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仕組まれた厳罰と秘められた厳罰(回想編)〜和彦
突き刺す視線
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3年生の有志に二人の体育教師と一人のOBを加えた面々によるグラウンドでのスクラムの試技は続いている。
二人の体育教師をリーダーとした二組の実力は拮抗していた。
そして、回を進めるたびに、組んだスクラムに肌色が増える。
ラグビーボールを上手くさばいて終了した時は何も起きないが、スクラムが崩れるとその組の誰かが、“俺のせいだっ”と言い、ユニフォームを脱ぎ捨てていったからである。
和彦は、それに納得はしていない。
が、イジメやシゴキの陰湿さがないのである。
まるで、ミスしたことを誇るようにミスした者が率先してユニフォームを脱ぎ、靴を除いての全裸となる。
そして、脱ぐ彼らを、時に拍手をして周囲の仲間達が讃えるのだ。
もはや和彦には、皆に「裸になるのは行き過ぎだから、止めよう」と言い出せない空気が出来上がっている。
そして、今、一勝の僅差で和彦組がリードしている。
クラウチッ!
風間が号令を掛ける。
二組の若者達がそれぞれ整列する。
和彦は、再びセカンドローのロック、2列目に並んだ四人の内側に立つ。
背後のサードローは水田だ。
「スクラムばかりじゃ、キックやパスの練習ができないんで、次を最後にしましょうか」
風間が両チームの体育教師の顔を交互に見ながら言う。
「そうだな。折角だからキックやパスもやってみたいな、、、、」
和彦は言う。
スクラムが終われば、今、裸になった生徒達もユニフォームを着けられるだろう。
一刻も早く、自ら罰として裸になった彼らの罰の時間を終わらせたかったのだ。
「いや、待ってくれ。ちょっと、杉山も来てくれ」
荒木が列から抜け、風間のもとに歩きながら言う。
呼ばれた和彦は、スクラムの列から抜ける。
「もし、次に杉山チームが勝ったら、俺達は潔く負けを認めよう。けれど、もし、俺達が勝ったら、杉山組、荒木組はイーブンとなる。その時は、最後の試合で雌雄をつけさせてくれ」
荒木が風間と和彦の顔を見ながら言う。
「確かにそうですね。じゃ、勝ち負けが決まるまで、あと1回か2回、スクラムを行うことでいいですか?」
風間が和彦に聞く。
和彦としては、受け入れるしかなかった。
列を抜け、審判である風間と相手チームの荒木の方を向いている和彦の背後、サードローの水田が、和彦を除いたセカンドローの三人に何やら小声で囁き、それを聞いた三人、そして、聞き耳を立てていたファーストロー三人がニヤリと笑いながら和彦の方をチラリと見たことには気付かない。
そして、再び、風間が号令を掛ける。
クラウチ!
バインド!
和彦は腰を下ろし、フロントローの右側のプロップの股の下から手を差し込む。
右側のプロップは先程、スクラムを崩し、ユニフォームを脱いでいる。
だから、和彦は裸の股の間から手を突っ込まなければならない。
さらに、伸ばした手でプロップのシャツを掴み固定しなければならないが、裸の肌に掴むところはない。
そして、和彦が腕の動きを誤ると、その裸の生徒の睾丸を挟んでしまう可能性もある。
ここは、俺がしっかりとこの生徒のフォローをしないと、、、
和彦は己を奮い立たせる。
しっかりと腰を下ろし、自身の肩を前のプロップの尻に当て、しっかりと支えようとする。
だから、上半身を低くした和彦の腰は高めに突き出される。
スクラムが組まれる。
上から見れば、和彦はスクラムの中央の右側に位置し、前後左右から囲まれる体勢だ。
セットッ!
グッ、、、、
スクラムを中心にムッとした男の熱気が波動のように広がる。
一進一退、、、
拮抗するスクラム。
全力で前方からの圧に耐え、ジリジリと前方に進もうとする和彦、、、
微かな違和感。
左右からも圧を受けているような気がする。
そして、ドッシリとした前方のフロントローの三人。
ドッシリとしているのは良い。
が、敵チームの押しに耐えてはいるが、前に押す気迫に足りないのではないか、、、、
その時、、、、
キィッッッッッッッッッッッッッッッッ!
ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!
和彦の身体が硬直する。
小さく悲鳴を上げたが、その後は悲鳴すら続けられない。
急に和彦の睾丸がキツく捻り上げられたように、キンタマから今まで感じたことのない激痛が脳天まで走ったのだ。
当然に和彦は体勢を崩し、スクラムが崩れる。
崩れた生徒達の中、和彦は耐えられない痛みに股間に手を当て、生徒に当たりながらグラウンドを転がり、そして、ようやく身体を丸めながら止まる。
「おいっ、杉山っ、大丈夫か?」
荒木が駆け寄る。
そして、和彦の腰の辺りを拳で叩き、そして、和彦の肩を支え、立ち上がらせ、ピョンピョンと飛ばせる。
「氷嚢は用意してあるか?」
「ありますっ!」
駆け出した3年を和彦は止める。
「だ、大丈夫だっ!痛みは治まってきた。もう大丈夫だっ!」
治まってきたとはいえまだズキズキする睾丸の痛みに耐えながら和彦は言う。
「もう治まったか?」
荒木の言葉に和彦は頷き、股間から手を離し、無理やり平静を装う。
そして、気付く。
生徒の視線が和彦に集まっている。
何も言わない。
何も言わないからこそ、言外の圧力が和彦を襲う。
今、スクラムが崩れた、、、、
どう考えても和彦のせいだ、、、
しかし、和彦が体勢を崩したのは睾丸を襲った鋭い痛みのせい、、、
あんな痛みが自然に発生するとは思えない、、、
誰かが俺のキンタマを掴んで、捻るか、握るかしたはずだ、、、、
サードローは風呂場で和彦に狼藉を働きかけた水田。
が、証拠はない。
和彦を見る生徒達。
その中にはすでに脱いでいる者もいる。
そして、直江。
“漢”とあだ名され、生徒達の信頼を受けている直江、そして、真っ先に裸になった直江が和彦をジッと見ている。
その視線の意味が分からない。
そして、生徒達の視線も。
みんな、俺が漢らしく脱ぐかどうか見ているのか?
もし俺が、誰かにキンタマを握られたせいで体勢を崩したと言い訳をしたら、男らしくない、卑怯な、教師として失格の男だと思われるのではないだろうか。
もちろん、生徒の多くは和彦を責たり、試したりしているわけではなく、単に、スクラムを崩した原因となった和彦が脱ぐかどうか伺っているだけだ。
だが、藤崎一派の悪意のある仕打の数々に、和彦は過敏に反応して、邪推してしまう。
さらに、この生徒の視線に晒される緊張が、和彦にホームルームでのトラウマを思い出させる。
“その言葉が本当だというところを見せてください。僕達と裸の付き合いがしたいというのなら、本当に裸になってみせてください”
ドスの効いた結城の声。
あまりの言葉に教壇で和彦は凍りついた。
“先生の言葉は、結局その程度のものなんでしょう。口先では何でもいえます。教師はみんなそう。もし信じろと言うなら、信じることが出来ると態度で示してくださいっ!”
そう責められ、口先だけの人間と言われ、和彦は、
“脱げば話を聞いてくれるんだな”
と答えてしまった。
そして、ホームルーム中に教壇の上で着衣を一枚ずつ脱ぐという恥さらしな真似をしてしまった。
そのトラウマ、、、、
だが、ここでも、逃げることが出来そうもない。
「今のスクラムは、俺のせいで崩れた、、、」
絞り出すような声で言う。
そして、皆を見る。
誰も何も言わない。
「先生は脱がなくていいですよ」と、助け舟を出すものもいない。
「俺も、、、、脱ぐ、、、、」
掠れた声で、和彦は言ってしまった。
二人の体育教師をリーダーとした二組の実力は拮抗していた。
そして、回を進めるたびに、組んだスクラムに肌色が増える。
ラグビーボールを上手くさばいて終了した時は何も起きないが、スクラムが崩れるとその組の誰かが、“俺のせいだっ”と言い、ユニフォームを脱ぎ捨てていったからである。
和彦は、それに納得はしていない。
が、イジメやシゴキの陰湿さがないのである。
まるで、ミスしたことを誇るようにミスした者が率先してユニフォームを脱ぎ、靴を除いての全裸となる。
そして、脱ぐ彼らを、時に拍手をして周囲の仲間達が讃えるのだ。
もはや和彦には、皆に「裸になるのは行き過ぎだから、止めよう」と言い出せない空気が出来上がっている。
そして、今、一勝の僅差で和彦組がリードしている。
クラウチッ!
風間が号令を掛ける。
二組の若者達がそれぞれ整列する。
和彦は、再びセカンドローのロック、2列目に並んだ四人の内側に立つ。
背後のサードローは水田だ。
「スクラムばかりじゃ、キックやパスの練習ができないんで、次を最後にしましょうか」
風間が両チームの体育教師の顔を交互に見ながら言う。
「そうだな。折角だからキックやパスもやってみたいな、、、、」
和彦は言う。
スクラムが終われば、今、裸になった生徒達もユニフォームを着けられるだろう。
一刻も早く、自ら罰として裸になった彼らの罰の時間を終わらせたかったのだ。
「いや、待ってくれ。ちょっと、杉山も来てくれ」
荒木が列から抜け、風間のもとに歩きながら言う。
呼ばれた和彦は、スクラムの列から抜ける。
「もし、次に杉山チームが勝ったら、俺達は潔く負けを認めよう。けれど、もし、俺達が勝ったら、杉山組、荒木組はイーブンとなる。その時は、最後の試合で雌雄をつけさせてくれ」
荒木が風間と和彦の顔を見ながら言う。
「確かにそうですね。じゃ、勝ち負けが決まるまで、あと1回か2回、スクラムを行うことでいいですか?」
風間が和彦に聞く。
和彦としては、受け入れるしかなかった。
列を抜け、審判である風間と相手チームの荒木の方を向いている和彦の背後、サードローの水田が、和彦を除いたセカンドローの三人に何やら小声で囁き、それを聞いた三人、そして、聞き耳を立てていたファーストロー三人がニヤリと笑いながら和彦の方をチラリと見たことには気付かない。
そして、再び、風間が号令を掛ける。
クラウチ!
バインド!
和彦は腰を下ろし、フロントローの右側のプロップの股の下から手を差し込む。
右側のプロップは先程、スクラムを崩し、ユニフォームを脱いでいる。
だから、和彦は裸の股の間から手を突っ込まなければならない。
さらに、伸ばした手でプロップのシャツを掴み固定しなければならないが、裸の肌に掴むところはない。
そして、和彦が腕の動きを誤ると、その裸の生徒の睾丸を挟んでしまう可能性もある。
ここは、俺がしっかりとこの生徒のフォローをしないと、、、
和彦は己を奮い立たせる。
しっかりと腰を下ろし、自身の肩を前のプロップの尻に当て、しっかりと支えようとする。
だから、上半身を低くした和彦の腰は高めに突き出される。
スクラムが組まれる。
上から見れば、和彦はスクラムの中央の右側に位置し、前後左右から囲まれる体勢だ。
セットッ!
グッ、、、、
スクラムを中心にムッとした男の熱気が波動のように広がる。
一進一退、、、
拮抗するスクラム。
全力で前方からの圧に耐え、ジリジリと前方に進もうとする和彦、、、
微かな違和感。
左右からも圧を受けているような気がする。
そして、ドッシリとした前方のフロントローの三人。
ドッシリとしているのは良い。
が、敵チームの押しに耐えてはいるが、前に押す気迫に足りないのではないか、、、、
その時、、、、
キィッッッッッッッッッッッッッッッッ!
ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!
和彦の身体が硬直する。
小さく悲鳴を上げたが、その後は悲鳴すら続けられない。
急に和彦の睾丸がキツく捻り上げられたように、キンタマから今まで感じたことのない激痛が脳天まで走ったのだ。
当然に和彦は体勢を崩し、スクラムが崩れる。
崩れた生徒達の中、和彦は耐えられない痛みに股間に手を当て、生徒に当たりながらグラウンドを転がり、そして、ようやく身体を丸めながら止まる。
「おいっ、杉山っ、大丈夫か?」
荒木が駆け寄る。
そして、和彦の腰の辺りを拳で叩き、そして、和彦の肩を支え、立ち上がらせ、ピョンピョンと飛ばせる。
「氷嚢は用意してあるか?」
「ありますっ!」
駆け出した3年を和彦は止める。
「だ、大丈夫だっ!痛みは治まってきた。もう大丈夫だっ!」
治まってきたとはいえまだズキズキする睾丸の痛みに耐えながら和彦は言う。
「もう治まったか?」
荒木の言葉に和彦は頷き、股間から手を離し、無理やり平静を装う。
そして、気付く。
生徒の視線が和彦に集まっている。
何も言わない。
何も言わないからこそ、言外の圧力が和彦を襲う。
今、スクラムが崩れた、、、、
どう考えても和彦のせいだ、、、
しかし、和彦が体勢を崩したのは睾丸を襲った鋭い痛みのせい、、、
あんな痛みが自然に発生するとは思えない、、、
誰かが俺のキンタマを掴んで、捻るか、握るかしたはずだ、、、、
サードローは風呂場で和彦に狼藉を働きかけた水田。
が、証拠はない。
和彦を見る生徒達。
その中にはすでに脱いでいる者もいる。
そして、直江。
“漢”とあだ名され、生徒達の信頼を受けている直江、そして、真っ先に裸になった直江が和彦をジッと見ている。
その視線の意味が分からない。
そして、生徒達の視線も。
みんな、俺が漢らしく脱ぐかどうか見ているのか?
もし俺が、誰かにキンタマを握られたせいで体勢を崩したと言い訳をしたら、男らしくない、卑怯な、教師として失格の男だと思われるのではないだろうか。
もちろん、生徒の多くは和彦を責たり、試したりしているわけではなく、単に、スクラムを崩した原因となった和彦が脱ぐかどうか伺っているだけだ。
だが、藤崎一派の悪意のある仕打の数々に、和彦は過敏に反応して、邪推してしまう。
さらに、この生徒の視線に晒される緊張が、和彦にホームルームでのトラウマを思い出させる。
“その言葉が本当だというところを見せてください。僕達と裸の付き合いがしたいというのなら、本当に裸になってみせてください”
ドスの効いた結城の声。
あまりの言葉に教壇で和彦は凍りついた。
“先生の言葉は、結局その程度のものなんでしょう。口先では何でもいえます。教師はみんなそう。もし信じろと言うなら、信じることが出来ると態度で示してくださいっ!”
そう責められ、口先だけの人間と言われ、和彦は、
“脱げば話を聞いてくれるんだな”
と答えてしまった。
そして、ホームルーム中に教壇の上で着衣を一枚ずつ脱ぐという恥さらしな真似をしてしまった。
そのトラウマ、、、、
だが、ここでも、逃げることが出来そうもない。
「今のスクラムは、俺のせいで崩れた、、、」
絞り出すような声で言う。
そして、皆を見る。
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