チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

文字の大きさ
169 / 214
八章 決意する少女

大魔導師たる由縁

しおりを挟む
 地下墓地の通路を進んでいくと、木の扉が現れた。

 その扉を開けると、両端に幾つもの木で出来た棺が安置されている通路が奥へと延びているが、見た所ゾンビとかは徘徊してはいないようだ……。

 そして、私はふと、一つのことに気が付いた……。
 地下墓地なのにまるで陽の下を歩いているように明るいのだ。

「ねえ……、ここ地下墓地だよね?なんで明るいの?」

『カナ、今頃気が付きおったのか。儂が魔法で照らしてるのじゃよ』

 アレクさんはヤレヤレと言わんばかりに呆れたような表情で首を振っていた。

 それにしても照明魔法イルネート以上に明るい魔法があるだなんて、大魔道士という肩書は伊達じゃないようだ。

 通路を進んで行くと突然棺がガタガタと動き始めた……!

「あ……アレクさん……脅かさないでくださいよ……!」

『儂は何もしとらんぞ』

「え……?アレクじゃないとしたら……ま……まさか……!」

 木の棺の蓋が開けられると、中からゾンビやスケルトンが現れた……!

「ひぃぃぃぃぃーーー……っ!!」
「で……!出たぁぁぁぁぁぁぁーーっ!!!」

 私とフィーリエは思わず抱き合いながら恐怖に震え上がっていた!

 しかし、ゾンビ達はその辺りを徘徊するだけで、私達を襲う気はないらしい……。

「あれ……?襲ってこないんだ……」

「みたいだね……」

「アレクさん、なんでこのゾンビ達は襲ってこないの……?」

『儂に分かる訳ないじゃろ。それより、震えておらんでさっさとザインを倒しに行ぞ』

 アレクさんは一人ゾンビが徘徊している通路をスタスタと進んで行く。

 いくら襲って来ない言えど、ゾンビが闊歩している中平然と歩けるのは凄いと思う。

 もっとも、それはアレクさんもリッチというゾンビになっているからなのかも知れない。

「と……取り敢えずカナ……、あたし達も行こうか……」

「う……うん……」

 私達もアレクさんに倣ってゾンビが徘徊しているっていう通路を先へと進む……。

 すれ違いざまにゾンビ達の顔を見ると、男性や女性、さらに言えば人間性だけでなく、獣人などのゾンビの姿もある。

 見た目は……かなりグロいのであまりマジマジと顔は見たくはない……。

 見るのならスケルトンのほうが肉が付いていないだけまだマシだ。


 ◆◆◆


 通路を進んでいくと、下の階へと続いている階段が現れた。
 どうやら地下墓地はこの階だけで終わりではないらしい。

 私達は階段を降りて下の階へと行くと先ほどとはガラリと雰囲気が変わった……!
 そこら中から敵意に満ちた気配を感じる……。

「アレクさん……。」

『どうやらこの階からが本番……といったようじゃの……』

 地下二階は広間となっており、両脇には木の扉が幾つも並んでいる。

 周囲を警戒しながら広間を進んでいると、両脇に設けられていた木の扉が破られ、ゾンビやスケルトンが現れた……!

 しかも、上のフロアとは違い、明らかに私達を襲おうとゆっくりとした足取りではあるがゾンビやスケルトンが迫ってくる……!

「このっ!」

 フィーリエはハルバードを手に持ち、ゾンビを突き刺すっ!
 が、倒れはするもののすぐに起き上がり再び迫りくる!

「う……うそ……!死なないの……っ!?」

『当たり前じゃ!小奴らは既に一度死んでおるんじゃ!それをザインの魔術で操られているのじゃっ!』

「なら!はあっ!!」

 私は剣を抜き、胴を斬り落とす……!
 すると、ゾンビは燃えて灰となった。

『こやつらに物理攻撃は効かぬ!効くのは魔力を帯びた武器か魔法くらいじゃっ!『ファイヤーボール』っ!!』

 アレクさんの放ったファイヤーボールがゾンビやスケルトンを焼き尽くす!

 魔力を帯びた武器か……、なら……っ!

「フィーリエ!『エンチャントファイヤー』っ!!」

 フィーリエのハルバードにエンチャントファイヤーをかけると、ハルバードに炎が灯される。

「ありがとうカナ!これなら……っ!たあっ!!」

 フィーリエが炎を纏ったハルバードでゾンビを斬り付ける……!
 斬りつけられたゾンビは燃えながらその場へと倒れていく。

 これで倒し方が分かったとは言え、数が多すぎる!
 一体づつ倒していたのではそのうち取り囲まれてしまう。
 ならば……!

「光の精霊よ、我を照らすと希望となりて邪悪なるものを撃ち貫け!『シャイニング』っ!!」

 シャイニングを唱えると、私の周りに幾つもの光球が現れ、その一つ一つが光の弾を発して辺りにいるゾンビやスケルトンを倒していくっ!

『ほう、シャイニングか。なかなかやりおるな。』

 シャイニングは範囲魔法として優秀なようだが、魔力消費が激しいらしい……。

 光球を維持させるだけでなく、光の弾を撃ち出すにも私の魔力をどんどん消費させて行く……。

 人間のしかも異世界日本から来た私にはそれ程多くの魔力がある訳でも無く、ゾンビやスケルトンの四分の一弱を倒した程度で魔力切れとなった……。

『なんじゃい、もう仕舞いか。情けないのう……。なら今度は儂がどうにかしてやるかの。『シャイニング』!!』

 アレクさんがシャイニングを唱えると、無数の光球が現れ次々とゾンビやスケルトンを駆逐させていく!
そして、ものの数分でゾンビやスケルトンを全滅させていた。

「す……凄い……」

 私はそれだけを呟くと、ただ呆然と立っていた……。
 フィーリエに至っては声すら出せないらしい……。

『どうじゃ、儂が大魔道士たる由縁が分かったか?』

 アレクさんはカッカッカ……!と笑いながら敵がいなくなった広間を進んでいく。

 私とフィーリエもアレクさんに続いて進んでいくと、その奥には木の扉があった。

 恐る恐る扉を開けてみると、そこには更に下へと続く階段があり、私達は下の階へと降りていったのだった……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...