『…魔力も魔法も関係ない! 必要無い! 俺は舌先三寸で人を動かして、魔王に勝って魔族を滅ぼす! 』

トーマス・ライカー

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魔法使いなんて、要らないよ!

…聞き込んで…観廻って…準備して…

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 俺とジングとナヴィドでファーマニアン達の寄り合いに混ぜて貰い、酌み交わして食べながら色々な話を聞いた。

 同じテーブルに着いていた2人が停車場の管理人と旅客乗合馬車の御者だったので、明日と明後日は到着便も出発便も予定はないと聞く……これは好都合だ……色々と準備ができる……一応『アガラ』に入った時に、案内所でこの辺り一帯の地図は買ったのだが……同じテーブルに着いている面々から街道の要所・難所・襲われやすい場所・間道・隧道ずいどう隘路あいろ獣道けものみちについても色々な話を聞く……襲われやすいのは、やはり休憩中と夕暮れ時だそうだ。

 商人でもあるダナルさんには良質の油と、松明を30本に強い矢を500本……それに片手で持てる大きさの石を出来るだけ用意して貰えるように頼む……最後に人足として雇える人手を30人頼んで、代金は報償金を貰ったらそれに充てると言い添えた。

「……石っころなんて、どうするんだい? 」

「……投石器で投げるんですよ……風が強くて開けた場所じゃ、いくら強い矢でも流されますからね……その点、強く投げた石は、結構よく当たるんです……」

「……へえ…そんなもんかね……人足には何をやらせるんだい? 」

「……街道の2ヶ所に罠を仕掛けるんです……俺達には魔力も魔法も無いから、知恵と工夫でやらないとね……あと…牛1頭を半身にしてふたつ頼みます……罠には餌が必要ですからね……」

 御者のおじさんに出発時刻を訊くと、明々後日の昼過ぎで行先は隣の城市『メギス』だそうだ……護衛させて欲しいと頼んで快諾を得る……それまでに色々と準備をするから、明後日の夜にここで打ち合わせをしようと約束した。

 夜も更けてきたので謝意を述べて中座した……レーナが泊まる部屋にまた全員で集まって座る。

「……レーナ…出来るだけ魔力中和の護符を書いておいてくれ…結構使う事になりそうだから……」

「……分かったよ……」

「……明日はどうする? 」

「……先ず乗合馬車の道筋を観よう…デラティフ……休憩場所と夕暮れ時にどこを通るのかもな……それで…奴らが襲って来るとしたら、大体どの辺りなのかを考える……そうしたら次は地形だ……こっちが戦いに利用できそうな地形に見当を付けておく……ここに来る前にヒーピーを観たな? 」

「……観たよ…確か3羽くらい飛んでたな……」

「……そうか…サミール……おそらく魔族に飼われている見張り役だ……初めは間道を行こう……街道に出られる手前で飛んでいるヒーピーを撃ち墜とす……それで街道に出れば少しは時間を稼げるが……飼われている魔物共は鼻が利くから、いずれは襲って来る……だが街道は間道よりも道幅が広いから、俺達にとっては戦いやすい……明日は俺とジングで街道と間道のあらましを観て廻りながら、魔物共の寝ぐらも探してみる……デラティフとナヴィドは隧道ずいどう隘路あいろ獣道けものみちをよく観て来てくれ……サミールとクヴァンツは隘路あいろの両側か片側にでも、上から岩を落とすのに好都合な崖があるかどうかを観て来てくれ……エフロンとレーナは、材料と道具の準備と下拵えの指図を頼む……明日は出来るだけの範囲で好いから無理しないで準備を進めよう……」

 取り敢えず今夜の打ち合わせはこれくらいにして、それぞれ部屋に引き上げる……俺は先刻聞いた話を思い出しながら、地図に印を付けていった。

 …翌日…

 起きた俺は湯浴みして着替え、茶を点てて飲み、外に出て馬の世話を始めた。

 程なく皆も出てきて愛馬の世話をし始める……糞を片付けて廻りを綺麗にし、水と飼葉を用意してブラッシングする。

「……よく晴れたな…ナヴィド……」

「……ああ…シエン……観て廻るには、都合の良い天気だな……今日は陽射しが強くなるだろうから…魔物共は出て来にくいだろう……」

「……そうだな……朝飯を食ったら、早速行こう……レーナ……護符は何枚書けた? 」

「……ああ、200枚は書いたよ……」

「……ご苦労さん……じゃあ、今日は投石器とサチュレーダーパチンコを作ってくれ……俺達も、帰ったら手伝うから……」

「……分かったよ……」

 愛馬達を綺麗に仕上げて、俺達も♯旅籠__はたご__♯の1階で朝飯にした……♯旅籠__はたご__♯の親父さんは7人分の弁当をカンパしてくれて……牛も1頭買ったからと聞かされたので、捌くのは明日の夕方で好いからと伝えた……ダナルさんが来たので、挨拶して同じテーブルに着いて貰う。

「……人足の手配は済んだ……いつから使う? 」

「……ありがとう、ダナルさん……明日、朝飯を食ってから頼みますよ……処で、明日も晴れますかね? 」

「……明日は晴れるだろ……明後日は曇りかもな……明々後日は分からん……」

「……ありがとう……勝負は明後日なんでね……雨さえ降らなきゃ、何とかなるよ……」

「……人足頭は今夜来させるから、話してくれ……注文の品は明日の夕方には揃うから、夜には全部持って来る……」

「……本当にありがとう……」

「……なに…俺だって商いでやってるんだからよ……しっかり頼むぜ……」

「……ああ…ときにここの城代は、魔物退治の報償金として……どのくらい出すのかな? 」

「……そりゃあ、魔物の頭数にもよるだろうな……」

「……そうだな(笑)……」

「……今日の……見廻りか? 人手が要り用なら、何人か呼べるが……どうする? 」

「……そうだね……男3人と、女の人をふたり、頼みます……」

「……分かった。いっ時待ってくれ…連れて来るから……」

 そう言ってダナルさんは、立ち上がって出て行った。

「……男3人はひとりずつ…『シエナ』・『エレナ』・『セシリア』に乗せる……女の人達にはレーナを手伝って貰う……来たら…直ぐに出るぞ……」

 ダナルさんは、それからちょうど1刻で5人の男女を連れて来た…そしてそれから半刻で、俺達は出発した。

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