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第三章
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しおりを挟むジョンが率いる騎士団は魔獣討伐のため遠征に出ていた。以前から報告が上がっていた多数の魔獣出現。今回主な出現場所を特定する事が出来、総力を上げて討伐に向かった。その中には騎士五人も含まれている。
王都や街の警護は他の騎士団に任せ、ジョンが率いる騎士団全軍で魔獣討伐にあたった。
前線で戦っているのは五人を含めた上位部隊達。さすが影での訓練を積んでいる騎士五人は他の騎士達と比べて圧倒的に強く、次々と魔獣を倒していく。順調に思われていたが第二部隊隊長のユリウスと第三部隊隊長のオリヴァーが以前ジョンに言っていた通り、魔獣ビッグウェーブが発生してしまった。
倒しても倒しても次から次へと襲ってくる魔獣達。交戦する騎士部隊だが続々と負傷者が現れ始めた。被害の拡大と死亡者の増加に援軍を呼んだジョンは普段後衛にいるのだが、状況を判断し前線で戦っている。
戦いが始まってからいったい何時間経過しただろうか、流石の騎士五人にも疲労が溜まっていた。
最前線で戦っている第二部隊から第七部隊の騎士達が次々と倒れていくのを見た五人は共闘する為援軍に出た。
このままでは第二から第七部隊の騎士達が危ない。魔獣に圧された状況に舌打ちをする五人。
付近で戦っていたユリウスは、自分の部下や仲間を庇いながら戦っていたが、複数の魔獣が一斉に彼に襲いかかった。
するとーーー。
ガキンッ シュバババババッ! ガキイィンッ!!
真っ黒な衣装を全身にまとった二刀流使いの一人の影がユリウスに襲いかかった魔獣を全部倒すと、騎士五人を襲っていた大型魔獣の攻撃を背後を向けて食い止めた。
目の前に突然現れた影を見た騎士五人は瞠目し固まってしまうが、直ぐに誰だか分かり口角を上げた。
リリーだ。リリーが来てくれた。
「疲れた?」
彼女は覆面で顔を隠している。軽い口調で首を傾げながら五人に問うた。彼らはリリーが現れた事が嬉しくてニヤリと笑った。
「「「ぜんぜん!」」」
一気にリリーが食い止めていた魔獣を攻撃し倒した五人。ユリウスも他の騎士達も突然現れた小柄な影を見て唖然としてしまっている。
ズラッと騎士達の前に多人数の影達が現れた。よく見ると周りの木々の上にも複数の影達がいる。彼らは全員黒ずくめで覆面をつけていた。その光景は影を知っている騎士五人から見ても不気味だが、これ程頼りになる存在はいないだろう。
「ジョン、待たせたな」
「思ったより早かったよ。よろしくね」
影のリーダーであるジャックと騎士団長のジョンが軽く挨拶をした。
「え、援軍だー!」「援軍が来てくれたぞー!」
周りの騎士達が士気をあげる為援軍が来たことを大声で知らせた。
ドコドコドコッ 地響きをあげながら魔獣の波が押し寄せる。
“ 喝 ッ !! ”
影の爺が魔獣達の動きを鈍くし、遠距離戦に特化した影達が一斉に投擲武器を使って攻撃を仕掛けた。目の前にいるリリーはつま先でトントンと地面を叩くと両刀を構え勢い良く魔獣の波へ向かって行った。彼女を皮切りに影の近距離部隊が一斉に駆け出した。
シュバババババッ ドンッ!
押し寄せて来た魔獣達が一瞬の間に輪切りにされ地面に転がる。
唖然とする騎士部隊と興奮する騎士五人。
「続くぞーー!!!」
ジョンの咆哮で我に返った騎士達は剣を強く握り直し再戦した。
戦いが続き劣勢から優勢へ。
しかし一人の巨体な影が魔獣の攻撃により地面に埋め込まれた。ひいっと周囲の騎士達は悲鳴を上げる。
ボコオッと埋め込まれた地面から巨体な影が飛び出した。
「上等だ子豚があ!丸焼きにして食ってやんよお!!」
ひぃぃと周りの騎士達が怯える中、ノエルはその影が誰だか分かり平然と戦っていた。
あ、ヴォルフガングだ。
彼はイノシシに似た大型魔獣の攻撃を受け地面に埋め込まれたというのにピンピンしている。むしろ怒りで周りが見えていない。ノエルの近くにいたジョンが呆れながら笑った。
「戦闘狂って怖いよね」
確かにと頷いたノエル。
戦闘狂。それは戦いが好きで好きで仕方がなくて狂っている人のことだ。ヴォルフガングはまさに戦闘狂だった。
第二部隊と第三部隊の付近で戦っている騎士五人。そんな彼らの周りに何人かの影達が現れ道を開けるよう指示を出した。
「リリーが本気出すぞ!」
「巻き込まれたくなかったらどいてろ!」
魔獣と交戦している最中にも関わらず退けと言われた騎士達は何が始まるんだと唖然としながら影に背中を押され道を開けた。
すると目の前をナニかが通った後、凄まじい風が吹いた。交戦していたはずの魔獣達が一斉に上空へ上がり一箇所に落ちていく。
山のように積み上がった魔獣の頂点に二刀流の小柄な影が着地した。リリーだ。彼女は返り血を浴び視界が悪くなった顔を腕で拭った。騎士達を守った影に無言で親指を立てて褒めたリリー。影達は歓声をあげながら騎士達から離れた。
「コア大量ゲットー!」
「痺れるぜー!」
魔獣山の頂点にいるリリーを見上げる騎士達。
その中には騎士五人と、ユリウスとオリヴァーの姿も含まれている。そんな視線を気にせずリリーはポーンッとジャンプすると優雅に着地し、再び剣を構えてどんどん魔獣を倒していく。
ほら、やっぱりリリーは強い。
自分たちの先生はカッコよくて良い女なんだ。
士気が上がった騎士五人も彼女に続くように次々と魔獣を倒し続けた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
地響きと共に上空が暗くなる。
嫌な予感がすると見上げた騎士や影達。
暗く黒い雲から巨大なドラゴンが現れた。
騎士達は悲鳴を上げ影達は息を飲んだ。
ドラゴンは中々お目にかかれない貴重な魔獣だ。体格も巨大だが、なんと言ってもそのコアの希少価値が物凄く高く、興奮する影は少なくはない。だがその分倒すことも難しい。何人もの犠牲が不可欠な相手に怯んだ多くの騎士達は戦闘意欲をなくし項垂れてしまった。
そんな中、ジョンの隣に返り血を浴びまくったジャックが現れた。
「久しぶりにやるか?」
「・・・しょうがないね。やりますか」
ニヤリと笑ったジャック。
ため息を吐いた後に口角を上げたジョン。
二人の愛武器は大剣だ。お互い太くて重い武器を力強く構え、同じタイミングで一気に木から木へ飛び移り木の頂点で待機していたヴォルフガングに向かった。
彼は両腕を構え二人が腕に足の乗せ、力を込めた事を確認すると、力の限り頭上へ両手を上げた。
「オラアアアアッ!!」
ヴォルフガングのおかげで勢いを増したジャックとジョンは光の速さでドラゴンの首目掛けて攻撃を仕掛けた。
“ 一 閃 ッ !! ”
鈍い音と共に首と胴が離れていくドラゴン。隕石が落ちるようなスピードでドラゴンの首が落ちていく。シュタッとドラゴンの頭上に着地したジャックとジョンはお互いの拳を合わせた。そのカッコイイ姿に惚れ惚れする影達と騎士達。
「魔獣の出現元を見つけたぞー!」
「穴埋めろー!!」
影の一人が魔獣の出没源である穴を発見し一斉に岩を集め塞いでいく。トゲトゲと鋭い岩を選び、向こう側から来ようとしたものなら刺さる程鋭く強固な岩を埋めていく。
穴を塞ぎ終えやっと落ち着いた頃には上空に広がっていた黒い雲は無くなり、夕焼け空が色落ちかけていた。
「終わった、終わったぞー!」
「我々の勝利だー!」
「うおおおおおっ!」
大歓喜の声が響いた。
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