罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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瀬玲奈の章 ギャル気質なガールフレンド

窮地の彼方と立ち上がる瀬玲奈

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 弁当箱を教室に置いたあと、僕はそのまま職員室へ向かった。

「失礼します」

「御堂君、こっちに来て」

 職員室に入ると、担任の渡辺先生に呼ばれ、僕は職員室の奥に向かう。
 そこには長テーブルとイスが4つ置かれており、そこに教頭先生と、背が低くブロンドの髪をポニーテールにした女の子が、腕を組んで座っていた。

(なんでこんなところに付属中学の生徒が……?)

 そう思ったけど、よく見れば本校の制服を着てる。

「御堂、そこに座りなさい」

 教頭先生は目の前の席を指さすと、僕は言われた通りに座ると、僕の横に渡辺先生が座る。

「えっと……、その前にそちらのちびっ子は誰ですか?」

「誰がちびっ子だっ!?ミレイは3年でこの学園の生徒会長だっ!お前より先輩なんだぞっ!」

 僕はちびっ子を指さすと、そのちびっ子……もとい生徒会長はテーブルを叩きながら立ち上がる。
 ていうか、ウチの学園の生徒会長ってこの人だったのか、知らなかった……。

「それは失礼しました。それで僕に話って何ですか?」

「……単刀直入に言う、御堂……おまえ昨日他校の生徒に暴力を振るっただろ?相手の学校から苦情が来ている」

 生徒会長はイスに座り、軽く咳払いをすると教頭先生の横で腕組みをしながら僕を睨む。

 なんだってっ!?

「ちょ、ちょっと待ってください!先に手を出してきたのは向こうです!僕は……僕は、ただ……!」

 僕は勢いよくイスから立ち上がると、昨日の一件のことを伝える。
 しかし、教頭先生も生徒会長も難しい顔をしながら僕を見つめる。

「つまり、先にやられたからやり返したと……つまりはそういうことか?」

「……そう言うわけじゃないのですが」

 どうする……?早乙女さんを守るためにやったと言う……?
 でも、それだと早乙女さんにまで迷惑がかかってしまう……。

 僕はどう説明しようかと悩んでいたそのとき、職員室のドアが勢いよく開いた。

「失礼します!」

 声からして早乙女さんのようだ。

「あなたは2年B組の早乙女さん……?どうしたの?」

「はい!ウチ御堂君が職員室に呼ばれたって聞いてきました!たぶん昨日の事だと思うので証言しに来た感じです!」

 僕は職員室の奥から顔を覗かせると、生徒会長と教頭先生も何事かと顔を覗かせる。

「早乙女、昨日の証言とはどういう事だ?」

 教頭先生が訝しげな顔で早乙女さんを見ると、彼女は臆することなく僕の横に立って腕組みをする。

「昨日、ウチは御堂君とゲーセンにいました!そしたら他校の男子が3人、ナンパしてきて——御堂君がウチを庇ってくれたんです!でも、そいつらが御堂君を殴って、ウチに手を出そうとしてきて……御堂君は最小限の力で止めてくれました!そんなに御堂君が悪いって言うのならゲーセンの防犯カメラを見せてもらったらいいじゃん!」

「教頭先生、どうしましょうか……?」

 早乙女さんの話を聞いて渡辺先生が教頭先生に伺いを立てる。

「ふむ……、確かに防犯カメラを確認してからのほうがよさそうだ……。御堂、君のことは店側の防犯カメラを確認してから追って通達する。今日のところはこれでいい」

「はい、失礼します」

 僕はお辞儀をすると早乙女さんと一緒に職員室を退出する。


 職員室を出た瞬間、僕は思わず深く息を吐いた。

「ふぅ……助かった……」

 緊張でこわばっていた肩の力が抜けていくのが分かる。  
 その隣で、早乙女さんはいつもの調子で笑っていた。

「いや~、ウチ、マジで間に合ってよかった~!御堂君、めっちゃ焦ってたし!」

「……そりゃ、あんな風に呼び出されたら誰だって焦るよ」

「でもさ、ウチが来た時、ちょっとホッとした顔してたよね?」

「えっ……」

 不意を突かれて、僕は言葉に詰まる。  
 瀬玲奈はニヤニヤしながら僕の顔を覗き込んでくる。

「やっぱ図星~♪」

「……そりゃ、助かったのは本当だし」

「ふふっ、ウチ、御堂君の役に立てたなら嬉しいな~」

 そう言って、瀬玲奈は少しだけ照れたように笑った。  
 その笑顔が、なんだかいつもより柔らかく見えた。

「でもさ、なんで来てくれたの?」

 僕がそう尋ねると、瀬玲奈は少しだけ視線を逸らして、ぽつりと答えた。

「う~ん……、昨日の借りを返すって言ったらカッコつけすぎになるかもけど、ウチ、御堂君が困ってるのに何もしないの、イヤだったから」

 その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
 彼女は、僕のためにここまでしてくれたんだ。

「ありがとう、早乙女さん。ほんとに、助かったよ」

「も~、“早乙女さん”じゃなくて“瀬玲奈”でいいってば~。ウチ、御堂君にはそう呼んでほしいな~って思ってたし♪」

「せ、瀬玲奈……」

 彼女の下の名前を呼ぶと、顔が熱くなってるのが自分でもわかる。

「おっ、いいじゃんいいじゃん!その調子でいこ~!その代わりウチもカナタっちって呼ぶし!」

 瀬玲奈は嬉しそうに笑って、僕の肩を軽く叩いた。  
 その手のぬくもりが、じんわりと残る。

 それにしてもカナタっち……?
 なんだろう……、瀬玲奈から言われると不思議と嫌じゃない。

(……なんだろう、この感じ)

 心臓が、また少しだけ早くなった気がした。

「そんじゃカナタっち!夜のゲーム忘れないでよね!」

 瀬玲奈は僕に手を振りながら走り去っていく。
 僕は、瀬玲奈の背中が見えなくなるまで、ずっとその場に立ち尽くしていた。


 余談だが、ゲーセンの防犯カメラを解析した結果、僕の無実は立証されたのだった。
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