【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

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 仲間の騎士達が野営の準備をしている中、下着姿のリヒャルトだけが川で服や荷物を洗っていた。

 嫌な事が起きると嫌な事を思い出してしまう。
リヒャルトは子爵家の豚男に言われた言葉や今迄に平民や顔の事で言われてきた暴言を思い出し、ぼーっと川に映る自分を見つめている。

こんな見た目じゃなきゃ、平民じゃなきゃ力だけで認められるのかなぁ・・・。

何時までも川で洗い続けているリヒャルトの隣にリリーが現れた。彼女はずっとリヒャルトの目を見つめている。

「・・・なに?」

リヒャルトの問にリリーは答えない。
それでも彼女はずっと彼の瞳を見続けていた。

何だか彼女には愚痴を言ってもいい気がする。
と言うよりかは無口だから変な言葉を返される事もなく黙って聞いてくれる気がする。そう彼は思い、口を開いた。

「何で身分とか顔で人の事見下せるんだろね。俺なりに結構努力してここまで来たんだよ?なんか久々に面と向かって顔だけって言われちゃってさー、結構きたわ」

下唇を噛み締め悔しそうな表情をしているリヒャルト。そんな彼からリリーは視線を逸らした。

「・・・顔も身分も関係ない。リヒャルトは強い。認める人はいる。これからも強くなれる」

だから、大丈夫。

リリーはそれだけ言うと洗い終わったリヒャルトの荷物を持ち、他の騎士達が居る場所へ戻ってしまった。

「・・・良いやつじゃん」

ぼそっと呟いたリヒャルトの言葉は誰にも聞こえていない。

“リヒャルトは強い”

その言葉が今のリヒャルトにとって救いとなった。




「ぶえっくしょん!」

盛大なくしゃみをしたリヒャルト。
夜のジャングルは冷える。下着姿の彼にとっては過酷だろう。

そんな彼は現在エレンに虫除けの薬草を体に塗ってもらっていた。

リリーとノエルはリヒャルトの荷物を干し、残り二人はリヒャルトの為に大きい焚き火を作っている。

「服を渡してやりたいが、すまないな。汗だくでかなり汚れていてとても貸せれる物じゃないんだ」

申し訳なさそうに言ったルーク。
彼らは予備の服を一着しか用意していなかった。返り血や泥だらけ、しかも湿っているせいでとても貸せる状態じゃない。

その為リヒャルトは下着姿のまま一夜を過ごさなくてはいけない状況だ。

「さむい?」

リリーの問にぶんぶんと勢いよく頭を縦に振ったリヒャルト。

リリーは一本の刀を握ると上空へ飛び跳ねた。

シュパッシュパパパパッ

数十枚の大きな葉っぱを切り落とした彼女は細い蔦を使って葉と葉を繋げていく。あっという間に葉っぱの敷布団と掛布団が完成した。

「ここに寝て?」
「あ、ああ。うん。ありがとう」

リリーが作った葉っぱの敷布団の上に大人しく横になるリヒャルト。てっきり葉の掛布団を掛けてくれるかと思ったのに突然リリーが服を脱ぎ始めたから慌てて飛び起きた。

「なんで脱ぐの!?」

リヒャルトのリアクションに逆に不思議がるリリー。

「人肌の方が暖まるよ?」

常識でしょ?頭大丈夫?

下着にキャミソール姿となったリリーはリヒャルトを寝かせた。彼の体に跨り背中から葉っぱの掛布団を羽織り、自身の体ごと彼に覆いかぶさった。

ぱちぱちと瞬きをしたリヒャルトは慌てて顔だけ起こした。周りの仲間達に助けを求めるが、彼らはジト目で見てくるだけで助けようとしない。

ピタリと身を寄せるリリーは既に瞳を瞑っていた。

動揺するリヒャルト。

先程まで冷たかったリヒャルトの肌が段々と温かくなり安心するリリー。

肌と肌が触れ合っているところが温かい。
動揺していたリヒャルトだが段々と落ち着いて来た。

上に乗るリリーの重みが心地いい。
いい匂いがする。

「・・・ねぇリリー、俺の名前言ってくんない?」

「・・・リヒャルト?」

「もう一回」

「リヒャルト」

「もういっーー」
「もうっリヒャルトうるさい」

しつこいリヒャルトに怒ったリリー。

「ははっ。じゃあさ、せっかく暖めて貰ってるからもっとあっためてよ。抱きしめて?」

「・・・抱きしめたら寝る?」

「うん。ちゃんと大人しく寝る」

睡魔がリリーを襲っている今、背に腹はかえられぬ。葉布団の中で腕を広げリヒャルトを抱きしめた。脚も絡ませ密着する。彼は満足したのか優しく抱き締め返し、二人は暖め合ったまま眠りについた。

彼らが眠りにつくまで黙って見ていた騎士達。

(むかつくなあ)

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