【R18】 その娼婦、王宮スパイです

ぴぃ

文字の大きさ
88 / 89
第三章

88

しおりを挟む


「夫婦生活についてなんだけど、する時は全員でしない?」

 エレンの発言に驚く。突然何を言い出すのやら。それを否定したのはリヒャルトだ。

「俺リリーと二人きりがいいんだけど」

「・・・リリーが一番相性が良い男を懇意にしたらどうするの?だったら最初から全員で喜ばせた方が平等に接してくれると思うな」

「なんだ、自信ないのか」

挑発的な態度でエレンに不敵な笑みを浮かべるウィルフレッド。それを見たエレンはむっとし唇を尖らした。

「見てない所でリリーが他の男に抱かれるのが嫌なんだ。だったら見てるとこで抱かれてほしい」

「・・・エレンて寝取られ性癖だったの?」

信じらんねえと口に手を当て驚くリヒャルト。エレンはお構い無しに言葉を続けた。

「それに三人だと早くても三日に一回だよ?少なくない?僕は毎日抱きたい」

「それはわかるけどさあ、リリーの体に負担がかかるじゃん」

「三日に一回でもリリーは毎日抱かれるんだよ?それも負担じゃない?」

おい待て、どうして毎日抱かれる前提なんだ。
私だってしたくない日はあるぞ。

不満を言おうとしたが止めた。
毎日抱くのは最初だけで日にちが経つと飽きるだろう。

リリーはソファに座りながらウィルフレッドを見た。

「ウィル、次から二人と一緒に出かけて。二人を不安にさせたくない」

それを聞いたウィルフレッドは深いため息を吐き渋々了承してくれた。エレンとリヒャルトは嬉しそうにリリーの手を握る。




ー 二週間後 ー


夫三人は仲良くハンターの仕事に出掛けた。
夕飯の準備を終えたリリーは夫達の帰宅を待つ。
どうやらまだ帰ってこないみたいだ。

風呂を済ませ、自分の分だけ夕飯を済ませた。

いつもならとっくに帰ってくるはずなのに深夜になっても帰ってこない。

「・・・遅い」

まさか怪我でもしたのだろうか。
不安になり窓の外を見るが、真っ暗で何も見えない。今日は月も隠れているらしい。

ズキンッ

お腹と胸に痛みが走る。



「・・・・・・。」

いつの間にか眠ってしまったのか、ソファの上で横になっていた。

彼らに作った夕飯は手付かずのままだ。
寝室を確認するが、彼らの姿はない。

何かあったのは間違いないだろう。

ズキンッ

再びお腹に痛みが走る。
焦りが生じ、不安が駆られる。

大怪我をしてしまったんじゃ・・・
まさか、死んだ?

重傷なのかもしれない。
死んでしまったのかもしれない。

帰って来ない。

ズキンッ  ズキンッ


リリーは三人の帰宅を待ち続けた。



日も暮れて夜になる。
未だに彼らは帰ってこない。

食事も喉を通らずリリーは窓の外を見ながら待ち続けていた。

走馬灯のように彼らとの思い出が頭を過ぎる。
初めて出会った時のこと、人懐っこいリヒャルト。偽物の笑顔を貼り付けたエレン。ツンとした態度のウィルフレッド。段々と打ち明けていき彼らが見せてくれた様々な表情を思い出す。こんなに仲良くなるとは思わなかった。それが今や夫婦になるなんて・・・。

ボロボロと涙が溢れた。
床に涙のシミが出来る。

そばに居てくれるって言ったのに、いない。

どこにいるんだ。怪我をしてるのか。
無事なのか、生きているのか。

会いたい。

ズキンッ ズキンッ ズキンッ

身体中が痛くなる。
足に力が入らなくなりリリーは床に崩れ目を擦りながら泣いた。


痛いッ 会いたいッ

ガチャ

玄関の扉が勝手に開く。
帰ってきたのかとハッとし顔を上げると、夫三人が瞠目し固まっていた。

ああ、良かった。
帰ってきてくれた。

「リリー!どうしたの?何があったの?」

三人は泣き崩れているリリーを見て驚き駆け寄った。しゃがみこみオロオロしている。

正面に膝を付けたリヒャルトに抱きつき涙を流したまま、抱きしめる腕に力を込めた。エレンはリリーの背中を擦り、ウィルフレッドはオロオロと戸惑いながらリリーの涙を手で拭う。

「離れないでッそばに居て・・・好きなの。どうしようもないくらい好きってわかった。もうどこにも行かないで」

思うがままに感情をぶつけ離れないように強く抱き締める。心からの訴えにリヒャルトは瞳をパチパチと瞬きをした。

「え、リリーそれって・・・」

「愛してる。すごく愛してる。特別なの」

普段なら恥じらって愛を伝えるのに、今は必死に伝えてくるリリーを信じられないと驚愕する三人。

「まじ?それって異性の好きってこと?男として愛してるってこと?」

リヒャルトの質問に何度も頷いた。

リヒャルトはリリーを強く抱き締め彼女の肩に顔を埋め全身で喜ぶ。

「やばッまじで嬉しい!めちゃくちゃ嬉しい。俺もう死んでもいい」

「だめ。死んじゃやだ。ずっとそばにいて」

ぎゅうぎゅうと抱き締め合う二人の横でエレンがリリーの肩をちょんちょんと叩いた。

「リヒャルトだけ?僕は?」

リヒャルトに抱きしめられながらエレンの頬に手を添える。

「エレンが好き。大好き。愛してる。もうどこにも行かないで」

「ッーー」

強く抱き締めるリヒャルトからリリーを奪い背後から抱き締めた。

ずっと片想いでいいと思っていた。
そばにいれればいいって思ってた。
想いを返されることがこんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。

この気持ちを知ってしまったら、もう手放せない。

涙で腫れている瞼にキスをし唇を重ねる。
リリーはエレンの頬に両手を添え、自分から深く求めるように唇を押し当てた。

そんな二人の正面から近付いて来たウィルフレッド。猫が甘える様にリリーの頬に自分の顔を擦り付ける。

「俺は?」

わかってるくせに。
リリーは甘えてくるウィルフレッドの額にキスをした後、左右の頬にキスをし、最後に唇にキスをした。

「愛してる」

「これでもう、お互い離れられないな」

ニッコリと可愛らしく爽やかな笑顔を浮かべたウィルフレッドを愛おしく想い、彼の頬を親指で撫でた。

ズキンッ ズキンッ ズキンッ ズキンッ

お腹の痛みが続く。
三人と会えた喜びで気を取られてしまったが間違いない、これは・・・。

「陣痛来たかも」

「「「・・・・・・ええ!!?」」」

しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...