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第20話:『今、この瞬間』の俺たち
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嵐の中心で、世界が息を止めた。
ドラゴの姿をした「それ」の爪は、リリアの顔の数寸手前で、凍りついたかのように静止している。
リリアの「言葉」――彼女の「思い」そのものが、「異界」の「仕組み」に突き刺さり、その動きを根元から停止させていた。
だが、止まったのは「動き」だけだった。
「それ」は、敗北したのではない。
その巨体は、拘束されたまま、静かに、しかし確実に、最後の「仕事」を始めていた。
「……先生! アレ、何を!」
セレスティアが、恐怖を振り払い、「正しい見方」で「それ」を観測し、叫んだ。
「学園中の『歪み』の『欠片』が……! あそこに集まっていきます! あと、地下の『源泉』も!」
「それ」は、学園全体に仕掛けられた「悪意」を、その身に集め、凝縮させていた。
この学園ごと、この世界の「仕組み」を道連れに、自壊するつもりだ。
ユウキは、戦慄しながら「それ」の核心を見た。
(ダメだ、攻撃しても、防いでも、意味がない)
(あれはもう「化け物」じゃない。「苦しみ」の「塊」そのものだ)
ユウキの脳裏で、アーキバルド先生の言葉が、ひとつずつ、組み上がっていく。
「人生は、思い通りにならない」
「その『くるしみ』には、必ず『原因』がある」
「『原因』とは、お前たちの『強すぎる願い』だ」
(「それ」が「くるしみ」の「結果」なら)
ユウキは、「それ」――ドラゴの、苦痛に歪んだ「器」を見つめた。
(「原因」は、なんだ?)
(ドラゴの「力」への『こだわり』。「兄」への『こだわり』。「弱い自分」を認められない『こだわり』……!)
ユウキは、凍りついた真実に到達した。
(倒すべきは、あの「化け物」じゃない)
(断ち切るべきは、あの「こだわり」だ!)
その瞬間、嵐の向こう側、教師陣の中で戦っていたアーキバルドが、ユウキだけを、ただ一瞬、振り返った。
その声は、ユウキの心にだけ、直接届いた。
「ユウキ君! 『苦しみ』の『終わり』を、示せ!」
ユウキは、決断した。
彼は、仲間たちが必死に作った「調和」の中心から、一歩、踏み出した。
「ユウキ!? 危ない!」
リリアが叫ぶ。
ユウキは、振り向かなかった。
彼は、ただまっすぐに、「それ」――「ドラゴのくるしみ」へと歩いていく。
(前世の「俺」は、「過去」と「未来」に殺された)
(納期に怯え、終わったバグに怯え、「今、ここ」を見ていなかった)
(「過去」も「未来」も、ここには「無い」)
(「それ」を「今」に縛り付けている、「こだわり」だけが「敵」だ)
ユウキは、「それ」の目の前――リリアが止めた、その爪の真下に立った。
彼は、魔力を練り上げなかった。
彼は、詠唱の代わりに、息を吸い込んだ。
彼は、自分の「異常」――この世界の「仕組み」の「穴」に、自分の「魂」を流し込む。
「攻撃」ではない。
「防御」ではない。
「浄化」でもない。
ただ一点。
「ドラゴ」という「魂」と、「化け物」を、無理やり繋ぎ止めている「こだわり」の「一点」だけに、すべての「意識」を集中させる。
「それ」が、ユウキという「新たな異物」に気づき、最後の力を振り絞って、ユウキを排除しようと、その爪を動かそうとする。
ユウキは、叫んだ。
それは、リリアの「言葉」とは違う、魂そのものの「叫び」だった。
「ドラゴ!!」
「お前が『今、ここ』にいる理由は、兄貴のためでも、力のためでもねぇだろ!」
「お前が『弱い』とか『強い』とか、どうでもいいんだよ!」
ユウキは、その「繋がり」を、掴んだ。
「『今』、俺たちが、お前の目の前にいる!」
「お前が向き合うのは、『過去』でも『未来』でもねぇ!」
「『今、ここ』にいる、俺たちだ!」
ユウキの「無詠唱」が、「繋がり」そのものを、断ち切った。
「────────ッ!!」
声にならない、断末魔。
それは、「ドラゴ」からではなかった。
「異界」の「仕組み」が上げた、悲鳴だった。
「こだわり」を失った「化け物」は、「ドラゴ」という「器」を失った。
この世界の「仕組み」に、「存在」するための「理由」を、失った。
「それ」は、攻撃されたのではない。
「それ」は、ただ、この世界の「仕組み」そのものから「拒絶」された。
世界の「決まり事」が、その「あり得ない歪み」を、ゆっくりと、しかし確実に「修正」していく。
「化け物」の巨体は、まるでインクが水に溶けるように、その輪郭を失っていく。
嵐の雨に打たれながら、それは、音もなく、「無」に還っていった。
後に残されたのは、ボロボロになったローブをまとった、一人の少年だけだった。
ドラゴ・ヴァイスは、すべての力を失い、静かに、地下演習場の冷たい石畳の上に、倒れた。
エピローグ:春爛漫の『今』
あれから、数週間が過ぎた。
王都に、ようやく本物の春が訪れた。
アーリア魔法学園の時計塔は、まだ修復の足場が組まれたままだが、あの夜の惨劇が嘘のように、学園には穏やかな時間が流れている。
桜に似た「飛花」の並木道は、今が盛り。
風が吹くたび、薄紅色の花びらが一斉に舞い上がり、空を淡いピンク色に染め上げる。
その甘酸っぱい香りが、新学期の始まりを告げていた。
あの「受肉」事件の顛末は、王家と学園によって、最小限の「事故」として処理された。
ドラゴ・ヴァイスは、命に別状はなかったものの、その「魂」の「器」であった魔力回路を完全に焼失していた。
彼は、すべての「力」を失い、魔法使いではなくなった。
ヴァイス家の力もあってか、退学ではなく「休学」扱いとなり、実家のある領地へと送還されていったという。
もう、彼を「嫌な奴」と呼ぶ者は、この学園にはいなかった。
飛花が降り注ぐ中庭。
学園で一番の特等席。
そこに、奇妙な一団が、昼食のテーブルを囲んでいた。
ユウキ、リリア、カイト、ゴードン。
いつもの「補習仲間」たち。
そして、その隣で、リリアと楽しそうに(と言っても、シノにしては、だが)お弁当の中身について談笑している、シノ・ミヅキの姿。
彼女の周りには、もうあの「拒絶の壁」は感じられなかった。
「……あの、リリアさん。その『赤いの』は、どういう『仕組み』で、そのような『形』を維持しているのですか?」
「えー? これ? 気合だよ、気合!」
「き、あい……。理解不能な『現象』です……」
テーブルの端で、ぎこちない顔でお茶を飲んでいるのは、セレスティア・クラウンだった。
あの夜、彼女の「完璧」は、ルーンの「分解」とドラゴの「混沌」によって、完全に崩壊した。
だが、崩壊した「後」、彼女は吹っ切れた。
「完璧な理論」を失った彼女が、今、必死に理解しようとしているのは、目の前で繰り広げられる「理論なき『混沌』」だった。
カイトがゴードンの肉を盗み、ゴードンがカイトのパンを潰し、リリアがそれを笑い、ユウキが「やめろ」とため息をつく。
その「予測不能」な「関係性」こそが、あの「混沌」を打ち破った「答え」であることを、彼女は今、学んでいる最中だった。
「……ユウキ」
リリアが、ふと、隣で黙々とパンをかじっていたユウキに、顔を寄せた。
「ん? なんだ」
「ちょっと、二人で散歩しない? 飛花、すごいキレイだし!」
リリアは、ユウキの返事も待たずに彼の手を掴むと、仲間たちに向かって「あとはよろしく!」と叫び、駆け出した。
二人は、飛花の並木道を並んで歩いていた。
花びらの絨毯を踏みしめる、二つの足音だけが響く。
(結局)
ユウキは、舞い散る花びらを見上げながら、考えていた。
(この世界も、前の世界も、同じだ)
(思い通りにならないことだらけで、面倒な「関係性」で、できてやがる)
(そして、「確固たる『俺』」なんて、どこにもいやしない)
前世の「俺」も、今の「俺」も、ただ、流れる「時間」と「関係性」の中で、一瞬一瞬、必死に「反応」してるだけの、ただの「現象」だ。
(あるのは、いつも)
(「今、この瞬間」だけだ)
ユウキが、そんな風に世界の「真理」に浸っていると、きゅっ、と、隣を歩いていたリリアが、ユウキの手を握った。
「……!」
ユウキは、思考の海から、一瞬で「現実」に引き戻された。
「リリア……?」
「んー?」
リリアは、前を向いたまま、悪戯っぽく笑っている。
「ユウキ、また『どっか』に行ってたでしょ。『今、ここ』に、いなさい!」
ユウキは、握られた手の、信じられないほどの「温かさ」に、心臓が跳ねるのを感じた。
「……ああ」
(「俺」なんて、いなくてもいい)
(「世界の仕組み」なんて、どうでもいい)
ユウキは、リリアの手を、そっと握り返した。
(でも)
(『今、ここ』にある、この手の「温かさ」だけは)
(確かに「在る」)
花びらが、二人の肩に、優しく降り積もっていく。
その頃、学園長室。
アーキバルド先生は、新学期――「2年生」のクラス編成表を眺めながら、奇妙な液体を飲んでいた。
「……おや」
彼は、一枚の「編入」書類に、目を留めた。
そこには「ルーン」の名前と、「監査官補佐」の任を解き、「アーリア魔法学園 2年次」へ、正式に編入する、という王家の認可印が押されていた。
「ふむ」
アーキバルドは、愉快そうに笑った。
「『仕組み』の『穴』と、『仕組み』を『直す』者。あの『混沌』のクラスに、両方か」
「これは……来年も、退屈しなさそうだ」
ドラゴの姿をした「それ」の爪は、リリアの顔の数寸手前で、凍りついたかのように静止している。
リリアの「言葉」――彼女の「思い」そのものが、「異界」の「仕組み」に突き刺さり、その動きを根元から停止させていた。
だが、止まったのは「動き」だけだった。
「それ」は、敗北したのではない。
その巨体は、拘束されたまま、静かに、しかし確実に、最後の「仕事」を始めていた。
「……先生! アレ、何を!」
セレスティアが、恐怖を振り払い、「正しい見方」で「それ」を観測し、叫んだ。
「学園中の『歪み』の『欠片』が……! あそこに集まっていきます! あと、地下の『源泉』も!」
「それ」は、学園全体に仕掛けられた「悪意」を、その身に集め、凝縮させていた。
この学園ごと、この世界の「仕組み」を道連れに、自壊するつもりだ。
ユウキは、戦慄しながら「それ」の核心を見た。
(ダメだ、攻撃しても、防いでも、意味がない)
(あれはもう「化け物」じゃない。「苦しみ」の「塊」そのものだ)
ユウキの脳裏で、アーキバルド先生の言葉が、ひとつずつ、組み上がっていく。
「人生は、思い通りにならない」
「その『くるしみ』には、必ず『原因』がある」
「『原因』とは、お前たちの『強すぎる願い』だ」
(「それ」が「くるしみ」の「結果」なら)
ユウキは、「それ」――ドラゴの、苦痛に歪んだ「器」を見つめた。
(「原因」は、なんだ?)
(ドラゴの「力」への『こだわり』。「兄」への『こだわり』。「弱い自分」を認められない『こだわり』……!)
ユウキは、凍りついた真実に到達した。
(倒すべきは、あの「化け物」じゃない)
(断ち切るべきは、あの「こだわり」だ!)
その瞬間、嵐の向こう側、教師陣の中で戦っていたアーキバルドが、ユウキだけを、ただ一瞬、振り返った。
その声は、ユウキの心にだけ、直接届いた。
「ユウキ君! 『苦しみ』の『終わり』を、示せ!」
ユウキは、決断した。
彼は、仲間たちが必死に作った「調和」の中心から、一歩、踏み出した。
「ユウキ!? 危ない!」
リリアが叫ぶ。
ユウキは、振り向かなかった。
彼は、ただまっすぐに、「それ」――「ドラゴのくるしみ」へと歩いていく。
(前世の「俺」は、「過去」と「未来」に殺された)
(納期に怯え、終わったバグに怯え、「今、ここ」を見ていなかった)
(「過去」も「未来」も、ここには「無い」)
(「それ」を「今」に縛り付けている、「こだわり」だけが「敵」だ)
ユウキは、「それ」の目の前――リリアが止めた、その爪の真下に立った。
彼は、魔力を練り上げなかった。
彼は、詠唱の代わりに、息を吸い込んだ。
彼は、自分の「異常」――この世界の「仕組み」の「穴」に、自分の「魂」を流し込む。
「攻撃」ではない。
「防御」ではない。
「浄化」でもない。
ただ一点。
「ドラゴ」という「魂」と、「化け物」を、無理やり繋ぎ止めている「こだわり」の「一点」だけに、すべての「意識」を集中させる。
「それ」が、ユウキという「新たな異物」に気づき、最後の力を振り絞って、ユウキを排除しようと、その爪を動かそうとする。
ユウキは、叫んだ。
それは、リリアの「言葉」とは違う、魂そのものの「叫び」だった。
「ドラゴ!!」
「お前が『今、ここ』にいる理由は、兄貴のためでも、力のためでもねぇだろ!」
「お前が『弱い』とか『強い』とか、どうでもいいんだよ!」
ユウキは、その「繋がり」を、掴んだ。
「『今』、俺たちが、お前の目の前にいる!」
「お前が向き合うのは、『過去』でも『未来』でもねぇ!」
「『今、ここ』にいる、俺たちだ!」
ユウキの「無詠唱」が、「繋がり」そのものを、断ち切った。
「────────ッ!!」
声にならない、断末魔。
それは、「ドラゴ」からではなかった。
「異界」の「仕組み」が上げた、悲鳴だった。
「こだわり」を失った「化け物」は、「ドラゴ」という「器」を失った。
この世界の「仕組み」に、「存在」するための「理由」を、失った。
「それ」は、攻撃されたのではない。
「それ」は、ただ、この世界の「仕組み」そのものから「拒絶」された。
世界の「決まり事」が、その「あり得ない歪み」を、ゆっくりと、しかし確実に「修正」していく。
「化け物」の巨体は、まるでインクが水に溶けるように、その輪郭を失っていく。
嵐の雨に打たれながら、それは、音もなく、「無」に還っていった。
後に残されたのは、ボロボロになったローブをまとった、一人の少年だけだった。
ドラゴ・ヴァイスは、すべての力を失い、静かに、地下演習場の冷たい石畳の上に、倒れた。
エピローグ:春爛漫の『今』
あれから、数週間が過ぎた。
王都に、ようやく本物の春が訪れた。
アーリア魔法学園の時計塔は、まだ修復の足場が組まれたままだが、あの夜の惨劇が嘘のように、学園には穏やかな時間が流れている。
桜に似た「飛花」の並木道は、今が盛り。
風が吹くたび、薄紅色の花びらが一斉に舞い上がり、空を淡いピンク色に染め上げる。
その甘酸っぱい香りが、新学期の始まりを告げていた。
あの「受肉」事件の顛末は、王家と学園によって、最小限の「事故」として処理された。
ドラゴ・ヴァイスは、命に別状はなかったものの、その「魂」の「器」であった魔力回路を完全に焼失していた。
彼は、すべての「力」を失い、魔法使いではなくなった。
ヴァイス家の力もあってか、退学ではなく「休学」扱いとなり、実家のある領地へと送還されていったという。
もう、彼を「嫌な奴」と呼ぶ者は、この学園にはいなかった。
飛花が降り注ぐ中庭。
学園で一番の特等席。
そこに、奇妙な一団が、昼食のテーブルを囲んでいた。
ユウキ、リリア、カイト、ゴードン。
いつもの「補習仲間」たち。
そして、その隣で、リリアと楽しそうに(と言っても、シノにしては、だが)お弁当の中身について談笑している、シノ・ミヅキの姿。
彼女の周りには、もうあの「拒絶の壁」は感じられなかった。
「……あの、リリアさん。その『赤いの』は、どういう『仕組み』で、そのような『形』を維持しているのですか?」
「えー? これ? 気合だよ、気合!」
「き、あい……。理解不能な『現象』です……」
テーブルの端で、ぎこちない顔でお茶を飲んでいるのは、セレスティア・クラウンだった。
あの夜、彼女の「完璧」は、ルーンの「分解」とドラゴの「混沌」によって、完全に崩壊した。
だが、崩壊した「後」、彼女は吹っ切れた。
「完璧な理論」を失った彼女が、今、必死に理解しようとしているのは、目の前で繰り広げられる「理論なき『混沌』」だった。
カイトがゴードンの肉を盗み、ゴードンがカイトのパンを潰し、リリアがそれを笑い、ユウキが「やめろ」とため息をつく。
その「予測不能」な「関係性」こそが、あの「混沌」を打ち破った「答え」であることを、彼女は今、学んでいる最中だった。
「……ユウキ」
リリアが、ふと、隣で黙々とパンをかじっていたユウキに、顔を寄せた。
「ん? なんだ」
「ちょっと、二人で散歩しない? 飛花、すごいキレイだし!」
リリアは、ユウキの返事も待たずに彼の手を掴むと、仲間たちに向かって「あとはよろしく!」と叫び、駆け出した。
二人は、飛花の並木道を並んで歩いていた。
花びらの絨毯を踏みしめる、二つの足音だけが響く。
(結局)
ユウキは、舞い散る花びらを見上げながら、考えていた。
(この世界も、前の世界も、同じだ)
(思い通りにならないことだらけで、面倒な「関係性」で、できてやがる)
(そして、「確固たる『俺』」なんて、どこにもいやしない)
前世の「俺」も、今の「俺」も、ただ、流れる「時間」と「関係性」の中で、一瞬一瞬、必死に「反応」してるだけの、ただの「現象」だ。
(あるのは、いつも)
(「今、この瞬間」だけだ)
ユウキが、そんな風に世界の「真理」に浸っていると、きゅっ、と、隣を歩いていたリリアが、ユウキの手を握った。
「……!」
ユウキは、思考の海から、一瞬で「現実」に引き戻された。
「リリア……?」
「んー?」
リリアは、前を向いたまま、悪戯っぽく笑っている。
「ユウキ、また『どっか』に行ってたでしょ。『今、ここ』に、いなさい!」
ユウキは、握られた手の、信じられないほどの「温かさ」に、心臓が跳ねるのを感じた。
「……ああ」
(「俺」なんて、いなくてもいい)
(「世界の仕組み」なんて、どうでもいい)
ユウキは、リリアの手を、そっと握り返した。
(でも)
(『今、ここ』にある、この手の「温かさ」だけは)
(確かに「在る」)
花びらが、二人の肩に、優しく降り積もっていく。
その頃、学園長室。
アーキバルド先生は、新学期――「2年生」のクラス編成表を眺めながら、奇妙な液体を飲んでいた。
「……おや」
彼は、一枚の「編入」書類に、目を留めた。
そこには「ルーン」の名前と、「監査官補佐」の任を解き、「アーリア魔法学園 2年次」へ、正式に編入する、という王家の認可印が押されていた。
「ふむ」
アーキバルドは、愉快そうに笑った。
「『仕組み』の『穴』と、『仕組み』を『直す』者。あの『混沌』のクラスに、両方か」
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『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
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