聖域で狩られた教師 和彦の場合

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あぶりカルビゲーム

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和彦は軽く不思議に思うことがある。

嬉しい悩みと言って良いのだが、ここしばらく生徒達のスキンシップが激しくなってきた。

後ろから飛び付かれたり、他の生徒に押されて和彦にぶつかりざま、抱きついてきてハグを続ける。

もとより見事な筋肉質の体躯なので、回りの悪友とか始めてあった人から、筋肉に触らせてくれというのは昔から慣れていたが、生徒達からのお願いの頻度が増しタッチの時間も長くなる。

“すげぇ~”

“カッコいい~”

“俺も鍛えよう、、、”

等と言われると無下にも断れない。

和彦はくすぐったがりで、触られるのは苦手だった。

特に、乳首が敏感だった。

だから、腹筋見せてと言われ、シャツを捲り上げ、腹筋と共に出た乳首を生徒が悪ふざけで摘まんだりすると、そのゾワッとする感覚を我慢するのに困る。

生徒の前では、かつて学生時代の友人の前で上げていた“ヒャアっ!やめてくれよぉ”という悲鳴は上げられない。

だから、最近は、腹筋を見せてと言われても乳首がでないように気を付けている。

しかし、脇腹や尻、“すげぇ太さだよ”と言われながら太股から内股まで触るのならともかく、内腿まで手が上がり、玉袋や棹の先まで手の甲が当たるのは困った。

ギュッと股間を触られた時は、「おいおい、そこはダメだよ」と笑いながら生徒の手をどけたが、たまたま当たった(と和彦は信じている)掌をいちいち振り払うのも大人げないと思う。

生徒達の下心を疑うこと無く、和彦は自分の敏感な身体をどうにかしなくちゃと思っていた。

その間に着々と生徒達が和彦の敏感な部分を調べあげていっていることは知らない。

和彦の机は教員室と体育教官室と2ヶ所ある。

生徒の資料作成などの事務作業は教員室でするが、同僚の体育教師がいる体育教官室で過ごすことが多い。

教員室には、ネチッコイ性格で同僚からも生徒からも浮いた存在の学年主任がいて、生徒が和彦と雑談しているだけで、チクチク嫌みを言ってくる。

だから、和彦が教員室に居ると生徒も遠慮し必要以上の接触はしてこない。

が、和彦が体育教官室に居ると、生徒達が次から次にやってくる。

そして、他の体育教師も和彦と同様におおらかな性格なので、和彦を訪ねてくる生徒達を微笑ましそうに見ている。

だから、休み時間などは体育教官室が、和彦ファンの生徒達の溜まり場となっている。

その昼休みも、生徒達がやってきた。

「カズ先生、ゲームしよ」

一年、二年の生徒達だ。

「あぶりカルビゲーム、分かる?」

「知ってるよ。あぶりカルビって、次々行っていくゲームだろ」

「俺、昨日、合同展の打ち合わせのあと、他校のヤツとカラオケボックスでやってぼろ敗けで悔しいんだ」

「こいつ、始まってすぐに噛みまくって、一人で罰ゲームやりまくりだったんだよ」

「学校のメンツ潰した感じでしたよね、先輩」

「キツいこと言うな~」

彼らは美術部だ。

他校との交流の一環だろう。

「だから、カズ先生、一緒に練習しようよ」

そして、茶色のペットボトルを机の上に置く。

「ああ、いいよ。そのペットボトルは?」

「罰ゲーム用の苦いお茶。マジで苦いんだよ」

「そりゃ、負けられないな」

体育教官室の傍らのテーブルを囲んで、和彦は生徒達とあぶりカルビゲームを始める。

和気あいあいとした雰囲気。

他の教師達はみな席を外している。

だから、騒ぎたい放題だ。

「カズ先生、今、噛んだよね?」

「おいおい、ちゃんと言っただろうあぶりキャルビ、、、あっ、、、」

生徒達が一斉に笑う。

「ほら、噛んだ」

「先生、さっきのと合わせて、2杯いっきね」

「うわっ、また俺が飲むのか。勘弁してくれよ、マジで苦いんだから。やだなぁ」

教師という立場を誇らず、和彦は生徒達と同じ目線で楽しんでいる。

和彦の発音がちょっとでも怪しいとアウトにされ、生徒よりも厳しい判定をされていたが、それも親しみの内と和彦はポジティブに考える。

なにより、自分を慕ってくれる生徒達だ。

可愛くて仕方ない。

和彦の前のカップになみなみと茶色の液体が注がれる。

「よし、いくぞっ。躊躇うと苦いから、一気に、、、」

そう言い、グイッとコップの中身を空にすると、顔をしかめる。

「うわっ、本気で苦い、、、口の中がビリビリするよ」

「カズ先生、ちゃんと噛まないであぶりカルビって言えばいいんだよぉ」

生徒達が楽しそうに笑う。

生徒達は同じペットボトルを回し飲みし、和彦のマイカップには、別のペットボトルからお茶が注がれている。

回し飲みに加わろうとした和彦にテーブルの上にのせられていたマイカップを使うように即し、ペットボトルが二本あることを目立たせないよう上手く背後のテーブルを使い、和彦に生徒とは別の苦い液体を飲ませている生徒が一人だけ、和気藹々としている輪の中に居る。

もちろん、和彦は気付かない。


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