機能している証拠だ。つまり、これは夢ではない。
りくはベンチから弾かれたように立ち上がり、周囲をぐるりと見回した。
駅のホームに掲げられた木製の看板には、力強い筆致で書かれた漢字が並んでいる。見たこともない旧字体の羅列だが、なぜかその意味は脳内に直接流れ込んでくるように理解できた。
――帝都。
視線の先には、大正ロマンを地で行くような光景が広がっていた。
瓦屋根の日本家屋と、西洋風の煉瓦建築がパッチワークのように入り混じり、独特の調和を生み出しているハイカラな街並み。路面電車の鐘の音が、遠くからチンチンと聞こえてくる。
「……きた、これ」
りくの口から、空気の漏れるような震える声がこぼれ落ちた。
ドクン、と心臓が早鐘を打ち、全身の血液が一瞬で沸点に達するような強烈な高揚感が駆け巡る。指先が微かに痺れ、呼吸が浅くなる。
間違いない。これは、あれだ。
小説好きなら誰もが一度は妄想の海に溺れ、そして現実の壁の前に諦める、あの一世一代の大イベント。
異世界転生、あるいは転移。
「よっしゃあああああ!」
りくは拳を固く握りしめ、夕暮れの駅のホームで魂の叫びを轟かせた。
その声に驚き、屋根に止まっていた数羽の鳩が一斉に羽ばたき、バサバサという乾いた音と共に空へ舞い上がる。
周囲を行き交う人々が、「なんだなんだ」「活動写真の撮影か?」「気狂いじゃあるまいか」と、奇異なものを見る目を向けてくる。
だが、今のりくには、そんな冷ややかな視線など、肌を撫でるそよ風ほどにも感じられなかった。
彼は知っている。法則を。
こういう劇的な展開で招かれた主人公には、例外なく「世界を覆す特別な力」がギフトとして与えられていることを。
りくは人目を避けるように、駅舎の裏手へと足を向けた。
赤煉瓦の壁と、蔦の絡まる古びた倉庫に挟まれた、薄暗い路地。
ここなら誰もいない。
西の空に残るわずかな残照が、建物の影を長く引き伸ばし、足元には舞い散った枯れ葉が吹き溜まっている。風が吹くたび、カサカサと乾いた音を立てて葉が転がり、アスファルトではなく土の地面を撫でていく。
「さてと……」
りくは深く息を吸い込み、肺の中の空気をすべて入れ替えるように吐き出した。
自分の両手を目の高さに掲げ、まじまじと見つめる。
何か感じるはずだ。体の中を脈々と巡る熱い奔流のようなエネルギーとか、指先からパチパチとほとばしる光の粒子とか。
意識を集中する。へその下あたり、丹田と呼ばれる場所に、全神経を研ぎ澄ませて力を込める。
「出よ! 我が秘められし力!」
りくは、かつて鏡の前で密かに練習したことのある中二病全開のポーズをとり、目の前に落ちていた手頃な小石に向かって右手を突き出した。
脳裏に描くイメージは、全てを焼き尽くす紅蓮の爆炎、天を裂く紫電の雷撃、あるいは万物の時を凍結させる絶対的な権能。
……シーン。
小石は、ただの小石としてそこに鎮座していた。微動だにしない。
世界は何一つ変わらず、ただ一陣の夕風がヒュウと冷たく吹き抜け、近くの街路樹から枯れ葉が一枚、りくの肩にハラリと虚しく着地しただけだった。
「……あれ?」
おかしい。詠唱が必要なタイプか? それとも、出力のための気合いが足りない?
りくは羞恥心で顔を熟したトマトのように赤くしながら、記憶にある限りの様々なポーズと呪文を試みた。
「破!」「滅!」「ファイア!」「お願い、何か出て! お願いします!」
通りがかりの薄汚れた野良猫が、塀の上から「何をしているんだ、こいつは」と言わんばかりの冷めた瞳で見下ろし、大きなあくびをして去っていく。
三十分後。
りくは汗だくになり、膝に手をついて肩で息をしていた。
額から滴り落ちる汗が、地面の土に黒い染みを作る。
何も起きない。まさか、能力なしのハードモード転移なのか? この見知らぬ世界で、ただの一般人として生きろというのか?
鉛のような重い絶望感が頭をもたげかけた、その時だった。
りくは、自分の視界の端──右手の小指の先あたり──の空間が、真夏の道路に立ち上る陽炎のように、不自然に揺らいでいることに気づいた。
「……ん?」
恐る恐る、その「揺らぎ」に手をかざしてみる。
熱くはない。冷たくもない。ただ、そこにある風景が、厚みのある粗悪なガラス越しに見るように、グニャリと歪んで見えるだけだ。
りくは無意識に、その「空間の歪み」を指先でつまむように念じてみた。
すると。
ぷつん。
指先で小さな梱包材(プチプチ)を潰したような、空気が弾ける頼りない音がした。
同時に、目の前の小石が、まるで透明な糸で横から引かれたように、コロンと五センチほど転がった。
「……これ?」
りくは数回、パチパチと瞬きをした。
もう一度やってみる。眉間に皺を寄せて念じる。空間がわずかに、本当にわずかに歪む。小石がコロン。
念じる。歪む。近くにあった枯れ葉がフワリと二センチほど浮き上がり、すぐに落ちる。
念じる。歪む。……それだけ。
りくは力が抜け、その場に膝から崩れ落ちた。
膝についた砂利の尖った感触が、ズボンの生地を通して容赦なく皮膚に食い込む。その痛みがあまりにも現実的で、無慈悲だった。
「しょぼっ……! なにこれ、地味すぎるだろ!」
街を吹き飛ばす爆発も起きなければ、敵を貫く光線も出ない。
ただ、目の前の空間をほんの数センチ、蚊が止まる程度に歪ませて、極めて微細な物理的干渉を起こすだけ。
せいぜい、コップの水をこぼして嫌がらせをしたり、スカートの裾をめくったり(いや、そんな破廉恥なことはしないが)する程度の、大道芸以下の力。
りくは天を仰いだ。
いつの間にか茜色は消え失せ、空は深い群青色へと塗り替えられていた。一番星が、まるでりくの貧弱な能力を嘲笑うかのように、冷たく白く輝き始めている。
「……ああ、そうか」
冷え切った夜気と共に、りくの中に一つの冷徹な事実が染み渡っていく。
人生というのは、たとえ世界が変わろうとも、基本的に「思い通りにはいかない」ように設計されているのだ。
最高のシチュエーションで転生したからといって、都合よく最強の力が手に入るとは限らない。
期待すればするほど、現実はその期待を裏切り、少しだけ斜め下の回答を突きつけてくる。
それは元の世界でも、このレトロな異世界でも変わらない、宇宙共通の絶対的なルールのようだった。
「期待した俺が馬鹿だった……」
りくは深いため息をついた。その息は白く濁り、夜の冷気の中に溶けて儚く消えた。
これが現実だ。魔法のような奇跡を夢見ても、手元に残るのは、小石を転がす程度の手品のような力だけ。
ぐうぅぅぅぅ……キュルルル……。
静まり返った路地に、盛大な音が反響した。りくの腹の虫だ。
精神的なショックで打ちのめされた直後に、待ってましたとばかりに生理的な欲求が襲ってくる。これまた、人間の体というやつは、どこまでいっても融通が利かないポンコツだ。
「腹が……減った」
りくは、生まれたての子鹿のようにふらりと立ち上がった。
とにかく、何か胃袋に入れないと動けない。そして、今日、雨風をしのいで寝る場所を確保しなければならない。
彼は駅舎の裏手の暗がりから、光と音の溢れる賑やかな大通りへと、重い足取りで歩き出した。
表の大通りは、昼間とはまた違った熱気と活気に満ち溢れていた。
道の両脇には無数の露店が軒を連ね、食欲を暴力的なまでに刺激する匂いの洪水を巻き起こしている。
炭火で焼かれ、醤油が焦げる香ばしい焼き団子の匂い。
大きな四角い鍋の中で甘く煮込まれ、湯気を上げるおでんの出汁の香り。
屋台のラーメン(こちらの世界の看板には『南京そば』とある)から漂う、濃厚な鶏ガラとネギの香り。
等間隔に並んだ瓦斯灯が放つ柔らかなオレンジ色の光が、行き交う人々の笑顔を温かく照らし出している。
皆、幸せそうだ。
手を繋いで歩く家族連れ、仕事帰りに肩を組んで笑い合う男たち、袖を引いてはにかむ恋人たち。
その光景は、絵画のように美しく、そして残酷なほどに温かい。
今のりくにとって、その「温かさ」は、自分と彼らを隔てる壁の厚さを際立たせるものでしかなかった。
自分は異邦人だ。
この世界のどこにも、自分の居場所なんて用意されていない。
ズボンのポケットに手を突っ込んで探るが、指先に触れるのは元の世界の小銭入れと、圏外表示のまま沈黙を守るスマートフォンだけ。こちらの世界で通用する紙幣や硬貨なんて、一枚も持っているはずがない。
「……無一文」
その単語の重みが、鉛の塊のようにずしりと肩にのしかかる。
ついさっきまでは「選ばれし勇者」気分で空を見上げていたのに、今はただの「住所不定無職の腹ペコ不審者」だ。
状況は刻一刻と変化し、安定なんてどこにもない。
さっきまでの高揚感はどこへやら、今は底なしの惨めさと、先が見えない不安で胸が押しつぶされそうだ。
「これが……生きるってことかよ」
りくは力なく、自嘲気味に笑った。
永遠に続く幸せもなければ、永遠に続く不幸もない。ただ、状況が川の水のようにコロコロと変わり、流れていくだけ。
その濁流に翻弄されながら、それでも腹は減るし、足は勝手に前へ進もうとする。
「とにかく、仕事だ。金だ」
りくは頭を振り、思考を強制的に切り替えた。
嘆いていても腹は膨れない。この「思い通りにならない現実」を丸ごと受け入れて、その泥沼の中で自分にできることをやるしかない。
彼は意を決して、通りがかった一人の男に声をかけた。飛脚風の、いかにも荒事慣れしていそうな強面の男だ。
「あ、あの、すみません」
「あん? なんだい兄ちゃん、ひょろっとしてんなぁ」
男は怪訝そうに太い眉をひそめ、りくを頭のてっぺんからつま先までジロリと値踏みした。
だが、りくの目にある必死な光と、隠しきれない困窮の色を見て取ったのか、すぐにその表情を和らげた。
「仕事を探してるんですが……日払いで、住み込みで、誰でもできるような……」
「ははあ、なるほど。田舎から一旗揚げに出てきたが、スッカラカンになっちまったって口か? よくある話だ」
男は豪快に笑うと、煙管(キセル)をくわえたまま、親切に道を指差してくれた。
「この道をまっすぐ行って、二つ目の角を右だ。『えびす屋』って看板が出てる。そこに行きな。荒っぽい仕事も多いが、選り好みしなけりゃ食いっぱぐれることはねえはずだ」
「えびす屋……ありがとうございます!」
りくは深々と、九十度腰を折って頭を下げた。
人の情けが身に染みる。見知らぬ世界、見知らぬ他人だが、この世界も捨てたもんじゃないかもしれない。
教えられた道を歩く。
大通りの喧騒から離れるにつれ、日が完全に落ちた夜の帳(とばり)が濃くなっていく。
まばらになった瓦斯灯の光が、湿り気を帯びた石畳の道を、濡れた黒曜石のように鈍く輝かせている。
冷たい夜風が吹き抜け、街路樹の枝を激しく揺らす。ざわざわ、ざわざわと鳴る葉音は、りくの心にある不安を代弁しているようでもあり、同時に「行け、止まるな」と背中を乱暴に押しているようでもあった。
やがて、目的の建物が闇の中に浮かび上がってきた。
古びているが、太い梁(はり)を使用した、がっしりとした造りの木造二階建て。
入り口には『万事請負・口入れ処 えびす屋』と墨書された大きな木の看板が掲げられ、その下では古びた赤提灯が風に揺れている。
中からは、男たちの野太い怒号や下品な笑い声、そして何かの依頼について熱く議論する声が、獣の唸り声のように漏れ聞こえてくる。
りくは喉をごくりと鳴らし、乾いた唾を飲み込んだ。
ここが、この世界での第一歩。
この薄汚れた引き戸の向こうには、どんな厄介事が、どんな理不尽が待っているのか。
きっと、思い通りにいかないことばかりだろう。辛いこと、痛いことばかりかもしれない。
でも、ここで立ち止まっていては、何も始まらない。
りくは、なけなしの勇気を心臓の奥底から振り絞り、自分の心のどこかにまだ残っている「歪みを起こす力」──今はまだ頼りない、吹けば飛ぶような陽炎の力──を信じるように、右手をぎゅっと握りしめた。
「たのもう!」
りくは勢いよく、重たい引き戸を横に開け放った。
ガラガラッ!
その瞬間、店内の空気が凍りついたように静まり返り、一斉に鋭い視線がりくに突き刺さる。
鼻をつくのは、安酒と紫煙、そして男たちの汗が入り混じった強烈な熱気。
そこには、りくが淡く想像していた「優雅な冒険者ギルド」とは似ても似つかない、欲望と生活臭、そして生々しい活気に満ちた、あまりにも人間臭い世界が広がっていた。
「……うわぁ」
りくの口から、またしても本音が漏れた。
思ってたのと全然違う。綺麗でもなければ、カッコよくもない。
でも、まあいい。
これが、俺の新しい現実だ。
りくは腹の音を店内に盛大に響かせながら、その混沌とした喧騒の渦へと、泥だらけの靴で一歩、足を踏み入れた。
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