上 下
28 / 42

攻略27

しおりを挟む
「どこにっも…いかないっ……で」


椅子に座り抱きついてきた陽成がそう言ってまわした腕に力を込めた。

(いやいやいや可愛すぎだろ…)


正直俺の理性は崩壊ギリギリだ。

まさか酒で酔うと泣くタイプとは思わなかった……可愛いから全然ありだけど。


それにしても…陽成は不安なのだろうか。やはりなにかあったか?

(いやもしかしたらこれが陽成の素?)

だとしたらかなりの甘えん坊である。


「ん……」

ゆっくりと陽成の頭を撫でていると、陽成が低く吐息を零す。


「どした?落ち着いた?」

声をかけると陽成は腕の力を緩めておぼつかない足で椅子から立ち上がった。

突然のことに対応出来ず、よろけた陽成を受け止めるので精一杯になり床の黒い絨毯に倒れた。

(絨毯あって良かった…)


衝撃は絨毯に吸収されお互いに怪我は無いだろう。

ほっとして陽成を見る。

とそこで今の体勢に動揺した。


「…もっと…っ…くっつく…」


先程より泣きは治まった陽成は俺の顔の横に両手をつき、俺は正面から押し倒されていた。


(待ってくれよ……これは…)

真っ赤に蒸気した頬、濡れた目と唇。口許は小悪魔的に笑っていた。


「……っぅ…ごめんっなさ、いっ……」


かと思えばなんのことか陽成は再び涙を零して、眉を困ったように八の字にし謝るのだった。

陽成の零した涙の雫が落ちてきて俺の頬を伝っていく。


「……大丈夫だ。謝ってる原因はよく分からねぇけど…」


とりあえず陽成に泣き止んで欲しくて、陽成の顔を両手で包んだ。

驚いたのかもはや泣き疲れたか陽成は泣き止み、熱を持った朦朧とした目で俺の目を真っ直ぐに見つめる。


「…んっ……ふ…」

しばらく見つめあうと陽成の方から俺にキスしてきた。

いつもと違い陽成の方から舌を入れて求めてくる。

それがたまらなく嬉しかった。


しおりを挟む

処理中です...