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2.冒険一日目
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「はぁっ!ふっ!」
「そっち行ったぞ!」
学園を出て、早速王国からのモンスター退治の任務を受け国を出発した。学園ではそれほど他の候補生たちと実習訓練を共にすることがなかったから、実際に新勇者様たちの実力を目の当たりにして言葉を失っていた。こんなにも敵があっさりとやられていくものなのか……白魔導士様も膨大な魔力で付与魔法や回復を的確にかけてサポートしている。すごい……
「先に進むぞ」
「は、はい!」
僕はと言えば自分を守る防御魔法に近づいてきたザコモンスターを何度も攻撃して倒すので精いっぱいだった。フン、と鼻で笑われていた気もするがこんなすごい人たちから比べたら見下されていても当たり前だ。少し落ち込みかけたけど、当然のことだと自分に言い聞かせて先を急ぐ一行の最後尾を小走りでついていく。
「ノルン、大丈夫かい?」
「はい!疲れてませんし、問題ありません」
「そうかい。疲れたら言っていいんだからね」
「ありがとうございます、白魔導士様」
「うーん、せっかく同じパーティーメンバーなんだし、名前で呼んでいいんだよ?」
「いやっ、僕なんかがお名前を呼ぶなんておこがましいし……」
「役職で呼ばれるのも慣れなくてね、シェードって呼んでくれると嬉しいな」
「で、では……シェード様……」
白魔導士様のシェード様は僕のことまで気にかけてくださって、傷を負えば回復してくださってほんとにとても優しい方だ。白のローブが汚れていなくて、敵からの攻撃を全く受けていないことを示していた。防御魔法一つとっても僕の薄い防御壁とシェード様の分厚くて全方位を守れる完璧な防御壁では天と地の差がある。
そんな方を名前で呼ぶなんて……シェード様からのお願いを断るわけにもいかず、おそるおそる名前を呼ぶとにこりと微笑みかけてくれた。白い肌に薄い唇、儚げな雰囲気で本当に美しいお方だ。
「そろそろ暗くなってきたな。ここで野営しよう」
「そうだな」
「あっ、僕がすぐにご飯の準備を……」
「いらん、他の者が作るからお前は手を出すな」
「……わかりました」
「ブロウ、そんな言い方」
「シェード様、いいんです。僕は向こうにいますので、ご用があればお呼びください」
ぺこりと一礼して少し離れた木の影に座りこむ。疲れた。御一行は身体も鍛えているからなんともなさそうだけど、僕にとってはとてもハードな一日だった。歩き疲れて痛む足に簡易的な回復魔法をかけるが、痛みが和らいだだけで疲れは全く取れない。こんなので明日もついていけるだろうか……
「ノルン」
「シェ、シェード様!」
「ああ、座ったままでいいよ。体、大丈夫かい?」
「だ、大丈夫です!明日もお役に立てるよう……」
「いいんだよ。足が痛むんだろう?歩みが遅くなっていたから気になってたんだけど、ブロウたちの手前、回復魔法をかけてあげられなくて……ごめんね」
ポウ、と光を放ち足に回復魔法をかけてくださった。上級魔法だ、すごい。S級冒険者との実践訓練でも見たけど、候補生のときからやっぱり優秀だったんだろうな。
「明日は疲れにくいようにもっと強い強化魔法をかけてあげるね」
「そんな、シェード様の負担になるようなことは」
「このくらいいいんだよ。全然負担なんかじゃないから」
「ありがとうございます……すごく、たすかります」
「……ブロウがあんな態度をとってごめんね、まだキミのことを信頼できてないみたいで」
勇者様の言動も当然だろう。性処理職はその役目をするだけで、冒険の役にはたたない。最悪いなくても成り立つ人材で、こうして優しくしてくれているシェード様の方が稀有な存在だ。
「いいんです。なにかお役に立てることがあればなんでもするので言ってください」
「うん、ありがとう」
「シェード!」
「ごめん、呼ばれたから行くね。おやすみ」
「おやすみなさい」
とは言ったものの、きっと呼ばれないだろうなぁ。訓練とは違って役に立つには信頼を勝ち取るところから始めないといけない現実の厳しさを思い知った。どうすれば信頼してもらえるのか、考えながら眠りについた。
「そっち行ったぞ!」
学園を出て、早速王国からのモンスター退治の任務を受け国を出発した。学園ではそれほど他の候補生たちと実習訓練を共にすることがなかったから、実際に新勇者様たちの実力を目の当たりにして言葉を失っていた。こんなにも敵があっさりとやられていくものなのか……白魔導士様も膨大な魔力で付与魔法や回復を的確にかけてサポートしている。すごい……
「先に進むぞ」
「は、はい!」
僕はと言えば自分を守る防御魔法に近づいてきたザコモンスターを何度も攻撃して倒すので精いっぱいだった。フン、と鼻で笑われていた気もするがこんなすごい人たちから比べたら見下されていても当たり前だ。少し落ち込みかけたけど、当然のことだと自分に言い聞かせて先を急ぐ一行の最後尾を小走りでついていく。
「ノルン、大丈夫かい?」
「はい!疲れてませんし、問題ありません」
「そうかい。疲れたら言っていいんだからね」
「ありがとうございます、白魔導士様」
「うーん、せっかく同じパーティーメンバーなんだし、名前で呼んでいいんだよ?」
「いやっ、僕なんかがお名前を呼ぶなんておこがましいし……」
「役職で呼ばれるのも慣れなくてね、シェードって呼んでくれると嬉しいな」
「で、では……シェード様……」
白魔導士様のシェード様は僕のことまで気にかけてくださって、傷を負えば回復してくださってほんとにとても優しい方だ。白のローブが汚れていなくて、敵からの攻撃を全く受けていないことを示していた。防御魔法一つとっても僕の薄い防御壁とシェード様の分厚くて全方位を守れる完璧な防御壁では天と地の差がある。
そんな方を名前で呼ぶなんて……シェード様からのお願いを断るわけにもいかず、おそるおそる名前を呼ぶとにこりと微笑みかけてくれた。白い肌に薄い唇、儚げな雰囲気で本当に美しいお方だ。
「そろそろ暗くなってきたな。ここで野営しよう」
「そうだな」
「あっ、僕がすぐにご飯の準備を……」
「いらん、他の者が作るからお前は手を出すな」
「……わかりました」
「ブロウ、そんな言い方」
「シェード様、いいんです。僕は向こうにいますので、ご用があればお呼びください」
ぺこりと一礼して少し離れた木の影に座りこむ。疲れた。御一行は身体も鍛えているからなんともなさそうだけど、僕にとってはとてもハードな一日だった。歩き疲れて痛む足に簡易的な回復魔法をかけるが、痛みが和らいだだけで疲れは全く取れない。こんなので明日もついていけるだろうか……
「ノルン」
「シェ、シェード様!」
「ああ、座ったままでいいよ。体、大丈夫かい?」
「だ、大丈夫です!明日もお役に立てるよう……」
「いいんだよ。足が痛むんだろう?歩みが遅くなっていたから気になってたんだけど、ブロウたちの手前、回復魔法をかけてあげられなくて……ごめんね」
ポウ、と光を放ち足に回復魔法をかけてくださった。上級魔法だ、すごい。S級冒険者との実践訓練でも見たけど、候補生のときからやっぱり優秀だったんだろうな。
「明日は疲れにくいようにもっと強い強化魔法をかけてあげるね」
「そんな、シェード様の負担になるようなことは」
「このくらいいいんだよ。全然負担なんかじゃないから」
「ありがとうございます……すごく、たすかります」
「……ブロウがあんな態度をとってごめんね、まだキミのことを信頼できてないみたいで」
勇者様の言動も当然だろう。性処理職はその役目をするだけで、冒険の役にはたたない。最悪いなくても成り立つ人材で、こうして優しくしてくれているシェード様の方が稀有な存在だ。
「いいんです。なにかお役に立てることがあればなんでもするので言ってください」
「うん、ありがとう」
「シェード!」
「ごめん、呼ばれたから行くね。おやすみ」
「おやすみなさい」
とは言ったものの、きっと呼ばれないだろうなぁ。訓練とは違って役に立つには信頼を勝ち取るところから始めないといけない現実の厳しさを思い知った。どうすれば信頼してもらえるのか、考えながら眠りについた。
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