魔法少女 ミルティ=クラウゼ

桜雨ゆか

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【おまけ話】6.5話 ミルティの嫉妬と飲み会参加

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 火花が散った。
 空気を裂く金属音と共に、ミルティの杖から放たれた光弾が怪人の鎌を弾き飛ばす。
 夜の街路は崩れた電柱の影で歪み、街灯の明滅が戦場のように瞬いていた。
 ミルティの額には汗が流れ、胸の鼓動が耳を叩く。

「逃がさない……っ!」

 ミルティの大きな瞳が怪人を睨み付け、治癒の魔力を逆転させ、攻撃に転じた“聖光の刃”が空を裂いた。
 しかし、黒い大きなコウモリの翼を広げた怪人は、それをかわして夜空へ舞い上がった。
 次の瞬間、別の黒い影がミルティの前に飛び込んでくる。

「――っ!」

 杖を振り上げたミルティの手が止まる。
 ミルティと怪人の間に盾のように立ちはだかったのは、漆黒のマントをまとった長身の男――ノクスだった。
 顔の上半分を仮面で隠した彼は、複雑そうな顔をしてミルティを見つめていた。

「……!」

 碧い瞳と視線が絡み、ミルティは咄嗟に言葉を詰まらせた。

「ノクスさまぁっ♥」

 ノクスに庇われた怪人が声を上げる。
 可愛らしい少女の声は過剰なほどに甘みを帯びて、ミルティの耳に届いた。

「助けに来てくれたんですね♥」

 翼を持った怪人は、くるりと回るようにしてノクスの腕に絡みつく。大きな瞳は潤んでおり、あどけない仕草の中に狡猾さが滲んでいる。

「……は?」

 ミルティの口から低い声が漏れる。
 怪人の少女はべったりとノクスにまとわりつき、胸元にすり寄るような素振りまで見せていた。
 ミルティは唖然としながらも、握りしめた杖を微かに震わせた。

(……どういうことですか? この子、いったい。怪人同士ってそんなにベタベタするのが普通なんですか?)

「ノクスさまぁ♥ ミルティなんて早くやっつけちゃってくださいぃ!」

 怪人の少女は頬を膨らませながら語尾を伸ばす。
 ノクスは黙ったままだったけれど、少女を自分から引き剥がし、首を横に振った。
 仮面に覆われていない唇がかすかに動き、長い溜息をこぼす。

「ルル=バット……。言っておいたよね。ミルティと交戦するなって」

 ノクスの言葉に怪人少女――ルルは不満そうに頬を膨らませた。
 年齢はミルティより少し下だろうか。ピンク味を帯びた長い髪はツインテールにまとめられていて、ふわりふわりと揺れている。その可愛らしい顔立ちの中にもどこか挑発的な色気が漂っていた。
 黒とローズカラーを基調としたミニドレスには、フリルやリボンがあしらわれており、ほら、可愛いでしょと全身で訴えてるみたいだ。

「え~! だってぇ、あっちが勝手に攻撃してきたんですよぉ! ノクスさまが助けに来てくれてよかったぁ♥ やっぱり優しい……大好き♥」

 ルルは再びノクスに抱きつこうとする。
 その手をかわしたノクスが、ミルティの方を見る。

「――ミルティ。その……、申し訳ないんだけど今回は退いてもらってもいいかな? 彼女、新人で……。ちょっと調子に乗って暴走してるんだ」
「…………」

 ひくり、と頬が痙攣する。

(ああ、どうしよう。わたし、今、絶対すごい顔してる……)

 ルルの甘えた声がやたらと耳につく。ノクスにべたべた触ろうとしている指先が許せない。

「――っ! そ、そちらの都合なんか知りませんっ!」

 ミルティの声が鋭く響いた。
 感情の高ぶりを抑えきれず、心臓がドクドク鳴る。

「悪事を働いてるなら見過ごせません! まとめて正義の力でこらしめるだけですから!」

 ミルティの杖が勢いよく突き出されると同時に、“聖光の刃”が再び輝いた。
 それを避けるようにしてルルが跳ね上がる。

「きゃ~! こわ~い!」

 ルルがわざとらしく叫びながらノクスに抱きつく。

(ずるいっ! わかってるけど、あんな、あんな……!)

 ノクスが困ったような表情をしているのが気配でわかる。

「ルル……。いい加減に……」
「だって、あの人、すっごく怖い顔してますよぉ~」

 そう言いながら涙ぐむ振りをするルルの横顔にどこか得意げな色が浮かんだのを、ミルティは見逃さなかった。

「――っ!」

 それに、なによりムカつくのは――ノクスが本気で怒らないことだ。

(……ああ、いや! こんなふうに思ってしまう自分がすごくいや……)

 でも――抑えきれない。

(わかってる。ノクスが悪いわけじゃない。だけど……!)

 杖を握る手に力が入る。

「も、もういいです! 見逃してほしいならさっさと行ってください!」

 吐き捨てるように言うとミルティはくるりと背を向けた。

(イライラする。もう見たくない……)

 心の中では怒涛のような感情が渦巻いているけれど――今はとにかくその場から離れたくて仕方なかった。

「なにそれ~? 感じわるぅ……。ねー? ノクスさまぁ?」

 後ろからルルの声が聞こえた。
 またノクスにくっつこうとしているのが気配で伝わってくる。

「だから……いい加減に――!」

 ノクスの一喝は、それまでの穏やかな口調とはまったく違う重たい響きを孕んでいた。ルルを受け入れていないことは明白だけど――ミルティの苛立ちは治まらない。

「そ、そちらがこの場を去らないなら、わたしが帰ります!」

 ミルティはくるりと背を向けて足早に歩き出した。

(これ以上ここにいたら――)

 きっと嫌な気持ちしか生まれない。
 ぎゅっと強く唇を噛み締める。

(やだ、やだっ……。わたしっ、今どんな顔してるんだろう……。こんなの絶対見られたくないっ……!)

 敵であるノクスが引き留めてくるわけがないし、追いかけてこないこともわかっていた。
 だけど、ミルティは一歩二歩とどんどんスピードを上げて駆け出す。
 息が切れて肺が痛んでも必死に走った。冷たい夜風が火照った頬を撫でていく。
 ノクスとルルの気配が完全に感じられなくなったところでミルティは立ち止まり大きく肩で息をついた。

「最低……」

 街灯の途切れた細い道に佇んだまま、小さく呟く。
 心臓が痛いくらいに脈打っていて、それが走ったせいなのかそれとも感情のせいなのかわからない。
 怒りと悔しさと恥ずかしさがない交ぜになって今にも叫び出してしまいそうだった。

「……ほんと、なにしてるんだろ」

 息を整えながら自嘲めいた笑みがこぼれる。
 両手で顔を覆うと溜め息をついた。

(敵の……。好きになっちゃいけない人を好きになったんだから、仕方ないのに……)

 ルルがノクスにベタベタしている姿が脳裏をよぎる。
 可愛らしい容姿や甘ったるい声――。そして何よりもノクスに対するあの無遠慮な態度が我慢ならなかった。

(さわらないでって言えたらいいのに……)

 思い出すだけで胃のあたりが冷たくなる。
 ミルティの感情は乱れっぱなしでどうにもならなかった。

「……落ち着かなきゃ」

 小さく呟いて深呼吸を繰り返す。
 心臓の鼓動はまだ速いけれど少しずつ冷静さを取り戻してきた気がする。

「帰ろ……」

 杖を両手で握りしめ、変身を解く。
 もう一度大きく息を吐いてから、ひとりぼっちの道を歩き出した。
 一度、支部に戻って報告書を提出すれば家に帰れる。
 いつも通りのことをいつも通りこなすだけだ。
 それなのに――。

「わたし……ちゃんとできるのかな……」

 ぽつりと零した独り言は誰にも拾われることなく静かな夜に溶けていった。

      ✢

 支部の玄関ホールに足を踏み入れた瞬間、ミルティは深い溜め息をついた。
 あとは戦闘報告書を提出して帰るだけなのに、心のどこかにまだ“もや”が残っている。

(なんかすごく疲れた……)
 

「ミルティ~! おっかえり~!」

 明るい声に顔を上げると、テーブルの前でジュースを飲んでいた先輩魔法少女のリーナ=サマリエが手を振っていた。
 金色のポニーテールがゆらりと揺れる。

「戦闘おつかれ! よかったあ! 待ってたんだ」
「えっ……⁉ 待ってたって、なにかあったんですか?」
「これからね、暗刃会の人たちと懇親会があるんだけどさ」
「懇親会……ですか?」
「まぁ、実質飲み会なんだけど……。それでねっ……!」

 リーナは身を乗り出し、悪戯っぽく笑う。

「ミルティにも来てほしいと思って!」
「えっ⁉ な、なんでですか?」

 ミルティの声が上ずる。

「なんでって、一緒なら楽しいでしょ?」
「あー……。でも、わたし、今日はちょっと疲れてるので――」
「ミルティ、ごめん! おねがい! 少しでいいから顔出して!」

 慌てた様子のリーナに言葉を遮られる。

「実はもうミルティが来るって相手方には伝えちゃってて~」
「えぇっ⁉」

 リーナが手を合わせてミルティを見上げる。

「お願いお願い、おねが~い! 助けると思って来てくれない⁉」
「……っ! じゅ、15分だけですよ? それ以上は付き合わないのでっ!」
「ありがとう~! ミルティ、大好き~♥」

 リーナが抱きついてくる。
 ため息一つ、顔を上げると前方からもう一人の先輩魔法少女、カレン=ノルティアが歩いてきた。
 紅茶色の髪はふんわりと巻かれていて、艶やかな大人の女性といった雰囲気だ。

「ミルティちゃん、怒ってもいいのよ? リーナったらあなたを餌にしたんだから」

 落ち着いた声音とともにカレンは微笑む。その笑みはどこか意味ありげだった。

「ちがっ、ちがいます~! わたしはただミルティと一緒に懇親会楽しみたいなあって――」
「イケメン影士たちが来るって言って張り切ってたじゃないの」

 カレンの声は涼やかだったけれど、どこか意地悪な響きがあった。
 リーナは露骨に目を逸らす。

「そっ、そう言いながらカレンだって来るんでしょ⁉」
「ええ、もちろん。こういう機会でもないと出会いがないもの、このお仕事」

 カレンは首を傾げて微笑む。

「ほら! 同じじゃん! おんなじじゃんかー!」

 リーナは拗ねたように口を尖らせた。

「ああ、そうだ。ミルティちゃん。今夜の飲み会、キザシさんも来るらしいわよ」

 カレンがにっこりと微笑み、ミルティの背筋がぴんと固くなった。

「えっ⁉ キ、キザシさんも……?」
「そうそう。普段はあんまりこういう飲み会には参加しないらしいんだけど~。なんか今回は珍しく来るらしいよ~。なんでだろうねぇ~? だれかさんが来るからかなぁ~?」

 カレンの言葉を引き継ぐように、リーナが意味ありげにニヤニヤとした。
 からかうような瞳がミルティに向けられる。
 しかし、当のミルティはノクスのことを思い出していた。
 以前、キザシのことでノクスが嫉妬心を剥き出しにしたことがあった。そう、ちょうど先程のミルティのように――。

(そっか、あのときのノクスもこういう気持ちだったんだ……) 

「…………」
「ミルティはあと報告書だけだったよね? 終わったらここに集合ね。お店まで一緒に行こ」
「え、あ、はい……。あ、でも、ホントに15分だけですからね」
「ミルティ、ホントありがとう!」

 リーナは満面の笑みで跳ねるように喜んだ。

      ✢

 魔法省近くの繁華街にある小洒落た居酒屋。賑やかな店内はすでに熱気に包まれていた。
 店員に案内された座敷の戸を開けると、薄暗い照明の中で数名の男女が談笑している。任務の関係上、少し遅れての参加になったのはミルティ達三人だけで、他は皆揃っているようだった。
 暗刃会の男性陣は皆洗練されていて、スマートなスーツ姿の者が多く見える。
 その中でもひときわ目を引く逞しい体躯の男。座っていても長身だとわかる。金の短髪に整った顔立ち――キザシだ。

「ほら、ミルティちゃん。あっち」
「え……」

 カレンにちょんちょんと肩をつつかれる。
 視線の先には、一人壁際でグラスを傾けるキザシの姿があった。

「あれが噂のキザシさんかぁ……。確かにかっこいいわ。みんなが騒ぐのもわかるかも」

 隣でリーナが感嘆の溜め息をもらす。
 そうこうしているうちに、全員に飲み物がまわり乾杯の音頭が取られた。



 懇親会という名目の飲み会は、仕事終わりの開放感とともに和やかな雰囲気で進んでいった。
 酒が進むと自然と話題も盛り上がりを見せ始める。

「いやぁ、今日はミルティさんが来てくれるって聞いて俺は嬉しかったですよ」

 向かい側に座る暗刃会の青年が屈託なく笑う。

「俺、ゲンマといいます。普段は本部勤務なんですけど、これを機会にぜひ仲良くしてください!」

 ミルティはグラスを片手に愛想笑いを浮かべる。
 と、ちょうどそこで、隣からとんと肩を叩かれた。
 顔を向ければ、キザシが控えめに笑っていた。

「隣……いいか?」
「え? あ……はい」
「悪いな……。ちょっと、逃げてきた」

 眉を下げてキザシが苦笑する。

「……?」

 なにを言っているのかわからなくて、ミルティが小首を傾げたとき――。

「え~、キザシさん、そっち行っちゃうんですかぁ~?」

 高い声が割って入ってきた。
 離れたところで白輝会の職員らしい女性が手招きしている。
 その後ろにも似たような女性たちが何人か手を上げていた。
 ミルティはそれを見て、ああ、なるほどと頷く。

「――……こういう場は慣れないな。普段はあまり来ないから少し驚いた」
「あ、俺、ちょっとあっちに挨拶行ってきますね」

 キザシの登場でゲンマが席を外す。

「悪い……」

 キザシはそんなゲンマにも軽く手を上げた。
 ミルティはそんな二人のやりとりに一瞬目をやったものの、すぐに自分のグラスに視線を落とす。
 なんとなく所在ない気持ちになりながらもグラスを傾ける。
 氷がぶつかる小さな音が妙に響いた。

「……」
「……」

 しばしの沈黙。
 気まずいというわけではないけれど、なにを話したらいいのかわからなくてミルティは俯く。

「――うちの連中、強引なやつも多いから飲まされたりしてないか?」

 先に口を開いたのはキザシだった。

「あ、はい。大丈夫です」
「そうか。ならよかった。あんた、人が好さそうだから少し心配だ」

 そう言ってキザシは柔らかく笑う。口の端に八重歯が覗き、精悍な顔つきが少しだけ人懐こい印象に変わる。

「……ありがとうございます」

 ミルティはぺこりと頭を下げた。

「……?」

 なんだか妙に視線を感じる。
 顔を上げるとキザシがじっとこちらを見つめていた。

「キザシさん……?」
「……」

なんだか妙に圧を感じる視線に耐え切れずミルティは訊ねる。

「あの……なにか?」
「いや……」

 キザシはふいと視線を逸らした。けれどそれも一瞬でまたすぐミルティの方へ戻ってくる。

「――白輝会の連中は全員派手だなと思って」
「えっ⁉ そうですか?」

 ミルティは自分の服に視線を落とす。
 淡いパステルブルーのブラウスにベージュのフレアスカート。特段派手ではないはずだけれど――。

「いや、あんたじゃなくて……」

 キザシはチラリと他のメンバーに視線を向ける。
 リーナもカレンもオシャレだし二人とも美人だ。そのうえ明るくて場慣れしているから、華やかで目立つ存在なのは確かだけど。

「……派手です、か?」
「あー……。すまん。悪い意味で言ったわけじゃない」

 キザシは困ったように笑い、グラスを傾ける。

「…………あんたはどの格好していても綺麗だな」
「――!」

 ストレートな言葉に心臓が跳ねる。

(いきなりそういうこと言わないでほしい……)

 真っ赤になって固まったミルティを見てキザシは小さく笑う。

「そんなに驚かなくても……。可愛くて綺麗だと思う。うちの連中が騒ぐのも無理はないな」
「…………」

 なんだか今日のキザシは変だ。
 もともとはっきりした物言いをする人ではあるけれど――どこか押しが強い。
 ちら、と横目で隣を見れば、キザシはじっとこちらを見ていた。
 気まずい。視線が強すぎて居心地が悪い。

「あの、キザシさん。あんまりじっと見られるのは落ち着かないので――」

 そう告げて横を向いたところで、ミルティはおや? と小首を傾げた。

「キザシさん、真っ赤……。何杯、飲んだんですか?」
「ん? そんなに飲んでないぞ?」
「でも――」

 顔どころか耳まで赤いし目尻が緩んで普段の凛々しさがどこかへ消えている。

「キザシさんって酔いやすいんですか?」
「うん? どうだろう? ふだんはあまり飲まないからな……」

 キザシはグラスを見つめたままぽつりと言う。
 その目はやっぱりどこかぼんやりとしていて焦点が定まっていない。

「あの、わたし、お水もらってきま――」
「あらあら、大変。キザシさん、大丈夫ですか?」

 ミルティが立ち上がろうとするのと同時、ふいにカレンが身を乗り出してきた。

「えっ? うんうん。大丈夫ではなさそうですか? なるほど……。ミルティちゃん、送ってさしあげたら?」
「カレンさん⁉」
「だってミルティちゃん、少し早めに帰るつもりだったんでしょ? 丁度いいじゃないの」

 キザシがなんの返答もしていないのに、カレンは数回頷いたあと、ミルティに向かってウインクする。

(ああ……。これは――)

 カレンの策略だ。どうやら恋愛ごとが大好きな彼女が余計なお世話を焼く気になったらしい。

「いやいやいや。わたしが送っていくとか無理です。どう考えても変でしょう?」
「え~。でもキザシさん酔っ払っちゃったみたいよぉ? お店の外にタクシー乗り場もあったし、一緒に乗ってあげれば? ね? ミルティちゃん、お酒強いからまだ全然酔ってないでしょう?」

 カレンはにこにこと笑いながら言う。
 この優しげなほほ笑みを浮かべているときの彼女に勝てないのはミルティも重々承知している。
 しかし――。

(ノクスに誤解されるようなことはしたくない……)

「…………」

 ミルティは返答に困りながらキザシを見た。
 はた、と目があったキザシがふるりとかぶりを振った。

「大丈夫だ。俺は酔ってない。今日はあんたがあいつらに飲まされすぎないよう守るために来たんだ。こんなことで迷惑をかけるわけにはいかない」

 そう言うキザシの声は低く掠れていてアルコールに弱いというのは嘘ではないと確信する。

「ミルティちゃんが酔いつぶれるなんてあり得ないのに、キザシさんったら健気~♥」

 キザシの様子にカレンのおせっかいがさらに加速していく。

「ミルティちゃんの代わりにキザシさんが酔い潰れちゃったんだから~。これは責任とってミルティちゃんがキザシさんをお持ち帰りするのは当然よね~?」
「カレンさん⁉ 酔ってます⁉」

 カレンはミルティの制止を無視して笑顔で続ける。

「……お持ち帰り? なんのことだ?」

 一方でキザシは怪訝そうに眉をひそめる。

(ああもう、どんどんややこしくなってく……)

 ミルティが頭を抱えたまさにそのときだった。

「――……ミルティ、手伝おうか?」
「え――?」 

 聞き覚えのある声。
 声がした方を見れば、そこには予想通りの人物が立っていた。
 ノクスだ。ただ、いつもは仮面で顔の上半分を隠しているのに、今はその仮面を外して素顔を晒している。
 漆黒のマントのかわりに、黒いスーツをラフに着こなしている。

(え? なんで? ノクスが……?)

 唐突な状況に固まるミルティだったが、その場の白輝会の女性陣がざわめき出したことに気づいてハッと我に返る。

「えっ⁉ えっ! だれ、あの人⁉」
「うっわ……! ちょーかっこいい……!」
「暗刃会の人? あんな素敵な人いた⁉」
「ミルティちゃんの知り合いかな?」

 周囲が興奮した様子でコソコソと喋りだす。
 カレンとリーナですら、ノクスを見上げたまま惚けたように口を閉ざしていた。

「――皆さんで楽しんでいるところを邪魔してすみません。彼女――ミルティを迎えに来たんですが……」

 ノクスは周囲を見渡しながら丁寧に頭を下げる。
 その所作は優雅で洗練されていた。

(えっ? なんで? 迎えって――?)

 混乱したミルティの思考が追いつかないまま、ノクスは視線をキザシに向ける。

「ご迷惑でないなら彼も一緒に僕が送りましょうか?」

 ノクスがにこりと笑み、その場の女性陣から甲高い悲鳴が上がる。

「ヤバっ……! ちょーイケメンなんですけど!」
「ミルティちゃんの知り合いなんだよね? 紹介してほしい~!」

 一気に盛り上がる空気に、ミルティは硬直したまま動けなかった。

「……ミルティが15分だけならって言ってた理由がわかった!」
「道理でミルティちゃんが誰にもなびかないわけだわ……」

 リーナとカレンがうんうんと何度も頷く。

「――ミルティ? 行ける?」
「あっ、は、はい……っ」 

 ノクスに促され。ミルティは慌てて立ち上がった。

「あの、すみません。お先に失礼します」

 ミルティがぺこりと頭を下げると、「おつかれさま~」とか「気をつけてね~」と声がかかる。
 ノクスがキザシに肩を貸して移動し始めるのに合わせてミルティも歩き出した。
 キザシはされるがままだったけれど――時折ふらついた足取りで踏ん張っていた。
 店の外に出るとすでにタクシーが停車していた。

「あんた、いったい……? ミルティのなんなんだ?」

 タクシーに押し込まれる寸前。キザシがふらふらとノクスの方を振り返った。
 その問いかけは疑問形ながらどこか険があって――ノクスも視線を細めてキザシを見据える。

「――ただの友人ですよ」

 ノクスは静かに笑うと後部座席の扉を閉めた。
 そしてそのまま車体から身を引く。
 タクシーがゆっくりと発進し始めても――二人の視線は絡み合ったままだった。



「さて、車で来てるんだ。送らせてくれる?」

 タクシーを見送ったあと、ノクスがくるりと振り返って言った。

「ノクス、どうして、ここに……?」
「とある組織の幹部だからね。多少の情報は入ってくるんだ。暗刃会と白輝会の合コンとか……」
「ごっ……⁉ ちが、ちがいます。そういうんじゃ――」
「ごめんごめん、冗談だよ。他の連中がどうであれ、ミルティはそのつもりで来てないってちゃんとわかってるから」

 ノクスがふ、と笑って手を差し出してくる。

「だけど……」
「……?」
「他の男に言い寄られているのは面白くはないよ」

 そう言うとノクスはミルティの手を握り、ぐいっと引き寄せた。

「――っ⁉」

 急に近づいた距離に心臓が跳ねる。

「――だから、ごめんね? 我慢できなくて迎えに来ちゃった」

 耳元で囁かれ、ぞくりと肌が粟立った。

「あのっ、素顔でみんなの前に出て大丈夫なんですか……?」
「あー……。どうかな? でも、誰にも気づかれていなかったから大丈夫じゃない? これからはこの方法でデートしよっか?」

 ノクスは含み笑いをしながら駐車場を歩いて行く。

「ノクス……。あの……。わたし……」
「うん?」
「……嬉しいです。来てくれて」
「それなら良かった」

 車の近くまできて、ノクスは微笑むと助手席のドアを開けた。

「……ありがとうございます」

 ミルティは小さな声でお礼を述べて車に乗り込んだ。
 車は停まったまま、少しの間無言が続いたけれど――ミルティはその静寂を破るように切り出した。

「ノクス。ええと。その……。わたし、ノクスが女の子にベタベタ触られてるの……嫌です」

 勇気を振り絞って言ったけれど――自分でも情けなくなるくらい小さな声だった。
 それでもノクスにはしっかり聞こえたようで彼は僅かに目を見開く。
 それからすぐにふっと息を吐くように笑った。
 そして、優しい眼差しでミルティを見る。

「思ってること、もっと、全部言っても大丈夫だよ? ミルティからなら嫉妬も束縛もどんな感情だって大歓迎。あ、嫌われるのはいやだけど」
「ノクスが……わたしの知らない誰かと仲良くなっているのは嫌です。わたし以外の人に優しくするのもいや、です……。わたし、あの子のこと好きになれないかもしれません……。だいたいノクスだって、もっと徹底して拒否してくれてもいいと思います」
「ふふ……」

 ノクスが堪えきれずに笑う。
 その反応にミルティは急に恥ずかしくなって顔を伏せた。
 すると優しい手が伸びてきて頭を撫でる感触があった。

「ごめん。ミルティにそんなふうに思ってもらえるの嬉しくてさ。幸せで、顔がゆるんでる」

 ノクスは楽しそうにそう言いながら指先でミルティの髪を梳く。

「だけど、いやな気持ちにさせてごめん。――安心して? 僕は君しか見てない」

 そう言ってミルティの顎に指を添える。
 ノクスがゆっくりと顔を近づけてきたから、ミルティは反射的に目を瞑った。
 唇が重なる寸前、ミルティの脳裏にちらつくものがあった。

『やっぱり優しい……大好き♥』

 ルルの声。甘えた声と媚びるような視線。

「……っ」

 ミルティはぱちりと目を開けて、咄嗟にノクスの胸を押し返す。

「――どうしたの? いやだった?」

 ノクスは驚いたようにミルティを見つめた。

「ごめんなさい……。ちがうんです。あの――」

(言わなくちゃ、ちゃんと……)

 ミルティは一度大きく深呼吸してから口を開く。

「ノクス……。大好き……」

 ミルティは顔を真っ赤に染めながら消え入りそうな声で告げた。
 その告白にノクスは一瞬驚いたように目を見開くがすぐに嬉しそうに微笑む。

「僕もだよ。ミルティ……愛してる」

 そう言って、今度こそノクスはミルティにキスをした。
 啄むような軽いキスではなく――。

「――ん……っ」

 舌先で唇をノックされ隙間を作ってしまうと、ぬるりとしたものが咥内に入ってきた。

「ふ……あ……っ♡」

 恥ずかしさから奥に引っ込んでいたミルティの舌を追いかけてくる。
 絡め取られて擦られるとぞくぞくと腰が震える。

「は……ふ……っ♡」

 苦しくなってきてノクスの胸を軽く叩く。
 一度離れて、今度は額に唇が押し当てられた。

「――えっちのとき以外で初めて言ってもらえたかも。うれし♡ 大好きだよ、ミルティ」

 ノクスの甘い囁きが耳朶に吹き込まれる。

「…………」

 ミルティは何も言わずノクスの服の裾を掴んだ。
 彼はそんなミルティにふわりと笑いかけて、もう一度ちゅっと軽い音を立てて唇にキスを落とす。
 その仕草があまりにも自然で優しくて胸がぎゅっとなった。

「――帰ろっか」
「はい……」

 頷いて目を閉じた。優しい手の平に頬をすり寄せる。
 幸せな温もりに包まれてミルティはふわふわとした幸福感に浸った。
 エンジン音とともに車が動き出す。
 窓の外を流れる景色を眺めながら、ミルティはそっと指先を絡ませた。

      ✢

 自宅マンションに帰るとすぐ、ノクスが後ろから腕を回してミルティを抱きしめた。

「……やっといちゃいちゃできる」

 耳元で囁かれて背中がぞくりとする。

「……んっ」

 腰に回された手に力が込められ、そのまま身体が浮いて――気がつけばソファに押し倒されていた。

「キスしたい……」

 甘えるような声とともに唇が重なる。
 ちゅっ、と音を立てて何度も吸い付かれると頭がぼんやりしてくる。

「……は、ぁ……っ」

 ミルティは目を閉じてされるがままになっていた。
 しばらくするとノクスの手がするりと胸元に滑り込んできた。

「んっ……♡」
「ミルティ……」
「え……?」
「ヤキモチで怒ってる君、可愛かった」

 ノクスは嬉しそうに笑いながら乳首を摘んだ。

「ひ、ん……っ♡」

 突然の刺激に思わず声が漏れる。

「――もう、怒ってない?」

 そのままくにくにと弄られて背中が仰け反った。

「あ……っ♡ やぁ……っ♡ お、おこって、ない、ですっ……」
「本当に? 僕に言いたいことない?」
「怒ってて、ほしいんですか……っ?」
「ん~。ちょっとだけ。ミルティに妬いてもらえるなんて嬉しくて、つい……」
「もおっ……! わたしは、やですっ……! あの子、可愛かったし……」
「そう?」

 ぷいっと顔を背けたところでノクスの指先がまた乳首を弾いた。

「んんっ……♡ ノクスは、可愛い女の子にくっつかれたら、嬉しくなったり、しないんですかっ……?」
「僕にとっての可愛いはミルティだけ」

 耳たぶを軽く噛まれて、肌がぞくぞくと粟立つ。

「他の女になんて興味ないよ。ミルティが一番可愛くて、誰より大好き」

 ノクスの声が低く掠れていく。

「んあっ……♡ ふぅっ……♡」

 首筋に舌が這わされたあと、鎖骨にちゅっと強く吸いつかれた。
 その間にも、ブラウスのボタンが一つ二つとはずされていく。

「ひゃっ……♡ 痕、つけちゃ……っ」
「隠れる服着ないと、だね」

 ノクスは構わず舌を這わせ続けた。
 胸元にちゅうちゅうと音を立てながら幾つも跡を残していく。

「んっ♡ は、ぁっ♡ や、だめ……っ♡」

 ブラジャーをずらしカップから露出した乳首にむしゃぶりつく。
 もう片方は指先でクリクリと捏ねるようにされた。

「はぁっ♡ あっ♡ んんぅっ♡」
「かわい……。ミルティのおっぱいすごい美味しそうに膨らんでる」
「や、あっ……♡ んっ♡」

 両胸を交互に舐めしゃぶられると甘い痺れが走る。

「やば……♡ 可愛い過ぎてたまらない」

 スカートの中に潜り込んできた大きな手がショーツ越しに割れ目を擦る。

「ひ……っ♡」
「ぬるぬる……♡ ミルティのここ……もうすごいことになってるよ?」

 布越しに敏感な部分を擦られると、膝がガクガクと震える。

「やぁ……っ♡ それ、だめぇ……っ♡」
「だめなの? こんなになってるのに?」
「だっ、てぇ……っ♡」

 指が下着の隙間から侵入してくると、直接秘裂に触れた。
 ぬぷりと入り込んでくる指の感触に全身が跳ねる。

「やっ……♡ はいって、きて……っ♡」
「大丈夫? 痛くない?」
「んんぅっ……♡」

 くちゅくちゅと卑猥な音を立てながら中の浅い箇所を擦られると、電流のような快感が走る。
 同時に親指でクリトリスを押し潰されてしまえばひとたまりもなかった。

「んあぁっ……♡ ひっ……♡ そこぉ……っ♡ だめぇ……っ♡」
「ダメじゃないよ? 気持ちいいよね?」
「きもちぃ……っ♡ やぁっ……♡ もっとぉ……♡」
「ふふ……♡ 素直で可愛い」
「すご……っ♡ 指、すごい……っ♡」
「トロトロだね……♡ ミルティの中……」

 膣内でうごめく指に翻弄されてしまう。
 じゅぷじゅぷ♡ と粘ついた水音が響く。

「はぁっ……♡ あっ♡ あんっ……♡」
「すごいね♡ 溢れてくる」

 ノクスは嬉しそうに呟くと、もう一本指を増やした。

「ひあぁっ……♡ んんぅっ……♡」
「全部、僕のもの……♡」
「んっ♡ わたしっ……ノクスのもの、だよ……っ♡ ぜんぶっ……♡」

 ミルティが涙混じりに訴えるとノクスの口角が吊り上がった。

「――最高……っ。すげぇかわいい……♡」

 じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷっ♡ じゅぷんっ♡

「あぁっ……♡ やぁっ……♡ いっちゃう……っ♡」
「イっていいよ。たくさん可愛がってあげる……♡」
「あっ♡ あぁぁ―――っ♡♡」

 ビクビクと腰が跳ねる。
 激しい波が去るとくたりと身体から力が抜ける。

「――……はぁ……っ♡ はっ……♡」
「もう限界?」
「まだぁ……っ♡」

 ミルティはとろりと潤んだ瞳でノクスを見上げた。

「もっと欲しがってくれる?」

 ノクスは意地悪く笑うと濡れそぼった肉ビラに硬いものを押し当てる。

「んっ♡ ほし、ほしい、ですっ……♡」
「……大好きだよ、ミルティ」

 ノクスは愛おしげに囁き、ゆっくりと挿入してきた。

「ひ……っ♡ あぁ――っ♡」

 熱くて太いモノが入ってくる感覚に背中が仰け反る。
 じゅぷぷ……っ♡ と根元まで埋め込まれる感覚に息を飲んだ。

「――……うん。ちゃんと奥まで届いてる?」

 ノクスは満足そうに微笑むと、ゆっくりと律動を始めた。

 ぱちゅんっ♡ ぱちゅんっ♡ ぱちゅんっ♡

 結合部から淫靡な水音が響く。

「やっ……♡ あっ♡ やぁっ……♡」
「気持ちいいね?」
「んっ……♡ すご、く……っ♡ ノクスっ♡ す、き……っ♡」
「うれし……っ♡ ミルティ……♡」

 ノクスはうっとりと囁くとさらに激しく腰を使って抽送を始めた。

「んあぁっ♡ あ゛っ♡ あんっ……♡」

 ばちゅんっ♡ ばちゅばちゅばちゅばちゅっ♡

 腰が打ち付けられる衝撃に息が詰まる。
 結合部からは絶えず蜜が零れ落ちていく。

「もっと言って……? 好きって……」
「んっ♡ すきっ……♡ ノクスがっ……だいすき……っ♡」
「僕も好きだよ……♡ ミルティのことだけが好き♡」

 ノクスは甘く囁きながら腰を振り続けた。
 そのたびに最奥を穿たれ甘い疼きが広がっていく。

「んあぁっ……♡ おくっ……♡ ぐりぐりってぇ……っ♡」
「子宮口に当たってるのわかる? ほら……」
「ああぁっ……♡ そこぉ……っ♡ すごいのぉ……っ♡」
「いいよ……いっぱい感じて♡ ――もっとぐちゃぐちゃになって、僕から離れられなくなってよ」

 ノクスは耳元で甘く囁くと激しくピストンを繰り返した。
 そのたびに意識が飛びそうになる。

「ミルティ……! ずっと僕だけのものでいてくれる……?」
「うんっ……♡ ずっと一緒だからぁ……っ♡」
「約束だよ?」
「約束……っ♡ 約束するっ……♡」
「ミルティ……愛してる……っ♡」
「んあぁっ……♡ だ、めぇっ……♡ い、く♡ いっちゃ、うぅ……っ♡」
「んっ♡ 一緒に……イこ……?」

 ノクスは最奥を突き上げながら囁いた。

「あ、あ、あっ♡ あ゛あ゛っ♡ ~~~~ッッ♡」
「くっ……」

 ミルティが達すると同時に熱い飛沫が注ぎ込まれる感覚があった。

「はっ……♡ はぁ……っ♡」
「――大好き。ミルティだけが特別……」

 ノクスは蕩けるような笑みを浮かべながら唇を重ねてきた。
 優しく触れ合うだけのキスが次第に深くなり互いの唾液を交換し合うように貪り合う。

「んむ……っ♡ ふ、あ……っ♡」
「ミルティ……大好き……。もっといっぱい欲しい……♡」

 ノクスはうっとりと囁くと再び腰を揺すり始めた。
 一度果てたばかりなのにすぐに硬度を取り戻した陰茎が蠢くように膣壁を擦り上げる。

「ひっ……♡ あっ……♡ また……っ♡」
「ん♡ たくさん可愛がってあげる……♡」

 ノクスは恍惚とした表情で微笑みながら律動を再開させた。

「んあぁっ……♡ あっ♡ あんっ♡」

 ぱちゅんっ♡ ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅんっ♡

「もっとっ……♡ もっとぉ……っ♡」

 ミルティは夢中になって腰を揺らし彼を求めるように脚を絡ませた。

「あぁっ♡ あっ……♡ きもちい……っ♡」
「可愛い……っ♡ もっと僕だけに狂って……」

 ノクスは甘く囁きながら更に強く腰を打ち付けてきた。
 肌同士がぶつかり合う音と共に結合部から大量の愛液が溢れ出る。

「やっ……♡ あぁっ……♡ だめぇ……っ♡」
「だめじゃないでしょ? だめなら、やめちゃうよ?」
「やっ♡ やめな、で……♡ もっとっ……♡ ほしっ……ッ♡」
「またイきそうだね……?」

 ノクスは意地悪く笑うと最奥をぐりぐりと抉ってきた。
 その途端に視界が真っ白に染まるほどの快感が押し寄せてくる。

「ひあぁっ……♡ あ゛っ♡ あ゛あ゛っ……♡」
「――っ♡」

 絶頂を迎えた瞬間に膣内がきつく収縮し中に納まっているモノを締め付けてしまう。
 その刺激で彼もまた達したらしく熱い飛沫が注ぎ込まれる。

「はっ……♡ はぁ……っ♡」
「ミルティ……こっち向いて? ちゅー、しよ?♡」

 ノクスは幸せそうに微笑むと再び唇を重ねてきた。
 優しく触れ合うだけのキスから次第に深いものへと変わっていく。

「このままずっと、僕のこと独占してよ……♡」
「んんっ……♡」

 互いの舌を絡め合い唾液を交換し合うような濃厚な口付けに酔い痴れながら二人は再び行為に没頭していった――。
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