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プロローグ
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魔物は暗闇の中で待っている。
脆弱な人間が自ら訪れるまで、長い時間息を潜めてじっと待っている。
侵入者の気配を感じた彼は意識を目覚めさせた。
目蓋の裏に、果てしなく続く森の景色が浮かび上がり、次いで一人の少女の姿が見えた。
これといった特徴のないどこにでもいそうな少女だ。簡素な旅装束を身にまとっていた。貴族のご令嬢という風ではない。
少女は長い栗色の髪を後ろで束ね、茂みをかき分け進んでいた。
その瞳には憂いの色が漂っており、彼は短く息を呑んだ。
少女の瞳が非常に美しかったからだ。
まるで紫水晶をそのままはめ込んだかのような輝きを放っていた。
――気に入った。
もっと近くであの瞳を見てみたい。
彼はにやりと笑った。
領域に入った者は皆、灯火に引き寄せられる蛾のようだ。
何もせずとも手中に収めることができる。
しかし、まだ起きるには早い。
もっと近づいてから――。
逃げられなくなってから――。
それで充分だ。
闇の向こうに浮かぶ少女を見つめ、彼は満足気に舌なめずりした。
魔物は暗闇の中で待っている。
脆弱な人間が自ら訪れるまで、長い時間息を潜めてじっと待っている。
侵入者の気配を感じた彼は意識を目覚めさせた。
目蓋の裏に、果てしなく続く森の景色が浮かび上がり、次いで一人の少女の姿が見えた。
これといった特徴のないどこにでもいそうな少女だ。簡素な旅装束を身にまとっていた。貴族のご令嬢という風ではない。
少女は長い栗色の髪を後ろで束ね、茂みをかき分け進んでいた。
その瞳には憂いの色が漂っており、彼は短く息を呑んだ。
少女の瞳が非常に美しかったからだ。
まるで紫水晶をそのままはめ込んだかのような輝きを放っていた。
――気に入った。
もっと近くであの瞳を見てみたい。
彼はにやりと笑った。
領域に入った者は皆、灯火に引き寄せられる蛾のようだ。
何もせずとも手中に収めることができる。
しかし、まだ起きるには早い。
もっと近づいてから――。
逃げられなくなってから――。
それで充分だ。
闇の向こうに浮かぶ少女を見つめ、彼は満足気に舌なめずりした。
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