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澪の章 寡黙なクラス委員長
満たされた心と重めなジョーク
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──澪──
学園祭が終わり、彼方くんに送られて帰宅すると、キッチンにはお母さんの姿があった。
「ただいま……」
「澪、おかえりなさい。学園祭は御堂君とずっと回ってたの?」
「うん……」
「澪ご飯もう少し待ってね、このカニクリームコロッケ揚げたら全部揃うから今のうちにお風呂に入ってきなさい」
わたしはリビングのテーブルへと目をやるとたくさんの料理が並んでいた。
でも……今日はなぜかいつもみたいに食欲が湧いてこない……。
お昼食べすぎたからとか言うんじゃない……、お腹は確かに空いている……。
でも……なぜかそこまで食べたいという気にはならない。
(なんで……?)
わたしは首を傾げるもその理由が分からない。
「澪……?」
「うん、今入る……」
お母さんの二度目の言葉にわたしは返事を返すとお風呂へと向かう。
お風呂に浸かりながらわたしはお腹へと手を当てる……。
お腹は空いている……。
体調も悪くない……。
でもいつもみたいにたくさん食べたいというわけでもない……。
(なんで……?)
湯気で曇った鏡越しに、自分の胸にそっと手を当てる。
すると、彼方くんの存在が心の中を静かに満たしている気がした。
お風呂から上がったわたしは、揚げたてのカニクリームコロッケを食べているとすぐにお腹がいっぱいになってしまった……。
「ねえ、お母さん……。わたし、こんなにご飯いらないかも……」
「え……?澪どこか具合でも悪いの……?」
お母さんが心配そうにわたしを見る……。
「具合は悪くない……。ただ……」
「ただ……どうしたの……?」
「胸がいっぱいっていうか……なんだか、心の中がぽかぽかしてて……」
「ぽかぽか……?どういうこと?」
お母さんは不思議そうな顔をして首を傾げる。
「うまくいえないけど……今日は彼方くんとずっと一緒にいたから……。それでなんだか……心の中がぽかぽかして……こんな気持ち、初めてで……ちょっと怖い気もする……」
「怖い……?」
「ううん、嫌な意味じゃなくて……。今まで、誰かにこんなふうに心を満たされたことがなかったから……。だから、嬉しいのに……こんな気持ち、初めてだから……少しだけ怖くなるの……」
わたしは言葉を探しながら、ゆっくりと話す。
お母さんは少しだけ驚いたような顔をして、わたしの目を見つめる。
「そう……御堂君の心が澪を包んでくれてるのね、きっと……」
「うん……、そうだと思う……」
お母さんが微笑みかけてくれる……。
すると胸の奥がポカポカと温かくなりなっていくのを感じた。
目を閉じると今でも彼方くんの顔が思い浮かび、トクン、トクン……と胸が高鳴っているのを感じる。
「ねえ、澪。明日御堂君を家に呼んだらどうかしら?」
「え……?」
「今日のお詫びを兼ねてご馳走しようと思うのだけど、どうかしら?」
「分かった……、後で聞いてみる……」
彼方くんが家に来る……それを考えただけでドキドキしている自分がいる……。
(どうしよう……緊張して寝れないかも……)
「なんなら、明日お泊まりしてもらったら?」
「お……お母さん……!」
お母さんの言葉に私の顔が一気に赤くなる……!
家に彼方くんが来るってだけでも一大事なのに……お泊りだなんて……!
もし……もしそうなったら……嬉しすぎて心がパンクしちゃうかも……。
「冗談よ、でも明日のこと聞いてみて」
「うん……、聞いてみる」
食事を終えたわたしは、自分の部屋へと戻る。
スマホを手に取ると、画面に映る“彼方くん”の名前に、胸がトクンと跳ねる。
指先が少し震えながら、わたしは通話ボタンをそっと押した。
~サイドストーリー~
──彼方──
澪を家の近くまで送ったあと、僕は帰宅して風呂と夕食を済ませると自室のベッドに寝転がった。
思い起こされるのは今日の澪のことばかり……。
(澪……今日は、なんだかいつもと違ったな)
模擬店を回っていたときも、うどんを食べていたときも、澪はずっと笑っていた。
でもその笑顔の奥に、何かが満たされているような……そんな温もりがあった。
(澪……)
僕はスマホを手に持つと澪の電話番号を見つめる……。
話がしたい……澪の声が聞きたい……、電話しようかな……今の時間は大丈夫かな……。
僕は悩みながらスマホの画面を眺めていると突然電話が鳴り出す。
画面には「澪」の名前が書かれていた。
「も……もしもし……!」
僕は逸る気持ちを抑えワンコールで電話に出る。
『わ……ワンコールで出た……』
電話の向こうから驚いたような澪の声が聞こえてくる。
「スマホを見てたから……」
流石に澪に電話しようかどうしようかと悩んでいたと言うのは恥ずかしいので黙っておく事にする。
『そう……、それより彼方くん明日予定とかある……?』
予定……?
僕は澪に聞かれ少し考える……。
予定は……特にない……。
「いや、無いけどどうしたの?」
『もし良かったら……ウチに来ない……?』
「澪の家に……?」
突然の澪からの提案に僕の心臓がドキッと跳ねる。
『うん……、わたしのお母さんが是非ともって……』
「そういうことなら遠慮なく行かせてもらうよ」
澪の家への招待の電話に顔がニヤけそうになる……。
いや……、実際もうニヤけていた。
『分かった、お母さんに伝えておく……。それと……ウチに泊まる……?』
「え……?」
思いもよらぬ澪からの提案に僕の心臓が一瞬止まる……。
今……澪はなんて言った……?
お泊り……?澪の家に……?
まさか……これって……誘われてる……のか……!?
僕の脳内には、あんなことやこんなことなど様々なピンク色の妄想が暴走を始めていた。
(いやいやいや……!澪の家には彼女のお母さんだっているんだ……!そんなことにはならないはずだ……!)
でも……もし澪のお母さんが仕事とかで不在になったら……?
(ゴクリ……)
僕は思わず息を呑む……。
『な~んて、冗談……』
「え……?」
澪の言葉に僕の目は点になる……。
え……?は……?じ……冗談……?
『だから冗談……。取り敢えず明日は10時くらいに来てほしい……』
「わ……分かったよ……」
『うん、それじゃあおやすみ……』
「う……うん、おやすみ」
……。
(はあぁぁぁぁぁぁーーー……!)
電話が終わると僕は心の中で盛大なため息をつく……。
お泊りが冗談だなんて……イタズラが過ぎるよ全く……!
そ……それによくよく考えたら娘を持つ親が彼氏を家に泊めていいよなんて言うわけないじゃないか……!
ホント、心臓に悪いよ……。
(ま……まあ……、兎に角明日は澪の家にお呼ばれしてるから……行ってみようかな……)
僕は明日を心待ちにしてしながら眠りへとついた……。
学園祭が終わり、彼方くんに送られて帰宅すると、キッチンにはお母さんの姿があった。
「ただいま……」
「澪、おかえりなさい。学園祭は御堂君とずっと回ってたの?」
「うん……」
「澪ご飯もう少し待ってね、このカニクリームコロッケ揚げたら全部揃うから今のうちにお風呂に入ってきなさい」
わたしはリビングのテーブルへと目をやるとたくさんの料理が並んでいた。
でも……今日はなぜかいつもみたいに食欲が湧いてこない……。
お昼食べすぎたからとか言うんじゃない……、お腹は確かに空いている……。
でも……なぜかそこまで食べたいという気にはならない。
(なんで……?)
わたしは首を傾げるもその理由が分からない。
「澪……?」
「うん、今入る……」
お母さんの二度目の言葉にわたしは返事を返すとお風呂へと向かう。
お風呂に浸かりながらわたしはお腹へと手を当てる……。
お腹は空いている……。
体調も悪くない……。
でもいつもみたいにたくさん食べたいというわけでもない……。
(なんで……?)
湯気で曇った鏡越しに、自分の胸にそっと手を当てる。
すると、彼方くんの存在が心の中を静かに満たしている気がした。
お風呂から上がったわたしは、揚げたてのカニクリームコロッケを食べているとすぐにお腹がいっぱいになってしまった……。
「ねえ、お母さん……。わたし、こんなにご飯いらないかも……」
「え……?澪どこか具合でも悪いの……?」
お母さんが心配そうにわたしを見る……。
「具合は悪くない……。ただ……」
「ただ……どうしたの……?」
「胸がいっぱいっていうか……なんだか、心の中がぽかぽかしてて……」
「ぽかぽか……?どういうこと?」
お母さんは不思議そうな顔をして首を傾げる。
「うまくいえないけど……今日は彼方くんとずっと一緒にいたから……。それでなんだか……心の中がぽかぽかして……こんな気持ち、初めてで……ちょっと怖い気もする……」
「怖い……?」
「ううん、嫌な意味じゃなくて……。今まで、誰かにこんなふうに心を満たされたことがなかったから……。だから、嬉しいのに……こんな気持ち、初めてだから……少しだけ怖くなるの……」
わたしは言葉を探しながら、ゆっくりと話す。
お母さんは少しだけ驚いたような顔をして、わたしの目を見つめる。
「そう……御堂君の心が澪を包んでくれてるのね、きっと……」
「うん……、そうだと思う……」
お母さんが微笑みかけてくれる……。
すると胸の奥がポカポカと温かくなりなっていくのを感じた。
目を閉じると今でも彼方くんの顔が思い浮かび、トクン、トクン……と胸が高鳴っているのを感じる。
「ねえ、澪。明日御堂君を家に呼んだらどうかしら?」
「え……?」
「今日のお詫びを兼ねてご馳走しようと思うのだけど、どうかしら?」
「分かった……、後で聞いてみる……」
彼方くんが家に来る……それを考えただけでドキドキしている自分がいる……。
(どうしよう……緊張して寝れないかも……)
「なんなら、明日お泊まりしてもらったら?」
「お……お母さん……!」
お母さんの言葉に私の顔が一気に赤くなる……!
家に彼方くんが来るってだけでも一大事なのに……お泊りだなんて……!
もし……もしそうなったら……嬉しすぎて心がパンクしちゃうかも……。
「冗談よ、でも明日のこと聞いてみて」
「うん……、聞いてみる」
食事を終えたわたしは、自分の部屋へと戻る。
スマホを手に取ると、画面に映る“彼方くん”の名前に、胸がトクンと跳ねる。
指先が少し震えながら、わたしは通話ボタンをそっと押した。
~サイドストーリー~
──彼方──
澪を家の近くまで送ったあと、僕は帰宅して風呂と夕食を済ませると自室のベッドに寝転がった。
思い起こされるのは今日の澪のことばかり……。
(澪……今日は、なんだかいつもと違ったな)
模擬店を回っていたときも、うどんを食べていたときも、澪はずっと笑っていた。
でもその笑顔の奥に、何かが満たされているような……そんな温もりがあった。
(澪……)
僕はスマホを手に持つと澪の電話番号を見つめる……。
話がしたい……澪の声が聞きたい……、電話しようかな……今の時間は大丈夫かな……。
僕は悩みながらスマホの画面を眺めていると突然電話が鳴り出す。
画面には「澪」の名前が書かれていた。
「も……もしもし……!」
僕は逸る気持ちを抑えワンコールで電話に出る。
『わ……ワンコールで出た……』
電話の向こうから驚いたような澪の声が聞こえてくる。
「スマホを見てたから……」
流石に澪に電話しようかどうしようかと悩んでいたと言うのは恥ずかしいので黙っておく事にする。
『そう……、それより彼方くん明日予定とかある……?』
予定……?
僕は澪に聞かれ少し考える……。
予定は……特にない……。
「いや、無いけどどうしたの?」
『もし良かったら……ウチに来ない……?』
「澪の家に……?」
突然の澪からの提案に僕の心臓がドキッと跳ねる。
『うん……、わたしのお母さんが是非ともって……』
「そういうことなら遠慮なく行かせてもらうよ」
澪の家への招待の電話に顔がニヤけそうになる……。
いや……、実際もうニヤけていた。
『分かった、お母さんに伝えておく……。それと……ウチに泊まる……?』
「え……?」
思いもよらぬ澪からの提案に僕の心臓が一瞬止まる……。
今……澪はなんて言った……?
お泊り……?澪の家に……?
まさか……これって……誘われてる……のか……!?
僕の脳内には、あんなことやこんなことなど様々なピンク色の妄想が暴走を始めていた。
(いやいやいや……!澪の家には彼女のお母さんだっているんだ……!そんなことにはならないはずだ……!)
でも……もし澪のお母さんが仕事とかで不在になったら……?
(ゴクリ……)
僕は思わず息を呑む……。
『な~んて、冗談……』
「え……?」
澪の言葉に僕の目は点になる……。
え……?は……?じ……冗談……?
『だから冗談……。取り敢えず明日は10時くらいに来てほしい……』
「わ……分かったよ……」
『うん、それじゃあおやすみ……』
「う……うん、おやすみ」
……。
(はあぁぁぁぁぁぁーーー……!)
電話が終わると僕は心の中で盛大なため息をつく……。
お泊りが冗談だなんて……イタズラが過ぎるよ全く……!
そ……それによくよく考えたら娘を持つ親が彼氏を家に泊めていいよなんて言うわけないじゃないか……!
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