チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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七章 恋する少女

コカトリスの棲む地

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 有賀を出ると、私達は馬に乗り草が生い茂る街道を北へと進む。

 しかし、馬に乗ったことのない私は当然馬の扱い方など知る訳もなく、おっかなびっくりで乗ろうとしたら馬が暴れて振り落とされそうになる……。

 仕方がないので、ザクスが操る馬の後ろに乗って移動をしているが、後ろからザクスにしがみつけるのでちょっとした役得感は味わえる。


 ◆◆◆


 暫く進むと景色が一変し、林道を馬が歩いて進んでいく。

 走らせれば早く進めるのだろうが、ザクスや宗真さんの話では、馬を走らせてもそこまで長い時間走ることは出来ないらしい。
 逆に馬がバテて結果的に遅くなるのだとか……。

 それでも、馬が普通に歩くだけでも私が歩くよりは幾分か早く進めている。

 林道は一応は整備されてはいるが、森の木々の間がやたらと広く、中には朽ちたわけでもないのに倒れている木や何かの深い爪痕がついた木まで見える。

 時折、色違いのホーンラビットの姿が見えるが、凄く何かを警戒しているようだ。

 すると、私は何かの気配を感じた……!

「ザクス、宗真さん……!何かの気配を感じます……!」

「魔物か……?」

「うん、魔物だよ……!」

「魔物ですか……?そう言えばこの辺りには肉食の魔物が出現するそうです!」

 私達は馬を降りると、私は剣を、ザクスは魔力弓を、宗真さんは刀を抜いて構える……!

 周囲からガサガサと茂みが揺れる音がする……。
 囲まれているのかも知れない……。

「……来るよっ!!」

 私が声を発するのとほぼ同時に魔物数匹が飛び掛かってきた……!

「はあっ!!」

 私は剣を振るい、その魔物の胴を真っ二つに斬り裂く……!

 斬り裂かれ、絶命したその魔物を見るとまるで小型の恐竜みたいな見た目をして、緑の皮膚に虎のような黒い模様が入っていた。

 小型と言っても人間とほぼ同じくらいの高さで、体長は2~3mくらいはありそうだ。
 手の爪や歯はナイフのように鋭く、肉食の魔物だと言うことが見て取れる。

「なんだコイツ等は……っ!?」

「これはフォレウスという恐竜のような魔物ですっ!この魔物は集団で狩りをする獰猛な奴らですっ!」

 宗真さんの言葉を裏付けるように、周囲から12,3匹のフォレウスという魔物が現れる!

 威嚇の鳴き声をあげながら、軽快な横へのステップを繰り返し、こちらへと襲いかかるタイミングを測っているようだ……!

「ここは僕に任せて下さいっ!いでよ鎌鼬かまいたちっ!!」

 宗真さんが御札のようなものを掲げると、御札から何か目にも止まらぬ何者かが次々とタイガーフォレウスの首を切り裂いていく!

 それはまさにカマイタチのようだ。

 首を切られたフォレウスは何が起きたのか分からぬまま切り口から血を吹き出し絶命していた……。

「宗真さん……、今のは……?」

「あれは僕が呼び出した式神です。僕は刀だけでなく、式神を使い戦うことができます。」

 宗真さんは式神使いのようだ。
 まるで元の世界にいた陰陽師みたいだ。

「終わったか……?」

「そのようですね……。先へ進みましょう」

 私達は馬に乗ると再び前へと進んだ。

 林道を進む道中、ブルラビットやフォレウスが飛び出してくるが、私達はそれを蹴散らしながら先へと進む……。


 ◆◆◆


「なんか……この辺り木とかが少ないね……」

 夜、その辺りで倒したホーンラビットの肉を食べながら私はあたりを見渡した。
 勿論この肉は生ではなく、私が捌いた上で調理済みだ。

 最初、この林道に入った頃に比べると木が減り、草も少なくなっていた。
 そのかわり、様々な石柱のようなものがそこら中に散らばっていた。

 草が全く無いわけではないのだが、同じような草ばかりが目につくようになってきている。

 不毛の地……という訳ではないと思うのだが、地肌がむき出しとなった地面に何処となく異様な感じを覚える……。

 そのせいか、動物や魔物の姿も次第に見なくなり、このホーンラビットもどうにか見つけた動物だ。

「コカトリスの住処が近いのかもしれません。見てください、この草を……」

 宗真さんが地面に生えている草を一つむしり取る。
 その草には灰色をした実が実っている。

「その草がどうしたんだ?」

「この草はコカトリスの主食だとされており、唯一コカトリスの石化の能力に耐性のある草だと言われてます。獰猛な性格と見た目に反し、ヤツは草食なのですが、この草は有賀の辺にもよく生えているのです」

「え……?じゃあ、この辺りの草を食べ尽くしたら今度は有賀の辺にコカトリスがやって来るってことですか……?」

「そう言うことです。以前コカトリスは有賀の近くに現れました。そこでこの草がたくさん生えていることをヤツは知ったはずです。このまま放置しておくと、コカトリスが有賀の周辺に居座りだすのは時間の問題……。そうなるとヤツは障害を排除しようと街で暴れ出し、吐き出す唾液や嘴で襲われた人々や他の生き物は石化されてしまうでしょう。そうなると有賀は人の住めない地となってしまいます。そして残るのはコカトリスとヤツが好むこの草のみ……」

 私とザクスは宗真さんの言葉に息を呑む……。

「この辺りの木が減っているという事は……」

「コカトリスの唾液や嘴は大変危険です。少しでも唾液を浴びたり、嘴で突かれたりしただけでもたちまち石化してしまいます。この辺りの木々や他の草が減っている理由はコカトリスに石化され、破壊されたか風化し倒壊したかのどちらかでしょう……」

 じ……じゃあ、この石柱みたいなものは元々は木だったってこと……?

 宗真さんの話を聞き、コカトリスの危険性を改めて知らされる……。

 もしかしたら、この辺りも町か何かがあったのかもしれない……。
 でも、コカトリスが居座ってこうなってしまったとしたら、そしてもしコカトリスが有賀に来たら……。

 玉藻や産まれてくる子供は……、そしてそこに住む人々は……。
 気が付くと、自らの手を痛いほどに握りしめていた……。

「宗真さん……!必ずコカトリスを倒しましょうっ!」

「そして3人で無事に帰ろうぜっ!」

「はい……!お二人共ご協力のほどお願いしますっ!」

「……ところで、夜中にコカトリスからの奇襲を受ける心配はないんですか?」

「それは大丈夫です。コカトリスは夜行性ではありませんし、魔物とは言え鳥なので夜は目が利かないようです」

 それを聞いて安心した……。

 夜中のうちに石に変へとえられていました、では目も当てられないからね……。

 私達は明日のコカトリスとの戦いに備え、休むことにしたのだった……。
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