罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

文字の大きさ
82 / 223
由奈の章 甘えたがりな義妹

水着と浮き輪と……時々キスと……

しおりを挟む
 水面がきらきらと光っていて、まるで由奈の笑顔がそのまま映っているみたいだった。
 僕は由奈に腕を引かれながら、そっと水の中へと足を踏み入れた。

「ねえ彼方さん……」

 由奈は僕の腕をぎゅっと握ったまま、少しだけ顔を赤くして言った。

「どうしたの?由奈」

「……あたし、泳げないから……ぎゅってしててほしいな♡」

 その一言で、僕の理性は水面下に沈んだ。  
 由奈は水着姿のまま、僕の首に腕を回して正面から抱きついてくる。

 水着越しに感じる体温、柔らかい感触、甘えた声……。
 これはもう……危険すぎる!

(泳げないって言ってたけど、足……ついてるよな……?)

 由奈は僕の胸に顔をうずめながら、微かに笑った。

「彼方さんって、あったかい……。泳げなくても、こうしてたら安心する」

 僕はそっと彼女の背中に手を添えて、静かに答えた。

「……落とさないようにがんばるよ」

「うん!がんばってね♡」

 由奈はそう言うと僕の首へと回していた右手を離すと、なぜか僕へと水をかけてくる。

「ちょ……!由奈……っ!?」

「あはは!しっかり持っててね、彼方さん。落としたら許さないからね~♪」

 上機嫌の由奈は笑いながら、僕に水をかけてくる。
 僕は慌てて顔をぬぐいながら、苦笑した。

「いやいや……!落とさないでって言うなら、水かけるのやめてよ……!」

 そしてそんな僕たちの様子は、プールサイドの親子連れやスタッフに、ちょっとだけ生暖かい目で見られていた。
  ……まあ、幸せそうに見えたなら、それはそれでいいか。


 ◆◆◆


 次に由奈は流れるプールの水流に乗って、浮き輪に身を預けていた。  
 水面に揺れる髪、眩しい笑顔、そして僕に向かって手を振る姿。

「彼方さ~ん!こっちこっち~♪」

 由奈はくるっと回って、僕にウインクを飛ばす。
 その仕草が眩しすぎて、僕はまたしても足を止めそうになる。

(あれは反則だろ……。水着姿で、浮き輪で、笑顔で手を振るって……)

 僕は水流に逆らいながら由奈のもとへと向かうと、少しずつ距離が縮まっていく……。  
 でも、由奈はその間ずっと、僕だけを見て笑っていた。

「彼方さん、遅いよ~♪」

「水流が強いんだよ……!」

 僕は人の多い中、流れるプールを歩いて進むけど、その差は一向に縮まらない。

「あははは……!捕まえれなかったら、ペナルティがあるよ♡」

 由奈は浮き輪の上でくるっと回りながら、僕に向かって笑顔を向ける。
 その笑顔が、まるで太陽みたいに眩しくて僕は思わず見惚れてしまった。

(ところでペナルティって何……? いや、それよりも……)

 僕の心臓が、さっきからずっと落ち着かない。  
 由奈の笑顔、声、仕草。全部が僕の理性を揺さぶってくる。

「由奈……、ペナルティって何?」

「それはね……あたしのお願い、なんでも叶えてもらうの♡」

 由奈はいたずらっぽく笑うと浮き輪の上でくるっと回る。

「じゃあ、僕が捕まえたら?」

「彼方さんのお願い、なんでも聞いちゃう♪」

 由奈はそう言うと僕へとウインクを一つ飛ばす。

(それ……、絶対に捕まえなきゃダメなやつだ……!)

 心の奥がざわつく。
 ちょっとした遊びだというのは分かってるけど、僕は本気で勝ちにいこうとしていた。

 由奈を捕まえられれば彼女に触れたいとか、キスしたいとか……そんな願望が頭の中でいっぱいになる。

「あははは……!凄い凄い……!彼方さんもう少しだよ~♡」

 由奈は笑いながら浮き輪の上で手を伸ばしてくると、僕はその手を取ってそっと引き寄せる。

「……捕まえた」

「えへへ……捕まっちゃった♡」

 由奈は僕の腕にそっと触れると、いたずらっぽくペロッと舌を出す。
 その仕草に、僕の心臓が跳ねる。

「それじゃあ……約束通り僕のお願い聞いてもらうよ……!」

「うん、いいよ。何がいい?」

「じゃあ……キス……!」

「いいよ。その代わり……今はほっぺで我慢してね♪」

 由奈がそっと僕に抱きついて、頬へとキスをする……。
 頬に触れた唇の感触は柔らかくて、温かくて……僕の中の何かが、静かに弾けた。

「ねね、彼方さん。今度はあれに行こ!」

 由奈はそう言うとウォータースライダーを指さす。

「え……?でもあれって泳げない人は無理なんじゃ……」

「いいからいいから♪……あたし、彼方さんと一緒なら大丈夫だもん」

 由奈は笑って僕の手を引く。
 でもその笑顔がどこかちょっとだけ怪しかった。

 でもこの時僕はまだ知らなかった……。  
 由奈が“泳げないふり”をしていたことを……。

 そして、ウォータースライダーで見事に泳ぐ由奈を見て、僕が「騙された!」と叫ぶことになるなんて。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

処理中です...