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第三章
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しおりを挟む結局あの後ウィルフレッドはリリーにピッタリと引っ付いていた。ひっつき虫となったウィルフレッドと風呂を共にしているリリー。お腹の膨らみを撫でながらウィルフレッドが小声で呟く。
「本当に俺の子・・・俺が父親・・・俺とリリーの子」
「・・・ウィル、本当は無理してるんじゃない?無理して父親になろうとしなくていい」
そう伝えるとなぜか怒ったウィルフレッドはリリーの顎を掴み無理矢理キスをして来た。呼吸がしづらくなる程激しいキスを。久しぶりに舌を絡められ顔が惚ける。唇を離し、顔の横へウィルフレッドの唇が移動した。耳の形をなぞるように耳を舐められ、耳中を舌で犯され喘ぎ声が浴室に響いた。無意識に下腹部に力が入るのを感じ、子宮が収縮されるのではと慌てていると、次に耳朶を強く噛まれ悲鳴があがる。
「今度そんなことを言ったら、この耳噛みちぎる」
「え?なんで・・・嬉しいんじゃ」
「俺を喜ばせたいのならずっと一緒にいると言ってほしい」
くちゅり
「んん・・・ッ」
ウィルフレッドの指がリリーの蜜口を撫でた。キスと耳だけで凄く濡れている。久しぶりにそこを刺激させられ声が響いてしまった。
ドンッドンッ
浴室の扉が強く叩かれ驚く。
「ウィル!ダメだからね!リリーがイったら赤ちゃん苦しいんだからね!」
「リリーもう出てきておいで」
リヒャルトとエレンが扉の外で騒いでいた。
指で蜜口を撫でていたウィルフレッドがしゅんとしている。
「・・・そうなのか?」
「うん」
「・・・はやく愛し合いたい」
ギュッと抱きついてきたウィルフレッドの頭を撫でると服を着たままのエレンとリヒャルトが浴室に入って来てリリーを回収した。
風呂を済ませた後もウィルフレッドはリリーのひっつき虫。ベッドに入ってからもずっとくっついてくる。
「どうして二人きりにしてくれないんだ」
リリーを挟むように反対側に横になるリヒャルトがキッとウィルフレッドを睨んだ。
「ウィルと二人きりにしたら何するか分からないじゃん!」
「産まれるまではもうしない。先程学んだからな。俺の子が苦しむのはよくない」
「あっ!てめッ俺達の子でしょ!そういうのよくないよ!?」
「二人の愛の結晶だ」
「こんにゃろッ!エレン呼んでぶっ飛ばすよ」
二人の仲のいい喧嘩にクスクスと笑うリリー。
お腹を撫でながら赤ちゃんに話しかける。
「賑やかなパパ達だね」
微笑むとそれを聞いたリヒャルトとウィルフレッドがそれぞれ手を伸ばしお腹に触れた。
ー翌日ー
三人揃って入籍手続きをしてくるらしい。流石にこの人数の重婚だと疑われるので一人で手続きをするのは出来ないと思ったのだろう。
リリーはもはや流れに身を任せることにした。嫌な相手だったら断固として結婚を断るのだがリヒャルトもエレンもウィルフレッドも嫌な相手ではない。
窓から空を見上げてお腹を擦る。
「・・・ナターシャ。大家族になりそうだよ」
帰宅した三人はなぜか疲れた表情をしていた。入籍手続きで疲れることなんかあるのだろうか。
「何かあったの?」
エレンに話しかけると彼は眉尻を下げながら笑った。
「質問攻めにあったよ。馴れ初めとか色々聞かれて・・・実はリリーはカモフラージュで僕達三人が愛し合うのかって言われた時は鳥肌が立った」
「え・・・ああ、なるほど」
「なるほどって、納得しないでよね。愛してるのはリリーだけなんだから」
クスクスと笑うリリーを見たエレンは口角を上げてからかった。
「リリー愛してるよ」
「あ、あい、愛してる」
顔を赤くして愛を伝えるリリーは未だにこの事に慣れていないようだ。そんなリリーの姿を可愛いと言いながら揶揄うエレン。ウィルフレッドはそんなリリーの姿をじっと見つめていた。
ウィルフレッドがリリーと入籍してからあっという間に一ヶ月が過ぎた。この一ヶ月間リヒャルト達がウィルフレッドをハンターに誘っても彼はずっとリリーのそばを離れなかった。
エレンとリヒャルトが当たり前の様に毎日リリーに愛を伝えている様子を見ていたウィルフレッドは人前で愛を伝えることはない。しかし二人がハントに出かけリリーと二人きりになるとウィルフレッドは物凄く愛を伝え、壊れ物の様にリリーを大事に扱うのだ。
「好きだ」
「うん」
「これは俺が運ぶ」
「ありがとう」
「愛してる」
「あ、愛してる」
「もう一回言って?」
「あい、愛してる」
「・・・可愛いな」
甘いッ甘すぎる・・・!
ウィルフレッドはお姫様と勘違いしているんじゃないかと言う程溺愛している。
今は彼の膝上に向かい合わせで乗せられクッキーを口移しで食べさせられていた。
「ほら」
「ん・・・」
ウィルフレッドがクッキーを咥えそれをリリーが食べる。最後には深いキスをして何味のクッキーか当てる。それがウィルフレッドのお気に入りだ。
「ウィルはエレン達と一緒に行かなくていいの?」
「君を探している間生活費稼ぎにハンターとして働いていた。やっと会えたんだ。暫くは堪能したい」
なるほど。
ウィルフレッドがいいならいいのだが暇だろう。
クッキーを食べると喉が渇く。飲み物が入ったコップを取ろうとしたらウィルフレッドが先に飲んでしまった。
ちぇーと片頬を膨らまし順番を待つと顎をあげられ唇を塞がれる。驚くのもつかの間、口移しで水分補給をされた。
「自分で飲めるのに」
「言っただろう?堪能したいと」
ニヤリと笑う彼の表情はイタズラを成功させた子供のようだ。その余裕そうな表情を崩したくなったリリーはお返しにウィルフレッドの耳朶を咥えた。
ムニムニと唇で耳朶の食感を味わう。風呂場で彼がしたのと同じ様に耳の形になぞって舐めた。リリーがそれをされるとビクッと反応してしまうのだが、ウィルフレッドは大人しく受け入れるだけで反応がない。面白くないと思いながら今度は首筋を舐め上げる。耳下から首の付け根へ目がけ小さなキスを落とした。最後のキスは肌を吸い付いてみる。薄く小さな痕がついた。彼の様子を伺うとウィルフレッドは口角を上げ楽しそうに見ている。
「歯型をつけても構わない」
「・・・それはやり過ぎじゃない?」
マゾなのだろうか。
少し見ないうちに変わってしまったのかとウィルフレッドをじっと見つめる。
「言っただろう、俺は君の男だ。所有物には印をつけないと・・・もう、忘れたのか?」
確かに彼に抱いてもらった時にそんなことを言っていたなと思い出す。
「だから俺もつける」
***
数刻後、エレンとリヒャルトは帰宅後すぐにリリーとウィルフレッドがイチャついている現場を見てしまい眉間に皺を寄せた。
椅子に座るウィルフレッドの上で鎖骨の下にキスマークを付けられていたリリー。よく見るとその痕は一つだけじゃなく、幾つもある。
不機嫌なままリリーを抱え上げソファに座らせると彼女を挟むようにエレンとリヒャルトが左右に座った。
「次からウィルフレッドも一緒に仕事行くよ。これは強制だから」
笑顔じゃないエレンは鋭い視線をウィルフレッドに向ける。
「嫌だ。まだ離れたくない」
「無理!仕事中も二人の事が気になって集中出来ない」
ガルルと威嚇するリヒャルトの手にリリーは自分の手を重ねてそっと握る。
「何が気になるの?」
えっちはしないぞ?という意味で彼を見つめるとリヒャルトは視線を逸らし頭をガシガシとかいた。
「・・・恥ずかしいから今まで我慢してたけど、もう言うね。俺ずっと嫉妬してる。エレンは自重してくれてたけどウィルはずっとリリーとくっついて離れないから・・・リリーが構ってくれないからイラつく。それに不安」
確かに最近はずっとウィルフレッドがそばに居てあまりリヒャルトとエレンと過ごせていないと思い反省するリリー。しかし、何が不安なのかが分からない。
「不安て?」
「・・・・・・。」
黙ってしまったリヒャルトの代わりにエレンが答えた。
「お腹の子はウィルフレッドと血の繋がりがあるからね。僕達は父親だけど・・・確かな繋がりを持っているのはウィルフレッドだけだから恐いんだ。僕達も確かな繋がりが欲しいんだよ」
「結婚してるのに?」
「・・・欲が深い事はわかってる。ごめんね、困らせたいわけじゃないんだ」
結婚してるけど確かな繋がりが欲しい。つまり二人は子供が欲しいのだろう。いくら愛を伝えても子供が出来ない限り解決しなさそうな問題だ。
「でも妊娠て大変じゃん。お腹の中に宿ることも奇跡。ちゃんと育つのも奇跡。無事に産まれるかも分からないし産まれた後も大変だし。それに負担はリリーにかかっちゃうから無理強いは出来ないし」
あー、複雑だーと天井を見上げて頭を抱えたリヒャルト。
リリーはエレンとリヒャルトを大事にしたい。だから二人の手を握り約束をした。
「私は二人の子供を産みたい」
「・・・本当?」
頷いたリリーはモジモジとエレンとリヒャルトの指を小さく揉む。この仕草はリリーが恥ずかしいけど何かを伝えたい時にする仕草だ。それを知っている二人は可愛く恥じらう妻の言葉を待つ。
「でも・・・産んで直ぐじゃなくて・・・少し、えっちを楽しんでからにしよ?」
顔を赤くして恥じらうリリーの姿にエレンとリヒャルトは微笑んだ後、当たり前じゃんと呟き、彼女の頬にキスをした。
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