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3部
第四十四話:月夜のバルコニーで
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嵐が、過ぎ去った後の、静寂だった。
ソフィアの、豪華な、しかし、今は、見るも、無惨な、寝室には、冷たい、冬の、夜気が、容赦なく、吹き込んでいた。砕け散った、窓ガラスの、破片が、床に、散らばり、その、一つ、一つが、雲間から、顔を、出した、冴え冴えとした、月光を、反射して、まるで、ダイヤモンドの、粉を、撒き散らしたかのように、きらきらと、輝いている。
つい、先程まで、この、場所を、支配していたはずの、血と、鉄と、死の、匂いは、まるで、悪夢の、残滓のように、綺麗に、消え失せていた。後に、残されたのは、濡れた、土の、匂いと、遠い、雪の、匂いを、運んでくる、冬の、夜の、清冽な、空気だけだった。
ソフィアは、まだ、ベッドの、上に、座り込んだまま、動けずにいた。
彼女の、視線の、先には、一人の、男が、立っている。
窓枠に、背を、預け、腕を、組み、まるで、この、惨状を、作り出したのが、自分では、ないとでも、言うかのように、平然と、月を、眺めている、男。
ユウキ。
彼女の、脳は、まだ、目の前で、起きた、出来事を、処理しきれずにいた。
死の、淵。
絶望的な、暗闇。
そして、その、闇を、切り裂いて、現れた、この、男。
彼が、指を、弾いたのか、手を、振ったのか、それさえも、定かではない。ただ、気づいた時には、自分を、殺そうとしていた、全ての、脅威が、この、世界から、「消去」されていた。
恐怖。安堵。混乱。畏怖。
あらゆる、感情が、彼女の、中で、渦を、巻き、その、出口を、求めて、ただ、瞳から、大粒の、涙となって、溢れ続けていた。
「―――ソフィア様!」
その、静寂を、破ったのは、カエルスの、悲痛な、叫び声だった。
扉が、内側から、蹴破られんばかりの、勢いで、開け放たれ、満身創痍の、カエルスが、血塗れの、剣を、杖代わりに、なだれ込んできた。その、背後からは、アレクシスが、片眼鏡を、光らせながら、転がり込んでくる。
「ご無事ですか!……って、これは……」
カエルスは、部屋の、惨状と、涙を、流す、ソフィア、そして、その、ソフィアの、前に、立つ、見知らぬ、男の、姿を、見て、一瞬で、その、全身から、沸騰するような、殺気を、放った。
「貴様、何者だ! ソフィア様から、離れろ!」
毒に、侵され、深手を、負っているはずの、彼の、体から、信じられないほどの、闘気が、迸る。
だが、その、殺気を、真正面から、受け止めても、ユウキは、眉一つ、動かさなかった。
彼は、ただ、面倒くさそうに、ちらり、と、カエルスを、一瞥すると、
「うわ、血まみれじゃん。カーペット、汚すなよな」
と、心底、どうでも、よさそうな、声で、呟いた。
その、あまりの、緊張感の、なさに、カエルスの、殺気も、毒気も、一瞬で、抜かれてしまう。
「な……」
「おい、筋肉ダルマ。状況を、見ろ」
カエルスの、肩を、借りながら、立ち上がった、アレクシスが、冷静に、部屋の、中を、観察する。
床に、散らばる、見慣れない、武器。主を、失った、黒い、外套。そして、何よりも、敵意の、不在。
「……どうやら、この、男が、敵では、ないらしい。むしろ、その、逆か。面白い。実に、興味深い、現象だ」
アレクシスは、ユウキの、全身を、まるで、新種の、昆虫でも、値踏みするかのように、ねめつけるように、観察し始めた。
「ほう。空間転移か? いや、痕跡がない。となると、純粋な、物理的、高速移動か? ソニックブームの、発生を、どう、抑制した? そして、あの、暗殺者どもは、どこへ、消えた? 死体も、血痕も、ない。これは、破壊では、ない。存在そのものの、消去……。まさか、あの、会議場での、柱の、消失現象と、同じ、原理だとでも、いうのか……!?」
ぶつぶつと、常人には、理解不能な、言葉を、呟きながら、彼は、懐から、羊皮紙と、羽ペンを、取り出し、猛烈な、勢いで、数式を、書きなぐり始めた。
「おい、もやし学者! 今は、そんな、場合では……!」
「黙れ、筋肉! これは、人類の、叡智が、新たな、ステージへ、進むか、どうかの、瀬戸際なのだ! 邪魔を、するな!」
「なんだと、貴様!」
いつもの、痴話喧嘩が、始まりそうな、その、カオスな、状況の、中で。
ユウキは、はあ、と、本日、一番、大きな、ため息を、ついた。
そして、まだ、静かに、涙を、流し続けている、ソフィアに、向かって、言った。
「……おい」
その、声は、ひどく、ぶっきらぼうだった。
「いつまで、泣いてんだよ。うるさいんだけど」
その、あまりにも、デリカシーのない、言葉に、カエルスが、「貴様、ソフィア様に、なんという、口の、利き方を!」と、再び、殺気を、放ちかけた。
だが、意外なことに、その、言葉を、聞いた、ソフィアの、肩が、ぴくり、と、震え、そして、
「……ぷっ」
と、小さな、笑い声が、漏れた。
やがて、それは、くすくす、という、堪えきれない、笑いへと、変わっていく。
「……ふふっ。ひどい、方。命を、助けて、いただいた、恩人に、対して、開口一番が、それですの?」
彼女は、涙で、濡れた、瞳で、ユウキを、見上げた。その、表情には、もう、絶望の、色は、なかった。
ユウキは、気まずそうに、そっぽを、向いた。
「……別に。助けた、つもりは、ない。ただ、寝覚めが、悪そうだったから、来ただけだ」
「まあ。ずいぶんと、寝覚めの、悪い、夜でしたこと。遥か、西の、果てから、わざわざ、飛んで、いらっしゃるくらい、ですものね」
ソフィアの、言葉には、少しだけ、いつもの、からかうような、響きが、戻っていた。
ユウ-キは、何も、言い返さず、ただ、黙って、バルコニーへと、歩き出した。
ソフィアも、吸い寄せられるように、ベッドから、降り、彼の、後を、追った。
「ソフィア様、お一人では、危険です!」
カエルスの、制止の、声を、彼女は、手で、制した。
「大丈夫よ、カエルス。……この、方より、安全な、場所など、この、世界の、どこにも、ない気が、するから」
その、言葉は、カエルスにも、アレクシスにも、そして、何より、ソフィア自身にとっても、驚くべき、言葉だった。
月明かりが、照らす、バルコニー。
冷たい、大理石の、手すりに、二人は、並んで、寄りかかった。
眼下には、雨に、洗われた、王都の、美しい、夜景が、広がっている。
しばらくの、沈黙の後、ソフィアが、静かに、口を、開いた。
「……なぜ、来てくださったのですか?」
それは、彼女が、本当に、聞きたかった、問いだった。
なぜ、この男は、現れたのか。
自分と、彼の、間には、何の、契約も、義理も、ない。むしろ、互いに、腹を、探り合う、警戒すべき、相手だったはずだ。
ユウキは、夜景から、目を、離さないまま、ぶっきらぼうに、答えた。
「……言ったろ。君に、死なれると、寝覚めが、悪い。それだけだ」
それは、愛の、告白でも、騎士の、誓いでも、なかった。
あまりにも、不器用で、あまりにも、自己中心的で、そして、あまりにも、社畜的な、理由。
自分の、平穏な、スローライフ(安眠)のために、君が、生きていることは、必要不可欠な、条件(ファクター)なのだと。
そう、言っているかのようだった。
だが、その、言葉は、どんな、甘い、愛の、囁きよりも、どんな、荘厳な、忠誠の、誓いよりも、まっすぐに、ソフィアの、心の、一番、深い、場所に、突き刺さった。
この男は、嘘を、つけないのだ。
体裁も、建前も、かなぐり捨てて、ただ、自分が、そう、感じたから、そう、行動した。
その、あまりにも、純粋で、そして、あまりにも、誠実な、魂の、あり方に、ソフィアは、胸を、締め付けられるような、切なさを、感じた。
彼女の、瞳から、再び、一筋の、涙が、こぼれ落ちた。
だが、それは、もう、悲しみや、恐怖の、涙では、なかった。
「……そう、ですの」
彼女は、それだけ、言うのが、精一杯だった。
ユウキは、そんな、彼女の、様子を、ちらり、と、見ると、気まずそうに、懐から、何かを、取り出した。
「……やるよ」
彼が、差し出したのは、あの、中立都市の、丘で、拾った、何の変哲もない、ただの、丸い石だった。
「道端で、拾った。いらないなら、捨てるけど」
「……いただきますわ」
ソフィアは、震える、指先で、その、石を、受け取った。
石は、ひんやりとしていた。だが、彼の、指先が、触れた、場所だけが、ほんのりと、温かい。
その、温もりが、彼女の、心の、奥底まで、じんわりと、染み渡っていくようだった。
「じゃあな」
ユウキは、それだけ、言うと、ひらり、と、バルコニーの、手すりに、飛び乗った。
「あ……!」
ソフィアが、何かを、言いかける、よりも、早く。
彼の、姿は、再び、夜の、闇へと、溶けるように、消えていった。
まるで、最初から、そこに、誰も、いなかったかのように。
後に、残されたのは、冴え冴えとした、月明かりと、手に、握りしめた、石の、かすかな、温もり、そして、胸の、中に、灯った、決して、消えることのない、温かい、光だけだった。
ソフィアは、一人、バルコニーに、佇み、彼が、消えていった、西の、空を、いつまでも、いつまでも、見つめていた。
二人の、転生者の、魂が、初めて、本当の、意味で、触れ合った、静かな、冬の、夜だった。
ソフィアの、豪華な、しかし、今は、見るも、無惨な、寝室には、冷たい、冬の、夜気が、容赦なく、吹き込んでいた。砕け散った、窓ガラスの、破片が、床に、散らばり、その、一つ、一つが、雲間から、顔を、出した、冴え冴えとした、月光を、反射して、まるで、ダイヤモンドの、粉を、撒き散らしたかのように、きらきらと、輝いている。
つい、先程まで、この、場所を、支配していたはずの、血と、鉄と、死の、匂いは、まるで、悪夢の、残滓のように、綺麗に、消え失せていた。後に、残されたのは、濡れた、土の、匂いと、遠い、雪の、匂いを、運んでくる、冬の、夜の、清冽な、空気だけだった。
ソフィアは、まだ、ベッドの、上に、座り込んだまま、動けずにいた。
彼女の、視線の、先には、一人の、男が、立っている。
窓枠に、背を、預け、腕を、組み、まるで、この、惨状を、作り出したのが、自分では、ないとでも、言うかのように、平然と、月を、眺めている、男。
ユウキ。
彼女の、脳は、まだ、目の前で、起きた、出来事を、処理しきれずにいた。
死の、淵。
絶望的な、暗闇。
そして、その、闇を、切り裂いて、現れた、この、男。
彼が、指を、弾いたのか、手を、振ったのか、それさえも、定かではない。ただ、気づいた時には、自分を、殺そうとしていた、全ての、脅威が、この、世界から、「消去」されていた。
恐怖。安堵。混乱。畏怖。
あらゆる、感情が、彼女の、中で、渦を、巻き、その、出口を、求めて、ただ、瞳から、大粒の、涙となって、溢れ続けていた。
「―――ソフィア様!」
その、静寂を、破ったのは、カエルスの、悲痛な、叫び声だった。
扉が、内側から、蹴破られんばかりの、勢いで、開け放たれ、満身創痍の、カエルスが、血塗れの、剣を、杖代わりに、なだれ込んできた。その、背後からは、アレクシスが、片眼鏡を、光らせながら、転がり込んでくる。
「ご無事ですか!……って、これは……」
カエルスは、部屋の、惨状と、涙を、流す、ソフィア、そして、その、ソフィアの、前に、立つ、見知らぬ、男の、姿を、見て、一瞬で、その、全身から、沸騰するような、殺気を、放った。
「貴様、何者だ! ソフィア様から、離れろ!」
毒に、侵され、深手を、負っているはずの、彼の、体から、信じられないほどの、闘気が、迸る。
だが、その、殺気を、真正面から、受け止めても、ユウキは、眉一つ、動かさなかった。
彼は、ただ、面倒くさそうに、ちらり、と、カエルスを、一瞥すると、
「うわ、血まみれじゃん。カーペット、汚すなよな」
と、心底、どうでも、よさそうな、声で、呟いた。
その、あまりの、緊張感の、なさに、カエルスの、殺気も、毒気も、一瞬で、抜かれてしまう。
「な……」
「おい、筋肉ダルマ。状況を、見ろ」
カエルスの、肩を、借りながら、立ち上がった、アレクシスが、冷静に、部屋の、中を、観察する。
床に、散らばる、見慣れない、武器。主を、失った、黒い、外套。そして、何よりも、敵意の、不在。
「……どうやら、この、男が、敵では、ないらしい。むしろ、その、逆か。面白い。実に、興味深い、現象だ」
アレクシスは、ユウキの、全身を、まるで、新種の、昆虫でも、値踏みするかのように、ねめつけるように、観察し始めた。
「ほう。空間転移か? いや、痕跡がない。となると、純粋な、物理的、高速移動か? ソニックブームの、発生を、どう、抑制した? そして、あの、暗殺者どもは、どこへ、消えた? 死体も、血痕も、ない。これは、破壊では、ない。存在そのものの、消去……。まさか、あの、会議場での、柱の、消失現象と、同じ、原理だとでも、いうのか……!?」
ぶつぶつと、常人には、理解不能な、言葉を、呟きながら、彼は、懐から、羊皮紙と、羽ペンを、取り出し、猛烈な、勢いで、数式を、書きなぐり始めた。
「おい、もやし学者! 今は、そんな、場合では……!」
「黙れ、筋肉! これは、人類の、叡智が、新たな、ステージへ、進むか、どうかの、瀬戸際なのだ! 邪魔を、するな!」
「なんだと、貴様!」
いつもの、痴話喧嘩が、始まりそうな、その、カオスな、状況の、中で。
ユウキは、はあ、と、本日、一番、大きな、ため息を、ついた。
そして、まだ、静かに、涙を、流し続けている、ソフィアに、向かって、言った。
「……おい」
その、声は、ひどく、ぶっきらぼうだった。
「いつまで、泣いてんだよ。うるさいんだけど」
その、あまりにも、デリカシーのない、言葉に、カエルスが、「貴様、ソフィア様に、なんという、口の、利き方を!」と、再び、殺気を、放ちかけた。
だが、意外なことに、その、言葉を、聞いた、ソフィアの、肩が、ぴくり、と、震え、そして、
「……ぷっ」
と、小さな、笑い声が、漏れた。
やがて、それは、くすくす、という、堪えきれない、笑いへと、変わっていく。
「……ふふっ。ひどい、方。命を、助けて、いただいた、恩人に、対して、開口一番が、それですの?」
彼女は、涙で、濡れた、瞳で、ユウキを、見上げた。その、表情には、もう、絶望の、色は、なかった。
ユウキは、気まずそうに、そっぽを、向いた。
「……別に。助けた、つもりは、ない。ただ、寝覚めが、悪そうだったから、来ただけだ」
「まあ。ずいぶんと、寝覚めの、悪い、夜でしたこと。遥か、西の、果てから、わざわざ、飛んで、いらっしゃるくらい、ですものね」
ソフィアの、言葉には、少しだけ、いつもの、からかうような、響きが、戻っていた。
ユウ-キは、何も、言い返さず、ただ、黙って、バルコニーへと、歩き出した。
ソフィアも、吸い寄せられるように、ベッドから、降り、彼の、後を、追った。
「ソフィア様、お一人では、危険です!」
カエルスの、制止の、声を、彼女は、手で、制した。
「大丈夫よ、カエルス。……この、方より、安全な、場所など、この、世界の、どこにも、ない気が、するから」
その、言葉は、カエルスにも、アレクシスにも、そして、何より、ソフィア自身にとっても、驚くべき、言葉だった。
月明かりが、照らす、バルコニー。
冷たい、大理石の、手すりに、二人は、並んで、寄りかかった。
眼下には、雨に、洗われた、王都の、美しい、夜景が、広がっている。
しばらくの、沈黙の後、ソフィアが、静かに、口を、開いた。
「……なぜ、来てくださったのですか?」
それは、彼女が、本当に、聞きたかった、問いだった。
なぜ、この男は、現れたのか。
自分と、彼の、間には、何の、契約も、義理も、ない。むしろ、互いに、腹を、探り合う、警戒すべき、相手だったはずだ。
ユウキは、夜景から、目を、離さないまま、ぶっきらぼうに、答えた。
「……言ったろ。君に、死なれると、寝覚めが、悪い。それだけだ」
それは、愛の、告白でも、騎士の、誓いでも、なかった。
あまりにも、不器用で、あまりにも、自己中心的で、そして、あまりにも、社畜的な、理由。
自分の、平穏な、スローライフ(安眠)のために、君が、生きていることは、必要不可欠な、条件(ファクター)なのだと。
そう、言っているかのようだった。
だが、その、言葉は、どんな、甘い、愛の、囁きよりも、どんな、荘厳な、忠誠の、誓いよりも、まっすぐに、ソフィアの、心の、一番、深い、場所に、突き刺さった。
この男は、嘘を、つけないのだ。
体裁も、建前も、かなぐり捨てて、ただ、自分が、そう、感じたから、そう、行動した。
その、あまりにも、純粋で、そして、あまりにも、誠実な、魂の、あり方に、ソフィアは、胸を、締め付けられるような、切なさを、感じた。
彼女の、瞳から、再び、一筋の、涙が、こぼれ落ちた。
だが、それは、もう、悲しみや、恐怖の、涙では、なかった。
「……そう、ですの」
彼女は、それだけ、言うのが、精一杯だった。
ユウキは、そんな、彼女の、様子を、ちらり、と、見ると、気まずそうに、懐から、何かを、取り出した。
「……やるよ」
彼が、差し出したのは、あの、中立都市の、丘で、拾った、何の変哲もない、ただの、丸い石だった。
「道端で、拾った。いらないなら、捨てるけど」
「……いただきますわ」
ソフィアは、震える、指先で、その、石を、受け取った。
石は、ひんやりとしていた。だが、彼の、指先が、触れた、場所だけが、ほんのりと、温かい。
その、温もりが、彼女の、心の、奥底まで、じんわりと、染み渡っていくようだった。
「じゃあな」
ユウキは、それだけ、言うと、ひらり、と、バルコニーの、手すりに、飛び乗った。
「あ……!」
ソフィアが、何かを、言いかける、よりも、早く。
彼の、姿は、再び、夜の、闇へと、溶けるように、消えていった。
まるで、最初から、そこに、誰も、いなかったかのように。
後に、残されたのは、冴え冴えとした、月明かりと、手に、握りしめた、石の、かすかな、温もり、そして、胸の、中に、灯った、決して、消えることのない、温かい、光だけだった。
ソフィアは、一人、バルコニーに、佇み、彼が、消えていった、西の、空を、いつまでも、いつまでも、見つめていた。
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