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CH2 旅立

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その男との関係は続いた。

続くというよりも、深みにはまっていったという表現の方がいいかもしれない。

母親が外出した隙を狙って、二人は互いの身体を貪る。

男は仕事にも行かず、彼の身体に溺れる。

朝方、彼は、諍いの声に目を覚ます。

“何でよっ!疲れているのは私も同じよっ!”

母親の声だ。

“ねぇ、いいじゃない。ちょっとだけ、、、触るなってどういうことよっ!”

ヒステリックな声。

彼は、母親に対して憐れみしか感じない。

男にすがり、家に住まわせ、息子に寝取られる。

憐れな人だ、、、

そう考え、寝返りを打つ。

その後、二人がことに及んだかどうかは寝てしまったので知らない。

彼は、その男に惹かれてはいたが、母親とセックスしようがどうがさほど興味はなかった。

自分が欲しい時に抱いてくれればいい。

それだけだ。

彼の姓が変わったのはそれからすぐのことだった。

母親が家族三人の生活費を稼ぐために、夜出掛ける。

すると義理の父と息子は、お互いの精力を全てぶつけ合うように身体を絡め、貪る。

彼が昼間出掛けるのは、母親のいる最中にしたくなった時に困るからだ。

さすがに母親の近くで義父と絡むのはマズイと感じていた。

彼が外出している時、義父はパチスロに出掛けているらしい。

母親も一緒のようだ。

働かないでパチスロばかりしてぇ、、、と母親は甘えたように義父に言っていた。

義父のパチスロの腕はそれなりだったらしく、母親はそんなに文句も言わない。

三人の共同生活は続く。

いつもと同じような夜。

テレビではバラエティ番組が映っている。

だが、義父も息子も見ていない。

息子は、義父の逸物を口に含んでいる。

ソファに上半身をもたれかけた義父は、息子の尻を鷲掴みにし、自分の顔の前に持ち上げ、頬擦りし、その割れ目の秘孔を舐める。

舌を出し丹念に。

指は少年のキメ細やかな肌を愛撫している。

ペチョッ、、、チュパっ、、、

貪りあう生々しい音が響く。

バンッ

大きな音を立てて庭に向かった戸が開けられる。

そこに母親が鬼のような形相で立っていた。

「なにやってるんだっ!なにをやってるんだ、お前達っ!」

彼は、母親の野太い怒鳴り声に驚く。

うわぁぁぁぁぁ~~~~~!

叫びながら、母親はソファのところに突進してくる。

彼を突き飛ばす。

そして、手にしたハンドバッグで、彼の背中を叩き続けた。

「このガキ、なにをやってるんだ、このガキ」

「やめろっ」

義父が止めようとする。

だが、母親をさらに逆上させたようだ。

「タッくんは、騙されてるんだ。このガキに騙されているんだよぉっ」

ものすごい力で身体を動かし、手に取るものを次々と彼に投げつける。

「育ててやってる恩を忘れやがって、このガキ、うおおお~~~~っ」

置かれていた魔法瓶を手に取り、彼に叩きつけようとする。

「いい加減にしろっ」

義父が止めに入る。

バシャッ

魔法瓶の蓋が外れ、お湯が飛び散る。

「熱いっ」

義父がお湯をもろに被り、身体をひく。

「うおおお~~~~」

母親もお湯を被っていたが、動きは止まらない。

彼に向かって、魔法瓶を振り上げ殴りかかる。

彼は、たまらず逃げ出す。

振り向くと、義父が母親に掴みかかっていた。

「タッくん、何であんなガキをかばうの。タッくん、あたしだけを見てよっ」

悲鳴のような母親の叫びを聞きつつ、彼は、自室に飛び込み、Tシャツとジーンズを身に付け、家を飛び出した。

母親の叫び声に驚いたのか、近所の人が何人かこちらを見ていたが、彼は反応せず道を駆け出した。

夜中、行く当てもなく公園のブランコに腰かけていた彼ところに警官がやってきた。

「※※※※※くんだね」

彼は、うなずく。

見上げると、スッキリとした顔立ちの優しそうな男だった。

男は警察手帳を出し言った。

「署まで同行してもらえるか?」

断る理由もないので、彼は、立ち上がる。

無抵抗な反応に微かに驚きながら、警官は彼に言った。

「落ち着いて聞いて欲しい、、、」

彼が飛び出した後、しばらく家からは言い争いの声が聞こえてきたらしい。

その後、凄まじい絶叫が聞こえ、しばらく後にボッという音と共に黒煙が窓から吹き出したそうだ。

言われてみれば、消防車のサイレンがうるさかった。

あれは、家だったのかと、彼は、ぼんやりと思う。

焼け跡から、2体の焼死体が発見され、今、死因と身元の鑑定中だそうだ。

優しそうな警官が、辛そうに話す。

その横顔を、彼は見る。

鼻筋が通り、誠実そうな顔立ちだ。

知的な雰囲気。

背は彼より少し低い。

顎から首筋のラインは締まっていて、おそらくそれに続く身体も締まっているだろう。

彼は、手を伸ばし、警官の手を握る。

警官は驚いたように彼を見る。

そして、この少年は、今、家の火事、両親の死を知らされたのだ、動揺しない方がおかしいと、勝手に納得する。

そして、彼の手をギュッと握り返し、もう片方の手で、握った少年の甲をポンポンと叩く。

「大丈夫。気を確かに持ってくれ。僕がついてる」

そう言うと、その少年は、警官にもたれかかってきた。

その感触に警官は戸惑う。

密着した少年の身体を警官は、優しくさする。

もう一方の手はギュッと握ったままだ。

警官は、彼を見る。

確か中学生と近所の人が言っていた。

親が荒れた生活環境で、心配していたと。

彼の顔を間近に見る。

柔らかで優しく美しい顔立ち。

睫が長く、吸い込まれるような瞳をしている。

通った鼻筋、柔らかそうな唇。

警官は、彼に惹かれ始めていた。

署での事情聴取は上席の警察官が行った。

彼の親戚とは連絡が取れず、中学校には警官は連絡をしなかった。

聴取が終わった時、彼は、上官に嘘の報告をした。

中学の担任が迎えに来るので、自分が対応します、、、と。

そして彼を連れた警官は、そのまま署を出る。

近くのビジネスホテルに行く。

部屋を取る。

部屋の扉を開け、中に入った瞬間、少年は警官に身体を預けるようにもたれ掛かってきた。

警官は、少年をギュッと抱き締めた。

おれは、、、なにをやってるんだろう、、、

そう思いながら、少年に口付けした。


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