罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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柚葉の章 ロリっ子で不器用な生徒会長

御堂家の昼食

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 僕は柚葉先輩と亜希という、ちょっと不思議な組み合わせで部屋を出て一階のリビングに向かう。
 そこには真奈美さんの手料理の数々が並んでいて、美味しそうな匂いが漂っていた。

 そして真奈美さんは柚葉先輩と目が合うとにこやかな笑顔を浮かべてみせた。

「あら、あなたが柚葉ちゃんね。彼方くんから話は聞いているわ。ごめんなさいね。あなたが来たとき、ちょうど買い物に出ていて……。私は彼方くんの義理の母で真奈美といいます」

「こちらこそご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は彼方くんとお付き合いさせていただいております、如月・ミレイ・柚葉と申します」

 真奈美さんか柚葉先輩に軽く頭を下げると、先輩は深々と丁寧に頭を下げる。
 どうやら"生徒会長モード"が発動しているらしい。

「あらま……!なんて礼儀正しい子なのかしら?彼方くんにはもったいないわね」

 真奈美さん……それどういう意味……?
 僕はジト目で真奈美さんを見ていると今度は由奈ちゃんが口を開く。

「あたしは由奈です!よろしくお願いします如月先輩!」

「ええ、よろしくね由奈ちゃん」

 由奈ちゃんの自己紹介に柚葉先輩は笑顔で答えると、和やかな空気が流れる中、僕たちはテーブルについた。

 柚葉先輩は背筋を伸ばし、スカートのポケットからナプキンを取り出して膝に広げると、真奈美さんの料理を前にして小さく感嘆の声を漏らす。

「すごい……どれも美味しそう……」

「ふふ、ありがとう。柚葉ちゃんのお口に合うかしら?たくさん食べてね」

「はい、いただきます」

 柚葉先輩は丁寧に箸を取り、まずは煮物に手を伸ばす。ひと口食べた瞬間、ぱっと顔が明るくなった。

「……美味しい!優しくて、どこか懐かしい味……心がほっとする」

「まあ、嬉しいわ。柚葉ちゃんの口に合ってよかった」

 真奈美さんはにこやかに微笑みながら、ちらりと僕の方を見る。

「ねえ、彼方くん。ミレイちゃんって、すごくしっかりしてるのね。お料理もできるのかしら?」

「えっと……」

 僕が答えに詰まると、柚葉先輩が少しだけ頬を染めながら口を開いた。

「残念ながら私は料理は苦手なもので……。どうにか上達しようとは励んでいるのですが中々……。そう言えば以前、亜希さんは料理が特技だとお伺いしたのですが……」

 柚葉先輩の言葉に亜希はビクっと体を震わせると、由奈ちゃんと真奈美さんの視線が亜希に向けられる。

「え?お姉ちゃんまだそんな見栄張ってたの?」

「亜希ちゃん、料理できるって言ったの?なんでそんなすぐバレるような嘘つくのよ……」

「た、卵焼きくらいなら……レシピ見れば、なんとか……」

「お姉ちゃん、それ出来るって言わないよね……」

「う……うるさいわね……!」

 姉妹の小競り合いに、僕は苦笑しながら箸を動かしていると、柚葉先輩はじっと亜希を見つめていた。

「……風原、変に見栄を張る必要はない。変に見栄を張ればいつかそれが自分に帰ってくる。“できない”ことは、恥じゃない。誰だって最初はそうなんだから」

 亜希を諭す口調は、一つ年上とは言え年長者のものだった。

「う……は、はい……」

 亜希が小さくうなずくと、柚葉先輩はふっと表情を緩めた。

「……私も、料理に関しては全然ダメだ……。けれど、彼方のために少しずつ覚えていこうと思ったんだ。だから、風原も焦らずに、自分のペースでいけばいいと思う」

 その言葉に、亜希は少しだけ目を見開いた。

「……如月先輩って、意外と優しいんですね」

「意外とは余計だ」

 柚葉先輩がむっとしながらも、どこか照れたように視線を逸らす。

 そのやり取りに、真奈美さんがくすくすと笑いながらお茶を注いだ。

「ふふ、なんだかいいわね。こうしてみんなで食卓を囲むのって」

「うん、なんか……家族みたい」

 由奈ちゃんが無邪気に言うと、柚葉先輩が一瞬だけ動きを止めた。

「……家族、か」

 ぽつりと呟いたその声は、どこか遠くを見つめているようだった。

「柚葉先輩?」

 僕が声をかけると、先輩はすぐに笑顔を取り戻して首を振った。

「いや、なんでもない。……ただ、こういうの、いいなって思っただけだ」

 その笑顔はどこか柔らかくて、少しだけ切なさを含んでいた。

 僕は何も言わずに、そっと先輩の手に自分の手を重ねた。

 先輩は驚いたように僕を見たあと、ふっと微笑んで、そっと握り返してくれた。

 その瞬間、僕の胸の奥がじんわりと温かくなる。

(……こうして、少しずつ。先輩の心の中にも、僕との“居場所”ができていくといいな)

 そんなことを思いながら、僕は再び箸を手に取った。
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