ちびっこ無双 ~手加減しないと環境破壊しちゃう過剰魔力を持った僕と、ちびっこい仲間達で異世界を無双しちゃいます~

もるもる(๑˙ϖ˙๑ )

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第022話(小狼救出?!)

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 取り敢えず、もう動かなそうな巨大蜘蛛は放っておいて、後ろで吠えていた存在を確認する。それは碧玉珠エメラルド色の綺麗な毛並みを持つ狼の子供だった。
 まだ産まれてそんなに月日が立っていないのか、かなり小さいように思える。小狼は牙を剥き出して、僕に対して唸っている。僕が巨大蜘蛛を倒して助けはしたのだが、小狼にとっては、その巨大蜘蛛を倒せるくらいの驚異に感じているのだろう。

「大丈夫なんだけどな。僕は君に何かしようとする気はないよ」
 僕が優しく声をかけるが、小狼には通じていないようだ。

 小狼の後ろと横には、1mを超える大きな碧玉珠エメラルド色の毛並みの狼が倒れている。ピクリとも動かないところを見ると、もう死んでしまっているのだろう。ぱっと見た所、外傷はないと思うんだけど地面にはかなりの量の血液が流れ広がっていた。

「あぁ、下級マイナー・肉体損傷回復レストア・ボディで外傷は治っちゃったって事か」
 おそらくは巨大蜘蛛の槍のような前足で貫かれてしまっていたのだろう。2匹という事は、この小狼の父母だったと予想できる。

「お前も天涯孤独になっちゃったか。ここに転生させらてしまった僕と一緒だなぁ」
 変な仲間意識が芽生えて、唸っている小狼に近づいて、手を差し出す。僕が無造作に小狼の間合いに入り込んだので、小狼は僕の首筋目掛けて跳ね上がり、噛み掛かってくる。

 さすが、この森に生息している獣だけあって、急所狙いが正確だ。そんな風に思いながら、僕は首筋を守るように縦方向に左手を差し出し、首を横に向けて首筋を食いちぎろうとする小狼の口に、腕ごと突っ込む。

ぅっ!」
 小狼の鋭い牙が、常時発動パッシブ型の身体ボディ・防護膜プロテクションを貫通し、僕の腕に食い込む。だが身体ボディ・防護膜プロテクションの効果はあり、そんなに深く牙は食い込んでいない。

「大丈夫。害は加える気はないよ」
 僕はそう言いながら、ギリギリと歯を食い込まして、僕の腕を噛みちぎろうとする小狼の頭を撫でてみる。一瞬ビクッと身体を震わせて更に歯に力を入れた小狼だったが、撫で続けるにつれて、次第に噛む力が弱くなっていく。
 親を殺され絶体絶命の状況になった野生の獣だ。殺気立つのは当然だろう。でもまだ小さくて天涯孤独になってしまった小狼を無残に殺す気にはなれない。
 巨大蜘蛛の驚異から助けてあげられたのだから、この先も無事に生きてもらいたいと願う僕は、甘ちゃんなのだろうか。
 そんな事を考えながら、小狼の頭を撫でていると、やがて口を僕の腕から力なく離す。口が離された僕の腕には鋭い牙による歯型が付いていて、その穴からかなりの血が流れ落ちているのが見える。

「いてててて……下級マイナー・回復ヒール!」
 痛みに顔をちょっと歪ませながら、傷口に回復魔法をかけると、一瞬で傷口が塞がり血も痛みも止まる。そんな僕の傷口を申し訳無さそうに小狼がペロペロと舐めてくれるのが少しくすぐったかった。

「もう大丈夫だよ。ん?!」
 小狼を安心させるようにそう言った僕は、背後に魔素の高まりを感じる。僕が背後を振り向くと融解した地面の中心にある巨大蜘蛛の死体から目に見える形で魔素が立ち昇り、目の高さくらいにある珠のようなものに吸い出されていた。その珠の魔素の濃さに僕の感覚が反応したのだった。
 その珠は巨大蜘蛛の魔素をドンドンと吸収していき、緑色と銀色に明滅を繰り返しながら魔素濃度を濃くしていく。

「なんだろうコレ?」
 危険な気配はしなかったので、僕は小狼の頭を一撫ですると、小狼から離れて巨大蜘蛛の元に移動する。融解した地面からはまだブスブスと煙が吹き出しているが、氷漣属性の魔法で強制的に冷やして、巨大蜘蛛の魔素を吸い上げている珠に近づいていく。やがて巨大蜘蛛の全ての魔素を吸い上げたのか、巨大蜘蛛からの魔素の立ち昇りは止まり、その珠は僕を誘う様に緑色と銀色に明滅を繰り返す。

 僕は何となく、その珠に触れた方が良い気がしたので、近づいて手を伸ばしていく。

「あぁ!このトン御主人様マスター!何の準備もせずにそれに触っちゃ駄目なのです!」
「え?」
 僕に追いついたポメからの大きな声が僕に届いた瞬間、僕はその珠に触れてしまった。

「うわっ!」
 目が眩むような緑と銀色の閃光が珠から発せられると、僕の指先から珠の力が流れ込んでくる。

ドクンッ!

 心臓が大きく鼓動したかと思うと、僕の目の前が明滅し、風景がグラグラと揺れ始める。

「な、何だこれ?!」
 まるで船に酔ったかのように目の前がグラングラン揺れて、僕の心臓がバクバクと大きく脈打つ。そしてスゥーっと僕の意識は遠のいていき、僕の身体から力が抜け、その場に膝を着き、倒れ込んでしまう。

「遅かったのですよ……」
 僕の耳にポメの後悔するような声が残るのだけど、僕の意識は深くに落ちていくのだった。

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