罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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由奈の章 甘えたがりな義妹

義妹に振り回される兄

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 その日の午後、僕は由奈ちゃんに連れられてショッピングモールのゲームコーナーに来ていた。

 「お出かけしよう」と言われた時は、家でゲームするよりはいいか……と思っていた。  
 でも、結局来たのはゲームコーナー。  
 これじゃ、家で遊ぶのとあまり変わらない気もする。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん!あれやろうよ~!」

 由奈ちゃんが指差したのは、予想に反してクレーンゲーム。  
 中には、水色の服を着た犬のぬいぐるみが並んでいる。

「由奈ちゃん、犬好きなの?」

「そうなの!家じゃ飼えないけど、犬の動画とかよく見るんだよ。だから、お兄ちゃんが取ってくれたら嬉しいな~♪」

 由奈ちゃんは僕の腕に抱きついて甘えてくる。  
 そういえば、ユーナカリアも犬耳と尻尾がついてたな……。

 ……というかこの子、こういう時の甘え方が本当に上手い。

「分かったよ。でも、取れるかは運次第だからね?」

「お兄ちゃんなら絶対取れるって信じてるよ!」

 過度な期待はやめてほしいけど……。  
 由奈ちゃんの笑顔に押されて、僕はクレーンゲームに挑戦する。

 一回目……失敗。  
 二回目……失敗。  
 三回目、取れたかと思ったけど……失敗。

「むぎぎぎぎ……!」

 だんだんと苛立ちが増してくる。  
 なんでクレーンゲームのアームって、こんなに弱いんだよっ!?

「あ……あの、お兄ちゃん……?無理なら無理でいいんだよ……?」

 由奈ちゃんが苦笑いを浮かべながら僕を見ている。  
 でも、こっちにも意地がある……!

 そして四回目——

「……取れた!」

「わぁ~っ!すごいすごい!お兄ちゃん、ありがとう~っ!」

 由奈ちゃんはぬいぐるみを受け取ると、ぎゅっと抱きしめて僕に笑顔を向ける。

「ふう……」

 汗もかいてないのに、僕は額を腕で拭った。  
 これでなんとか兄の面子は保たれた気がする。

「これ、今日の思い出にするね。お兄ちゃんとの記念♪」

 ……なんだろう。  
 ちょっと大袈裟だなと思いながらも、由奈ちゃんのその言葉に胸が少しだけ熱くなる。

「次はこの太鼓ゲームやろうよ!負けたら罰ゲームねっ!」

 由奈ちゃんの提案に、僕の顔は思わず引きつる。

「罰ゲーム……?何それ怖い……」

「ふふふ~、勝てばいいんだよ、お兄ちゃん♪」

 由奈ちゃんはスティックを手にして、僕に挑戦状を叩きつけてくる。  
 ……こういう時の由奈ちゃんは、ちょっとだけ小悪魔だ。

 結果——僕の完敗。

「はいっ、お兄ちゃん罰ゲーム~!」

「はは……お手柔らかに……」

 一体何をさせられるんだろう……。  
 僕の脳裏に、一抹の不安がよぎる。

「じゃあね……プリクラ撮ろっか♪」

「えっ!?」

 由奈ちゃんは笑顔で僕の手を引いて、ゲームコーナーの奥にあるプリクラ機へと向かう。

「だって、せっかくだし今日の記念にしよ?ね?」

 由奈ちゃんの笑顔に、僕は何も言えなくなってしまった。  
 ……この子の“ね?”には、いつも勝てない。

 プリクラ機の中、由奈ちゃんは僕の腕にそっと寄り添ってくる。

「カップル風に撮ってみよっか♪」

「……それ、冗談だよね?」

「ううん、冗談じゃないよ?」

 由奈ちゃんの笑顔は、どこか本気だった。  
 僕は照れながらも、シャッターの音に身を任せる。

 撮影が終わると、由奈ちゃんはスマホに画像を保存して、にっこりと笑った。

「これ、待ち受けにしよっと♪」

「……由奈ちゃん、それはちょっと」

「え~?だって、お兄ちゃんとの記念だもん!」

 由奈ちゃんの笑顔に、僕は何も言えなくなってしまった。  
 ……この子の“記念”って言葉、なんだかずるい。

 このあと、僕たちは買い物へと向かうことになる。  


 ◆◆◆


 ゲームコーナーを出た僕たちは、ショッピングモールの雑貨フロアへと向かっていた。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん。ここで何買うの?」

 由奈ちゃんは僕の隣を歩きながら、さっきクレーンゲームで取ったぬいぐるみをぎゅっと抱えている。  
 その姿が、なんだか……ちょっとだけ、可愛い。

「パソコンのマウスを買いにね。最近クリックの反応が悪くてさ。できれば静音タイプがいいなって思ってる」

「静音タイプ……?あ、じゃあこのへんかな~?」

 由奈ちゃんは僕の腕を引いて、マウス売り場の棚の前に立つ。  
 僕よりも先に商品を手に取って、真剣な顔でスペックを見比べている。

「……由奈ちゃん、詳しいね?」

「えへへ~。お兄ちゃんのためにちゃんと選ばなきゃって思って♪」

 そう言って、スマホを片手に、もう片方の手で僕にひとつのマウスを差し出してくる。  
 水色のラインが入った、シンプルだけどちょっと可愛いデザイン。

「これ、静音タイプでレビューも良かったよ。あと……水色って、お兄ちゃんに似合うと思うな」

「……僕に?」

「うん。今日のぬいぐるみも水色だったし、なんか……お兄ちゃんのイメージって“優しい青”って感じ」

 由奈ちゃんの言葉に、僕は少しだけ照れてしまう。  
 ……そんなふうに思ってくれてたんだ。

 本当は僕、白が好きなんだけど……由奈ちゃんの言うように、水色も悪くないかもしれない。

「じゃあ、それにしようかな」

「やった~!あたしの選んだやつだ~!」

 由奈ちゃんは嬉しそうに笑って、僕の腕にそっと抱きついてくる。

 そのたびに、由奈ちゃんの胸が僕の腕に当たるわけで……。  
 このままでは、本当に僕の理性がすり減ってなくなってしまう……!

 ……さっきのゲームコーナーでもそうだったけど、この子は本当に距離が近い。

「じゃあ、他にも何か買い物しよ?次は……お兄ちゃんの部屋のアイテムを選んでみたいな~」

「……僕の部屋の?」

「うん。お兄ちゃんの部屋って白ばっかりでちょっと地味だから、あたしが“可愛くしてあげる”♪」

 由奈ちゃんの笑顔に、僕は何も言えなくなってしまった。  
 ……この子の“可愛くしてあげる”って言葉、なんだかずるい。

 こうして僕は、由奈ちゃんとの買い物を続けたのだった。
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