幸せのテーブル〜限界集落でクールな社長に溺愛されて楽しく暮しています〜

ろあ

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幸せだと思う瞬間

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 幸せだと心から思える瞬間が今の私にはある。

 すっきりと晴れた空を眺めながら、爽やかな風を感じて山を歩く。

 周囲には木がたくさんあって、足元は雑草だらけ。


 つば広帽子、長袖、長ズボン、長靴。

 歩いている時に枝や草が触れても、この服装をしているおかげで肌が守られる。

 正直にいうと、都会に住んでいた時よりも地味な格好をしていると思う。

 そして、ここに来るまで草に触れたことさえなかった。


 山の幸を持って帰ると、大好きな人が私のところへ駆け寄ってくる。


蒔菜まきな……!」


 綺麗なダークブラウンの髪、ぱっちりとした二重で鼻筋が通っている。

 歳は私より二つ上の二十五歳で、顔立ちはファッション雑誌に載ってもおかしくないくらいイケメンだ。

 スリムな体型をしているけど、米一俵を軽々と持ち上げるほど力持ち。

 普段は冷静でいるのに、なにか事件があったかのように慌てた顔をしている。


ひじりさん、ただいま帰りました。
 なにかあったんですか?」

「ああ。蒔菜のことを探していたんだ。
 家中探してもいないから、どこに行ったんだろうと思ってな。
 知らない人に連れて行かれなくてよかった……」


「考えすぎです。
 タラの芽とわらびを採ってきたんですよ」

「山に行っていたのか」


「はい。昼寝の邪魔をしないようにこっそり出掛けたんですけど……。
 どこに行くかメモに書いていけばよかったですね」

「今後はそうしてくれ。
 タラの芽を採る時にトゲが刺さらなかったか?」

 私の手にそっと触れてから顔を近づけて、指を一本ずつ確認していく。


「大丈夫です。ふふっ、心配性なんですから」

「蒔菜には、痛い思いをして欲しくないんだ」

「そう言ってくれてありがとうございます。
 怪我をしないように気をつけますね」


「可愛い格好をして出掛けたんだな」

「遭難しても目立つようにピンク色の服装を選んだんですよ」

「確かに見つけやすそうだ。……髪に葉っぱがついてるぞ」

 気づかなかったけど、巻いた髪に葉っぱがくっついていたようだ。

 聖さんは優しい笑みを向けてから取ってくれた。

 幸せだと思うのは、豊かな自然に囲まれた生活をしているのと、聖さんがいるからだ。


 ここに初めて来た時のことは、一生忘れないと思う。



 一年前……――


 私は大学を卒業したあと、IT企業で働き、一人暮らしを始めた。

 駅近の古いアパートだから、電車や新幹線が通るたびに大きな音が響き、振動を感じる。

 それでも、すぐに買い物に行けるし、通勤時間までゆっくり寝ていられるから便利だった。

 店もたくさんあって、美味しいものもすぐに食べれる。

 特に、肉厚のビーフが挟まっているハンバーガーが好きだ。

 大学生の頃から週末に必ず食べていた。


 生まれてから都会に住んでいるけど、不便だと思うことは何もない。

 仕事をして、好きな人と結婚して、この場所で暮らしていくと思っていた。
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