妄想小説集

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乗っ取られた部活〜体育教師晴真・無惨

教師の決意

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佐藤は自身を無くし、落ち込む自分自身を鼓舞した。

生徒に無様な負けを喫したスパーリング。

完敗だった。

そして、全裸になり土下座をするという屈辱。

さらに、大技の試技として次々と投げられ、締められ、ボロボロの姿を晒した。

自分の部屋に帰り、生まれて初めて悔し泣きで咽び泣いた。

しかし、教師としての日々は続く。

そして、レスリング部の顧問を辞退する訳にはいかない。

負け逃げは性に合わない。

そして、辞める以上、理由は必要で、生徒に負けて、屈辱の仕打ちを受けたなどとは口が裂けても言えない。

だが、レスリング部員の心が自分から離れているのは確かだ。

そして、その午後、佐藤晴真は、気合を入れ、レスリング練習場のマット周りに立っていた。

今日はローテーションでは、筋トレの日にあたる。

部員たちのざわめきが響く。

佐藤の長身と彫刻のような筋肉質な体躯、優しさと男らしさを兼ねた顔立ちは、かつて部員たちに信頼を与えたが、今は黒崎昴の巨大な影に覆われ、光を失い、くすんでいる。

その分、黒崎が輝き、レスリング部内での存在感を増している。

それでも、佐藤は指導権を取り戻そうと、寝る間も惜しんで一人一人に合わせた筋トレメニューを考え抜いた。

手書きの紙を手に、佐藤は部員たちを前に声を張る。

「今日は筋トレの日だ。県大会に向けて、みんなの弱点を補強するメニューを作った。一人一人に合わせたものを配るから、しっかり取り組め!」

佐藤は部員たちに手書きのメニューを配る。

主将の高橋悠斗には上半身の爆発力強化、副主将の山本剛には下半身の安定性向上、2年生の中村亮太には持久力、佐々木健には柔軟性、1年生の田中翔には全身のバランス、小林和真には基礎筋力と、細かく分析したメニューだ。

部員たちの顔付きが変わる。メニューのキツさに、高橋が「先生、これ…めっちゃハードっすね」と呟き、山本が無言で紙を見つめる。

中村が「マジか、こんなの死ぬぜ」と笑い、田中が「コレをこなせたら、強くなれそうではあるな、、、」と呟く。

1年たちも、ジッと手書きのメニューを真剣な目で見ている。

佐藤は部員たちの反応に一瞬希望を見出す。

「それじゃ、それぞれのマシン、器具のもとへ行って、始めるぞ、、、」

佐藤が言い、部員達が動き始めた時、低く太い声が響く。

「筋トレなんかかったるい。俺はリングでスパーやる。どうだ?誰か一緒にやらないか?」

黒崎の声。

完全に佐藤を無視した言葉。

部員たちの視線が黒崎に集まり、佐藤の心臓が締め付けられる。

黒崎の声はよく通り、誘惑するような響きを持っていた。

部員たちがざわめく。

小林が佐藤の手書きのメニューを放り出し、黒崎に駆け寄る。

同学年の田中、中村も、顔を見合わせた後、「スパーリングの方がいっか、、、」と頷き合い、黒崎の方へ向かう。

3年生の高橋と山本、2年生の佐々木は残ったが、しばらく下を向いていた佐々木が、佐藤から顔を背け、歩き出す。

黒崎が、小林に向い、聞こえよがしに言う。

「3年は内申があるからな。ここで教師に逆らって、嫌がらせで内申下げられても困るんだよ」

「え?黒崎先輩は?内申下げられたら困るんじゃないですか?」

小林が素直に聞く。

無邪気な故に、その言葉は佐藤に突き刺さる。

思わず、佐藤は怒鳴る。

「俺は、そんな嫌らしいことしないっ!高橋、山本っ!お前たちも行きたいなら行っていいぞっ!」

声を絞り出すように言う。

高橋が「先生、、、」と呟き、困ったように佐藤を見る。

が、山本が無言で黒崎の方へ歩き出す。

佐藤のことは見ない。

佐々木も「すみません…」と呟き、山本に続きリングマットの方へ向かう。  

リングマットの方では、すでに黒崎が、下級生に指導を始めている。

佐藤は一人残され、悔しさと情けなさが胸を刺す。

手書きのメニューが床に散らばり、佐藤の努力が踏みにじられる。

部員たちの笑い声がリングから響き、佐藤の心をさらにえぐる。

佐藤は一人、筋トレ用具の方へ向かう。

そして、唇を噛み、一人で筋トレを始める。
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