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第二部:深まる謎とメンバーの過去
第6話「番犬・権田と守れなかった約束」
しおりを挟む七月の終わり。世界は、巨大な窯(かま)の中にいるかのように、じりじりと灼かれていた。
空は、強い日差しで白茶けて、青色との境界さえ曖昧になっている。アスファルトは陽炎(かげろう)を立ち上らせ、遠くの景色をぐにゃりと歪ませていた。空気は、熱せられたガラスのように、重く、そして肌にまとわりつく。一歩外に出るだけで、全身から汗が噴き出し、思考力さえ奪われていくようだった。
ミンミンミンミン…、ジリジリジリジリ…。
種類の違う蝉たちが、互いの存在をかき消すかのように、やかましい大合唱を繰り広げている。その声は、もはや夏の風物詩などという悠長なものではなく、脳髄に直接響く、暴力的なまでの生命力の顕示だった。
そんな猛暑日の午後、ミステリー研究会の事務所は、外界の灼熱地獄から切り離された、一種の避難所のようだった。とはいえ、旧式のエアコンは、唸りを上げるばかりで、部屋を十分に冷やすほどの力はない。ぬるい空気が、よどむように漂っていた。
「だめ…もう、一歩も動けない…。わたくしは、灼熱の砂漠に打ち捨てられた、哀れな旅人…」
麗華さんは、ソファの上で、溶けたバターのようにぐったりと伸びている。
『室温35.2度。思考能力の低下が予測されます。適度な塩分と糖分の補給を推奨』
電脳は、画面にアイスキャンディーのAA『[|]]』を表示させながら、冷静に警告した。
影山さんは、なぜか一人涼しい顔で、窓辺に吊るした風鈴の、チリン、という涼やかな音色に耳を澄ませている。
そして、権田さん。
いつもなら、この暑さにも負けず、トレーニングにでも打ち込んでいるはずの彼が、今日に限って、珍しく、静かだった。事務所の隅の椅子に、大きな体を縮こませるように座り、ただ、じっと、自分の拳を見つめている。その背中は、やけに小さく見えた。
その、夏の午後の気怠い静寂を破ったのは、控えめなドアのノック音だった。
入ってきたのは、小柄な、大学生くらいの若い女性だった。大きな眼鏡の奥の瞳は、不安げに揺れている。彼女は、小さなキャリーケースを、胸の前で大切そうに抱えていた。
「あの…こちらで、どんな悩みでも、聞いてくださると…」
女性は、おずおずと切り出した。
影山さんが、優雅な仕草で彼女をソファに促す。
「ようこそ。我々は、謎を愛し、謎に愛された者たちだ。君の抱えるミステリーを、話してくれたまえ」
「は、はい…あの、佐野と申します…」
佐野と名乗った彼女の依頼内容は、我々の想像を、ある意味で、遥かに下回るものだった。
「…この子を、守ってほしいんです」
そう言って、彼女は、キャリーケースの扉をそっと開けた。中から、白くてふわふわの、美しい毛並みを持つ一匹の猫が、おずおずと顔を出す。
「この子は、タマです。私の、たった一人の家族なんですけど…」
彼女は、最近、一人暮らしのこのアパートで、夜な夜な、恐ろしい物音に悩まされているという。
「ドアの外から…獣の、唸るような、威嚇するような声が聞こえるんです。それを聞くと、タマが、すごく怯えてしまって…。私自身も怖くて、最近は、夜も眠れなくて…」
警察に相談するほどでもない。でも、万が一、タマに何かあったらと思うと、気が気でない。
「それで…一日だけでいいんです。タマの、ボディーガードになっていただけませんか…?」
ボディーガード。その対象は、一匹の猫。
あまりにささやかな依頼に、麗華さんも、少し拍子抜けしたような顔をしている。
だが、その言葉を聞いた瞬間、それまで静かだった権田さんの雰囲気が、一変した。
彼は、見つめていた拳を、ぐっと強く握りしめた。そして、立ち上がり、佐野さんの前に、まっすぐに立った。その瞳には、今までに見たこともないような、真剣で、そして、どこか鬼気迫るほどの、強い光が宿っていた。
「…引き受けた」
その声は、低く、そして、重かった。
「その猫は、俺が、命に代えても、守ってみせる」
その、あまりにも大げさな宣言に、俺たちは、ただ、あっけに取られるしかなかった。
◇
佐野さんのアパートは、事務所からほど近い、古い木造のアパートだった。一階の角部屋。玄関を開けると、むわりとした熱気と、猫特有の匂いがした。部屋は、物が少なく、すっきりと片付いている。
「さあ、これより、警護対象(プリンセス)の絶対防衛体制を敷く!」
権田さんは、部屋に入るなり、戦闘モードに突入した。その目は、もはや、冗談や、遊びではない。
「まず、侵入経路の確認だ!」
彼は、部屋中の窓や、ドアを、一つ一つ、念入りにチェックし始めた。
「この窓は、作りが甘い!外部からの侵入を許す可能性がある!」
「このドアの鍵も、旧式すぎる!プロの手にかかれば、三十秒もたないだろう!」
佐野さんは、自分の部屋のセキュリティの脆弱性を、次々と指摘され、どんどん不安な顔になっていく。
「ボス!この部屋は、要塞化するには、あまりにも不向きです!」
「ふむ…」影山さんは、顎に手を当てて、面白そうに頷いている。
「ならば、トラップを仕掛けるまでだ!」
権田さんは、そう言うと、部屋の隅にあった小さなテーブルや、椅子を、玄関の前に積み上げ始めた。簡易的なバリケードだ。
「おい、権田!人の家の家具で、何してんだ!」
「うるさい!これは、敵の侵攻を、少しでも遅らせるための、苦肉の策だ!」
バリケードを築き終えると、権田さんは、今度は、部屋の隅で丸くなっている、警護対象のタマの前に、ドスンと座り込んだ。
彼は、タマの、青く澄んだ瞳を、真正面から、じっと見つめた。
「…おい、お前。名前は、タマ、だったな」
タマは、ただ、にゃあ、と小さく鳴いた。
「安心しろ。俺が来たからには、お前を傷つける奴は、誰一人として、この部屋に入れるものか。…だから、教えてくれ。お前が見た、敵の姿を。どんな些細な情報でもいい」
真剣な顔で、猫に、聞き込み捜査をしている。
タマは、権田さんの巨大な顔を、きょとんとした目で見つめ返し、そして、ぷいと、そっぽを向いてしまった。
「ちくしょう…!完全な黙秘か…!」
権田さんは、本気で悔しがっている。その姿は、滑稽なはずなのに、なぜか、笑えなかった。彼の真剣さは、尋常ではなかったからだ。
「よし、決めた。今夜は、俺が、このドアの前で、一睡もせずに、見張りを続ける」
権田さんは、そう宣言すると、玄関の前に、仁王立ちになった。
「お、おい、本気かよ…」
「当たり前だ。依頼人の、安眠と、その家族の安全を守る。それが、俺たちの仕事だろうが」
その言葉に、誰も、何も言えなかった。俺たちは、この、あまりにも不釣り合いで、あまりにも真剣な、一晩の警護任務に、付き合うことになった。
◇
夜になった。
しかし、気温は、ほとんど下がらない。熱帯夜だ。アスファルトや、コンクリートが、昼間に溜め込んだ熱を、じわじわと放出し続けている。遠くの空が、時折、稲光で白く光る。夕立が来るのかもしれない。
結局、影山さんと麗華さん、電脳は、「後方支援に徹する」と言って、事務所に戻っていった。この狭いアパートに、全員がいるわけにもいかない。俺は、この、あまりにも真剣な権田さんを、一人にしておくのが、なんとなく不安で、残ることにした。
俺と権田さんは、玄関前の、狭い廊下に、並んで座り込んでいた。佐野さんは、タマを抱いて、奥の寝室にいる。
しんと静まり返った部屋。聞こえるのは、旧式のエアコンの、頼りない駆動音と、遠くで鳴り続ける、蝉の声だけ。
「…なあ、権田さん」
俺は、沈黙に耐えきれず、口を開いた。
「なんで、そんなに、真剣なんだ?猫の、ボディーガードに」
権田さんは、しばらく、何も答えなかった。ただ、暗い廊下の、その先の、玄関のドアを、じっと見つめていた。
やがて、彼は、ぽつり、ぽつりと、語り始めた。
「…俺には、昔、ツバサっていう、ダチがいたんだ」
声は、いつもより、ずっと、静かだった。
「俺は、昔から、図体だけはデカかった。でも、気は、弱くてな。喧嘩も、怖かった。…ツバサは、その逆で、体は、すげえ小さくて、ひ弱だったけど、誰よりも、優しい奴だった」
彼の脳裏に、遠い昔の情景が、蘇っているのが分かった。
「ツバサは、よく、いじめられてた。俺は、いつも、それを見てた。助けなきゃって、思ってた。俺は、デカいんだから。俺が、守らなきゃいけないって。…でもな」
権田さんの声が、詰まった。彼は、自分の膝の上の拳を、強く、強く、握りしめた。
「…いざ、その場面になると、俺は、足がすくんで、動けなかったんだ。怖かったんだよ。俺も、いじめられるんじゃないかとか、殴られたら痛いな、とか…。そんな、くだらねえことを考えてるうちに、ツバサは、いつも、泣かされてた」
ある日、いじめは、エスカレートした。ツバサは、数人に、路地裏に連れて行かれた。権田さんも、その場にいた。
「ツバサは、俺を見たんだ。助けてくれって、目で、言ってた。…でも、俺は、また、動けなかった。いじめてた奴らが、俺を見て、笑ったんだ。『なんだよ、この、役立たずの、デクノボウ』ってな…」
その日を境に、ツバサは、権田さんと、口を利かなくなった。そして、すぐに、遠くへ、引っ越して行った。謝る機会さえ、なかった。
「…俺は、デクノボウなんだよ、佐藤」
権田さんの声は、涙で、震えていた。
「守るべき力がありながら、守るべき時に、守れなかった。俺は、あの日、ツバサとの約束を、破ったんだ。…だから、決めたんだ。もう、二度と、凍りついたりしないって。目の前で、助けを求めてる奴がいるなら、相手が、人間だろうが、幽霊だろうが、猫だろうが、絶対に、守り抜くってな」
だから、これは、彼の、贖罪の儀式なのだ。
小さな猫の命に、彼は、守れなかった、かつての親友の姿を、重ねていたのだ。
その、時だった。
ギィィィ…、ガガガッ!グルルルル…!
アパートの外から、獣が、何かを引っ掻くような音と、地の底から響くような、低い唸り声が、聞こえてきた。
その声に、奥の部屋で、タマが、「シャーッ!」と、鋭い威嚇の声を上げた。
権田さんの顔つきが、変わった。
「…来たな」
彼は、静かに立ち上がった。その体からは、先程までの、悲壮な雰囲気は消え、代わりに、揺るぎない、覚悟のオーラが立ち上っていた。
◇
俺たちは、音を立てないように、そっと、外に出た。
声は、アパートの裏手、ゴミ捨て場のある、薄暗い路地から聞こえてくる。
そこには、一本の、頼りない電灯が、ぼんやりと、地面を照らしていた。
その光の中に、一匹の、巨大な猫がいた。
シャム猫のような、黒い顔と、太い手足。その体は、喧嘩の跡なのか、傷だらけで、片方の耳は、ちぎれている。その目つきは、野生そのものの、鋭い光を宿していた。近所を縄張りにする、ボス猫なのだろう。
そいつが、佐野さんの部屋の、窓のすぐ下で、唸り声を上げ、壁を引っ掻いていたのだ。
権田さんは、そのボス猫の前に、静かに、立ちはだかった。
ボス猫は、権田さんの存在に気づくと、全身の毛を逆立て、「フゥゥーーーッ!」と、威嚇の声を上げた。
一触即発の、睨み合い。
権田さんの手が、微かに、震えているのを、俺は見た。彼の脳裏に、あの日の、路地裏の光景が、蘇っているのかもしれない。
だが、彼は、逃げなかった。
彼は、一歩、前に、出た。
そして、ボス猫と、佐野さんの部屋の間に、仁王立ちになった。
戦うのではない。威嚇するのでもない。
ただ、そこに、壁として、立つ。
「ここから先へは、行かせない」
その低い声は、静かだったが、絶対に、揺るがない、という、強い意志に満ちていた。
その、睨み合いの、真っ最中だった。
俺は、見てしまった。
ボス猫の、さらに後ろ。路地の、深い、深い闇の中。
電灯の光が、全く届かない、その暗闇が、一瞬、ぐにゃり、と歪んだ。
そして、そこに、一つの「影」が、現れた。
猫の影ではない。それは、もっと、背が高く、細長い、人間の形に似た影だった。
だが、その動きは、人間のものではなかった。
今まで感じてきた、ソラの気配のような、悲しさや、寂しさとは、全く違う。
あれは、もっと、純粋な、悪意。獲物を狙う、捕食者のような、冷たい気配。
その影は、権田さんと、ボス猫の、その緊張感に満ちた対峙を、まるで、楽しむかのように、じっと、見つめていた。
ボス猫は、権田さんの、その、岩のような、不動の気迫に、ついに、根負けしたようだった。
最後に、一声、「にゃあ…」と、今度は、少しだけ、か細い声で鳴くと、くるりと、身を翻し、闇の中へと、走り去っていった。
そして、ボス猫が消えると同時に、あの、路地裏の、不気味な影も、まるで、闇に溶けるように、スッと、その姿を消した。
後に残されたのは、遠くで鳴り響く、雷鳴の音と、俺の、早鐘のように鳴る、心臓の音だけだった。
権田さんは、その場に、ふう、と、長い、長い、息を吐いた。その体から、張り詰めていた糸が、ぷつりと、切れたのが分かった。
彼は、俺の方を振り返り、そして、少しだけ、照れくさそうに、笑った。
それは、俺が今まで見た、彼の、どの笑顔よりも、力強く、そして、晴れやかな、本当の笑顔だった。
ゴロゴロゴロ…!
雷鳴が、近づいてくる。
やがて、大粒の雨が、ぽつり、ぽつりと、地面を叩き始めた。
それは、長い間、彼の心に、澱のように溜まっていた、後悔と、悲しみを、すべて、洗い流してくれるかのような、力強い、夕立だった。
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