6 / 51
第6話:真夏の夜、ギャルの素顔
しおりを挟む
夏休みという名の、解放と閉塞が同居する奇妙な季節が、すぐそこまで迫っていた。
時計の針は最も高い位置で傲慢に輝き、地上はまるで地獄の釜の底でじっくりと煮込まれているかのような、猛烈な暑さに包まれている。
焼きつけられたアスファルトの上では陽炎が意思を持っているかのように立ち昇り、遠くに見える景色は蜃気楼のように頼りなく揺らめいていた。それは現実と幻の境界線を曖昧にし、白昼夢へと誘う危険な揺らぎだった。
私の部屋のクーラーだけが、この世の終わりを告げるような悲痛な呻き声を上げながら、かろうじて文明の砦としての最後の機能を保っている。もはやそれは冷気を送り出す機械ではなく、灼熱地獄に抗う孤独な戦友だった。
あの日、学園祭の準備という名の混沌の中で起きた一連の出来事以来、私、水無月と、秋葉くん、そして朝陽輝くんという、およそ共通項というものが見当たらない三人組は、学校のシステム上、便宜的に「グループ」のようなものとして認識されるようになっていた。
円、三角、四角を無理やり同じ箱に詰め込んだような、いびつで不安定な集合体。それは、私が心の底から望んだ姿では全くなかった。
しかし、同時に、以前のような息が詰まるほどの孤独や、透明人間になったかのような疎外感とも、また質の違うものだった。そこには、不協和音ながらも確かに存在する、微かな繋がりがあった。
太陽の擬人化である輝くんは、相変わらず天気のように予測が不可能だった。晴れ渡る空のような笑顔で話しかけてきたかと思えば、次の瞬間には雷雲を纏ったような真剣な眼差しで何かに没頭する。彼の感情のスイッチは、常人には理解不能な場所に設置されているらしかった。
そんな輝くんの前でだけ、普段は寡黙な秋葉くんは、饒舌な異世界言語の語り部へと変貌を遂げる。彼の口から紡がれるのは、難解な専門用語と独自の解釈で彩られた、壮大な物語の断片だ。
そして私は、その奇妙で予測不能な相互作用を、感情の起伏を悟られぬよう細心の注意を払いながら観察する、無口なフィールドワーカー。それが、私たちの間に形成された、暗黙の基本的な立ち位置だった。
「――なあ、今週末さ、神社の祭、行こうぜ!」
夏休み前の最後のホームルーム。担任の退屈な連絡事項がようやく終わり、解放感と倦怠感が教室を満たしていた、まさにその時。 輝くんが投げたその一言は、静かな水面に投じられた石のように、鮮やかな波紋の始まりとなった。
「祭り……ですか?」
秋葉くんが、分厚いレンズの奥にある目を、珍しく不安げに瞬かせた。彼の脳内では、すでに「祭り」というキーワードから膨大なデータが検索され、リスク分析が開始されているに違いない。
「その時期の神社となると、おそらく限定の描き下ろしグッズが頒布される可能性があります。屋台という名の補給ポイントも魅力的ですが……しかし、あの人口密度は危険極まりない。物理的接触によるエンカウント率の上昇、音声情報の過剰摂取による精神的疲弊……総合的に見て、戦略的撤退が推奨されるかと」
「行くしかねえじゃん、限定グッズ! 俺も手伝うって! 何でも言ってくれ!」
輝くんは秋葉くんの懸念を、ポジティブなエネルギーで真正面から粉砕した。彼の思考回路は、常に「楽しそう」か「そうでないか」の二択で構成されているらしい。
「いや、そういう物理的な問題では……そもそも、あの人混みの中で目的のブースにたどり着くのは至難の業で……」
「水無月は? 行くだろ?」
突然、灼熱の太陽のような視線が、日陰を求める私に突き刺さった。
やめてくれ、私に話を振らないでほしい。 私は、その日、原因不明の腹痛により、ベッドの上で安静にしている予定だったのだ。脳内ではすでに、体温計の数字を偽装し、母親を説得するための完璧なシナリオが、三幕構成の戯曲のように構築済みだったというのに。
しかし、輝くんの「行くだろ?」という言葉は、形式上は疑問形でありながら、その実、一切の反論を許さない決定事項の響きを宿していた。天気予報が「降水確率90%」と告げるような、抗いがたい自然現象にも似た圧力。それに逆らうことは、台風に向かって傘をさすような無謀な行為に思えた。
結局、私の完璧な仮病シナリオは上演されることなく幕を閉じ、その日の放課後、私はなぜか秋葉くんと「どのルートで屋台を回れば効率的に限定グッズを確保し、かつカロリー摂取と移動距離のバランスを最適化できるか」という、軍事作戦さながらの高度な作戦会議に付き合わされる羽目になったのだった。
そして、運命の祭りの当日がやってきた。
西の空が茜色から深い藍へとその表情を変えても、日中の熱をたっぷりと吸い込んだアスファルトが放出する熱気は、少しも衰えることを知らなかった。ねっとりとした蒸し暑い夜気が、まるで第二の皮膚のように肌に張り付いてくる。
最寄り駅から神社へと続く参道の入り口は、すでにおびただしい数の人々で埋め尽くされ、巨大な生命体のようにゆっくりと蠢いていた。
人の声、子供たちの甲高い笑い声、テキ屋の威勢のいい呼び込み、そしてそれら全てを包み込むように、どこからか聞こえてくる祭囃子の単調ながらも心を浮き立たせる音色。それらの音が渾然一体となって、巨大な音のうねりとなり、私の鼓膜を容赦なく揺らす。
りんご飴の、少し焦げた甘ったるい匂い。イカ焼きの、香ばしくて食欲を猛烈に刺激する匂い。ソースが焼ける匂い、わたあめの砂糖の匂い。 そして、時折ふっと鼻腔をかすめる、打ち上げ花火の火薬の匂いが、夏の夜の非日常を告げていた。
情報量が、あまりにも多すぎる。
私の脳のCPUは、この五感から流れ込んでくる膨大な感覚データを処理しきれず、完全にフリーズ寸前だった。 人混みは苦手だ。大きな音も、強すぎる匂いも、全てが私のキャパシティを静かに、しかし確実に削っていく。
「うわー! すげえ人! おい、はぐれんなよ、お前ら!」
人混みの中心で、輝くんがまるで魚が水を得たように楽しそうに叫んだ。彼のエネルギーは、この喧騒を養分にして、さらに増大しているかのようだ。
「は、はぐれた場合は、携帯端末による通信が有効かと……」
秋葉くんが、周囲を警戒するようにキョロキョロしながら、か細い声で提案する。
「こういうとこじゃ、電波なんか繋がんねえんだよ。アンテナは立ってても、基地局がパンクしてんだ。ほら、行くぞ!」
そう言うやいなや、輝くんは、あまりにも自然な動作で、私の右腕をぐっと掴んだ。
「―――――っ!?」
触れられた部分から、彼の体温が一気に流れ込んでくる。 それは、この夜の蒸し暑さのせいなのか、それとも純粋に彼自身の熱なのか、判断がつかなかった。
ただ、私の心臓だけが、この喧騒の中でもはっきりとその存在を主張するように、大きく、そして速く、脈打ち始めた。ドクン、ドクン、と。それは警鐘のようでもあり、期待のようでもあった。
神社へと続く長い参道の両脇には、奉納された赤い提灯がずらりと灯り、ぼんやりとした、しかし幻想的な光で、行き交う人々の顔を次々と照らし出しては、また闇に還していく。
楽しそうに寄り添って歩く浴衣姿のカップル。 キャラクターのお面をつけ、親の手を振りほどかんばかりにはしゃぐ子供たち。 スマートフォンの画面の光に顔を照らしながら、楽しそうにおしゃべりを続ける女子高生のグループ。
誰もが、この非日常の空間を、この一瞬の祝祭を、心から楽しんでいるように見えた。私という、ただ一点の染みを除いては。 私は、ただ、輝くんに腕を引かれるまま、意思を失った人形のように人波に流されていくだけだった。右腕の感覚だけが、やけに鮮明だった。
「あ」
その時、私の数歩前を歩いていた輝くんが、ふと足を止めた。 彼の視線の動きにつられて、私も前方に目を向けた。そして、そこに広がる光景に、我が目を疑った。
そこにいたのは、クラスメイトの、夏野杏さんだった。
腰まで届きそうなほど丁寧に染め上げられた、明るい金髪。 人形のように長い付けまつげが縁取る瞳。 キラキラと光る石が散りばめられた、芸術的なネイル。 校則という概念を根底から覆すかのように、大胆に短く折り曲げられた華やかな浴衣。
彼女の周りには、彼女と全く同じ種類の、まばゆいオーラを放つ友人たちが数人集まって、周囲の喧騒に負けないほどの甲高い声で笑い合っていた。
――ギャルだ。
私の脳内で、けたたましく警報が鳴り響いた。 危険。接触不可。関わってはいけない人種。
彼女たちは、私のような日陰の植物とは、生息する生態系そのものが違うのだ。価値観も、使用する言語も、おそらく、見えている世界の色彩さえも、全く異なっているに違いない。 交われば最後、こちらの常識はズタズタに引き裂かれる。そう、本能が告げていた。
「よっ! 杏! 奇遇だな!」
輝くんが、私のそんな内なる警報などお構いなしに、何の躊躇もなく、その光り輝く集団に声をかけた。 やめろ、命知らずにも程がある。それはまるで、草食動物が自ら肉食獣の群れに挨拶に行くような、無謀な行為にしか見えなかった。
「あー? テルじゃん。あんたも来てたんだ。てかさ、そのメンツ、何? 超ウケるんだけど」
杏さんは、こちらに気づくと、一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐに値踏みするような視線を私たち――特に、地味な私服の私と、明らかに場違いな雰囲気を醸し出している秋葉くん――に向け、あからさまに鼻で笑った。その視線は、理解不能な生物を見るそれだった。
ほら、見ろ。これが現実だ。 可視化されたスクールカーストの壁が、そこには厳然として存在していた。 住む世界が違うのだ。私たちは、決して交わることのない平行線上の存在のはずだった。
「いいだろ、このメンツ。最強だぜ」
輝くんは、彼女の嘲笑を全く意に介さず、むしろ誇らしげに胸を張った。 彼の言葉に、秋葉くんが「最強の定義について、今ここで議論する必要性を感じる」と小声で呟いたが、輝くんの耳には届いていないようだった。どのあたりが最強なのか、私には一ミリも理解できなかったが、輝くんのその根拠のない自信は、時としてどんな正論よりも強く見えた。
その時だった。
「――う、うわあああああん!」
まるでサイレンのような甲高い子供の泣き声が、祭りの喧騒と祭囃子の音色を突き抜けて、私たちの耳に届いた。
声がした方を見ると、人の波の狭間に、三歳くらいだろうか、小さな男の子がぽつんと一人で立ち尽くし、顔をくしゃくしゃにしてしゃくりあげながら泣いていた。 その小さな手には、無残にも一口かじられただけのりんご飴が、べっとりと握られている。鮮やかな赤色が、彼の涙と混じって地面に滴り落ちそうだった。どうやら、この人混みの中で、親とはぐれてしまったらしい。
周囲の大人たちは、一瞬、面倒事が起きたというようにそちらに目をやるが、すぐに興味を失ったかのように、再び自分の世界の会話に戻っていく。 よくある光景だ。誰もが、この祝祭の夜に、面倒ごとには関わりたくないのだ。私もまた、「可哀想に」とは思うものの、どうすることもできずに、ただ立ち尽くすことしかできなかった。
「うっさいんだけど、あのガキ」
杏さんの友人の一人が、綺麗に整えられた眉を不快そうにひそめて言った。
「マジそれ。祭りなんだから、ちゃんと手ぇ繋いどけっての。親の責任じゃん」
彼女たちの冷たい言葉が、私の耳にも届いた。正論かもしれない。でも、あまりにも、その言葉は乾いていた。
しかし、次の瞬間、私は信じられないものを見た。
夏野杏さんが、それまで友人たちと交わしていた下品で軽薄な笑い声を、ぴたりと止めた。 そして、彼女の顔から、全ての「ギャル」という名の派手な装飾が、まるで仮面が剥がれ落ちるように、消え去った。
そこに現れたのは、ただ、真剣な、そして強い意志を宿した、一人の「大人」の顔だった。
彼女は、友人たちの「うっさい」という言葉を完全に無視すると、つかつかと、泣きじゃくる男の子のもとへ歩み寄った。 そして、その動きにくそうな短い浴衣も全く気にすることなく、すとんとその場にしゃがみこんで、男の子と視線の高さをぴったりと合わせた。
「どうしたの? 迷子になっちゃった?」
その声は、さっきまで私たちが聞いていた、猫がじゃれるような甲高いトーンではなかった。驚くほどに優しくて、落ち着いていて、そして聞く者を安心させるような、芯の通った声だった。
「……おかあさん、いない……ひっく……」
男の子が、しゃくりあげながら、途切れ途切れに言う。
「そっか。大丈夫だよ。絶対に、絶対に見つかるから」
杏さんは、そう力強く言うと、自分の小さなバッグから、なぜそんなものを常備しているのか不思議に思うような、キャラクターもののウェットティッシュを取り出した。 そして、りんご飴の糖分でベタベタになった男の子の小さな手を、壊れ物を扱うように、優しく拭き始めた。
「お姉ちゃんが、一緒に探してあげる。ね? だからもう泣かないの」
その手つきは、信じられないほど手慣れていた。まるで、普段から小さい子の面倒を見慣れている人の、それだった。彼女の日常が、垣間見えた気がした。
私と秋葉くんは、ただ、呆然とその光景を眺めていた。まるで質の良い映画のワンシーンを見ているかのようだった。秋葉くんは「想定外のイベントが発生……パラメータが読み取れない……」と呟いている。
輝くんだけは、何も言わなかった。でも、その表情は、どこか面白そうで、それでいて、誇らしそうな、複雑な色合いを浮かべて、その様子をじっと見つめていた。
杏さんは、綺麗になった男の子の手を優しく握ると、きっぱりとした口調で尋ねた。
「お名前、言えるかな?」
「……ゆうき……」
「そっか、ゆうきくんね。いい名前だ。勇気が出る名前だね。じゃあ行こっか」
彼女は、まるでそれが世界の法則であるかのように当たり前のこととして、ゆうきくんの手を引き、立ち上がった。 そして、人混みの中を「すみません、迷子です! 少し通してください!」と、堂々と声をかけながら、迷子センターのある方角へと、迷いなく歩き始めた。その背中は、普段の彼女からは想像もつかないほど、頼もしく見えた。
私たちは、まるで何かに導かれるように、その後をついていった。 杏さんは、不安そうな顔をするゆうきくんに、「好きなテレビ番組は何か」とか、「幼稚園は楽しいか」とか、「そのりんご飴、美味しかった?」とか、途切れることなく、優しい言葉をかけ続けていた。彼女の言葉は、魔法のようにゆうきくんの涙を止め、少しずつ笑顔を取り戻させていった。
十分ほど歩いただろうか。 神社の境内の一角に設けられた、簡素なテントの迷子センターの前で、顔面蒼白の若い夫婦が、係員に必死に何かを訴えているのが見えた。
「ゆうき!」
母親が、息子の姿を見つけると同時に、堰を切ったように泣きながら駆け寄ってきた。
「お母さん!」
感動の再会。何度も何度も深く頭を下げる両親に、杏さんは、少し照れくさそうに、「いえ、全然。すぐ見つかってよかったです」とだけぶっきらぼうに言うと、くるりと背を向けた。まるで、大したことではないとでも言うように。
そして、私たちのところへ戻ってくると、彼女は、まるでスイッチを切り替えるように、また、いつもの「ギャル」の仮面を被り直した。
「はー、マジ、だるかったんですけどー。余計な体力使っちゃったじゃん」
そう言って、わざとらしく乱れた金髪をかき上げる。 でも、その口元が、ほんの少しだけ、誇らしそうに、そして嬉しそうに綻んでいるのを、私の目は見逃さなかった。その一瞬の表情に、彼女の本当の心が透けて見えた気がした。
「夏野」
静寂を破ったのは、輝くんだった。 その顔は、満面の、そして、心からの尊敬の色さえ浮かんだ、最高の笑顔だった。
「お前、見た目と違って、めっちゃいい奴なんだな!」
その、あまりにもストレートで、何の飾り気もなく、そして、ある意味で最高に失礼な言葉に、杏さんは、一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったように、きょとんとした顔をした。 そして、次の瞬間、顔を耳まで真っ赤にして、叫んだ。
「――『見た目と違って』ってのが、余計なんだよ、バカ!」
その声は、怒っているようでもあり、猛烈に照れているようでもあり、そして、ほんの少しだけ、泣きそうにも見えた。
彼女はずっと、たった一人で戦ってきたのかもしれない。 「ギャル」という、たった一言の、便利なレッテルと。その派手な外見だけで全てを判断しようとする、この世界の、無神経な視線と。
その、誰も気づいてくれなかった、気づこうともしなかった内面を、輝くんの、何のフィルターも通さない真っ直ぐな言葉が、初めて、真正面から肯定してくれたのかもしれない。彼女の強固な鎧を、彼の言葉はいともたやすく貫いたのだ。
私は、その時、はっきりと理解した。雷に打たれたような衝撃とともに。
私が、夏野杏さんという一人の人間を、「ギャル」という、たった一つのフォルダに乱暴に分類し、その中身をろくに見ようともしなかったこと。 それは、かつて私が、周りの人間から「暗い子」「何を考えているかわからない子」というレッテルを貼られ、その度に心をすり減らし、苦しんできたことと、本質的には、何も変わらないのだ、と。
自分の痛みには敏感なくせに、他者の複雑さに対しては、なんて鈍感で、傲慢だったのだろう。
人は、そんなに単純じゃない。 世界は、そんなに単純じゃない。
私の知らない顔。私の知らない優しさ。私の知らない世界。 この、やかましくて、暑苦しくて、情報過多で、一刻も早く逃げ出したいと思っていた夏祭りの夜に、私はまた一つ、この世界の、どうしようもなく複雑で、そして、どうしようもなく愛おしい仕組みを、知ってしまったのだった。
隣で輝くんに悪態をつきながらも、その横顔は今まで見たどの彼女よりも綺麗だった。 その光景を、私はきっと、忘れないだろう。
時計の針は最も高い位置で傲慢に輝き、地上はまるで地獄の釜の底でじっくりと煮込まれているかのような、猛烈な暑さに包まれている。
焼きつけられたアスファルトの上では陽炎が意思を持っているかのように立ち昇り、遠くに見える景色は蜃気楼のように頼りなく揺らめいていた。それは現実と幻の境界線を曖昧にし、白昼夢へと誘う危険な揺らぎだった。
私の部屋のクーラーだけが、この世の終わりを告げるような悲痛な呻き声を上げながら、かろうじて文明の砦としての最後の機能を保っている。もはやそれは冷気を送り出す機械ではなく、灼熱地獄に抗う孤独な戦友だった。
あの日、学園祭の準備という名の混沌の中で起きた一連の出来事以来、私、水無月と、秋葉くん、そして朝陽輝くんという、およそ共通項というものが見当たらない三人組は、学校のシステム上、便宜的に「グループ」のようなものとして認識されるようになっていた。
円、三角、四角を無理やり同じ箱に詰め込んだような、いびつで不安定な集合体。それは、私が心の底から望んだ姿では全くなかった。
しかし、同時に、以前のような息が詰まるほどの孤独や、透明人間になったかのような疎外感とも、また質の違うものだった。そこには、不協和音ながらも確かに存在する、微かな繋がりがあった。
太陽の擬人化である輝くんは、相変わらず天気のように予測が不可能だった。晴れ渡る空のような笑顔で話しかけてきたかと思えば、次の瞬間には雷雲を纏ったような真剣な眼差しで何かに没頭する。彼の感情のスイッチは、常人には理解不能な場所に設置されているらしかった。
そんな輝くんの前でだけ、普段は寡黙な秋葉くんは、饒舌な異世界言語の語り部へと変貌を遂げる。彼の口から紡がれるのは、難解な専門用語と独自の解釈で彩られた、壮大な物語の断片だ。
そして私は、その奇妙で予測不能な相互作用を、感情の起伏を悟られぬよう細心の注意を払いながら観察する、無口なフィールドワーカー。それが、私たちの間に形成された、暗黙の基本的な立ち位置だった。
「――なあ、今週末さ、神社の祭、行こうぜ!」
夏休み前の最後のホームルーム。担任の退屈な連絡事項がようやく終わり、解放感と倦怠感が教室を満たしていた、まさにその時。 輝くんが投げたその一言は、静かな水面に投じられた石のように、鮮やかな波紋の始まりとなった。
「祭り……ですか?」
秋葉くんが、分厚いレンズの奥にある目を、珍しく不安げに瞬かせた。彼の脳内では、すでに「祭り」というキーワードから膨大なデータが検索され、リスク分析が開始されているに違いない。
「その時期の神社となると、おそらく限定の描き下ろしグッズが頒布される可能性があります。屋台という名の補給ポイントも魅力的ですが……しかし、あの人口密度は危険極まりない。物理的接触によるエンカウント率の上昇、音声情報の過剰摂取による精神的疲弊……総合的に見て、戦略的撤退が推奨されるかと」
「行くしかねえじゃん、限定グッズ! 俺も手伝うって! 何でも言ってくれ!」
輝くんは秋葉くんの懸念を、ポジティブなエネルギーで真正面から粉砕した。彼の思考回路は、常に「楽しそう」か「そうでないか」の二択で構成されているらしい。
「いや、そういう物理的な問題では……そもそも、あの人混みの中で目的のブースにたどり着くのは至難の業で……」
「水無月は? 行くだろ?」
突然、灼熱の太陽のような視線が、日陰を求める私に突き刺さった。
やめてくれ、私に話を振らないでほしい。 私は、その日、原因不明の腹痛により、ベッドの上で安静にしている予定だったのだ。脳内ではすでに、体温計の数字を偽装し、母親を説得するための完璧なシナリオが、三幕構成の戯曲のように構築済みだったというのに。
しかし、輝くんの「行くだろ?」という言葉は、形式上は疑問形でありながら、その実、一切の反論を許さない決定事項の響きを宿していた。天気予報が「降水確率90%」と告げるような、抗いがたい自然現象にも似た圧力。それに逆らうことは、台風に向かって傘をさすような無謀な行為に思えた。
結局、私の完璧な仮病シナリオは上演されることなく幕を閉じ、その日の放課後、私はなぜか秋葉くんと「どのルートで屋台を回れば効率的に限定グッズを確保し、かつカロリー摂取と移動距離のバランスを最適化できるか」という、軍事作戦さながらの高度な作戦会議に付き合わされる羽目になったのだった。
そして、運命の祭りの当日がやってきた。
西の空が茜色から深い藍へとその表情を変えても、日中の熱をたっぷりと吸い込んだアスファルトが放出する熱気は、少しも衰えることを知らなかった。ねっとりとした蒸し暑い夜気が、まるで第二の皮膚のように肌に張り付いてくる。
最寄り駅から神社へと続く参道の入り口は、すでにおびただしい数の人々で埋め尽くされ、巨大な生命体のようにゆっくりと蠢いていた。
人の声、子供たちの甲高い笑い声、テキ屋の威勢のいい呼び込み、そしてそれら全てを包み込むように、どこからか聞こえてくる祭囃子の単調ながらも心を浮き立たせる音色。それらの音が渾然一体となって、巨大な音のうねりとなり、私の鼓膜を容赦なく揺らす。
りんご飴の、少し焦げた甘ったるい匂い。イカ焼きの、香ばしくて食欲を猛烈に刺激する匂い。ソースが焼ける匂い、わたあめの砂糖の匂い。 そして、時折ふっと鼻腔をかすめる、打ち上げ花火の火薬の匂いが、夏の夜の非日常を告げていた。
情報量が、あまりにも多すぎる。
私の脳のCPUは、この五感から流れ込んでくる膨大な感覚データを処理しきれず、完全にフリーズ寸前だった。 人混みは苦手だ。大きな音も、強すぎる匂いも、全てが私のキャパシティを静かに、しかし確実に削っていく。
「うわー! すげえ人! おい、はぐれんなよ、お前ら!」
人混みの中心で、輝くんがまるで魚が水を得たように楽しそうに叫んだ。彼のエネルギーは、この喧騒を養分にして、さらに増大しているかのようだ。
「は、はぐれた場合は、携帯端末による通信が有効かと……」
秋葉くんが、周囲を警戒するようにキョロキョロしながら、か細い声で提案する。
「こういうとこじゃ、電波なんか繋がんねえんだよ。アンテナは立ってても、基地局がパンクしてんだ。ほら、行くぞ!」
そう言うやいなや、輝くんは、あまりにも自然な動作で、私の右腕をぐっと掴んだ。
「―――――っ!?」
触れられた部分から、彼の体温が一気に流れ込んでくる。 それは、この夜の蒸し暑さのせいなのか、それとも純粋に彼自身の熱なのか、判断がつかなかった。
ただ、私の心臓だけが、この喧騒の中でもはっきりとその存在を主張するように、大きく、そして速く、脈打ち始めた。ドクン、ドクン、と。それは警鐘のようでもあり、期待のようでもあった。
神社へと続く長い参道の両脇には、奉納された赤い提灯がずらりと灯り、ぼんやりとした、しかし幻想的な光で、行き交う人々の顔を次々と照らし出しては、また闇に還していく。
楽しそうに寄り添って歩く浴衣姿のカップル。 キャラクターのお面をつけ、親の手を振りほどかんばかりにはしゃぐ子供たち。 スマートフォンの画面の光に顔を照らしながら、楽しそうにおしゃべりを続ける女子高生のグループ。
誰もが、この非日常の空間を、この一瞬の祝祭を、心から楽しんでいるように見えた。私という、ただ一点の染みを除いては。 私は、ただ、輝くんに腕を引かれるまま、意思を失った人形のように人波に流されていくだけだった。右腕の感覚だけが、やけに鮮明だった。
「あ」
その時、私の数歩前を歩いていた輝くんが、ふと足を止めた。 彼の視線の動きにつられて、私も前方に目を向けた。そして、そこに広がる光景に、我が目を疑った。
そこにいたのは、クラスメイトの、夏野杏さんだった。
腰まで届きそうなほど丁寧に染め上げられた、明るい金髪。 人形のように長い付けまつげが縁取る瞳。 キラキラと光る石が散りばめられた、芸術的なネイル。 校則という概念を根底から覆すかのように、大胆に短く折り曲げられた華やかな浴衣。
彼女の周りには、彼女と全く同じ種類の、まばゆいオーラを放つ友人たちが数人集まって、周囲の喧騒に負けないほどの甲高い声で笑い合っていた。
――ギャルだ。
私の脳内で、けたたましく警報が鳴り響いた。 危険。接触不可。関わってはいけない人種。
彼女たちは、私のような日陰の植物とは、生息する生態系そのものが違うのだ。価値観も、使用する言語も、おそらく、見えている世界の色彩さえも、全く異なっているに違いない。 交われば最後、こちらの常識はズタズタに引き裂かれる。そう、本能が告げていた。
「よっ! 杏! 奇遇だな!」
輝くんが、私のそんな内なる警報などお構いなしに、何の躊躇もなく、その光り輝く集団に声をかけた。 やめろ、命知らずにも程がある。それはまるで、草食動物が自ら肉食獣の群れに挨拶に行くような、無謀な行為にしか見えなかった。
「あー? テルじゃん。あんたも来てたんだ。てかさ、そのメンツ、何? 超ウケるんだけど」
杏さんは、こちらに気づくと、一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐに値踏みするような視線を私たち――特に、地味な私服の私と、明らかに場違いな雰囲気を醸し出している秋葉くん――に向け、あからさまに鼻で笑った。その視線は、理解不能な生物を見るそれだった。
ほら、見ろ。これが現実だ。 可視化されたスクールカーストの壁が、そこには厳然として存在していた。 住む世界が違うのだ。私たちは、決して交わることのない平行線上の存在のはずだった。
「いいだろ、このメンツ。最強だぜ」
輝くんは、彼女の嘲笑を全く意に介さず、むしろ誇らしげに胸を張った。 彼の言葉に、秋葉くんが「最強の定義について、今ここで議論する必要性を感じる」と小声で呟いたが、輝くんの耳には届いていないようだった。どのあたりが最強なのか、私には一ミリも理解できなかったが、輝くんのその根拠のない自信は、時としてどんな正論よりも強く見えた。
その時だった。
「――う、うわあああああん!」
まるでサイレンのような甲高い子供の泣き声が、祭りの喧騒と祭囃子の音色を突き抜けて、私たちの耳に届いた。
声がした方を見ると、人の波の狭間に、三歳くらいだろうか、小さな男の子がぽつんと一人で立ち尽くし、顔をくしゃくしゃにしてしゃくりあげながら泣いていた。 その小さな手には、無残にも一口かじられただけのりんご飴が、べっとりと握られている。鮮やかな赤色が、彼の涙と混じって地面に滴り落ちそうだった。どうやら、この人混みの中で、親とはぐれてしまったらしい。
周囲の大人たちは、一瞬、面倒事が起きたというようにそちらに目をやるが、すぐに興味を失ったかのように、再び自分の世界の会話に戻っていく。 よくある光景だ。誰もが、この祝祭の夜に、面倒ごとには関わりたくないのだ。私もまた、「可哀想に」とは思うものの、どうすることもできずに、ただ立ち尽くすことしかできなかった。
「うっさいんだけど、あのガキ」
杏さんの友人の一人が、綺麗に整えられた眉を不快そうにひそめて言った。
「マジそれ。祭りなんだから、ちゃんと手ぇ繋いどけっての。親の責任じゃん」
彼女たちの冷たい言葉が、私の耳にも届いた。正論かもしれない。でも、あまりにも、その言葉は乾いていた。
しかし、次の瞬間、私は信じられないものを見た。
夏野杏さんが、それまで友人たちと交わしていた下品で軽薄な笑い声を、ぴたりと止めた。 そして、彼女の顔から、全ての「ギャル」という名の派手な装飾が、まるで仮面が剥がれ落ちるように、消え去った。
そこに現れたのは、ただ、真剣な、そして強い意志を宿した、一人の「大人」の顔だった。
彼女は、友人たちの「うっさい」という言葉を完全に無視すると、つかつかと、泣きじゃくる男の子のもとへ歩み寄った。 そして、その動きにくそうな短い浴衣も全く気にすることなく、すとんとその場にしゃがみこんで、男の子と視線の高さをぴったりと合わせた。
「どうしたの? 迷子になっちゃった?」
その声は、さっきまで私たちが聞いていた、猫がじゃれるような甲高いトーンではなかった。驚くほどに優しくて、落ち着いていて、そして聞く者を安心させるような、芯の通った声だった。
「……おかあさん、いない……ひっく……」
男の子が、しゃくりあげながら、途切れ途切れに言う。
「そっか。大丈夫だよ。絶対に、絶対に見つかるから」
杏さんは、そう力強く言うと、自分の小さなバッグから、なぜそんなものを常備しているのか不思議に思うような、キャラクターもののウェットティッシュを取り出した。 そして、りんご飴の糖分でベタベタになった男の子の小さな手を、壊れ物を扱うように、優しく拭き始めた。
「お姉ちゃんが、一緒に探してあげる。ね? だからもう泣かないの」
その手つきは、信じられないほど手慣れていた。まるで、普段から小さい子の面倒を見慣れている人の、それだった。彼女の日常が、垣間見えた気がした。
私と秋葉くんは、ただ、呆然とその光景を眺めていた。まるで質の良い映画のワンシーンを見ているかのようだった。秋葉くんは「想定外のイベントが発生……パラメータが読み取れない……」と呟いている。
輝くんだけは、何も言わなかった。でも、その表情は、どこか面白そうで、それでいて、誇らしそうな、複雑な色合いを浮かべて、その様子をじっと見つめていた。
杏さんは、綺麗になった男の子の手を優しく握ると、きっぱりとした口調で尋ねた。
「お名前、言えるかな?」
「……ゆうき……」
「そっか、ゆうきくんね。いい名前だ。勇気が出る名前だね。じゃあ行こっか」
彼女は、まるでそれが世界の法則であるかのように当たり前のこととして、ゆうきくんの手を引き、立ち上がった。 そして、人混みの中を「すみません、迷子です! 少し通してください!」と、堂々と声をかけながら、迷子センターのある方角へと、迷いなく歩き始めた。その背中は、普段の彼女からは想像もつかないほど、頼もしく見えた。
私たちは、まるで何かに導かれるように、その後をついていった。 杏さんは、不安そうな顔をするゆうきくんに、「好きなテレビ番組は何か」とか、「幼稚園は楽しいか」とか、「そのりんご飴、美味しかった?」とか、途切れることなく、優しい言葉をかけ続けていた。彼女の言葉は、魔法のようにゆうきくんの涙を止め、少しずつ笑顔を取り戻させていった。
十分ほど歩いただろうか。 神社の境内の一角に設けられた、簡素なテントの迷子センターの前で、顔面蒼白の若い夫婦が、係員に必死に何かを訴えているのが見えた。
「ゆうき!」
母親が、息子の姿を見つけると同時に、堰を切ったように泣きながら駆け寄ってきた。
「お母さん!」
感動の再会。何度も何度も深く頭を下げる両親に、杏さんは、少し照れくさそうに、「いえ、全然。すぐ見つかってよかったです」とだけぶっきらぼうに言うと、くるりと背を向けた。まるで、大したことではないとでも言うように。
そして、私たちのところへ戻ってくると、彼女は、まるでスイッチを切り替えるように、また、いつもの「ギャル」の仮面を被り直した。
「はー、マジ、だるかったんですけどー。余計な体力使っちゃったじゃん」
そう言って、わざとらしく乱れた金髪をかき上げる。 でも、その口元が、ほんの少しだけ、誇らしそうに、そして嬉しそうに綻んでいるのを、私の目は見逃さなかった。その一瞬の表情に、彼女の本当の心が透けて見えた気がした。
「夏野」
静寂を破ったのは、輝くんだった。 その顔は、満面の、そして、心からの尊敬の色さえ浮かんだ、最高の笑顔だった。
「お前、見た目と違って、めっちゃいい奴なんだな!」
その、あまりにもストレートで、何の飾り気もなく、そして、ある意味で最高に失礼な言葉に、杏さんは、一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったように、きょとんとした顔をした。 そして、次の瞬間、顔を耳まで真っ赤にして、叫んだ。
「――『見た目と違って』ってのが、余計なんだよ、バカ!」
その声は、怒っているようでもあり、猛烈に照れているようでもあり、そして、ほんの少しだけ、泣きそうにも見えた。
彼女はずっと、たった一人で戦ってきたのかもしれない。 「ギャル」という、たった一言の、便利なレッテルと。その派手な外見だけで全てを判断しようとする、この世界の、無神経な視線と。
その、誰も気づいてくれなかった、気づこうともしなかった内面を、輝くんの、何のフィルターも通さない真っ直ぐな言葉が、初めて、真正面から肯定してくれたのかもしれない。彼女の強固な鎧を、彼の言葉はいともたやすく貫いたのだ。
私は、その時、はっきりと理解した。雷に打たれたような衝撃とともに。
私が、夏野杏さんという一人の人間を、「ギャル」という、たった一つのフォルダに乱暴に分類し、その中身をろくに見ようともしなかったこと。 それは、かつて私が、周りの人間から「暗い子」「何を考えているかわからない子」というレッテルを貼られ、その度に心をすり減らし、苦しんできたことと、本質的には、何も変わらないのだ、と。
自分の痛みには敏感なくせに、他者の複雑さに対しては、なんて鈍感で、傲慢だったのだろう。
人は、そんなに単純じゃない。 世界は、そんなに単純じゃない。
私の知らない顔。私の知らない優しさ。私の知らない世界。 この、やかましくて、暑苦しくて、情報過多で、一刻も早く逃げ出したいと思っていた夏祭りの夜に、私はまた一つ、この世界の、どうしようもなく複雑で、そして、どうしようもなく愛おしい仕組みを、知ってしまったのだった。
隣で輝くんに悪態をつきながらも、その横顔は今まで見たどの彼女よりも綺麗だった。 その光景を、私はきっと、忘れないだろう。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~
伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華
結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空
幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。
割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。
思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。
二人の結婚生活は一体どうなる?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】
藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。
そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。
記憶を抱えたまま、幼い頃に――。
どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、
結末は変わらない。
何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。
それでも私は今日も微笑む。
過去を知るのは、私だけ。
もう一度、大切な人たちと過ごすために。
もう一度、恋をするために。
「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」
十一度目の人生。
これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる