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しおりを挟む晴れた日の午後。王宮内の庭園。
多くの葉が日差しから守ってくれる場所でティナベルは二人の男に挟まれ一人眠っていた。
「うーん…今日は沢山話をしようと思ってたんだけど…」
スヤスヤと気持ちよさそうに眠るティナベルを見てアルフレッドが言った。
「こいつは色恋より食、食より自然の中で自然でいることが好きな奴ですからね」
「そうなんだ?それはいいことを聞いたな。ありがとう」
「…ドーイタシマシテ」
「でもこうして無防備に寝顔を見せてくれるってことはとりあえずきちんと友達になれたということかな?」
「飯食った後だしこんな天気だし眠くなっただけでしょう」
アルフレッドはぶっきらぼうなリードヒルを不愉快に思うことなく「ハハハ、そっか」と笑った。
臣下の中にはそんなアルフレッドの振舞いに対し王族としての威厳が足りない等と言う者もいるけれど逆に偉ぶらない態度がいいと好感を抱く臣下も多い。
「彼女の父君は私のことを何か言ってたかな?」
「ご自身で聞かれて下さい」
「ハハ、そうしたいところだけど本人に面と向かって悪口は言えないだろう?私は王子だし」
-あの人ならもし文句があったらそれが例え王子相手だろうと陛下だろうと直接自分で言うだろう。
リードヒルにはティナベルの父が怒鳴り込む姿が平気で想像出来た。
「勿論不敬になんて問わないよ?」
「どっちにしろ俺は何も答えませんよ」
言わないと処罰すると言われてもリードヒルは答えるつもりはなかった。
そもそもティナベルの父はアルフレッドのことを特に何も言っていなかったから答えられることなど何も言ってなかった、の他ないのだけれど…それを素直に伝えるのもリードヒルには癪だった。
アルフレッドは諦めて「じゃあ君は?」と聞く。
「君からの私の印象を教えては貰えないかな?」
「最悪ですね」
「……それは……印象、に対する答え?」
一応確認したアルフレッド。
リードヒルが躊躇することなく「はい」と答えると、一瞬の間の後アルフレッドは声をあげて笑った。
「そう言われたのは初めてだよ」
「でしょうね」
リードヒルに向けた笑顔の奥に胡散臭さは特にない。
こういうところが女から万人ウケする理由だろうな、とリードヒルは思った。
顔が良くて禿げてなくて太ってなくて。ダンスこそ踊ってくれはしないけどどんな階級の者にも誠実で優しい。剣の腕もかなりあると聞けば女たちが惚れない理由がない。
「あー、本当に面白い。君とも友達になりたいくらいだ」
「俺はなりたくないんで諦めて下さい」
だからもう話しかけないで黙ってろといった感じのリードヒルにアルフレッドは豪快に笑ってしまいそうになるけれど、眠っているティナベルを起こさないよう我慢してくっく、と笑いを押し殺した。
王子という立場だけあってアルフレッドに本音をぶつけてくれる人は周りに一人もいなかった。
リードヒルのようなぶっきらぼうな護衛は何人かいるけれど、彼のように不敬ともとれる…いや、間違いなく不敬な発言をする者は一人もいない。
「因みに、最悪と思わせてしまった私の悪いところを教えてもらえるかな?」
「最初から、今に至るまでのお前…殿下の」
「お前でもなんでもいいよ。敬語も無理して使わなくていい。楽に話して」
「…じゃ、遠慮なく。最初から今に至るまでのお前の自分勝手な行いが最悪だ」
「…行い…?」
ここでアルフレッドが、ティナベルへの求婚についてのことならきちんと彼女の意思を尊重した、とでも抜かせばリードヒルの彼への印象はもっと最悪なものになっただろう。
だけどアルフレッドはそのことを盾にはしなかった。
「お前があの夜会でこいつに声をかけダンスをしたこと。その後求婚した事。友達からでもいいと言ったこと。今こうしてまた会っていること。全部だよ」
「………」
「誰がティナに惚れようがそいつの勝手だがお前は別だ。お前がティナに目を付けたせいで他の奴もティナに目を付ける。平和だったティナの日常はお前のせいでこれから変わるだろう。だから最悪だって言ったんだよ。自分の気持ちを押し殺すことは出来なかったのか?」
「…出来なかった。というか…あの日はそんなことまで考えられなかった」
「ガキが…」
リードヒルは舌打ちをした。
その舌打ちもガキと言う言葉もアルフレッドは真摯に受け止めていた。
アルフレッド自信にも分かっていたことだったから。
考えなしにしすぎたと思っていたから。
だからこそ、せめてもと彼は国王を通じて求婚を申し出なかったのだ。
「求婚したことはともかく、あの夜会の出来事は貴族連中の間だけでなく市勢にも降りてる。こんな情勢の中噂はあっという間に広がるだろうな。敵に塩を送るとはこのことだ」
「……情勢?敵…?何の話だ?この国の情勢は安定しているし私が次期王になるのによく思わない者はいるかもしれ」
「アホか。身内の敵じゃなくてゼブエラのことだよ」
-ゼブエラ……
リードヒルの口から出された国名を聞きアルフレッドは口を噤んだ。
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