妄想小説集

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乗っ取られた部活〜体育教師晴真・無惨

孤独なトレーニング

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レスリング部の練習場の片隅では、佐藤晴真の荒い息遣いだけが響き渡る。

185cmの長身は、かつてサッカーボールを追いかけたしなやかさに加え、今は彫刻のように研ぎ澄まされた筋肉が盛り上がっている。

部員たちは、佐藤が用意した個別の筋トレメニューには目もくれず、練習場の中央のリングで楽しそうにスパーリングを始めていた。

「おい、もっと腰を入れろって!」

「ははは、そんなんじゃ効かねーよ!」

「黒崎さん、つえーよぉっ!」

賑やかな声がダンベルを手にした佐藤の耳にも届く。

視線を落とし、腕を折り、彼は黙々と自身のトレーニングに集中する。

一体、俺は、ここで何をしているんだ?

心の奥底で、ちくりと痛みが走る。

元サッカー選手。

学生時代は、それなりに、名声も得た。

だが、それが何だったというのだ。

その事実が、今の自分を余計に惨めにさせる。

手渡された個別のメニューを、彼らは放り投げた。

一人一人黒崎に続きマットに向かった光景が脳裏に焼き付いて離れない。

それでも、彼は耐える。

この身体こそが、唯一の武器だから。

生徒達にこの身体を鍛える姿を見せることで信頼を得たい。

そう考えてトレーニングを続ける。

パワーラックに向かう。

掛けられたバーベル。

良い方に考えよう。

一人でトレーニングをするのだ。

順番を考えずに器具が使える。

まずは、バーベルスクワットだ。

肩に担いだバーベルの重みが、太腿の大腿四頭筋と臀部の大殿筋にずっしりと食い込む。

「うわ、今のマジで入ったな!」

「よっしゃ、もう一本!」

部員たちの歓声が、まるでストイックにトレーニングをする彼の耳を嘲笑うかのように聞こえる。

孤独感が増す。

佐藤はゆっくりと腰を落とし、膝が90度になるまでしゃがみ込む。

その際、彼の背筋はぴんと伸び、体幹の腹直筋と脊柱起立筋が強固に姿勢を支えている。

立ち上がる瞬間、全身の筋肉が協調し、特にハムストリングスと大腿四頭筋がブルブルと震えるのが見て取れる。

まるでギリシャ彫刻が生命を吹き込まれたかのような、力強くも美しい動作だった。

、、、この筋肉が、いつか彼らを振り向かせるんだ。そう信じるしかない、、、

彼は心の中で何度も自分に言い聞かせる。

すでに太腿は鉛のように重くなり始めている。

だが、止めるわけにはいかない。

これは、己の存在意義をかけた戦いなのだ。

生徒が目の端で、努力する姿を見てくれていれば、、、

次に、ベンチプレス台に移動する。

横たわった彼の胸元で、バーベルが静かにその重みを主張する。

「なぁ、帰りにみんなでカツ丼食って帰ろうぜっ!」

「賛成ー!」

食いしん坊な会話が、佐藤の集中力を乱す。

肩甲骨をしっかりと寄せ、胸の大胸筋に意識を集中させる。

ゆっくりとバーベルを下ろし、胸に触れる寸前で止める。

そして一気に押し上げる。収縮した大胸筋は隆起し、力こぶを作る上腕二頭筋もわずかに震えている。

持ち上げたバーベルは、彼の鍛え抜かれた肉体にとって、もはや重いとすら感じさせないほどだ。

しかし、この日の彼は、いつも以上に負荷をかけていた。

孤独に耐えるため、精神を研ぎ澄ますために、肉体を極限まで追い込む。

そして、チンニングスタンドへと向かう。

佐藤は半ばヤケになっている。

身体をヤミクモに痛めつけたい、、、

そんな衝動。

筋肉を休ませる暇なく、両手でバーを握り、軽々と体を持ち上げる。

広背筋が大きく広がり、逆三角形のシルエットが強調される。

懸垂の度に、背中の広背筋と腕の上腕筋が躍動し、背中の筋肉の繊維一本一本が浮き上がるように見える。 

すでに腕はパンパンに張り、握力が限界を迎えようとしている。

一回、また一回と、無理に体を持ち上げるたびに、筋肉が悲鳴を上げ始める。

「くっ……!」

奥歯を食いしばる。

汗が目に入り、視界が滲む。

それでも、彼は止まらない。

、、、ここで諦めたら、俺はただの負け犬だ、これ以上、、、これ以上、可愛い生徒たちの前で惨めな真似は晒したくない、、、

部員たちの笑い声が遠く聞こえる中、佐藤の額には汗が滲み、その一滴一滴が彼の孤独な決意を物語っていた。

彼の周りには、まるで透明な壁があるかのように、部員たちの賑やかな空間と、彼の孤独な世界が分断されていた。

もう一セット、、、

佐藤は再び、ダンベルを手にした。

「おう、ダメだ、ダメだっ!ヤミクモに筋トレしたって無駄だっ!だから、偉そうにしておいて、あんなに惨めな負け方を晒すんだっ!」

突然、大声が聞こえる。

その声の方を向けば、黒崎が、こっちに向かってくる。

佐藤はビクッとする。

「ヤツらにあんたの考えた筋トレをやらせなくて良かっぜ、、、おら、俺が見てやるよっ!バーベルを置けっ!」

部員達が、固唾を飲んで佐藤と黒崎を見ている。

また、、、また、、、俺は恥をかかされるのか?

これ以上の、、、

佐藤の血の気が引き始める。
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