聖職より堕ちた教師 純一の場合

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リライト4 猛者の企みーSIDE:水島

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教員用ロッカールームの中に静かな緊張が立ち込める。

水島は、極度の緊張で全身を硬直させていた。

目の前にいる浜田、、、

“猛者”というアダ名が示す通り、高校生とは思えないほどがっしりとした体格と、太々しいほどの落ち着きを纏っている。

男っぽく我の強そうな顔。

黒く太い眉が印象的だ。

その瞳は常に自信に満ち、制服の上からでも彼の筋骨隆々とした肉体の迫力が伝わり、水島は完全に圧倒されていた。

彼は高1の時、生活態度を注意した血気盛んな体育教師を、授業中の柔道で容赦なくコテンパンにやっつけたという伝説を持つ。

止めを刺した絞め技で、教師は涎を垂らし、白目を剥いて失神した挙句、小便まで漏らしたという。

その教師は程なく学校を去った。

警察沙汰にはなっていないが、地元のグレーな面々からも一目置かれているという噂は、彼の纏う太々しいオーラによって、真実味を帯びていた。

校内ではタンクトップで過ごすことも多いが、3年の担任教師たちでさえ彼を注意できないことを、下級生は皆知っている。

タンクトップから出る肩の筋肉の盛り上がり、太い筋肉に覆われた腕、そしてごつそうな拳は、分厚い胸は、まさに鈍器も兼ねた鎧を纏っているようなような迫力だった。

水島をソファの下から引き出したのは、同じ三年生の菊池だ。

学生ボクサーであり、体格は締まって細く長身。鋭い切れ長の目が、獰猛な光を放っている。

冷めた雰囲気で、一人でいることが多い。

サッカー部の先輩から聞いた話だが、浜田、菊池はともに学年で浮いた存在で、いつかぶつかったら恐ろしいと噂されていたのが、三年に進級するあたりから急につるむようになって、同級生達は、皆、驚いたらしい。

その後ろにいる栗山は、水島と同じ二年生だ。

中学時代から体操で有望視されていた。

愛くるしい顔立ちと、体操選手特有のしなやかな塊が並ぶ筋肉質の身体がアンバランスだ。

常に微笑みを絶やさないが、何を考えているのか読めない、底知れない生徒だ。

水島とは同学年だが、話したことはない。

浜田が、水島を見下ろし、ニヤリと、下卑た笑みを浮かべた。

「可愛い顔して、覗きかよ。いい趣味だな」

すっと伸びてきた浜田の指が、水島のふっくらした頬を、軽く、しかし逃がさないようにつねる。

水島の怯えが増す。

そこに、無表情で二人の間に割り込んだのは菊池だった。

「下級生がビビってんだろ。やめとけ」

後ろの栗山が、やれやれというように肩を竦める。

体操部員らしく、その制服の下でコリコリと筋肉の膨らみが解る。

彼は学校にいるときは地味な格好だが、盛り場では派手な服装で遊んでいる。

その片鱗か、普段は着けていない銀のピアスが、今日は耳元で怪しく光っていた。

栗山は、ニコッと面白そうに水島を見たが、極限まで怯えた水島は、その視線に気付く余裕はない。

「お前は帰れ」

菊池がぶっきらぼうに水島に言い、背中を押した。

その押す手が、水島の想像とは違い優しく、水島はかすかに安堵する。

水島は慌てて出口に向かおうとすると、浜田が再び水島の腕を掴んだ。

その握力に、水島は驚く。

「まぁ、待て。面白いことを思い付いた」

菊池、栗山、水島の三人が疑問の目を浜田に向ける。

浜田はニヤリと笑った。

栗山は、何かを察したように目を輝かせ始め、期待するように浜田を見る。

菊池は、心配そうな顔で浜田を見、そして、水島をチラっと見る。

水島は身を硬くするだけだ。

背中に当てられたままの菊池の掌の温もりどけが救いだ。

「水島、お前、ソファの下に戻れ、面白いものを見せてやる。いや、、、そこじゃうまく見えないな、、、」

浜田は、教員用ロッカールームの中を見回す。

そして、一点を見て、言う。

「そこだ」

指差した先は、三つ並んだシャワーブースの向かいにある簡素な扉。

用具室だ。

浜田はその扉を開けると、水島の手を引っ張り、その奥へと押し込んだ。

「その隙間から良く見てな。絶対バレんなよ」

そう耳元で荒々しく囁くと、扉を、中の水島が外の様子を窺える程度のかすかな隙間を残し、閉じる。

菊池が心配したような目で水島を見た後、浜田を責めるような目で見る。

浜田はニヤリと、菊池に笑みを返す。

菊池は不服気な顔だ。

栗山が小声で菊池に何かを囁き、途中で背中をぶたれて黙る。

“なかよくなれるちゃんすじゃ、、イテッ、、、”

そのように水島には聞き取れたが、混乱した頭で意味は分からない。


パイプや掃除道具が置かれたその狭い空間から覗くと、教師がシャワーを浴びている曇りガラスのブース扉が、ちょうど視界に収まる。

磨りガラス越しに、シャワーを浴びる教師の肉厚なフォルムが、肉色にぼんやりと浮かび上がって見えた。

のんびりした動き、、、

まさか、薄い磨りガラスを隔てて生徒達が居るなどとは思ってもないだろう。

教師の浴びているシャワーの音が、ザーザーと大きく響く。

普段なら落ち着く水音が、今は水島の神経を逆撫でするような、不吉な音に聞こえる。

何が起こるのか、水島には訳が判らない。

しかし、隙間から見えるシャワーブースのドアから目が離せない。

中では、崇拝する教師が、外に生徒達がいるなどとは思わず、トレーニングでたまった疲れを、無防備な裸体と共に洗い落としているはずだ。

浜田、菊池、栗山の三人は、ロッカールームのど真ん中に、まるで自分たちが指導者であるかのような落ち着き払った態度で立っている。

手前にいる菊池が、水島の隠れている扉の方を一瞬見た。

水島は、その視線と一瞬目が合った。

菊池の目に、一瞬だけ、心配しているような、微かな優しい光が宿り、水島は意外に思うと同時に、一縷の安堵を覚えた。

そして、その安堵は、一瞬で驚愕へと変わる。

カッ!

水島の目が、信じられない光景に大きく見開く。

浜田は、ゆっくりと、しかし確信に満ちた動作で、教師がシャワーを浴びているブースの前に近づき、折り畳み式の扉を、勢いよく、完全に開け放ったのだ。

ザーッ!

シャワーの水音が、ロッカールーム全体に、耳をつんざくほどの暴力的な響きとなって炸裂する。

目を見開いたのは、扉に隠れている水島だけではない。

全裸の青年教師、来生純一も、振り返り、その均整の取れた筋肉に覆われた肉体を晒したまま、大きく見開かれた目で、外に立つ三人のふてぶてしい生徒たちを見る。

驚愕のあまり、彼はシャワーノズルを片手に持ったまま、完全にフリーズしている。

逞しく、優美なはずの肢体が、恐怖と屈辱によって、硬質な彫像のように凍りついていた。

水島に来生の姿を、細部まで見せつけるように、扉を開けた浜田は少し横にずれる。

だから、すっぽんぽんで、シャワーノズルを片手に振り向いたままの、青年教師の姿が、水島の視界に丸見えとなった。

水が流れ落ちる大理石のような白い肌

捻られた上半身。

鍛え上げられたシックスパックと、強靭な胸板、そして、尻とその上の広背筋が美しく一目で見ることができる。

「よぉ、純一、、、」

浜田が、教師を呼び捨てにするという無礼な態度で、偉そうに声をかける。

ドキリ、、、

心臓が破裂しそうな衝撃が、再び水島の身体を襲った。

逞しい全身をフリーズさせて、ピクリとも動かない教師。

だが、思ってもみない一ヶ所だけが、この極度の緊張と屈辱の中で、動き始めた。

他が完全に停止している分、その変化は、異様に目立つ。 

扉を開けた瞬間には、水に濡れ、確かに項垂れた状態だったはずの股間の逸物が、ゆっくりと、ゆっくりと、膨らみ、頭をもたげ始めたのだった。

生徒の無礼な態度にもかかわらず、全身を硬直させている教師、だが、その分身だけが、持ち主とは別の医師を持つように元気に力を持ち、存在を誇示し始めている。

憧れの教師が生徒達の前で勃起を始めているという衝撃に、水島の脳みそは焼き切れそうになる。
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