剣が振れなくても世界を救えますか?~勇者として召喚されたのは非力な女の子でした~

noyuki

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天に吠える狼少女

第二章 紅髪の異端審問官・7

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「でもやぁ」

 と、今まで話が小難しくて会話に割り込めなかったユウが口を開く。

「教皇さんって偉い人なんやろ?やったら、そんなこそこそせんと皆仲良ぉしなさい!って言えばえーやん」

「そうしたいのは山々なんだけどな……」

 ユウの素朴で純粋な疑問にディナがその赤髪をぽりぽりと掻く。

「いくら教皇の言葉でも、信者が皆言う事を聞くわけじゃない。魔族は敵、分かり合うことはできない。そういう認識があまりにも深く人々の心に根差しちまってる。教皇がこの魔族とは仲良くできるって言っても他に賛同してくる者がいなけりゃ乱心したと思われるのがオチだ。枢機卿の中には魔族を従える勇者に刺客を放つような輩もいるぐらいだしな」

 もっともやつの場合、魔族への憎しみ以上に勇者を亡き者にした後、ローティスの教えに背いた者に天罰が下った、ラドカルミア王国は悔い改めるべきであるとか難癖をつけて布施を巻き上げるのが目的だろうが。と、ディナは内心付け加える。

 ディナはもう一度脚を組み、両手を頭の後ろへ。体重を背もたれに預ける。

「あたし達異端審問官は教皇と志を共にしてるが、なんせ嫌われ者でね。こういうところじゃ教皇の助力にはなれない。歯がゆいねぇ」

 まだ十四の少女に苦労してるんやな……という憐憫の籠った視線を向けられてうら若き異端審問官は苦笑を漏らした。

「――でも、〈世界を救う者〉である勇者が声を揃えてくれりゃ、話は変わってくるかもしれない」

 体勢はそのままに、声の調子トーンだけが切実な色を帯びる。本当に、心からその魔族の行く末を憂いでいる声色。それを勇者は敏感に感じ取る。

「ディナさん、その保護してる魔族と仲良えんか?」

 ユウの言葉にディナは再び視線を自分の右腕に。つられてユウもその組紐を見る。あまり見栄えの良いアクセサリーとは言えない。

「まぁ、な。あいつらが他の人間に見つかって殺されちまう前に、なんとかしたいと思ってる。そのためにあいつら自身の協力も必要だ。それをユウに、小鬼族ゴブリンを手懐けた勇者に頼みたい」

 手懐けた、という表現にむっとその細い眉を寄せた少女を見て、

「小鬼族と“和解した”勇者に頼みたい」

 言い直したディナにユウがうむと頷く。

「まずは狼人族ウルフェンが無闇に人に危害を加えない種族だと証明する必要がある。そのためにあいつらの何人かを“勇者特区”に連れて行って、人間と共に生きていけるんだと示したい。ある程度それが周知できれば、教皇は勇者と共に“魔族”という総称を撤廃する宣言をしたいそうだ」

「魔族を、撤廃……?」

 その言葉にはユウのみならず他の二人も怪訝に思い、視線を集中させた。
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