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7 魔法少女によく似たセクシー女優がいるらしく 怪人ノクスは気が気じゃない
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暗刃会拠点ビルの休憩室。
その日、影士たちは珍しく作戦の話ではなく、ひそひそと艶っぽい話題で盛り上がっていた。
「おい、見たか。これ」
ひとりが隣の男にスマホの画面を差し出す。
「見た見た! ――もしかしなくても、白輝の花を意識してるよな?」
「顔だけじゃなくて声も似てるらしいぞ」
「おまえ、この前の飲み会で本物の方見たんだろ? どうだった?」
「すげぇ可愛かった!」
「うっわ……羨ましい。俺も行きたかったあー!」
「それにしても……ほんと、似てるよなあ……」
影士の男三人は画面を見つめたまま「はぁ~♡」とうっとりした表情でため息をついた。
そこへ、長身の男が近づく。
金色の短髪に精悍な顔つき。キザシだ。
「あ、キザシさん!」
スマホを持っていた男がキザシに画面を見せる。
「この娘、知ってます?」
「ん?」
目の前に出されたスマホの画面には女性が映っている。
布地面積の少ない――色気の漂う下着姿で、煽情的なポーズで写っているのだ。
「――……は? ミルティ?」
キザシは一瞬、眉をぴくりとさせた後、画面を二度見した。
その瞬間、心臓が跳ねる。
ミルティのはずがない――そう否定したかったのに、目が離れなかった。
「え? えっ⁉ 彼女、こんなグラビアみたいな活動までしてるのか? いや、それにしたって、これはさすがに……」
思わず食い入るように画面を見つめ、ぐっと両拳を握りしめる。
白輝会の指示なのか、それとも……何のために?
「似てますよね~」と影士たちが口を開いた。
「本物と組んだキザシさんですら見間違えるってことは、相当似てるってことですよね」
「は? え? ど、どういうことだ?」
要領を得ないキザシに、男のひとりが画面をスワイプしながら説明を続ける。
「この娘、今ネットで話題になってるセクシー女優なんですよ。――ミリア・ユマモリ、新人らしいです。SNSとかでも、白輝の花の禁断コピーなんて言われてるくらい似てるらしくて」
「清楚な雰囲気からギャップが最高! ってレビューにも。…………実際、最高でした」
「…………」
キザシは完全に固まった。
画面の中で、舌を出して挑発的な笑みを浮かべる女性は、じっと観察しなければミルティ本人だと思い込んでしまいそうなほど、よく似ていた。
――似すぎている。
キザシの喉が、ごくりと鳴った。
✢
クナブルム・フィニスの最上階。
黒曜石のような床がひんやりと足音を弾く廊下を、ノクスは静かに歩いていた。
自分の執務室の前で足を止め、ぐっと伸びをする。
(あとは書類まとめて帰るだけ。早く終わりそうだからミルティのとこ、行こ……)
上機嫌で扉を開け、中に入った――途端に、甘く湿った吐息のような声が部屋に流れていた。
『あ、あっ♡ んんっ♡ そ、こぉ、もっとぉ……ッ♡♡♡』
驚きに足が止まる。
「……は?」
見れば、扉から遠いところにある大型モニタに全裸に近い格好の女が大写しになっていた。
身体をくねらせ、快楽に溺れるように腰を動かしている。
『きゃんっ♡』
「よお、おつかれ……」
ソファで手をあげたのは、黒髪に赤い瞳が特徴的な情報部門統括のヴォルペスだ。
ノクスは怒りを抑えて静かに尋ねる。
「……なにしてんの? 勝手に人の部屋でそんな動画見るのはやめてもらいたいね」
「固いこと言うなよ。一緒に見ようと思ったんだよ。この娘、新人だって。ほら、見てみろよ」
ヴォルペスが画面を指差す。
「興味ない」
即答。そして低い声で続ける。
「で? なんで僕の部屋でそんなもの見てるんだい?」
ヴォルペスはひょいと肩を竦め、改めてモニタの方に視線を向ける。
「悪かった悪かった。たまたまおもしろい動画を見つけたから、我慢できなくってついな」
「少しも面白くないから、さっさと消してくれるかな」
ノクスが呆れて溜め息をつくのを、無視するかのように、ヴォルペスが動画を一時停止する。
そして、再びノクスに促してくる。
「いいから、とにかくこの娘をよく見てみろって。なかなか傑作だぜ? ――ほら、あれ、なんて言ったっけ? 白輝の花!」
「…………は?」
よく知る言葉に、ノクスも思わず視線を動かす。
モニタを凝視し、ああそういうことか、と納得した。
「ミルティ=クラウゼによく似てるって話題らしいぜ。名前はミリア・ユマモリ」
続いたヴォルペスの言葉に、ノクスは「はあ」と溜息を零した。
(似てる? は? どこが?)
言いたいことはわかる。実際、モニタに映るミリアの顔を見たときに、ヴォルペスがなにを言いたいのかを察せられる程度には――雰囲気が近いのだろう。
しかし、ノクスの目には全く違うように見えた。
「――……そう? 僕にはあんまり似てるようには見えないけど」
ふい、とモニタから顔を逸らすと、ヴォルペスが意味ありげに微笑む。
「おっと、見る価値なし? ノクスちゃんは厳しいな」
ヴォルペスつまらなそうにつぶやき、再生ボタンを押した。
執務室に場違いな嬌声が響き渡る。
ノクスはうんざりとした表情のまま、デスクに置かれた資料の確認を始めた。
(仕事に戻りたい……)
そう思ったときだった。
『んんっ♡ あんっ♡ ぁんっ♡ 気持ちイイっ♡ おく、もっと、突いてぇっ♡』
艶めかしい女の声。
「なあ、ノクス」
「なんだよ?」
「おまえ、ミルティと話したことあんだろ? 声はどうよ? 似てる?」
「知らない。似てないんじゃない?」
ノクスはあいまいに相槌を打った。
「そっかぁ……。まあ、SNSのコアな層には結構人気みたいだぞ。――ミルティをそこまで知らない連中には充分に似てると思わせるぐらいだし、ミルティもこんな風に喘ぐのかな? って妄想が捗るんだろうな。制作側もそれを狙った企画にしてるぽいし。ほら、これなんか、まんま魔法少女もの!」
「――くだらない」
(こんなに似てないのに?)
ちらりと視線を向けたとき、男に跨がるミリアの姿が目に入った。潤んだ瞳で男を見上げ、乱れた髪を汗ばんだ首筋に張り付けて、うっとりとした表情で何かを訴えるかのように唇を動かす――その表情を見た瞬間、胃のあたりにむかつきを覚えた。
「……は?」
一瞬思考が止まる。同時に、疑問と苛立ちが波紋のように広がる。
(似てるわけないし、声も全然違うのに、僕はどうして――……こんなに腹が立ってるんだ?)
そう似てない。似てないけれど、自分以外には似て見える。それが問題だ。
どこの誰ともわからない奴らが、ミリアにミルティを重ねているかもしれないのだ。
『んんんっ♡♡♡ イ、イっちゃうぅぅっ♡♡♡』
快感に染まった声が耳にこびりつく。
苛立ちが胸に渦巻き、ノクスは立ち上がった。
「――っ!」
ヴォルペスは頬杖をついたまま、ちらりとノクスに横目を向けた。
「へぇ……興味ない割に、けっこうガン見してたな?」
「…………見てない」
「再生戻すか?」
ヴォルペスのリモコンを操作する指がわざとらしく停止ボタンの近くをふらつく。モニターの中では、ミリアが甘く喘ぎ、誰かに名を呼ばれていた。
ノクスは無言で歩み寄った。黒い手袋をはめた指先が迷いもなくリモコンを奪い取る。
瞬間。
モニターが、暗転した。
「――鬱陶しい。不愉快。これ以上流さないでもらえるかな」
低く、湿度を帯びた声音だった。怒気はない。だが室温が一瞬だけ数度下がったかのように、空気が張りつめる。
ヴォルペスが目を細める。
「ノクスちゃん、お顔が怖くなってますヨ~?」
茶化すような声色なのに、どこか探るような含みがある。
「うるさい」
ノクスはそう言い放ちながら、リモコンをデスク脇の棚へと放った。
ヴォルペスの目がほんのわずかに緩む。そして、唇の端がかすかに持ち上がった。
「あ~……だな。ちょっと悪ふざけが過ぎたわ。悪かった。謝る」
「……」
「もうしない、見ない、聞かない。約束する」
ヴォルペスが手を挙げ、降参のポーズを取る。その手をゆっくり下ろしながら、わざとらしく肩をすくめた。
「それにしても……」
と、言葉を付け加える。声のトーンは柔らかい。それでもどこか、底意地の悪さを感じさせる響きがあった。
「まさかここまで過剰反応するとはなぁ」
「……」
ノクスは冷ややかにヴォルペスを見る。すると、ヴォルペスは目尻を下げ、薄く微笑んだ。
「それ、俺以外の前では見せないようにな~」
「……は?」
低い声が漏れる。怒りというより、純粋な困惑。
「――あ、ちなみに、俺も似てるとは思わなかったな」
その一言に、ノクスが僅かに視線を動かす。
そのときにはもうヴォルペスはこちらに背を向けていた。
✢
『今から行ってもいい?』
ノクスからのメッセージがあったのは午後九時過ぎだった。
ミルティは湯上がりの濡れた髪を拭きながらアプリを開いた。
(なにかあったのかな……?)
いつもなら特に連絡せずに来るノクスが、わざわざ伺いを立てるというのは珍しかった。
『もちろん大丈夫です!』
すぐに返信すると既読がついた。十分も経たずにチャイムが鳴る。
「――急にごめんね」
「いえ。どうかしたんですか……?」
「ん……。ちょっとね」
玄関に立つノクスはどこか落ち着かない様子に見えた。
リビングに通すと、彼は慣れた足取りでソファに腰を下ろした。
ノクスの訪問で目を覚ましたのか、部屋の隅のクッションで寝転んでいたアテルがぴょこりと顔を上げる。
最近は唸ることもなく、ノクスが来るとその足元にちょこんと座るようになった。
「こんばんは、アテル。起こしちゃったかな?」
ノクスは微笑んで撫でようと手を伸ばしたが、アテルはぷいと顔を背けた。
「まだ触らせてくれないか……」
苦笑して手を引っ込めると、代わりにテーブルにスマホを置いた。
「……ねえ、ミルティ。これ見てもらえるかな?」
「はい? 」
ノクスの言葉に、ミルティはソファに腰を下ろすとスマホの画面に視線を落とした。ノクスの指が画面をタップする。
「動画、ですか……?」
ミルティは画面を見た途端に息を呑み、動揺した。
そこに映し出されていたのは――肌も露わな女性の艶かしい姿だったのだ。
「――……え。あの……?」
一目でそれが男性に向けられて作られたアダルトコンテンツだとわかった。
とはいえ、ノクスのことだ。おそらく意味もなく再生したのではないのだろうと、ひとまず自分に言い聞かせて視聴を続けることにした。
「こ、これが、どうかしたんですか?」
平静を装いつつも、目と耳は敏感に反応してしまう。
耳に入る動画内の女性の声は、だんだんと甘さを含んでいく。
「……この娘、ミリア・ユマモリって女優で、よく似てるって言われてるみたい。ミルティに」
「え……?」
ミルティは画面から目を離さずに固まった。
「わたしに……ですか?」
「うん」
ノクスの言葉にミルティはじっと画面を見つめた。
(似てる……? のかな……?)
自分ではよくわからなかったけれど、確かに、ぼんやりとした印象で言えば――似ていると言えないこともないかもしれないと感じた。
「僕は全然似てないと思うけど……。でも、似てるって思うやつが一定数いるのはたしかみたいで、だから、勘違いした奴にからまれたりしないようにって注意喚起。念の為ね」
「…………」
動画の中でミリアは、ミルティの魔法少女戦闘服とよく似た格好をしていた。
相手をしている男の手が太ももを滑り、下着の中に差し入れられる。
「っ……」
思わず目を逸らしそうになるミルティの耳に、ミリアの喘ぎ声が飛び込んでくる。
『ぁあっ♡ あんっ♡ あっ♡ ダメっ♡』
羞恥に頬が熱くなり、ぎゅっと手のひらを握った。
そうこうしているうちに、ミリアの衣装が引き裂かれた。
その間も艶めかしい水音と共に、淫靡な言葉が次々と紡がれていく。
(こ、こんなの、初めて見た……)
心拍数が上がってドキドキしてくる。
と、そこで、ミルティはあることに気づいた。
この動画の存在をノクスが知っていたということは、ノクスは普段からこの手の動画を見ていたのだろうか――?
そう考えた途端、女優が自分に似ているとかそんなことはどうでもよくなった。
「見ちゃ、だ、めです……!」
咄嗟に身を乗り出し、ノクスの手からスマホを奪う。
「え……」
ノクスは戸惑いがちにミルティを見た。
ミルティは真剣な眼差しで、訴えかけるように見つめ返した。
「ノクスも、これ、見たってことですよね……?」
「――……?」
その言葉に、ノクスは面食らったように目を見開く。ミルティは俯きながら震える声で続けた。
「な、な、なんのために……?」
男性がこういう動画を見るということは、つまり――そういう目的に使うため、ということのはずだ。
ミルティの訴えに、ノクスは状況を理解したのだろう。
「え? あ! ちがっ……! ミルティ、違う。誤解誤解」
慌てた声で否定すると、さらに念押しするように繰り返した。
「違うからね⁉ 同僚が……、君に似てるって見せられて、それで!」
「――……本当、ですか?」
疑いの目を向けるミルティに、ノクスは頭が取れんばかりに縦に振る。
「本当だよ。だいたい、僕、君以外に反応しないから」
「そ、そうなんですか……?」
「確かめてみる? 今だってちょっとも勃ってな――あ、でも、待って。ミルティに見せるってなったら、そっちに反応しちゃうかも」
ノクスの言葉を理解すればするほど、じわじわと頬が熱くなる。
どう答えたらいいのかわからなくなって、ミルティは下を向いた。
と、同時。
『んあっ♡ あ゙っ♡ も、とぉ……ッ♡ はげ、しく、してくらしゃっ、いぃッ♡』
「ひゃっ⁉」
手元から唐突に響き渡った高い声に、びくんっと身体が震えた。
動画が再生され続けていたことを忘れていた。
スマホからは女の喘ぎ声と打擲音がひっきりなしに流れ続けている。
(わたしも、いつもこんなかんじなのかな……?)
ドキドキと鼓動が早まっていく。
視線を落とせば、スマホの画面の中ではミリアが四つん這いになり、男に後ろから激しく打ちつけられている最中だった。
細くて白い身体が揺さぶられ、形の良い乳房がふるふると弾んでいる。男の指が乳房を鷲掴み、乳首をくにくにと弄ぶ。甲高い悲鳴と共にミリアは仰け反った。
『ひぁッ♡ あッ♡ あああっ♡♡♡』
涙声で叫びながらも、ミリアは自ら尻を突き出していた。結合部からは泡立った粘液が糸を引いている。男の腰使いが加速していく。
「っ……」
ミルティは息を呑み、無意識に膝をすり合わせた。
(どうしよ……。この娘、すごく…………気持ちよさそう……)
「――っ」
浮かんだ思考をすぐに打ち消すように頭を振る。
そのまま固まっていると、横からノクスの手が伸びてきた。
「――ねえ、ミルティ、それ、いつまで見るつもりなの?」
「え?」
不意にノクスに訊ねられ、ミルティはぱっと顔を上げた。
「まあ、見せたの僕だけど。もしかして……エッチな気分になっちゃった?」
ノクスの視線がじっとこちらを見つめている。
「え、え……? ちが……、そんなことは……っ」
じわじわと、下半身に熱が灯っていくのがわかった。けれど、素直に認めるのがなんとなく恥ずかしくて、つい顔を横に振ってしまった。
「なりませ……ぁんッ」
言葉の途中でノクスの手が腰に触れ、撫であげる。
そのままルームウエアの上から大きな手のひらが滑り、お尻の間にそろそろと這わされる。身体が、びくんっと跳ねた。
「びくびくしてる♡」
楽しげな声が耳元で響く。
「ミルティ、こういう動画今まで見たことなかった?」
「な、かったです……」
「そっか。他人のセックス見て、興奮しちゃったのかな?」
ノクスの指に少しだけ力がこもった。
「そ、なわけ……なっ……あっ♡」
「でも、ここ、濡れてきてる」
腰の辺りを撫でていた手がいつの間にか太腿に移動していて、指先が下着越しに秘所を掠めた。
「ぁんっ……♡」
薄布越しにクリトリスが押しつぶされる。
ミルティは顎を上げ、背を弓なりにしならせた。
「クリ、硬くなってきた♡」
「ぁんっ、だめぇっ……♡」
「あは♡ すごい。上からでもぐちょぐちょいってるのわかる……♡」
「あっ、あっ♡ や、まっ……んんっ♡」
ぬちゅ♡ ぬちゅっ♡ と布と粘膜が擦れる音が響く。
「やぁっ、あ、んっ♡」
『あっ、ふ♡ ああっ♡ クリ♡ クリ、もっと擦ってぇ……っ♡』
シンクロするみたいに画面からも甘い声が上がる。
ミルティが画面を盗み見ると、そこではミリアが大きく脚を開かれ、激しくクリトリスを捏ね回されているところだった。
「ねえ、ミルティ。もうぐちょぐちょだよ♡ これ、履いたままじゃ気持ち悪いよね? おしり上げて?」
「――……っ」
ノクスが耳元で囁くように言うと、ずるり、とルームウエアともどもショーツが引き下ろされた。
その瞬間、溢れ出した愛液が糸を引くのがわかった。
「はぁ……ッ♡ すっごい、とろっとろ……♡ やらしい匂い♡」
ノクスは熱い吐息を漏らしながら、内股に吸い付いた。
ちゅっ、ちゅっ♡ と何度も吸われていくうちに、膝ががくがくと震え始める。
「ミルティ……」
ノクスが蕩けた声で呼びかけてくる。
内腿を掴まれ、さらに大きく左右に開かれた。
「や、ぁ……っ♡」
「すっご……♡ ヒクヒクしてる……♡」
秘部に吹きかかる吐息に、ぞくぞくと背筋が痺れた。
「っ……」
くちゅくちゅ、と入口を指の腹で撫で回されると、どんどん蜜が溢れてくる。
「はぁ……♡ は、ぁ……ッ♡」
『あんっ♡ あぁん♡ おまんこっ♡ ぐりぐりってぇ……っ♡』
ミリアの声が鼓膜を叩く。
画面の中では、女優がクリトリスを摘まれながら指を二本入れられ、じゅぼじゅぼ♡ と抜き差しされているところだった。
「あッ♡ あぁッ♡ んんッ♡♡♡」
ノクスが親指でクリトリスを押しつぶし、同時に中指と薬指が侵入してきた。
「はぁんっ♡ あ、あッ♡ あぁッ♡」
待ち望んでいた刺激に、身体の奥が疼く。
「……ミルティ、気持ちいい?」
ノクスが問いかけながら、浅いところで指を抜き差しする。
「きもち……っ♡ あっ♡ しょこっ……♡ だめっ♡」
「ん~……? もっと奥の方がいい?」
「やぁっ♡ ちがっ♡ あ、んっ♡ んぁっ♡」
中を探るように掻き混ぜられ、腰が揺れる。
ノクスの指が、ある一点を捉えた瞬間、目の前が真っ白になった。
「んあっ♡ あぁぁっ♡ ~~~~っ♡」
ガクンと身体が仰け反る。
「っは……♡ イッちゃった?」
ノクスは嬉しそうに微笑むと、さらに強く指を押し込んできた。
「ひっ♡ あっ♡ だめだめだ、めっ……っ♡ また、すぐイッちゃ……あっ♡」
立て続けに絶頂を迎え、全身が痙攣する。
ぐちゅぐちゅ♡ と音を立てて出し入れされるたびに、膣壁が吸い付くように収縮した。
『あぁんっ♡ あっ♡ あぁっ♡ イクッ♡ イグゥッ♡』
画面の中ではミリアが絶頂を迎えていた。
「――ミルティ。ごめん、動画止めていい?」
「ん、え……?」
不意に声をかけられ、視線を向けると、ノクスがスマホに手を伸ばしていた。
「ミルティの声だけ聴いてたい」
「あ……」
「ミルティが気持ちよくなってる声だけがいい♡ 他は邪魔……。だめ?」
ノクスの甘えるような眼差しに、心臓がきゅうっと締め付けられる。
「だ、めじゃ、ないです……」
ミルティの答えにノクスは微笑むと、スマホの画面を閉じた。
そのまま、ミルティの身体を抱き寄せる。
「ぁ、ん……っ♡」
秘部に熱いものが押し当てられた。
「今度はこっちでいっぱい気持ち良くなろうね……♡」
ぬるり♡ と太い切先が媚肉を割り開く。
ゆっくりと体重がかけられていくたびに、胎内を満たされていく感覚に襲われる。
「は、ぁっ……♡ ミルティのなか、熱くて狭くて、めちゃくちゃ気持ちいい……っ♡」
ノクスが恍惚とした表情で呟く。
「あああ♡ 中、こすれて……っ♡ ん゙ん゙っ♡」
「ミルティ……♡ かわいい♡」
耳元で名前を呼ばれると同時に、下からズンッ♡ と突き上げられた。
「ひっ♡ ぁんっ♡」
「ここ好きだよね……? ほら、こうやって……」
ぐりぐりと亀頭が子宮口を抉る。
「あ゙っ♡ あ゙あ゙っ♡」
最奥を責め立てられ、悲鳴のような声が上がった。
「きもち……いっ♡ きもち、いよぉっ♡ あ、ん゙っ♡ ノクスぅっ♡」
「ミルティ……好きだよ……♡ 大好き♡」
ノクスが耳朶に唇を寄せながら囁いた。
その言葉と同時に、ぐっと深く抉られる。
「あ゙っ♡ あ゙ぁっ♡ おく、あたって……ッ♡ イッ♡ ~~~~♡」
子宮の入り口に口づけられて、ミルティは背筋を反らしながら絶頂を迎えた。
しかし、ノクスは構わず抽送を続ける。
「あ゙っ♡ らめっ♡ いまイってっ♡ ~~っ♡ ひッ♡」
「かわいい♡ ごめんね、僕、まだイッてないから……っ♡」
ノクスは一度ギリギリまで引き抜くと、思い切り腰を打ちつけた。
ばちゅんっ♡
肉を打つ音と共に、最奥まで貫かれる。
「ん゙お゙ッ♡ あっ、あっ、あ゙あ゙っ♡」
あまりの衝撃に視界がチカチカする。
「ほら、少しも似てない♡ 僕だけ……僕しか、知らないミルティ♡」
「ひっ♡ あ゙ぁっ♡ きもち、いっ♡ あつくて、ふとい、のっ……♡ しゅごっ……いっ♡」
粘膜の擦れる濁った音が響くたびに、脳天まで快感が駆け巡る。
「っは♡ ミルティの中、きゅうきゅう締め付けてきて……っ♡ はぁ……♡ も、イキそ……っ♡」
ノクスが限界を訴える。
ミルティはその首に腕を回し、懇願した。
「ん゙っ♡ ノクスの、ほしっ♡ お腹ん中、いっぱいにしてぇっ……ッ♡」
「――……ッ♡」
びゅくっ♡ びゅるるるっ♡
熱い飛沫が膣内で爆ぜる。
「ん゙ん゙っ♡ ~~~~ッ♡♡♡」
身体の深いところに、ねっとりと熱いものが広がっていくののを感じる。
けれど、その余韻に浸っている間もなく、ノクスがすぐに腰ゆすり始めた。
「はぁ……っ、はっ……♡ ごめ、もっかいさせて……っ♡」
ノクスはそう言うなり、ミルティの両脚を抱え上げると、勢いよく腰を叩きつけてきた。
「ん゙お゙ッ♡ あッ♡ あぁっ♡ う、そっ♡ な、んでっ……⁉」
ごちゅん、ごちゅんっ♡ と最奥を穿たれ、目の前が白く弾ける。
「や゙っ♡ だめ……♡ だめだめだめっ……♡ こわ゙れ゙ちゃっ……っ♡」
「だめじゃない……♡ ほら、ここ……っ♡ 好きでしょ……っ?」
「あ゙ぁっ♡ ん゙ん゙ッ♡ や゙っ♡ おか、しくな゙るっ♡ ゔ、あ゙ぁっ♡」
「あは♡ ミルティ……っ♡ 中に出されるの好きだもんね……っ♡」
「ん゙ッ♡ あ゙ぁっ♡ すき……♡ すきぃっ♡」
「うん……♡ 好きなだけあげる……っ♡」
ノクスが上体を倒してきて、ミルティを強く抱きしめた。
「っあ゙―――出る……ッ♡」
「あ゙ぁっ♡ ん゙っ♡ ~~~~ッ♡♡♡」
熱い液体が胎内に注がれるのを感じながら、ミルティもまた絶頂を迎えた。
✢
結局、ミルティが意識を飛ばすまでノクスは抱き続けた。
ぐったりと脱力した彼女の肢体をそっと抱き上げると、ノクスは寝室へと運んだ。
互いの汗と体液にまみれた身体を拭い清めてから、ベッドの上で整え直す。
(……またやりすぎた)
額に滲んだ汗を拭いながら、ノクスは小さく溜息をついた。もっと優しくすればよかったと少しだけ自己嫌悪に陥る。
しかし同時に、自分の中で燻っていた苛立ちがようやく鎮火したのを感じていた。
「これじゃ、ただの八つ当たりだったな……」
自分の醜い感情に気づき、再び溜息が漏れた。
リビングに戻ると、ソファに深く腰を下ろす。窓の外は夜明け前の濃紺が広がり、街の輪郭がぼんやりと浮かび上がっていた。
そこにフローリングを蹴る微かな爪音が近づいてきた。
視線を向けると、アテルがこちらに向かってくる。
「……おいで」
優しく手招きすると、アテルは数歩手前でピタリと止まった。赤い瞳が鋭く光る。
「…………」
ノクスは奇妙な既視感を覚え、軽く眉をひそめた。
黒い被毛に首の後ろの白い鬣。そして深い赤の瞳。
ノクスがよく知る人物と同じ――むしろ、どうして今までその共通点を無視できていたのかと疑問に思うほどだった。
「おまえ、もしかして……」
無意識に呟くと、アテルの耳がピクリと動いた。
「いや、そんなわけ――」
焦って取り繕うノクスをじっと見つめていたアテルがキュルキュルと鼻を鳴らし、それから舌なめずりをした。
「――ようやくか」
突然、低い男の声が響いた。
ノクスの全身が凍りつく。
――確実にアテルの方から聞こえたのだ。
しかも、ノクスが知っている声だ。
「そう驚くなよ。ったく、このままずっと気づいてもらえないかと心配したぜ?」
「おまえ……ヴォルペス……なのか……?」
震える声で問いかけると、アテル――黒い小さな狐の姿をしたヴォルペスは得意げに胸を張った。
「せいかーい」
「な、んで……⁉」
「白輝会に潜入しようと、うまいことミルティに懐いて家まで来れたと思ったら――まさか、おまえが現れるとはな」
ヴォルペスは愉快そうに尻尾を振った。
ノクスは呆然とヴォルペスを見つめた。最初、アテルに会ったときにやたらと威嚇されたことを思い出す。
「前々からミルティ贔屓だとは思ってたが、まさかあんなぐっちゃぐちゃなセックスする仲にまでなってたとはな」
「うるさい」
思わずノクスの語気が強くなる。
「……おまえ、まさか、いつも見て――」
「見てもなにも、おまえらがどこでもやりまくりだからだろ? 俺のせいじゃねえし」
「――……」
ヴォルペスの言葉に、ノクスは完全に沈黙した。
自分はともかく、ミルティのあの可愛い痴態をこの男にも見られていたという事実に頭が痛くなる。
その間もヴォルペスはゆらゆらと尻尾を揺らし面白そうにしている。
「――おまえには見せたくない」
ノクスは静かに言い放った。
「あれは僕だけの特権だ」
「へーへー。わかってるって。俺だって、気ぃ遣ってなるべく見ないようにしてたから安心しろよ。まあ、さすがに声だけは耳を伏せても完全に遮断はできなかったけどな」
「…………」
ノクスは忌々しげにヴォルペスを睨みつけた。
「で、僕をどうするつもりだい? 上の連中に報告するんだろ?」
ノクスの言葉にヴォルペスが尻尾をぴくりと動かした。そして、妙に芝居がかった仕草で大きくため息をついた。
「いや、しない。するつもりならとっくにしてるだろ。――なんだかよくわかんねぇけどさぁ……おまえ見てたらいろいろとやる気失せたっていうか……」
「どういう意味だよ?」
「つまりだな……」
ヴォルペスは言葉を選ぶように口ごもりながら続けた。
「――なんだか俺が介入するのは野暮っていうか?」
「は……?」
ノクスは怪訝な顔でヴォルペスを見つめた。
「俺の任務は白輝会の内部を探ること。おまえらがいちゃついていようがいまいが、こっちには支障ないしな」
「――……」
ノクスはまだ納得できないという顔をした。
「信じらんねーって顔してんな? ま、無理もないけど。お互い知らんぷり決め込んだ方が都合がいいだろ? 少なくとも今はな」
「…………ミルティに危害を加えるつもりはないんだよね?」
「あ~、ないない。ただ、俺はアテルとしてまだしばらくここにいるぞ? この生活結構気に入ってるし、彼女、俺のこと大好きだから急にいなくなったら泣いちゃうぜ?」
そんなの見たくないだろ? と、ヴォルペスはくあっと欠伸をした。
「…………おまえじゃなくて、アテルのことだから」
「同じことだろ?」
ヴォルペスはちょこちょこと寝床に戻っていき丸くなった。
しばらくして静かな寝息が聞こえてくる。
「…………はあ」
ノクスは深く息をついた。
ヴォルペスは信用できるかわからない。
それに、いつ彼の気まぐれが終わるかわからないのだ。
だが現状はこのまま見逃してくれるという言葉を信じるしかない。
ノクスはソファに身体を預けた。朝日が昇る前にシャワーを浴びて仮眠をとろうと思ったが、頭が冴えてしまいなかなか眠れそうになかった。
――この家に住む小さな監視者。
だいたいミルティとふたりきりにしてしまって大丈夫なのだろうか?
いろいろと考えているうちにもう日が昇ってきていた。
「ノクス……?」
掠れた声で名前を呼ばれる。
重い瞼を開けると目の前に心配そうな顔のミルティがいた。どうやらソファで眠り込んでしまったらしい。
「体調悪いんですか……?」
「ううん……ちょっと考え事をしてただけ」
ノクスはミルティの頬にそっと触れた。
(――大丈夫。まだ時間はある。考えるのはそれからでいい)
不安定な均衡の上に成り立つこの奇妙な生活。それが崩れるのはいつだろうか――? まだしばらくは続くのかもしれない。
それでも。
今はただ。
ミルティの温もりだけを感じていたかった。
「大丈夫? 眠れなかったんですか?」
ミルティの優しい声が降り注ぐ。
「――ううん、大丈夫」
ノクスは微笑みながらミルティの髪を梳き、それからぎゅっと抱きしめた。
その日、影士たちは珍しく作戦の話ではなく、ひそひそと艶っぽい話題で盛り上がっていた。
「おい、見たか。これ」
ひとりが隣の男にスマホの画面を差し出す。
「見た見た! ――もしかしなくても、白輝の花を意識してるよな?」
「顔だけじゃなくて声も似てるらしいぞ」
「おまえ、この前の飲み会で本物の方見たんだろ? どうだった?」
「すげぇ可愛かった!」
「うっわ……羨ましい。俺も行きたかったあー!」
「それにしても……ほんと、似てるよなあ……」
影士の男三人は画面を見つめたまま「はぁ~♡」とうっとりした表情でため息をついた。
そこへ、長身の男が近づく。
金色の短髪に精悍な顔つき。キザシだ。
「あ、キザシさん!」
スマホを持っていた男がキザシに画面を見せる。
「この娘、知ってます?」
「ん?」
目の前に出されたスマホの画面には女性が映っている。
布地面積の少ない――色気の漂う下着姿で、煽情的なポーズで写っているのだ。
「――……は? ミルティ?」
キザシは一瞬、眉をぴくりとさせた後、画面を二度見した。
その瞬間、心臓が跳ねる。
ミルティのはずがない――そう否定したかったのに、目が離れなかった。
「え? えっ⁉ 彼女、こんなグラビアみたいな活動までしてるのか? いや、それにしたって、これはさすがに……」
思わず食い入るように画面を見つめ、ぐっと両拳を握りしめる。
白輝会の指示なのか、それとも……何のために?
「似てますよね~」と影士たちが口を開いた。
「本物と組んだキザシさんですら見間違えるってことは、相当似てるってことですよね」
「は? え? ど、どういうことだ?」
要領を得ないキザシに、男のひとりが画面をスワイプしながら説明を続ける。
「この娘、今ネットで話題になってるセクシー女優なんですよ。――ミリア・ユマモリ、新人らしいです。SNSとかでも、白輝の花の禁断コピーなんて言われてるくらい似てるらしくて」
「清楚な雰囲気からギャップが最高! ってレビューにも。…………実際、最高でした」
「…………」
キザシは完全に固まった。
画面の中で、舌を出して挑発的な笑みを浮かべる女性は、じっと観察しなければミルティ本人だと思い込んでしまいそうなほど、よく似ていた。
――似すぎている。
キザシの喉が、ごくりと鳴った。
✢
クナブルム・フィニスの最上階。
黒曜石のような床がひんやりと足音を弾く廊下を、ノクスは静かに歩いていた。
自分の執務室の前で足を止め、ぐっと伸びをする。
(あとは書類まとめて帰るだけ。早く終わりそうだからミルティのとこ、行こ……)
上機嫌で扉を開け、中に入った――途端に、甘く湿った吐息のような声が部屋に流れていた。
『あ、あっ♡ んんっ♡ そ、こぉ、もっとぉ……ッ♡♡♡』
驚きに足が止まる。
「……は?」
見れば、扉から遠いところにある大型モニタに全裸に近い格好の女が大写しになっていた。
身体をくねらせ、快楽に溺れるように腰を動かしている。
『きゃんっ♡』
「よお、おつかれ……」
ソファで手をあげたのは、黒髪に赤い瞳が特徴的な情報部門統括のヴォルペスだ。
ノクスは怒りを抑えて静かに尋ねる。
「……なにしてんの? 勝手に人の部屋でそんな動画見るのはやめてもらいたいね」
「固いこと言うなよ。一緒に見ようと思ったんだよ。この娘、新人だって。ほら、見てみろよ」
ヴォルペスが画面を指差す。
「興味ない」
即答。そして低い声で続ける。
「で? なんで僕の部屋でそんなもの見てるんだい?」
ヴォルペスはひょいと肩を竦め、改めてモニタの方に視線を向ける。
「悪かった悪かった。たまたまおもしろい動画を見つけたから、我慢できなくってついな」
「少しも面白くないから、さっさと消してくれるかな」
ノクスが呆れて溜め息をつくのを、無視するかのように、ヴォルペスが動画を一時停止する。
そして、再びノクスに促してくる。
「いいから、とにかくこの娘をよく見てみろって。なかなか傑作だぜ? ――ほら、あれ、なんて言ったっけ? 白輝の花!」
「…………は?」
よく知る言葉に、ノクスも思わず視線を動かす。
モニタを凝視し、ああそういうことか、と納得した。
「ミルティ=クラウゼによく似てるって話題らしいぜ。名前はミリア・ユマモリ」
続いたヴォルペスの言葉に、ノクスは「はあ」と溜息を零した。
(似てる? は? どこが?)
言いたいことはわかる。実際、モニタに映るミリアの顔を見たときに、ヴォルペスがなにを言いたいのかを察せられる程度には――雰囲気が近いのだろう。
しかし、ノクスの目には全く違うように見えた。
「――……そう? 僕にはあんまり似てるようには見えないけど」
ふい、とモニタから顔を逸らすと、ヴォルペスが意味ありげに微笑む。
「おっと、見る価値なし? ノクスちゃんは厳しいな」
ヴォルペスつまらなそうにつぶやき、再生ボタンを押した。
執務室に場違いな嬌声が響き渡る。
ノクスはうんざりとした表情のまま、デスクに置かれた資料の確認を始めた。
(仕事に戻りたい……)
そう思ったときだった。
『んんっ♡ あんっ♡ ぁんっ♡ 気持ちイイっ♡ おく、もっと、突いてぇっ♡』
艶めかしい女の声。
「なあ、ノクス」
「なんだよ?」
「おまえ、ミルティと話したことあんだろ? 声はどうよ? 似てる?」
「知らない。似てないんじゃない?」
ノクスはあいまいに相槌を打った。
「そっかぁ……。まあ、SNSのコアな層には結構人気みたいだぞ。――ミルティをそこまで知らない連中には充分に似てると思わせるぐらいだし、ミルティもこんな風に喘ぐのかな? って妄想が捗るんだろうな。制作側もそれを狙った企画にしてるぽいし。ほら、これなんか、まんま魔法少女もの!」
「――くだらない」
(こんなに似てないのに?)
ちらりと視線を向けたとき、男に跨がるミリアの姿が目に入った。潤んだ瞳で男を見上げ、乱れた髪を汗ばんだ首筋に張り付けて、うっとりとした表情で何かを訴えるかのように唇を動かす――その表情を見た瞬間、胃のあたりにむかつきを覚えた。
「……は?」
一瞬思考が止まる。同時に、疑問と苛立ちが波紋のように広がる。
(似てるわけないし、声も全然違うのに、僕はどうして――……こんなに腹が立ってるんだ?)
そう似てない。似てないけれど、自分以外には似て見える。それが問題だ。
どこの誰ともわからない奴らが、ミリアにミルティを重ねているかもしれないのだ。
『んんんっ♡♡♡ イ、イっちゃうぅぅっ♡♡♡』
快感に染まった声が耳にこびりつく。
苛立ちが胸に渦巻き、ノクスは立ち上がった。
「――っ!」
ヴォルペスは頬杖をついたまま、ちらりとノクスに横目を向けた。
「へぇ……興味ない割に、けっこうガン見してたな?」
「…………見てない」
「再生戻すか?」
ヴォルペスのリモコンを操作する指がわざとらしく停止ボタンの近くをふらつく。モニターの中では、ミリアが甘く喘ぎ、誰かに名を呼ばれていた。
ノクスは無言で歩み寄った。黒い手袋をはめた指先が迷いもなくリモコンを奪い取る。
瞬間。
モニターが、暗転した。
「――鬱陶しい。不愉快。これ以上流さないでもらえるかな」
低く、湿度を帯びた声音だった。怒気はない。だが室温が一瞬だけ数度下がったかのように、空気が張りつめる。
ヴォルペスが目を細める。
「ノクスちゃん、お顔が怖くなってますヨ~?」
茶化すような声色なのに、どこか探るような含みがある。
「うるさい」
ノクスはそう言い放ちながら、リモコンをデスク脇の棚へと放った。
ヴォルペスの目がほんのわずかに緩む。そして、唇の端がかすかに持ち上がった。
「あ~……だな。ちょっと悪ふざけが過ぎたわ。悪かった。謝る」
「……」
「もうしない、見ない、聞かない。約束する」
ヴォルペスが手を挙げ、降参のポーズを取る。その手をゆっくり下ろしながら、わざとらしく肩をすくめた。
「それにしても……」
と、言葉を付け加える。声のトーンは柔らかい。それでもどこか、底意地の悪さを感じさせる響きがあった。
「まさかここまで過剰反応するとはなぁ」
「……」
ノクスは冷ややかにヴォルペスを見る。すると、ヴォルペスは目尻を下げ、薄く微笑んだ。
「それ、俺以外の前では見せないようにな~」
「……は?」
低い声が漏れる。怒りというより、純粋な困惑。
「――あ、ちなみに、俺も似てるとは思わなかったな」
その一言に、ノクスが僅かに視線を動かす。
そのときにはもうヴォルペスはこちらに背を向けていた。
✢
『今から行ってもいい?』
ノクスからのメッセージがあったのは午後九時過ぎだった。
ミルティは湯上がりの濡れた髪を拭きながらアプリを開いた。
(なにかあったのかな……?)
いつもなら特に連絡せずに来るノクスが、わざわざ伺いを立てるというのは珍しかった。
『もちろん大丈夫です!』
すぐに返信すると既読がついた。十分も経たずにチャイムが鳴る。
「――急にごめんね」
「いえ。どうかしたんですか……?」
「ん……。ちょっとね」
玄関に立つノクスはどこか落ち着かない様子に見えた。
リビングに通すと、彼は慣れた足取りでソファに腰を下ろした。
ノクスの訪問で目を覚ましたのか、部屋の隅のクッションで寝転んでいたアテルがぴょこりと顔を上げる。
最近は唸ることもなく、ノクスが来るとその足元にちょこんと座るようになった。
「こんばんは、アテル。起こしちゃったかな?」
ノクスは微笑んで撫でようと手を伸ばしたが、アテルはぷいと顔を背けた。
「まだ触らせてくれないか……」
苦笑して手を引っ込めると、代わりにテーブルにスマホを置いた。
「……ねえ、ミルティ。これ見てもらえるかな?」
「はい? 」
ノクスの言葉に、ミルティはソファに腰を下ろすとスマホの画面に視線を落とした。ノクスの指が画面をタップする。
「動画、ですか……?」
ミルティは画面を見た途端に息を呑み、動揺した。
そこに映し出されていたのは――肌も露わな女性の艶かしい姿だったのだ。
「――……え。あの……?」
一目でそれが男性に向けられて作られたアダルトコンテンツだとわかった。
とはいえ、ノクスのことだ。おそらく意味もなく再生したのではないのだろうと、ひとまず自分に言い聞かせて視聴を続けることにした。
「こ、これが、どうかしたんですか?」
平静を装いつつも、目と耳は敏感に反応してしまう。
耳に入る動画内の女性の声は、だんだんと甘さを含んでいく。
「……この娘、ミリア・ユマモリって女優で、よく似てるって言われてるみたい。ミルティに」
「え……?」
ミルティは画面から目を離さずに固まった。
「わたしに……ですか?」
「うん」
ノクスの言葉にミルティはじっと画面を見つめた。
(似てる……? のかな……?)
自分ではよくわからなかったけれど、確かに、ぼんやりとした印象で言えば――似ていると言えないこともないかもしれないと感じた。
「僕は全然似てないと思うけど……。でも、似てるって思うやつが一定数いるのはたしかみたいで、だから、勘違いした奴にからまれたりしないようにって注意喚起。念の為ね」
「…………」
動画の中でミリアは、ミルティの魔法少女戦闘服とよく似た格好をしていた。
相手をしている男の手が太ももを滑り、下着の中に差し入れられる。
「っ……」
思わず目を逸らしそうになるミルティの耳に、ミリアの喘ぎ声が飛び込んでくる。
『ぁあっ♡ あんっ♡ あっ♡ ダメっ♡』
羞恥に頬が熱くなり、ぎゅっと手のひらを握った。
そうこうしているうちに、ミリアの衣装が引き裂かれた。
その間も艶めかしい水音と共に、淫靡な言葉が次々と紡がれていく。
(こ、こんなの、初めて見た……)
心拍数が上がってドキドキしてくる。
と、そこで、ミルティはあることに気づいた。
この動画の存在をノクスが知っていたということは、ノクスは普段からこの手の動画を見ていたのだろうか――?
そう考えた途端、女優が自分に似ているとかそんなことはどうでもよくなった。
「見ちゃ、だ、めです……!」
咄嗟に身を乗り出し、ノクスの手からスマホを奪う。
「え……」
ノクスは戸惑いがちにミルティを見た。
ミルティは真剣な眼差しで、訴えかけるように見つめ返した。
「ノクスも、これ、見たってことですよね……?」
「――……?」
その言葉に、ノクスは面食らったように目を見開く。ミルティは俯きながら震える声で続けた。
「な、な、なんのために……?」
男性がこういう動画を見るということは、つまり――そういう目的に使うため、ということのはずだ。
ミルティの訴えに、ノクスは状況を理解したのだろう。
「え? あ! ちがっ……! ミルティ、違う。誤解誤解」
慌てた声で否定すると、さらに念押しするように繰り返した。
「違うからね⁉ 同僚が……、君に似てるって見せられて、それで!」
「――……本当、ですか?」
疑いの目を向けるミルティに、ノクスは頭が取れんばかりに縦に振る。
「本当だよ。だいたい、僕、君以外に反応しないから」
「そ、そうなんですか……?」
「確かめてみる? 今だってちょっとも勃ってな――あ、でも、待って。ミルティに見せるってなったら、そっちに反応しちゃうかも」
ノクスの言葉を理解すればするほど、じわじわと頬が熱くなる。
どう答えたらいいのかわからなくなって、ミルティは下を向いた。
と、同時。
『んあっ♡ あ゙っ♡ も、とぉ……ッ♡ はげ、しく、してくらしゃっ、いぃッ♡』
「ひゃっ⁉」
手元から唐突に響き渡った高い声に、びくんっと身体が震えた。
動画が再生され続けていたことを忘れていた。
スマホからは女の喘ぎ声と打擲音がひっきりなしに流れ続けている。
(わたしも、いつもこんなかんじなのかな……?)
ドキドキと鼓動が早まっていく。
視線を落とせば、スマホの画面の中ではミリアが四つん這いになり、男に後ろから激しく打ちつけられている最中だった。
細くて白い身体が揺さぶられ、形の良い乳房がふるふると弾んでいる。男の指が乳房を鷲掴み、乳首をくにくにと弄ぶ。甲高い悲鳴と共にミリアは仰け反った。
『ひぁッ♡ あッ♡ あああっ♡♡♡』
涙声で叫びながらも、ミリアは自ら尻を突き出していた。結合部からは泡立った粘液が糸を引いている。男の腰使いが加速していく。
「っ……」
ミルティは息を呑み、無意識に膝をすり合わせた。
(どうしよ……。この娘、すごく…………気持ちよさそう……)
「――っ」
浮かんだ思考をすぐに打ち消すように頭を振る。
そのまま固まっていると、横からノクスの手が伸びてきた。
「――ねえ、ミルティ、それ、いつまで見るつもりなの?」
「え?」
不意にノクスに訊ねられ、ミルティはぱっと顔を上げた。
「まあ、見せたの僕だけど。もしかして……エッチな気分になっちゃった?」
ノクスの視線がじっとこちらを見つめている。
「え、え……? ちが……、そんなことは……っ」
じわじわと、下半身に熱が灯っていくのがわかった。けれど、素直に認めるのがなんとなく恥ずかしくて、つい顔を横に振ってしまった。
「なりませ……ぁんッ」
言葉の途中でノクスの手が腰に触れ、撫であげる。
そのままルームウエアの上から大きな手のひらが滑り、お尻の間にそろそろと這わされる。身体が、びくんっと跳ねた。
「びくびくしてる♡」
楽しげな声が耳元で響く。
「ミルティ、こういう動画今まで見たことなかった?」
「な、かったです……」
「そっか。他人のセックス見て、興奮しちゃったのかな?」
ノクスの指に少しだけ力がこもった。
「そ、なわけ……なっ……あっ♡」
「でも、ここ、濡れてきてる」
腰の辺りを撫でていた手がいつの間にか太腿に移動していて、指先が下着越しに秘所を掠めた。
「ぁんっ……♡」
薄布越しにクリトリスが押しつぶされる。
ミルティは顎を上げ、背を弓なりにしならせた。
「クリ、硬くなってきた♡」
「ぁんっ、だめぇっ……♡」
「あは♡ すごい。上からでもぐちょぐちょいってるのわかる……♡」
「あっ、あっ♡ や、まっ……んんっ♡」
ぬちゅ♡ ぬちゅっ♡ と布と粘膜が擦れる音が響く。
「やぁっ、あ、んっ♡」
『あっ、ふ♡ ああっ♡ クリ♡ クリ、もっと擦ってぇ……っ♡』
シンクロするみたいに画面からも甘い声が上がる。
ミルティが画面を盗み見ると、そこではミリアが大きく脚を開かれ、激しくクリトリスを捏ね回されているところだった。
「ねえ、ミルティ。もうぐちょぐちょだよ♡ これ、履いたままじゃ気持ち悪いよね? おしり上げて?」
「――……っ」
ノクスが耳元で囁くように言うと、ずるり、とルームウエアともどもショーツが引き下ろされた。
その瞬間、溢れ出した愛液が糸を引くのがわかった。
「はぁ……ッ♡ すっごい、とろっとろ……♡ やらしい匂い♡」
ノクスは熱い吐息を漏らしながら、内股に吸い付いた。
ちゅっ、ちゅっ♡ と何度も吸われていくうちに、膝ががくがくと震え始める。
「ミルティ……」
ノクスが蕩けた声で呼びかけてくる。
内腿を掴まれ、さらに大きく左右に開かれた。
「や、ぁ……っ♡」
「すっご……♡ ヒクヒクしてる……♡」
秘部に吹きかかる吐息に、ぞくぞくと背筋が痺れた。
「っ……」
くちゅくちゅ、と入口を指の腹で撫で回されると、どんどん蜜が溢れてくる。
「はぁ……♡ は、ぁ……ッ♡」
『あんっ♡ あぁん♡ おまんこっ♡ ぐりぐりってぇ……っ♡』
ミリアの声が鼓膜を叩く。
画面の中では、女優がクリトリスを摘まれながら指を二本入れられ、じゅぼじゅぼ♡ と抜き差しされているところだった。
「あッ♡ あぁッ♡ んんッ♡♡♡」
ノクスが親指でクリトリスを押しつぶし、同時に中指と薬指が侵入してきた。
「はぁんっ♡ あ、あッ♡ あぁッ♡」
待ち望んでいた刺激に、身体の奥が疼く。
「……ミルティ、気持ちいい?」
ノクスが問いかけながら、浅いところで指を抜き差しする。
「きもち……っ♡ あっ♡ しょこっ……♡ だめっ♡」
「ん~……? もっと奥の方がいい?」
「やぁっ♡ ちがっ♡ あ、んっ♡ んぁっ♡」
中を探るように掻き混ぜられ、腰が揺れる。
ノクスの指が、ある一点を捉えた瞬間、目の前が真っ白になった。
「んあっ♡ あぁぁっ♡ ~~~~っ♡」
ガクンと身体が仰け反る。
「っは……♡ イッちゃった?」
ノクスは嬉しそうに微笑むと、さらに強く指を押し込んできた。
「ひっ♡ あっ♡ だめだめだ、めっ……っ♡ また、すぐイッちゃ……あっ♡」
立て続けに絶頂を迎え、全身が痙攣する。
ぐちゅぐちゅ♡ と音を立てて出し入れされるたびに、膣壁が吸い付くように収縮した。
『あぁんっ♡ あっ♡ あぁっ♡ イクッ♡ イグゥッ♡』
画面の中ではミリアが絶頂を迎えていた。
「――ミルティ。ごめん、動画止めていい?」
「ん、え……?」
不意に声をかけられ、視線を向けると、ノクスがスマホに手を伸ばしていた。
「ミルティの声だけ聴いてたい」
「あ……」
「ミルティが気持ちよくなってる声だけがいい♡ 他は邪魔……。だめ?」
ノクスの甘えるような眼差しに、心臓がきゅうっと締め付けられる。
「だ、めじゃ、ないです……」
ミルティの答えにノクスは微笑むと、スマホの画面を閉じた。
そのまま、ミルティの身体を抱き寄せる。
「ぁ、ん……っ♡」
秘部に熱いものが押し当てられた。
「今度はこっちでいっぱい気持ち良くなろうね……♡」
ぬるり♡ と太い切先が媚肉を割り開く。
ゆっくりと体重がかけられていくたびに、胎内を満たされていく感覚に襲われる。
「は、ぁっ……♡ ミルティのなか、熱くて狭くて、めちゃくちゃ気持ちいい……っ♡」
ノクスが恍惚とした表情で呟く。
「あああ♡ 中、こすれて……っ♡ ん゙ん゙っ♡」
「ミルティ……♡ かわいい♡」
耳元で名前を呼ばれると同時に、下からズンッ♡ と突き上げられた。
「ひっ♡ ぁんっ♡」
「ここ好きだよね……? ほら、こうやって……」
ぐりぐりと亀頭が子宮口を抉る。
「あ゙っ♡ あ゙あ゙っ♡」
最奥を責め立てられ、悲鳴のような声が上がった。
「きもち……いっ♡ きもち、いよぉっ♡ あ、ん゙っ♡ ノクスぅっ♡」
「ミルティ……好きだよ……♡ 大好き♡」
ノクスが耳朶に唇を寄せながら囁いた。
その言葉と同時に、ぐっと深く抉られる。
「あ゙っ♡ あ゙ぁっ♡ おく、あたって……ッ♡ イッ♡ ~~~~♡」
子宮の入り口に口づけられて、ミルティは背筋を反らしながら絶頂を迎えた。
しかし、ノクスは構わず抽送を続ける。
「あ゙っ♡ らめっ♡ いまイってっ♡ ~~っ♡ ひッ♡」
「かわいい♡ ごめんね、僕、まだイッてないから……っ♡」
ノクスは一度ギリギリまで引き抜くと、思い切り腰を打ちつけた。
ばちゅんっ♡
肉を打つ音と共に、最奥まで貫かれる。
「ん゙お゙ッ♡ あっ、あっ、あ゙あ゙っ♡」
あまりの衝撃に視界がチカチカする。
「ほら、少しも似てない♡ 僕だけ……僕しか、知らないミルティ♡」
「ひっ♡ あ゙ぁっ♡ きもち、いっ♡ あつくて、ふとい、のっ……♡ しゅごっ……いっ♡」
粘膜の擦れる濁った音が響くたびに、脳天まで快感が駆け巡る。
「っは♡ ミルティの中、きゅうきゅう締め付けてきて……っ♡ はぁ……♡ も、イキそ……っ♡」
ノクスが限界を訴える。
ミルティはその首に腕を回し、懇願した。
「ん゙っ♡ ノクスの、ほしっ♡ お腹ん中、いっぱいにしてぇっ……ッ♡」
「――……ッ♡」
びゅくっ♡ びゅるるるっ♡
熱い飛沫が膣内で爆ぜる。
「ん゙ん゙っ♡ ~~~~ッ♡♡♡」
身体の深いところに、ねっとりと熱いものが広がっていくののを感じる。
けれど、その余韻に浸っている間もなく、ノクスがすぐに腰ゆすり始めた。
「はぁ……っ、はっ……♡ ごめ、もっかいさせて……っ♡」
ノクスはそう言うなり、ミルティの両脚を抱え上げると、勢いよく腰を叩きつけてきた。
「ん゙お゙ッ♡ あッ♡ あぁっ♡ う、そっ♡ な、んでっ……⁉」
ごちゅん、ごちゅんっ♡ と最奥を穿たれ、目の前が白く弾ける。
「や゙っ♡ だめ……♡ だめだめだめっ……♡ こわ゙れ゙ちゃっ……っ♡」
「だめじゃない……♡ ほら、ここ……っ♡ 好きでしょ……っ?」
「あ゙ぁっ♡ ん゙ん゙ッ♡ や゙っ♡ おか、しくな゙るっ♡ ゔ、あ゙ぁっ♡」
「あは♡ ミルティ……っ♡ 中に出されるの好きだもんね……っ♡」
「ん゙ッ♡ あ゙ぁっ♡ すき……♡ すきぃっ♡」
「うん……♡ 好きなだけあげる……っ♡」
ノクスが上体を倒してきて、ミルティを強く抱きしめた。
「っあ゙―――出る……ッ♡」
「あ゙ぁっ♡ ん゙っ♡ ~~~~ッ♡♡♡」
熱い液体が胎内に注がれるのを感じながら、ミルティもまた絶頂を迎えた。
✢
結局、ミルティが意識を飛ばすまでノクスは抱き続けた。
ぐったりと脱力した彼女の肢体をそっと抱き上げると、ノクスは寝室へと運んだ。
互いの汗と体液にまみれた身体を拭い清めてから、ベッドの上で整え直す。
(……またやりすぎた)
額に滲んだ汗を拭いながら、ノクスは小さく溜息をついた。もっと優しくすればよかったと少しだけ自己嫌悪に陥る。
しかし同時に、自分の中で燻っていた苛立ちがようやく鎮火したのを感じていた。
「これじゃ、ただの八つ当たりだったな……」
自分の醜い感情に気づき、再び溜息が漏れた。
リビングに戻ると、ソファに深く腰を下ろす。窓の外は夜明け前の濃紺が広がり、街の輪郭がぼんやりと浮かび上がっていた。
そこにフローリングを蹴る微かな爪音が近づいてきた。
視線を向けると、アテルがこちらに向かってくる。
「……おいで」
優しく手招きすると、アテルは数歩手前でピタリと止まった。赤い瞳が鋭く光る。
「…………」
ノクスは奇妙な既視感を覚え、軽く眉をひそめた。
黒い被毛に首の後ろの白い鬣。そして深い赤の瞳。
ノクスがよく知る人物と同じ――むしろ、どうして今までその共通点を無視できていたのかと疑問に思うほどだった。
「おまえ、もしかして……」
無意識に呟くと、アテルの耳がピクリと動いた。
「いや、そんなわけ――」
焦って取り繕うノクスをじっと見つめていたアテルがキュルキュルと鼻を鳴らし、それから舌なめずりをした。
「――ようやくか」
突然、低い男の声が響いた。
ノクスの全身が凍りつく。
――確実にアテルの方から聞こえたのだ。
しかも、ノクスが知っている声だ。
「そう驚くなよ。ったく、このままずっと気づいてもらえないかと心配したぜ?」
「おまえ……ヴォルペス……なのか……?」
震える声で問いかけると、アテル――黒い小さな狐の姿をしたヴォルペスは得意げに胸を張った。
「せいかーい」
「な、んで……⁉」
「白輝会に潜入しようと、うまいことミルティに懐いて家まで来れたと思ったら――まさか、おまえが現れるとはな」
ヴォルペスは愉快そうに尻尾を振った。
ノクスは呆然とヴォルペスを見つめた。最初、アテルに会ったときにやたらと威嚇されたことを思い出す。
「前々からミルティ贔屓だとは思ってたが、まさかあんなぐっちゃぐちゃなセックスする仲にまでなってたとはな」
「うるさい」
思わずノクスの語気が強くなる。
「……おまえ、まさか、いつも見て――」
「見てもなにも、おまえらがどこでもやりまくりだからだろ? 俺のせいじゃねえし」
「――……」
ヴォルペスの言葉に、ノクスは完全に沈黙した。
自分はともかく、ミルティのあの可愛い痴態をこの男にも見られていたという事実に頭が痛くなる。
その間もヴォルペスはゆらゆらと尻尾を揺らし面白そうにしている。
「――おまえには見せたくない」
ノクスは静かに言い放った。
「あれは僕だけの特権だ」
「へーへー。わかってるって。俺だって、気ぃ遣ってなるべく見ないようにしてたから安心しろよ。まあ、さすがに声だけは耳を伏せても完全に遮断はできなかったけどな」
「…………」
ノクスは忌々しげにヴォルペスを睨みつけた。
「で、僕をどうするつもりだい? 上の連中に報告するんだろ?」
ノクスの言葉にヴォルペスが尻尾をぴくりと動かした。そして、妙に芝居がかった仕草で大きくため息をついた。
「いや、しない。するつもりならとっくにしてるだろ。――なんだかよくわかんねぇけどさぁ……おまえ見てたらいろいろとやる気失せたっていうか……」
「どういう意味だよ?」
「つまりだな……」
ヴォルペスは言葉を選ぶように口ごもりながら続けた。
「――なんだか俺が介入するのは野暮っていうか?」
「は……?」
ノクスは怪訝な顔でヴォルペスを見つめた。
「俺の任務は白輝会の内部を探ること。おまえらがいちゃついていようがいまいが、こっちには支障ないしな」
「――……」
ノクスはまだ納得できないという顔をした。
「信じらんねーって顔してんな? ま、無理もないけど。お互い知らんぷり決め込んだ方が都合がいいだろ? 少なくとも今はな」
「…………ミルティに危害を加えるつもりはないんだよね?」
「あ~、ないない。ただ、俺はアテルとしてまだしばらくここにいるぞ? この生活結構気に入ってるし、彼女、俺のこと大好きだから急にいなくなったら泣いちゃうぜ?」
そんなの見たくないだろ? と、ヴォルペスはくあっと欠伸をした。
「…………おまえじゃなくて、アテルのことだから」
「同じことだろ?」
ヴォルペスはちょこちょこと寝床に戻っていき丸くなった。
しばらくして静かな寝息が聞こえてくる。
「…………はあ」
ノクスは深く息をついた。
ヴォルペスは信用できるかわからない。
それに、いつ彼の気まぐれが終わるかわからないのだ。
だが現状はこのまま見逃してくれるという言葉を信じるしかない。
ノクスはソファに身体を預けた。朝日が昇る前にシャワーを浴びて仮眠をとろうと思ったが、頭が冴えてしまいなかなか眠れそうになかった。
――この家に住む小さな監視者。
だいたいミルティとふたりきりにしてしまって大丈夫なのだろうか?
いろいろと考えているうちにもう日が昇ってきていた。
「ノクス……?」
掠れた声で名前を呼ばれる。
重い瞼を開けると目の前に心配そうな顔のミルティがいた。どうやらソファで眠り込んでしまったらしい。
「体調悪いんですか……?」
「ううん……ちょっと考え事をしてただけ」
ノクスはミルティの頬にそっと触れた。
(――大丈夫。まだ時間はある。考えるのはそれからでいい)
不安定な均衡の上に成り立つこの奇妙な生活。それが崩れるのはいつだろうか――? まだしばらくは続くのかもしれない。
それでも。
今はただ。
ミルティの温もりだけを感じていたかった。
「大丈夫? 眠れなかったんですか?」
ミルティの優しい声が降り注ぐ。
「――ううん、大丈夫」
ノクスは微笑みながらミルティの髪を梳き、それからぎゅっと抱きしめた。
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