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復学から再会へ💕
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3月のある日
2年ぶりに本学キャンパスの門をくぐった。
学生課に行き 復学の手続きをする為だった。
3学年に進級出来るかの審査を受ける。
3月と言うのに 浅黒く日焼けした体格のいい見慣れ無い学生が 大学生協で3学年に必要な教科書 副教材専門書をすべて英語版で購入している。目立たないわけがない。
売店職員に留学生かと尋ねられた。
「えーまぁー」 と曖昧な返事を返す。
何故だか職員がオロオロしている。
「あのー俺って やばい奴に見えますか?」
「いえっ、、そっそんな…お見かけしない学生さんだなぁと思って…凄く背も高くて、ワイルドな感じが、この大学では珍しいって言うか…」
職員は顔を赤らめモジモジと身体をくねらせた。
「そうですかっ やばくないですね、よかった」
医学部キャンパスは本学と離れた場所にあるが 復学手続きのついでにすべて必要な事は本学で済ます事が出来た。
文系学部は 学生数も一万人を超えるマンモス大学らしくキャンパスとは いえ 一つの街と変わりない。
学食の正面で カツカレ―の食券340円を購入する。
(…相変わらず 安い―)
ニヤニヤしながら 受け取り窓口で食券を渡す。
「あれっ!早瀬君?」
学食の調理員が 滅多に登校しない俺の事を覚えていてくれた。
「カツカレーの早瀬君!そうでしょ?」
「おばちゃんっ!?、ご、無沙汰してます。」
「早瀬君っ忘れるもんですか! あの年の学生1番の男前だって 私達の中でも有名だったのよ、それが ちっともこないから、てっきり辞めて、ほら今流行りの モデルとか…芸能界とかさっ …って噂してたのよ」
「いやぁ…まじっすかぁ、恥ずかしいなぁ…ちょっと年食っちゃったけど まだまだイケてますかねぇ?」
世界中を回っていたらしい噂の真相をカツカレ―が出来上がる間確かめられた。
「カツ おまけして るからっ 」
おばちゃんは、小さな瞼をぱちりと閉じてウインクする。
俺もウインクでお返しした。
たちまちおばちゃん達から妙な歓声が上り 食堂内で食べていた学生達の視線が注がれた。
空席を見つけてカツカレーの乗ったトレイをテーブルに置き椅子に腰掛け、肘をつき手の平を額に当てて思わず吹き出してしまった。
俺は多分、自覚している以上に目立ってる。しかも女にはモテる。
食堂内で俺が何者で、何学部で、何年生か女の子達は噂を始めてるだろうが…残念。面白い余興だが全く興味ない。
この先 自分から 女に惚れる事はない。
来るモノ拒まずだが…性欲は抑えようが無い。
学食をあとにした俺は、自前の中古のミニクーパーに体を押し込み自宅へ戻る。 今夜からバイトが待っている。 自宅で仮眠したあと車で大和へ向かう。
俺が今から行くのは、在日米軍厚木基地近くのショットバー
《キャット》
夕方5時にオーナーと会う事になっていた。
米軍相手の飲食業を手広く展開するオ―ナーは、鎌倉の旅館を頻繁に利用している常連客であり 俺も 何度か小料理屋の時代にこの男の顔だけは見知っていた。ここ5.6年は家にいる事が少なく会うことも無かった。
最近 英会話に堪能なバイトの大学生が辞めて、困っていると母に相談し 俺に白羽の矢がたった。
母は、初め 水商売は…と思ったがそれは本人次第と割り切りこの話しを俺に持ち掛けてきた次第。
……………
《キャット》の裏手から店内に入る。
カラカラン…………入店を知らせるカウベルの音色が、ダサい。
「早瀬君―待ってたよ…」
振り返った オーナーは目を見張る。前に会ったのが中学生だと記憶していた。
「いやぁ――びっくりだ、えらく男前になったじゃないか?モテてしょうがないだろ? 世界中飛び回ってたって 女将から聴いてさ、いやぁ これほどまでとは…是非うちの看板になってほしねー」
「宜しく お願いします。」
その日の夜から 早速テキトーなカクテルを作り
《キャット》のバーテンダーとなった。
2、3日も出勤するとカクテルを作るのもそれなりの格好になってきた。
…これならイケるかもな…
米兵達ともネイティブに会話が弾む。4月に入る頃にはオーナーが居なくても 店を切り盛り出来るほどのテキトーぶりを発揮していた。
今は学業重視と決めて《キャット》に入るのは週末の二日。
それでも評判が評判を呼び、基地近くのバーにクールな男がいると基地内にも噂が広まっていたらしい。
俺を目当てに 米軍キャンプの女性達も頻繁に通ってくる。
5月になる頃には、新しいバーテンダーを雇い 俺は店のマネジメントを任されるようになっていた。
ゴールデンウイーク最終日
『ハイッ 、こんどうちの基地に配属になった中尉殿をお連れしたぜ』
と、ご機嫌で常連のジョンと呼ばれる男が大きな図体を揺らし店内に 入って来た。
長く緩くカールしたブロンドの髪を、後ろで無造作に結わえ、真っ白い夏の上官服に身を包んだ女性がジョンの後から店の中へ入ってきた。 白い制服とプラチナブロンドのコントラストが、まばゆくゴージャスで 薄暗い店内でも 彼女の周りだけが輝いて見える。
店内が、パッと華やぎ 男の視線が彼女に集中する。
女性士官も新任の上官を妬まし気に見つめる。
店内がやけにざわついてきたので……店奥で酒の在庫確認をしていた俺は トラブルはごめんと、様子を見に出た。
『ハイッ ヒカルゥ 今度赴任した、中尉殿を紹介するぜ』
目の前の光景に身動きが取れない。
………………
俺の全身がゾワゾワと総毛立つのがわかる…
下腹部はすでに熱い血潮がフツフツと沸き立つ。
ゴクッ…
やけに口が渇く…喉がヒリつく…
…………………
女性は薄暗いバーの奥で、こちらを見つめる視線に気がつく。
…………女性も目を見開く……瞬く事もせず
…「Hikaru?」
進んだ時計の針が逆回転 を始めた。失った時間を取り戻すように…
ドクン ドクン 血潮が上昇する…
ララが一歩 踏み出すが早いか、俺はララを抱きしめた。
がむしゃらな抑え切れない愛情を彼女にぶつけた。
ララを抱きしめながら、流れる熱いものを拭う事も忘れている。 抱きしめた腕に彼女の温もりを感じる。
背中に回した手の平を包む 肉の感触を指先で味わう。 今すぐにここで押し倒し、身も心も自分の物にしてしまいたい 強い衝動にかられる。
欲望を押し殺し、眼下の小さな形のよい頭を覆う亜麻色の髪に鼻を押し付け彼女の匂いを胸一杯吸い込む。
〝 ハァ―――――ッ 〟
抱きしめた彼女の体を透してドクン ドクンと心臓の鼓動を感じる。
『ずっと 一緒にいたいんだ…』
…やっとのこと、心のサインを言葉に換えて伝える事ができた。
奇跡が降ってきた…
『……ヒカル』
彼女も答えるように俺の背中にまわした腕に力がこもっていた。
ララハートは、硬く無駄な贅肉のない男の胸に頬を押し付け、生きている事を実感する。
(…ヒカルは生きて 私を求めて くれている )
彼女は抱きしめられながら瞼を閉じて安堵感に浸る。
(……忘れさせて ヒカル…)
バーカウンターに同席していた下士官や 下級兵達 も 二人に何があったのか伺い知るよしもないが、恋人同士の語らいには目を細める。
『 キスしたい…』
甘えて鼻をならす。
『だめよ…皆が見てるから…』
…じゃ…と、ララの額に軽いキスをすると
『仕事 終わるまで待ってて…』
抱きしめたララから体を放そうとした刹那、離れようとする手首を引き寄せララは俺の唇を奪った。ララの唇が俺の唇を挟み込む。の 男臭さが彼女の鼻腔を刺激する。
〝 ふぁ…はぁ…〟ララは唇を離すと
『この続きは 後で… 私のベイビィ』
ヒカルの頬を細く繊細な指先で撫でる。……彼女から離れてバックヤードへ戻ろうとする俺に 一部始終をニヤニヤ見ていた オーナーが
「早瀬ぇ 今夜は中尉殿の相手をして良しっ!」
と、粋な計らいをしてくれる。
「っざぁすっ」俺は頭を下げる。
ララの手を引くと
『おいで…こっち』
バーの奥まったテーブルを 選んで 連れて行く。
『君の事が、知りたい…」
まだ小声で文句を言っている。ララのブルーグリーンの瞳の奥…の哀しみを探る。
『何が知りたい?』
………………
(…一番は 君の心にいる俺じゃない男の事……………)
『何故 米軍に?』
ショットバー《キャット》の店内の片隅のテーブルで、見つめあい 時々手指を絡ませながらグラスを傾ける。
『なぜ 病院じゃないんだ…コスチュームが違うだろぅ? 俺のせい…?』
『うふっ ナオミに聴いたの…ね?』
一瞬苦々しく あの愚かな行動が蘇った。
ララはバーボンを一口、口に含んだ後 穏やかな笑みを浮かべて話しだした…
『…司法取引を 望んだんだけど相手はね…あくまで 私が医師を辞めない限り公にすると…』
医師を辞めるなら告訴を取下げてもいいとの条件を飲むしかないところまで追い詰められた。
そんな時、ナオミがアーミーの医官の募集情報を持ってきた。
『それに…飛びついたってわけ…なの』
ララは魅惑的な瞳を ヒカルに向けながら…
『何故だと思う…?』
『――ふん 医師を続けられるからか?』
ヒカルの差し出された手に指を絡ませ 視線をその手に落としたララは、
『〝 駐留先は日本 しかも厚木だよ〟って…ナオミから聞いたの…』
ヒカルが戻ってきた事も…ナオミがヒカルを追い返した事も…全てナオミから聞いていた。
『もう一度だけ あなたに逢いたいって 思って …』
それって…
俺の心臓がバクバクしてる!
『オニールの代理人は、私が 【アメリカ国内で医師をしない】とのこちらの条件を何とかオニールに呑ませてくれた…』
……………
『ふ…ん 軍医なら国外で医者が続けられる…か、で医官?なわけだ…』
なまめかしい視線を送るヒカルの瞳に、捕らえられ胸がときめく…
若い年下の男に心を射抜かれたと感じる。
『そうよ…、じゃぁ 日本に来て最初の観光先で泊まったホテルにあなたの妹さんがいたの…!』
『…ミチコが?』
『そう!あなたの妹さんは、流暢な米語で、トラブルを解決していたわ』
〝…ククッ 〟
ヒカルは頭を下げ笑いをこらえる。
『えっ 、 何かおかしな事 言った…?』
ララの小首を傾げた仕種が可愛いらしくヒカルの目に映る。
『ララが初めて行った観光地は鎌倉で…そのホテルは俺の家!』
ha!?
『オ―マイガ―ッ』
〝キャッハァー アハハハァハハァ〟
ララは テーブルをトントン叩き足踏みしながら笑い転げる。 二人はどちらからともなく顔を近付けキスを交わす。
『運命だな…俺達の出会いは』
『ジーザスー』
(――ナオミ……………………)
『ヒカル…今は貴方にできる事は何もない…早く日本に帰って貴方がすべき事をしなさい……ララもそれを望んでる絶対に神様はあなたたち二人を見捨てないから………………』
ありがとう…ナオミ
それからの俺は母に躊躇なく
米軍将校と同棲する事を伝えた。
住まいは座間の米軍住宅。
2年ぶりに本学キャンパスの門をくぐった。
学生課に行き 復学の手続きをする為だった。
3学年に進級出来るかの審査を受ける。
3月と言うのに 浅黒く日焼けした体格のいい見慣れ無い学生が 大学生協で3学年に必要な教科書 副教材専門書をすべて英語版で購入している。目立たないわけがない。
売店職員に留学生かと尋ねられた。
「えーまぁー」 と曖昧な返事を返す。
何故だか職員がオロオロしている。
「あのー俺って やばい奴に見えますか?」
「いえっ、、そっそんな…お見かけしない学生さんだなぁと思って…凄く背も高くて、ワイルドな感じが、この大学では珍しいって言うか…」
職員は顔を赤らめモジモジと身体をくねらせた。
「そうですかっ やばくないですね、よかった」
医学部キャンパスは本学と離れた場所にあるが 復学手続きのついでにすべて必要な事は本学で済ます事が出来た。
文系学部は 学生数も一万人を超えるマンモス大学らしくキャンパスとは いえ 一つの街と変わりない。
学食の正面で カツカレ―の食券340円を購入する。
(…相変わらず 安い―)
ニヤニヤしながら 受け取り窓口で食券を渡す。
「あれっ!早瀬君?」
学食の調理員が 滅多に登校しない俺の事を覚えていてくれた。
「カツカレーの早瀬君!そうでしょ?」
「おばちゃんっ!?、ご、無沙汰してます。」
「早瀬君っ忘れるもんですか! あの年の学生1番の男前だって 私達の中でも有名だったのよ、それが ちっともこないから、てっきり辞めて、ほら今流行りの モデルとか…芸能界とかさっ …って噂してたのよ」
「いやぁ…まじっすかぁ、恥ずかしいなぁ…ちょっと年食っちゃったけど まだまだイケてますかねぇ?」
世界中を回っていたらしい噂の真相をカツカレ―が出来上がる間確かめられた。
「カツ おまけして るからっ 」
おばちゃんは、小さな瞼をぱちりと閉じてウインクする。
俺もウインクでお返しした。
たちまちおばちゃん達から妙な歓声が上り 食堂内で食べていた学生達の視線が注がれた。
空席を見つけてカツカレーの乗ったトレイをテーブルに置き椅子に腰掛け、肘をつき手の平を額に当てて思わず吹き出してしまった。
俺は多分、自覚している以上に目立ってる。しかも女にはモテる。
食堂内で俺が何者で、何学部で、何年生か女の子達は噂を始めてるだろうが…残念。面白い余興だが全く興味ない。
この先 自分から 女に惚れる事はない。
来るモノ拒まずだが…性欲は抑えようが無い。
学食をあとにした俺は、自前の中古のミニクーパーに体を押し込み自宅へ戻る。 今夜からバイトが待っている。 自宅で仮眠したあと車で大和へ向かう。
俺が今から行くのは、在日米軍厚木基地近くのショットバー
《キャット》
夕方5時にオーナーと会う事になっていた。
米軍相手の飲食業を手広く展開するオ―ナーは、鎌倉の旅館を頻繁に利用している常連客であり 俺も 何度か小料理屋の時代にこの男の顔だけは見知っていた。ここ5.6年は家にいる事が少なく会うことも無かった。
最近 英会話に堪能なバイトの大学生が辞めて、困っていると母に相談し 俺に白羽の矢がたった。
母は、初め 水商売は…と思ったがそれは本人次第と割り切りこの話しを俺に持ち掛けてきた次第。
……………
《キャット》の裏手から店内に入る。
カラカラン…………入店を知らせるカウベルの音色が、ダサい。
「早瀬君―待ってたよ…」
振り返った オーナーは目を見張る。前に会ったのが中学生だと記憶していた。
「いやぁ――びっくりだ、えらく男前になったじゃないか?モテてしょうがないだろ? 世界中飛び回ってたって 女将から聴いてさ、いやぁ これほどまでとは…是非うちの看板になってほしねー」
「宜しく お願いします。」
その日の夜から 早速テキトーなカクテルを作り
《キャット》のバーテンダーとなった。
2、3日も出勤するとカクテルを作るのもそれなりの格好になってきた。
…これならイケるかもな…
米兵達ともネイティブに会話が弾む。4月に入る頃にはオーナーが居なくても 店を切り盛り出来るほどのテキトーぶりを発揮していた。
今は学業重視と決めて《キャット》に入るのは週末の二日。
それでも評判が評判を呼び、基地近くのバーにクールな男がいると基地内にも噂が広まっていたらしい。
俺を目当てに 米軍キャンプの女性達も頻繁に通ってくる。
5月になる頃には、新しいバーテンダーを雇い 俺は店のマネジメントを任されるようになっていた。
ゴールデンウイーク最終日
『ハイッ 、こんどうちの基地に配属になった中尉殿をお連れしたぜ』
と、ご機嫌で常連のジョンと呼ばれる男が大きな図体を揺らし店内に 入って来た。
長く緩くカールしたブロンドの髪を、後ろで無造作に結わえ、真っ白い夏の上官服に身を包んだ女性がジョンの後から店の中へ入ってきた。 白い制服とプラチナブロンドのコントラストが、まばゆくゴージャスで 薄暗い店内でも 彼女の周りだけが輝いて見える。
店内が、パッと華やぎ 男の視線が彼女に集中する。
女性士官も新任の上官を妬まし気に見つめる。
店内がやけにざわついてきたので……店奥で酒の在庫確認をしていた俺は トラブルはごめんと、様子を見に出た。
『ハイッ ヒカルゥ 今度赴任した、中尉殿を紹介するぜ』
目の前の光景に身動きが取れない。
………………
俺の全身がゾワゾワと総毛立つのがわかる…
下腹部はすでに熱い血潮がフツフツと沸き立つ。
ゴクッ…
やけに口が渇く…喉がヒリつく…
…………………
女性は薄暗いバーの奥で、こちらを見つめる視線に気がつく。
…………女性も目を見開く……瞬く事もせず
…「Hikaru?」
進んだ時計の針が逆回転 を始めた。失った時間を取り戻すように…
ドクン ドクン 血潮が上昇する…
ララが一歩 踏み出すが早いか、俺はララを抱きしめた。
がむしゃらな抑え切れない愛情を彼女にぶつけた。
ララを抱きしめながら、流れる熱いものを拭う事も忘れている。 抱きしめた腕に彼女の温もりを感じる。
背中に回した手の平を包む 肉の感触を指先で味わう。 今すぐにここで押し倒し、身も心も自分の物にしてしまいたい 強い衝動にかられる。
欲望を押し殺し、眼下の小さな形のよい頭を覆う亜麻色の髪に鼻を押し付け彼女の匂いを胸一杯吸い込む。
〝 ハァ―――――ッ 〟
抱きしめた彼女の体を透してドクン ドクンと心臓の鼓動を感じる。
『ずっと 一緒にいたいんだ…』
…やっとのこと、心のサインを言葉に換えて伝える事ができた。
奇跡が降ってきた…
『……ヒカル』
彼女も答えるように俺の背中にまわした腕に力がこもっていた。
ララハートは、硬く無駄な贅肉のない男の胸に頬を押し付け、生きている事を実感する。
(…ヒカルは生きて 私を求めて くれている )
彼女は抱きしめられながら瞼を閉じて安堵感に浸る。
(……忘れさせて ヒカル…)
バーカウンターに同席していた下士官や 下級兵達 も 二人に何があったのか伺い知るよしもないが、恋人同士の語らいには目を細める。
『 キスしたい…』
甘えて鼻をならす。
『だめよ…皆が見てるから…』
…じゃ…と、ララの額に軽いキスをすると
『仕事 終わるまで待ってて…』
抱きしめたララから体を放そうとした刹那、離れようとする手首を引き寄せララは俺の唇を奪った。ララの唇が俺の唇を挟み込む。の 男臭さが彼女の鼻腔を刺激する。
〝 ふぁ…はぁ…〟ララは唇を離すと
『この続きは 後で… 私のベイビィ』
ヒカルの頬を細く繊細な指先で撫でる。……彼女から離れてバックヤードへ戻ろうとする俺に 一部始終をニヤニヤ見ていた オーナーが
「早瀬ぇ 今夜は中尉殿の相手をして良しっ!」
と、粋な計らいをしてくれる。
「っざぁすっ」俺は頭を下げる。
ララの手を引くと
『おいで…こっち』
バーの奥まったテーブルを 選んで 連れて行く。
『君の事が、知りたい…」
まだ小声で文句を言っている。ララのブルーグリーンの瞳の奥…の哀しみを探る。
『何が知りたい?』
………………
(…一番は 君の心にいる俺じゃない男の事……………)
『何故 米軍に?』
ショットバー《キャット》の店内の片隅のテーブルで、見つめあい 時々手指を絡ませながらグラスを傾ける。
『なぜ 病院じゃないんだ…コスチュームが違うだろぅ? 俺のせい…?』
『うふっ ナオミに聴いたの…ね?』
一瞬苦々しく あの愚かな行動が蘇った。
ララはバーボンを一口、口に含んだ後 穏やかな笑みを浮かべて話しだした…
『…司法取引を 望んだんだけど相手はね…あくまで 私が医師を辞めない限り公にすると…』
医師を辞めるなら告訴を取下げてもいいとの条件を飲むしかないところまで追い詰められた。
そんな時、ナオミがアーミーの医官の募集情報を持ってきた。
『それに…飛びついたってわけ…なの』
ララは魅惑的な瞳を ヒカルに向けながら…
『何故だと思う…?』
『――ふん 医師を続けられるからか?』
ヒカルの差し出された手に指を絡ませ 視線をその手に落としたララは、
『〝 駐留先は日本 しかも厚木だよ〟って…ナオミから聞いたの…』
ヒカルが戻ってきた事も…ナオミがヒカルを追い返した事も…全てナオミから聞いていた。
『もう一度だけ あなたに逢いたいって 思って …』
それって…
俺の心臓がバクバクしてる!
『オニールの代理人は、私が 【アメリカ国内で医師をしない】とのこちらの条件を何とかオニールに呑ませてくれた…』
……………
『ふ…ん 軍医なら国外で医者が続けられる…か、で医官?なわけだ…』
なまめかしい視線を送るヒカルの瞳に、捕らえられ胸がときめく…
若い年下の男に心を射抜かれたと感じる。
『そうよ…、じゃぁ 日本に来て最初の観光先で泊まったホテルにあなたの妹さんがいたの…!』
『…ミチコが?』
『そう!あなたの妹さんは、流暢な米語で、トラブルを解決していたわ』
〝…ククッ 〟
ヒカルは頭を下げ笑いをこらえる。
『えっ 、 何かおかしな事 言った…?』
ララの小首を傾げた仕種が可愛いらしくヒカルの目に映る。
『ララが初めて行った観光地は鎌倉で…そのホテルは俺の家!』
ha!?
『オ―マイガ―ッ』
〝キャッハァー アハハハァハハァ〟
ララは テーブルをトントン叩き足踏みしながら笑い転げる。 二人はどちらからともなく顔を近付けキスを交わす。
『運命だな…俺達の出会いは』
『ジーザスー』
(――ナオミ……………………)
『ヒカル…今は貴方にできる事は何もない…早く日本に帰って貴方がすべき事をしなさい……ララもそれを望んでる絶対に神様はあなたたち二人を見捨てないから………………』
ありがとう…ナオミ
それからの俺は母に躊躇なく
米軍将校と同棲する事を伝えた。
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