世界は変わる。どこまでも。

まっしろ。

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アルフレッドはいつものらりくらりと令嬢たちのダンスの誘いを断る。
必要な場では一度だけ踊るけれど、必要のない場では決して踊らない。
今日はただの夜会でアルフレッドが踊る必要のない場。その場で彼は自ら令嬢に声をかけ踊っている。
ティナベルとアルフレッドの二人は会場中の注目の的となった。


「もう終わりか」


曲が止むとアルフレッドは物足りなさそうに体を少し離した。


「足を踏まずに済んでよかったです」

「ハハハ、踏んでくれても別によかったよ?」

「とんでもない!」

「疲れた?」

「いいえ」

「では、」

「失礼」


アルフレッドが「このまま二曲目の相手を」と言いかけたところで二人の間に割って入る男がいた。

次は自分がティナベルに声をかけるぞ!と鼻息荒く待っていた他の男たちはまさかアルフレッドの間に入っていく勇気を持ち合わせる者がいるなんて思わず随分間抜けな顔をしている。


「彼女は次は自分と踊るので。手を離して頂けますか?」


ルージュの姿からいつもの姿に戻ったリードヒルはティナベルを引き寄せて牽制した。
初めからそうしてれば最初のダンスだって踊らせずに済んだのに、としたくもない後悔がリードヒルの頭の中を占めた。


「リー」

「待たせたな」

「あー……うん!」


待つような約束なんてしてたっけ…?と思いつつ、余計なことは言わなくていいかとティナベルは空気を読んで曖昧な返事を返す。

ルージュの顔なんて一瞬しか見なかったくせに、リードヒルの顔はしっかり見るアルフレッドは「残念」と溢し、「またね」と言う。


アルフレッドが離れていったのを確認したリードヒルは溜息を吐き怒りの矛先をティナベルに向けた。


「な、何?」

「別に?」


言葉とは裏腹に何でもあり気な雰囲気。
何であんな奴と楽しそうに踊ってんだ?
何が”また”だ。
言いたいことは沢山あっても心に留めた。


「どうして殿下はあの娘と踊ったの?!」

「殿下から声をかけてたわよね」

「どこの娘なんだ?」

「あの男も見たことがない」


アルフレッドとティナベルのダンスが終わったあと、方々からこんな声が上がっていたけれど次にリードヒルとティナベルが踊り出すとフロアはまた「ほー」と感嘆の声をあげた。


「ダンス楽しいね?」

「お前、もう誰とも踊るなよ?」

「なんで?」

「それからルージュの正体は誰にも言うなよ」

「そういえばなんで女の人の姿になってたの?」

「……(このタイミングかよ…)踊りながら喋るのははしたないぞ」

「アハハ、答えてくれないんだ?ま、いいや。リーの新しい一面を見れたし」

「!趣味でしてたんじゃねーからな?!」

「今日いる女の子の中でルージュが一番可愛いかったね。私が男なら絶対惚れてたと思う」

「…そらドーモ」


ため息を吐いたリードヒルだったけれど、自分の手を取り楽しそうに踊るティナベルにいつしか自分も楽しく踊っていた。


**********


夜会から一週間後、ティナベルとリードヒルは再び王都に来ていた。


「なんで私たちが呼ばれたんだと思う?」

「呼ばれたのは私たち、じゃないけどな」

「そうね、名指しされたのは私だけ。何をしちゃったんだろう?」

「…着いたら嫌でも分かるだろ」


五日前------


「お嬢様、旦那様がお呼びです」


晴れた日の日課の散歩(乗馬)を終えて屋敷に戻ると侍女がティナベルを待ち構えて言った。


「?何かしら?執務室?」

「はい」

「ありがとう、すぐに行くわ」


ティナベルが仕事中の父にこうして呼び出されることは滅多にない。
何かあったのかとティナベルは馬を降り急いで執務室へ向かった。勿論、当然のようにリードヒルも一緒に。

執務室へ入ると、ティナベルの父は「面倒なことになりそうだ」とうんざりするように手紙を掲げ言った。


----------------


「リーったら…何か知ってる風なのに何も教えてくれないのね」


あの日、ティナベルの父に届いた手紙はティナベルを茶会に招きたいという内容のものだった。
差出人はアルフレッド王子。
場所は王宮。他の家は参加しない。

夜会でダンスを申し込んだことだけでも王子がティナベルに惚れたんだろうことは誰もが察していた。
それを裏付けるのが今日の誘い。
他の家を除いて個人を誘ったと言うことは、間違いなくそういうこと。
分かっていないのは恋愛ごとに驚くほどに疎いティナベルだけ。


**********


王宮に着き二人が通されたのは庭園。


三脚の椅子が丸いテーブルを囲んでいた。
普通王子ともなれば自身が招待主であろうと一番最後に現れてもおかしくないけれど、アルフレッドは落ち着かず既に先に着き椅子にも座らず待っていた。

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